寄付金募集と、王妃の決断
「報告いたします。
喫茶室の前にこんな張り紙が、出されていました」
暗部からの報告によって
寄付金募集の張り紙のメモが
すぐさまリチャード国王に手渡された。
リチャードはそのメモを見て
驚愕する。
金額もそうだが
何と言ってもその返礼品が問題だった。
モーガン卿によって
その存在を知らされていた
“音箱が
返礼品の冒頭に有ったからだ”
“音箱”は
クロアの名手であるシリーベル卿が所持している
自分の演奏を再現出来る
レアな魔法具の事だ。
一口、金10000枚
勿論カデナ王国の通貨の金額で、で有る。
並品でも金5000枚。
これはもう別格というか
想像を絶する金額としか言えない。
“自分達でも、寄付するのに躊躇する金額だな。
流石にこの金額は誰にも出せまい。
むしろその次辺りの寄付金で手を打つべきか”
そんな事を考えていると
同様の連絡を受けた王妃が慌てて駆け込んで来る。
目を合わせるや否や
「リチャード、直ぐに寄付金を準備して頂戴。
出来れば“音箱”は
全て手に入れたいの。
早く喫茶室に寄付を申し込んで・・・」
そう切り出す王妃に
国王は慌てて
「何を言っておる、王妃。
それは出来ない話しだ。金額を見ただろう。
自分達のポケットマネーでも
一つ買えるかどうかの金額なんだ。
そんな無茶は出来ない」
そう返すリチャードに向かって
王妃は
「リチャード。あなたって人は全く・・・」
そう言うと呆れた様に
「金が足りなければ借金すればいいのよ。
国の保管庫には、“落とし子”が預けたお金も
入っているでしょう。
それを使えばいいの。王国の土地を貸す訳だから
その貸し賃もその中に含まれている筈だから・・・」
その言葉を聞いて驚いたように
「それは国の金で有って、自分達の金では・・・。
預かっている金なのだぞ」
「国王の名で借りればイイのよ。すぐに返せる金額だもの。
リチャード、“落とし子”の生み出す商品は
その価値は寄付金の何倍も有るの。
実際、御茶会で手に入れたチョコレートは
諸外国への贈答品として使って
そのお返しは何十倍にもなって帰って来たわ。
これはチャンスでも有るのよ。
“音箱”は、
国外にオークションで売り出せば
諸外国の王侯貴族がほっとくと思う?
どんな金額になるのか、想像出来ないのよ。
もし寄付の噂を聞き付けた商人がいたら
すぐにでもお金を集めて来て納める筈。
今回も早い者勝ちなの。ぐずぐずしていられないのよ。
手付金でも打って、とにかく寄付を早急に
確定させなくちゃ。
王が寄付を確約するのだから、手付でも大丈夫な筈よ」
そう捲し立てて来る王妃に向かって
「そうは言っても、どういう商品かも判らないのに」
そう返答する王に向かって呆れたように
「“落とし子”の商品に、これまで外れが有った?
この機会を逃したら、後悔するのは目に見えてるわ。
直ぐに決断して実行して頂戴。
いえ、自分の独断でもこの返礼品はモノにしなくては」
その一言に国王は観念した様に
「それで、どこまで寄付する心算なんだ。
“音箱”の一番上の
三つでいいのか?」
「何言ってるの、それじゃあ全く足りないわ。
寄付の1番から5番までの全てを王国名で
申し込んで頂戴」
そう言いだすので、リチャードは呆れて
「一体幾らかかると思っているんだ?」
そう返すと
「金14万枚なら、安い買い物でしょ。
少なく見積もってもその数倍
金30万枚から50万枚の価値は有る筈よ。
要は返礼品の使い方次第だわ。
手遅れになる前に、急いで頂戴」
そう言われ、国王より先に
すぐさま側近が動き出した。
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王妃の願いは、
しかし全ては叶えられなかった。
小型時箱の四個と
大型時箱の十個は
既に寄付の申し込みが入っていて
入金済みとの事だった。
どうやら自分達と同じ考えを持った人物が
そこそこいる事だけは確かだと
王妃は一人納得し
国王は少しだけ安く上がった事に
安堵した。




