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神様に殺された!  作者: 猫めっき
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カンナとアヤメの里帰り


カンナとアヤメの里帰りに

付き合う事にしたのは

一つには村の実情を知りたかった事と

レンド病の原因に付いての確認を

して見たかった事と

この王国の貧困の根本を

知りたかったからだ。



*********************************************



カンナとアヤメと出会ってから

丁度一年が過ぎて

長めの休暇を皆で取る事にした。


一つには仕事が順調で有る事が理由で

それなりのお給料を分配出来ていたし

みんなの生活も安定していたからだ。


カンナとアヤメは

自分達の両親に元気な姿を見せたいと

そう話してもいた。


二人が里帰りの間

店の方は

ノーラさんとシュリの二人に任せて

開けていても良かったのだが

この機会に一週間程度の休暇を

有給休暇として

みんなで取る方が誰にも恨まれないし

その方が効率的でもある。


店は週に二日は休みにしているのだが

メリハリは必要だっていつも考えていた。

何より自分も休みたかった。


仕入れ先には早めに連絡しておく。

客にも貼り紙で、既に告知済みである。

(飲んだくれ共には、休業案内は兎に角不評だったが・・・)


一週間程度としたのは

カンナとアヤメの里帰りの期間を

それ位と見積もったから。


そこは臨機応変に対応予定だ。

何か有ったら

そこはノーラさんとシュリとで対応して貰う

話しになっていた。


馬車に揺られる事一日

朝出て夕方には着けるという

それ程遠い距離では無かったのだが

馬車には

カンナとアヤメが持ち帰ろうと

画策した荷物で一杯だった。


この一年間

頑張って働いて支店も出して

今やそこそこの稼ぎの有る商売人?、というか

一応二人社長である。


薄利多売の飲み屋なので

支店を出したと言っても

売り上げはそこそこなのだが

支店の従業員の賃金を支払っても

それなりの利益は出している。


まあ、支店を出す為の店舗の代金も

改装費も全て自分が出しているのだが。


でも自分の目的は別の所に有るし

利益を出すのが目的では無いから

(損をするのは流石にマズいのだけれど)

みんなそれなりに生活が成り立っているし

特に今の所は問題は無いと感じている。


カンナとアヤメが村に着くと

迎えてくれた村人は

驚いたり喜んだり、一部では顔が曇ったりと

悲喜こもごもだったのだが

人身御供が無意味な事を知って

何とかまあ、暖かく迎え入れられたらしい。


村人全員で出来る量の

宴会の為の酒や食材を

持ち帰っているのである。

イヤな顔をする者は、すぐにいなくなった。


二人から村人達に

自分に付いての簡単な紹介をして貰うと

後の事は一旦二人に任せて

自分はこの村についての詳細を知る為に

あちこち歩き回る事にした。


この村の立地条件の悪さは別格で

特に水に関しては圧倒的に条件が悪かった。


しょっちゅう枯れてしまう井戸。

その井戸が枯れた場合に備えて

雨水が貯められる様に

窪みの様な池が造られているのだが

その濁り水は、独特の色をしていて

聞いたら近くの鉱山辺り一帯からも

雨水が流れ込んで来る様に

その池は作って有るという。


カデナ王国自体が

大河の無い国だから

雨水を貯える事は有る意味必須なのだが

その池を見て確信に変わった。


レンド病は鉱山地域に多い

風土病だと聞いていたが

その一方で

魔石従事者、特に魔石加工師の発症率が

異常に高いという話も聞いている。


魔石の採掘現場が近い事。

カンナとアヤメが

レンド病を発症したのは

おそらくこれが原因だと推察していたし

どうやらそれは間違いでは無いらしい。


とすればする事は一つ。


こうなる事を見越して

井戸掘り道具の鍬やスコップを

馬車の荷物に

詰め込んでおいたのである。


村の(おさ)にお願いして

日当を相場の倍出すから

井戸掘りの為の人手を集めて欲しい、と

お願いしたら

老人や力自慢の女はダメか、と聞いてくるので


“穴掘りの出来る体力持ちならOK”


と言うと

大勢の村人達が、自身を売り込んで来る。


屋根付きのまだ使えそうな廃屋を見つけると

(おさ)にお願いして

その廃屋の中に穴を掘って井戸を作りたい、

と言ったら

怪訝そうな顔をされたのだが

日当は倍額だ。


(おさ)が快諾すると

すぐに十数人が集まって来て

即席の井戸掘りが始まる。


何日かかっても

勿論水が出るまで掘り続けるから

その分日当も出すと明言するが

その代わりサボる人間には

一文も払わないと言ったら

そこは(おさ)が目を光らせると

確約してくれた。


この井戸掘りは

人数がモノを言ったのか

それとも掘った場所が良かったのか

二日目の夕方には水脈にぶつかり

三日目には村人総動員で

井戸の体裁をみんなで整えて行く。


水の問題は村の死活問題だったからだ。

綺麗な水が手に入るなら、尚更である。

だからこうもあっさりと水脈に届いたので

逆に村人達が驚いていた。


水が出たので

村人達はそっちに掛かりっきりなのだが

水が綺麗になるまで

自分は特にする事も無いので

その間に村の有り様を確かめて行く。


カンナとアヤメの村は

平均的な貧乏村で

だから小さな子達は裕福な家庭の

小間使いとして

奉公に出される事も珍しくないらしく

アヤメがそれなりの知識を持っているのも

奉公先に恵まれた結果らしかった。


村には小さな神殿を模した小屋が有り

その中を見ると

中央には供物台が設えられている。

小屋の周りには

何故か貧乏豆が幾つも植えられて実っていた。


自分を探しに来たカンナとアヤメに向かって


「この貧乏豆はどうして此処に植わってるの?」


そう訊ねると


「昔おばあちゃん達が、神様に捧げるんだって

収穫したらいつも供物台に乗せてたんですよ。

きっとそれ位しか

神様に捧げる物が無かったからだって

村のみんなはそう言っていました。

本当ならもっといい貢物が出来れば

きっと神様も

もっと応えてくれるのにって」


そう聞いて自分は唖然としてしまう。


“きっと、そういう認識だからだな。

貧乏豆では神様に喜んでもらえないって

村人達はそう思ってたのか”


認識のずれとは、恐ろしいモノだ。

おばあちゃん達が正しいのに・・・。



************************************************



「取り敢えず、ここの掃除から始めようか」


そう言うとカンナとアヤメは

露骨に嫌な顔をして来るのだが

その表情を見て


「この村が神様に気に入られて

元気になれる第一歩ですよ」


そう言い包めると


「はあい」


そう言ってしぶしぶ行動に移す。

でもむこうに帰るまでに

一応の道筋は付けとかなくてはならない。

神様に気に入られさえすれば

それなりの恩恵は有る筈なのだ。


この小屋は、村の小さな神殿なのである。

供物台の下には

巫女の衣装が納められていた。

全てが赤色に染められた

貧乏村にはおよそ似つかわしく無い

上手の織物の装束だ。


この世界では

赤色は何より貴重な染め色の一つなのである。


「この衣装は誰が着ていたの?」


小屋の掃除をしている二人に聞くと


「おばあちゃん達が最後かな。

自分達も教えてもらったけど

おばあちゃん達が亡くなってから

結局誰も神事を続けようって

言わなかったし・・・」


それを聞いて


「じゃあ、もう誰も神事の事を知らないのか?」


「私達も一通り踊れるけど

全体の流れは長老ぐらいしか知らないのかも・・・」


“もしかしてギリギリセーフか?”

そう感じたので


「だったら急いでやるしか無いよね。

この村を神様に気に入って貰わなければ

ますます貧乏になるだけだから。


そんなのイヤでしょ!


二人がいる間に、いっそ神事もやっちゃおうか。


二人はここの掃除が終わったら、長老に掛け合って見て。

神事をやりたいって」


その言葉を残して

自分は小屋の周りに残されている

貧乏豆の収穫を始めていた。



*********************************************



その神事自体は、非常に厳かなものだった。


巫女姿になったカンナとアヤメは

時折り踊りを間違えたりして

笑われていたらしいのだが

自分はその間違いすら判らないでいた。


それでも二人は最後まで踊り切ると

供物台に

自分が刈り取って乾煎りして貰った

貧乏豆を

恭しく供物台へと捧げて一礼をする。


すると供物台の貧乏豆は

一瞬にして消え去って行った。


その光景に、カンナとアヤメの二人を始め

村人達は腰を抜かす。


「貧乏豆が消えたぞ、どういう事だ?」


「何が起こった?」


そう口走るので

自分が


「天上界へ送られたんですよ。

貧乏豆も立派な供物だって事です」


そう言葉を選んでおく。

貧乏豆が神様の好物と知られてはならないが

貧乏村にとっては

安価で出来る間違いの無い供物に違いなかった。


「これできっとこの村にもイイ事が有る筈ですよ。

供物をカミサマに受け取って貰えたんですから。


これは吉兆だって思って下さい」


この一件で

この世界での神様と人間の関係は

意外と近しいのだと

誰もがそう実感させられたのだった。



*********************************************



この村にはレンド病の予備軍が何人かいたのだが

そこにはカンナとアヤメの二人の妹達も

含まれていた。


その子達を見ながらカンナが


「オーナー、あの・・・薬を・・・」


そう切り出すのを

自分の口に指を当てて


「シーッ!」


と制止する。


「その話しは向こうに帰ってからで・・・」


自分はそう言って話しを打ち切った。



*********************************************



村人達の盛大な見送りを背に

自分達はカラの馬車に乗って帰路に就く。


その馬車の中でアヤメが


「オーナー、私達が貰った薬はもう無いんですか?

どんなに高くても、私達が稼いで返しますから

何とか手に入りませんか?」


そう聞いてくる。

それを聞いて、少し言葉の間を開けると


「無い訳じゃ無いし、手に入らない訳でも無いんだ。


ただ、その話しをあの場でする事は

絶対に出来なかった」


そう答えると


「どうしてですか?」


カンナが質問を被せて来る。


「もしその薬の話しが広がったらどうなると思う?

レンド病には薬が有って

二人の妹達が完治したとしたら、

レンド病を患っている人達はどう思うだろうか?


分かるかい」


そう言うと二人は首を横に振って


「どうなるって言われても、そんなの全然判らないし・・・」


そう言うので

自分は言葉を選びながら


「ここからは冷静に聞いて欲しいんだ。


どういう薬で、どうやって手に入れたのか。

その事を知りたくて

噂を聞いた色んな人達が、あの村に殺到するって事さ。

何とか話しを聞き出して、薬を手に入れようと奔走する筈さ。


その意味が判るかい?」


「あっ!」


どうやら二人も理解した様だ。


「手持ちの薬の量は微々たるモノだし

レンド病患者全てに行き渡る量も勿論無い。


話しを聞き出した人達は

きっとカンナとアヤメの所にも

押し寄せて来るだろう。

患者達もそうだ。

薬を手に入れる為に皆必死だからね。


でも薬が無いと知ったらどうなると思う?」


「どうなるって言われても・・・」


「本当は持っているのに

無いって言ってるに違いない、とか

きっと貴族に高値に売っているに違いない、とか

裏でこっそり売っているに違いない、とか

色んな噂が飛び交って

きっと誹謗や中傷に晒される事になる。


もしかしたら村の人達にも

何らかの危害を加えられるかもしれない。

きっと薬を隠し持っている筈だ、なんてね。


そんな事、無いとは言えないんだよ」


「そんなっ・・・」


そう呟いて、二人は絶句してしまった。


暫くの沈黙の後

二人にゆっくりと含めるように


「今回井戸を造ったのも、おそらくこの病気が

水に関する問題が原因だと思ったからで

それが当たっていて

上手く行けば

そうそう病気も進行する事は無いと思う。


自分が思っている事が原因だったら、だけど」


二人は目を丸くしながら


「原因ですか?」


そう聞き返して来るので


「自分はレンド病の発症原因は

魔石の鉱毒に由るものだと思ってるんだ。

この国は魔石が主要の産業だし、

村では廃土の場所から

池に雨水が流れて来る様になっていた。


魔石採掘で出る残土の鉱毒が

水に入っている可能性が極めて高い。

自分はそう思ったのさ。


だから井戸を掘った。

綺麗な水さえ確保出来れば、あの村のレンド病も

治まるかも知れない。

そうなればレンド病は、水の改善で有る程度克服できる。

それが証明される事にもなる。


どう?、いいアイデアでしょ」


そう聞いて

二人は少しだけほっとした表情を見せたのだが


「もし、違ってたら?」


そうカンナが聞いてくるので


「第二案も、勿論考えて有る。

その場合の適任者も、もう見つけて有るしね」


そう言って、笑顔を向けると

二人は少しだけ安心した様だった。





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