表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様に殺された!  作者: 猫めっき
67/82

シュリとモドキ


シュリはそのペンギンモドキを

抱きしめると

決して離さなかった。


想定外の出来事である。


一旦店に戻って荷物を降ろし

そのまま神々の森に

一緒に連れ帰る心算だったのだが

テーブルに乗せたペンギンモドキを

シュリは見つけると抱きしめたまま

自分の物だと目で主張して来る。


“想定外だよなぁ”



*********************************************



自分がそのペンギンモドキを見つけたのは

市場からの帰り道の

道端に捨てられたゴミの山の中だった。


“んっ?”


昔記憶に有るぬいぐるみが

捨てられている気がして近付いて見ると

丸々とした漫画チックなペンギンが

ゴロンと横たわっている。


“どう見てもペンギンだよなぁ”


でもおかしな話だ。

この世界に来てペンギンの存在は

カケラも目にしてはいなかった。


“転生者の作ったモノなのか?”


そう思って近づいて見ると

妙に艶めかしい。

指で突くと、肉感が有る。


“生きている。動物か? もしかして魔獣か?”


じっと見つめるのだが

そのペンギンモドキは

ピクリとも動かなかった。


それでも、しばらくじっと見つめていると

僅かに目が潤んでいる。

そして、すこーし視線を逸らした。


“あっ、動いた”


首根っこをひっ掴まえて持ち上げて見るのだが

それでもじっとしたままだ。


少しは頑張る気でいるらしい。

ワザと大きな声で


「丸焼きにしたら美味そうだ」


そう言って

そのペンギンモドキと

視線を合わせると

いきなり短い脚を使って

自分の顔に蹴りをいれようとして

途端に暴れ始める。


「おれは美味くなんかないぞ。

この野蛮人め」


そう言いながら暴れ続ける。

少し吹き出してしまった。

どこぞのマンガで見るワンシーンに

思えたからだ。


「おまえ、話せるんだ。魔獣か?」


「そうとも、オレは魔獣だ。

おまえなんか、一捻りで殺せるんだ。

殺されても後悔するなよ」


そう言っているが

首根っこを掴んで持ち上げているのは

自分である。


全く持って、説得力は無かった。


軽く一発、デコピンを入れて見る。

そうすると、そのまま速攻で気絶した。



*********************************************



人語を解する魔獣は珍しい。

それだけでも自分は興味が有った。


魔獣なら、神々の森に連れ帰るのが賢明だろう。

その方が安全に思えるからだ。

収納から温泉水を取り出すと

ドボドボと掛けて見る。


冷たい水を浴びて

カっと目を見開くと慌てて逃げようと

バタバタする。


その寸前でまた首根っこを摑まえる。

その力に観念したのか


「自分は美味しく有りません。

絶対に美味しく有りません」


そう言うと涙目になり

流石にもう抵抗はしないようだったが

まあそれはフェイントかも知れない。


死んだふり作戦だ。

こいつ等が逃げる為によく使う手段である。


“少し話しでも聞いてやるか”


そう思って


「お前はどうしようとしてたんだ?」


そう尋ねると・・・



*********************************************



そのペンギンモドキは

自分の生い立ちから話しを始めようとする。


自分はどこそこで生まれ、

小さい頃は神童と呼ばれ、

云々・・・・・・


切々と話そうとするのだが

路地の奥のゴミ捨て場の前で

する話しでも無いし

そんな身の上話をされても

どうしようもないので


「その話し、長くなりそうか?」


そう聞くと

そいつは不思議そうに


「一週間程掛かりますが、それが何か・・・?」


本気とも冗談とも取れる一文を

投げ掛けて来る。


「無理ッ。そんな時間は無いし聞く気も無い。

今すぐどうしたいのか決めろ。


ここに居たいのならそれでいい。

それでサヨナラだ」


そう言うと少し不安げに


「ここに居たら、自分はどうなるのでしょうか」


そう聞いてくるので


「子供に見つかって、蹴って玉遊びに使われるか、

獣に気付かれてそいつに喰われるか

それとも運よく、人間に見つかって売られるか

いや、焼かれて喰われるかも・・・

そんな感じかな」


そう聞いた瞬間

突然何度も頭を下げ


「一生付いて行きます。

いや、付いて行かせてください」


そう懇願し始めた。


まあ、それなりの判断力も有る。

こいつの希望も、一応は聞いてやろうか。

第一、人の街は魔獣に優しくない。


「じゃあ、付いて来な」


そう言って歩き出すと

必死になってこっちの歩調に

合わせようとするのだが

とても遅い。いや、兎に角遅い。


・・・遅過ぎる。


そいつを抱きかかえると

転移ゲートを使って

先ず店へと向かったのだが

それが間違いだった。



*********************************************



ペンギンモドキには

置き物に見えるようにしていろと厳命し

決して店では喋らないように

ここまでに見聞きした事は

一切話さないようにと

釘を刺しておいたのだが

自分が持ち帰ったそのペンギンモドキを見た

シュリは

いてもたってもいられなかったらしい。


テーブルにこいつを乗せた瞬間

抱き付いてきて

決してその手を離さなかった。


置物と化して頑張っているペンギンモドキは

少し苦しそうにも見える。


「オーナー、どうしたんですかこれ。

私にください。私欲しいです」


そう言って来るので


「いや、これはあげられないから」


「欲しいです。ください。

幾らですか? 私買います。

だからください」


そう言って決して手放そうとはしない。

そのあまりの熱意と頑固さに

自分はどうすべきか迷っていると


「オーナー、

シュリちゃんがそう言ってるんだから

何とかなりませんか?」


アヤメが仲に入ろうとする。


カンナもノーラさんも

どちらかと言えばシュリ側なのは明白だった。


“置き物ではもう通用しないかな”


そう思って


「こいつ、魔獣なんです。


置物じゃないんですよ。

ですから無理です。諦めて下さい」


そう言うと素早く取り上げる。

それで落ち着くと思ったのだが

シュリは諦める事無く飛び付いてきて

取り戻そうとすると

自分はモドキを持ちあげて

奪われないようにする。


「魔獣でも構いません。私にください。

ジンもアイも

魔獣の血が混じってるじゃないですか。

そんな理由じゃ、納得出来ないですよ」


そう切り返してくるので

こいつをドンとテーブルに置くと


「ジンとアイとは違うんです。


こいつはまだ何の訓練もしてないんですよ。

護衛にも使えないし、そんな力も無いんです。

何に使えるかも判らない。


弱っちいし、まだ役立たずなんですよ」


その一言にカチンときたのか

ペンギンモドキがいきなり怒り始めた。


「役立たずとは失敬な。


こう見えてもセラーン族の末裔。

どんな凶暴な敵でも打ち負かしますぞ。


役立たずと言う言葉は取り消して頂きたい」


突然そう話し始めたので

カンナもアヤメもノーラさんも

びっくりしている。


いきなりしゃべり始めたので

カチンときて


「何約束破ってんの。弱っちいのに。


ジン、黙らせろ」


そう命令すると

ジンが駆け寄って来てテーブルに飛び乗り

モドキに対峙して・・・


いきなり唸り声を上げて威嚇。

そしてガンを飛ばした。


その姿を見て

ペンギンモドキは恐怖のあまり

速攻泡を吹いて失神。


シュリがびっくりして駆け寄って来て

介抱を始める。

で、くださいあげない問題は

取り敢えず保留となった。



*********************************************



ペンギンモドキが失神している間に

自分とシュリは

こいつに付いての今後を相談する。


自分としては

ペンギンモドキはまだ神々の森に

連れて行ってもいないし

その話しも一切していなかったので

口外を心配する必要は無かった。


だからボディーガードとして

シュリの魔獣とする事には

何の問題も無いのだが

心配はむしろその逆だ。


このペンギンモドキは

話しが出来る魔獣なのだ。


それが巷に知られれば

その珍しさ故に

欲しがる者は数多出るに違いない。

盗まれる可能性も有る。

シュリが襲われる可能性も高い。


より危険が増すと言う事で

逆にシュリがこのペンギンモドキを

守らなくてはならない状況が

生まれるのである。


その点を指摘すると

シュリは


「だったら、人に見せなければ

問題無いんじゃないですか。


まだ誰にも知られてないんですよね。

ここにいるみんなが黙っていれば

何の問題も無いんですよね」


そう言いだしてくる。

そこにノーラさんが


「でもシュリちゃん、

お家の人が動物を飼う事を反対されて

いませんでしたっけ」


そう指摘すると


「そこは大丈夫です。


家族にイヤとは言わせない

秘策が有るんです。

ジンとアイを見た時から

ずっと考えていたんです。


もし自分にもボディーガードを

オーナーが付けてくれたら

その時には家族に反対させない方法。

実はもう考えて有るんです」


「でも、こいつ弱っちいから

護衛にはならないよ。


ジンの威嚇で失神してしまうぐらいだから」


そう言うとシュリは


「それでもいいんです。


私、このコを気に入りました。

話しが出来るなんて最高じゃないですか。


自分が何とかしますから」


そう自信たっぷりに話すので

結局その方向で

自分も認める事にした。



*********************************************



未だに失神しているペンギンモドキを


「一応話してみるよ。

だから二人っきりにしてくれないか」


と裏に抱えて行き

井戸水をぶっ掛けると

二度目の気絶から目を覚ました。


「おまえ、あの子ん()でお世話になるか?

本人がそうしたいって言ってるけど」


そう聞くと

ちょっと考えて


「自分は喰われたりはしないんでしょうか?」


そう聞いてくる。

よっぽど弱っちい様だ。

喰われる事ばかり心配している。


「まあ、その心配は今の所無いだろうな。

お前の事を気に入ったみたいだし。

もし万が一

あいつの家族に喰われそうになったら

その時は逃げ出してこい。


安全な所に匿ってやるから。

環境的にはハードになるかも知れないが。


魔獣に優しい場所は知ってるから」


そう言うと安心したのか


「お願いします」


そう言って、深々と頭を下げようとしたのだが

体が丸いので

結局はちょこんと頭を下げただけだった。


「改めて言っておくけど

オレに付いての事は

何を聞かれても一切誰にも話さないように。

シュリにもだ。


お前が人と話しを出来る事も

絶対に他の人には知られないように。


知られたり話したりした事が判ったら

その時は・・・」


そう言って長いタメを作ると

ペンギンモドキはドキドキしながら

その先の言葉を固唾を飲んで待つ。


「ジンかアイが飛んで来て

お前は即食べられます」


そう言うと

ジンとアイがにこりと笑う。

それぞれの四つの目が見開いた瞬間だった。


それを見たモドキは

三度目の速攻失神した。



*********************************************



シュリはその日のうちに

ペンギンモドキを連れ帰った。


勿論抱き抱えて、である。

シュリの歩きは遅いのだが

ペンギンモドキの歩きは

それに輪を掛けて遅かった。


少し不安は有るのだが

まあシュリが望むのだから

仕方が無いと思っている。


シュリがモドキに襲われる事は

無いだろうと

勝手に思っていた。

魔獣としては、弱っち過ぎるからだ。


こいつがその内成長して行って

シュリが襲われでもしたら

その時はシュリの家からは

恨まれるかも知れないが

当人が一緒にいると望んだ結果で有る。


こちらに落ち度は無い。

それで逃げ果せる算段だ。


シュリが家族を

納得させればいいだけの事だった。

ダメならこっちへ戻してくるだろう。


シュリとはそういう話しで

纏まっていた。


魔獣は魔獣である。

その事はくれぐれも忘れないようにと

厳命しておいた。


帰って行くシュリの歩調は

いつもよりウキウキしているようにも

見える。


それは

お菓子作りの時と同じような

ウキウキ感に見えた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ