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神様に殺された!  作者: 猫めっき
64/82

警護


「今日から

カンナさんとアヤメさんに

護衛を付ける事にしました」


そう切り出すと

カンナとアヤメはびっくりした様で

急にオーナーの方に振り返る。


「何の事ですか? 一体?」


「この店にも人気が出て

社長である御二人にも

身辺警護が必要になったって事です。


結構お金を持ってるって

きっとそう思われている」


アヤメが首を傾げながら


「そう言われても、お金なんて持ってないですよ」


「お給料貰っている訳ですから」


そう返すので


「でも、世間はそうは思っていません。


御二人は社長ですので。

ですから屈強な護衛を付けます。


どうですか、気に入ってくれましたか?」


そう聞かれても

カンナとアヤメの目には

何処にもそれらしい人影が見えない。


「何処ですかオーナー?」


「誰も居ないじゃないですか?

冗談なら暇な時にして下さい。


今は仕込みで忙しいんですから」


そう聞き返してくる。


「ちゃんといますよ。見えませんか?」


「何処にですか? 全くもう」


そう言った途端、アヤメが何かに気付く。

自分の足元に居る二匹に。


「か、カワイイ!」


アヤメが二匹に飛び付いて来た。

それに気付いたカンナも喰い付いて来る。


どうやら二人とも

動物好きな様である。


「黒い方が男の子のジンで

白い方が女の子のアイです」


白と黒のその二匹は子犬に見えるので

見た目に抵抗はない様だが

ノーラさんが有る事に気付いた。


二匹の目の下に

筋の様な小さな瞼が見えているのである。


「オーナー、これって犬じゃないですよね。

もしかして、魔獣ですか?」


そう聞いてくるので


「ノーラさん、鋭いですね。

この二匹には魔獣の血も入ってます。


魔獣と狼とのハーフで双子なんです」


そう言っている間にも

カンナとアヤメは

その事を気にする様子も無く

二匹と遊んでいる。


「危なくないんですか?」


「大丈夫だそうです。

きっちり仕込んであるそうですから」


そう言うと


「ジン、アイ、こっちへ!」


そう声を掛けると

その二匹は自分の隣にさっと戻り

両サイドに控えた。


「ね、ちゃんと言う事を聞くんですよ。


魔獣の血は入ってますけど、

命令が無ければ人は襲いません。


結構賢いんですよ・・・多分」


「多分って・・・?」


「それ、どういう事ですか? 多分って?」


「行商人から買った魔獣ですから

その人の受け売りです。


まあ問題は無いとは思いますが・・・」


カンナとアヤメは

まだ遊びたそうにしていたが


「で、どうします。このボディーガード。


必要無ければ返しますけど。

向こうとはそういう約束ですので」


そう訊ねると


「お願いします」


そう即答したのは

普段はおっとりとしている

アヤメの方だった。


「カンナが必要無ければ

二匹とも私に付けて下さい」


「誰も必要無いなんて言ってませんよ。

私もお願いします」


それを聞いて自分は


「では、どっちの子を付けますか」


そう問い返すと

二人の間にはこういう時どうするのか

取り決めが有る様で

目配せした後


「せーのっ」って


そう切り出すと

二人で指をさし合った。


カンナは白色のアイ、

アヤメは黒色のジンである。


自分の思っていたイメージとは

正反対だったので

気分的には

“そっちか・・・”

という思いが強かったのだが

これは二人にしか判らない感覚だから

望む通りにする。


「ジンとアイは、ちゃんと二人を守る様に」


そう言っても

カンナとアヤメはお構いなしに

二匹と遊ぶ為近付いて来た。

そして自分のボディーガードを

抱きかかえるとそのまま抱っこする。


これでは仕事にならないので

一言


「こっちへ!」


そう言うと

ジンとアイは二人の手元から

飛び出してきて

自分の両隣へと来て、

またちょこんとお座りをした。


「護衛ですから

二人が仕事中は

トレーニングに向かわせます。


遊ぶのは仕事以外の時間に限ります」


そう言うと

カンナとアヤメは名残惜しそうにしているのだが

自分は二匹を引き連れて

そのまま外出した。



**********************************************



行商から買ったと言うのは、勿論嘘である。


ホントの事を言えば諸々面倒になるので

建て前上そう伝えただけだ。


こいつ等との出会いは

神々の森の空中散歩の途中だった。

少し森外が騒がしいのでその出所へ向かうと

森をめがけて一匹の魔獣が走って来る。


その全身は人間の攻撃を受け

血だらけでボロボロだった。

それを森の魔獣達が

遠目から見守っているのが判る。


早くこっちへ来い、と言わんばかりに。


どうやら神々の森と

そうでない場所とは

こいつらにしか判らない境界線が

決められているらしかった。


そこに入りさえすれば

一応仲間として認めてやろう、と言った

そういう感じなのかも知れない。

だからじっと見つめているのである。


迫りくる人間達から

必至にその魔獣は森を目指すのだが

徐々にそのスピードは衰え

人間達の武器が更に攻撃を加えて来る。


息も絶え絶えになりながらも

何とかその見えない境界線に

前足が触れたと思われた瞬間

森の魔獣や獣たちが一斉に

人間達に襲い掛かって行った。


静かだった森から

いきなり魔獣達が襲い掛かって来るので

突然の事に驚いたのか

その人間達は散り散りになって

後退して行く。


尚も魔獣達は容赦なく襲い掛かって行った。


自分は空から

退散して行く人間達を追って行くと

そこにはオオカミの群れが

何十匹も殺されている現場に遭遇する。


“こいつらはオオカミ狩りか”


一番大きな一匹だけが

目を見開いて立ち続けていたのだが

どうやらこいつがこの群れの長らしい。


こっちも全身血だらけで

よく見るとどうやら立ったまま

絶命している様だった。

そしてそいつの前には、

何人もの人間の屍も有った。


このオオカミの群れは

あの魔獣を守っていたのかも知れない。

長の姿は、立ち死にしてなお凛としている。

長に相応しい最後と言えるだろう。


“お疲れ様、長として誇っていいぞ”


そう声を掛けその長を抱えると

自分は元居た場所

あの魔獣の元へと向かった。


その魔獣は蹲っていたのだが

まだ息が残っていて

自分が運んで来た長の姿を見るなり

なけなしの力でよろよろと立ち上がると

自分が降ろしたその長の元へと

近づいて行き

その血だらけの体を舐め始める。


「もう死んでるよ」


そう声を掛けたのだが

止める様子は無かった。

ただひたすらに舐め続けるのである。

血に染まった体を洗い流すかのように。

それを見てピンと来た。


「お前達、番いだったのか」


もう体力も残っていない筈なのに

それでもなお体を舐め続けていた。


そこに魔獣の背中から

二匹の子供がむくっと姿を現す。

それを見た瞬間

こいつ等が森を目指していた理由が

理解出来た。


“子供を守って来たのか。

もしかして、ここで子育てする為に”


だがそれももう無理だろう。

余りにも傷が深かった。


母魔獣の背中で遊ぶ二匹を

自分は両手で抱きかかえると

そいつの目の前に降ろす。


母魔獣は今度はその二匹を舐め始めた。


それが最後の愛撫にも思える。


いつの間にか多くの森の魔獣達に

囲まれているのだが

そんな事はお構いなしに

その母魔獣は二匹を舐め続けた。


そして力尽きようとする時

自分に視線を向ける。


その視線の意味を理解し

その魔獣の頭を

二、三度軽く撫でてやると

それで安心したかのように力尽き

頭が落ちた。


二匹は無邪気にその周りで

遊んでいた。



**********************************************



このまま放置しておくのも

森の掟としては有りなのだが

番いで有る。

子供もいた。


森の魔獣達も取り囲んでくれている。


自分は火葬を選ぶ。


長と母魔獣を寄り添わせ

一気に炎魔法で焼き尽くす。


二匹の子供を抱えて

その炎を目に焼き付けさせて。


森の外で死んで行った狼たちや

人間どもは

自然の摂理に従う事とする。


肉は獣に食べられ、

やがて骨は土に帰る事に

なるはずだ。


番いを見送っていると

神獣の黒が現れたので

黒をこいつ等の兄貴分にして

戦闘(ケンカ)の教育係にしようと決める。


いつかオオカミ狩りの人間達と戦っても

決して負けないように。

こいつ等にはその権利がある。

人間と戦って負けさせるつもりは毛頭無かった。


転移ゲートを使って

黒の使っている闘技場へと向かう。


ぬくぬくとした環境で

こいつ等を育てるつもりは無い。

そんなまったりした時間が有ったら

少しでも人間と戦う術を覚えさせた方が

遥かにマシだと考えている。


“でも今は少しは甘えさせてやろうかな”


そう考えつつも黒には


「兄貴分として、こいつ等を任せたぞ」


そう声を掛けると

黒は嬉しそうに炎を吐いた。



**********************************************



名前をジンとアイに決めて

黒からは戦い方を

自分からは魔力の使い方を学び

それを手に入れた二匹は

半年の間に急成長し

その体格も母魔獣と同じくらいに成っている。


自分が魔力の使い方を学ばせたのは

その体格が理由だった。

この体ではどこにいても

人間に襲われる事は明白だからだ。


子犬なら積極的に攻撃を受ける事は

先ず無い。


だから体を小さくさせたいのだが

体を小さくさせる魔法など存在しない。

有るとすれば形態変化なのだが

それとても限界は有る。


自分ではその術が見つけられないので

凪様に相談すると

七賢神の一柱が魔法で何とかなると言う。


魔界樹を使って依り代を作り

その中に転移出来れば

魔界樹の持つ魔装力によって

中に入り込む事が出来ると言う話しだ。


依り代に本体を馴染ませれば

依り代のサイズで形態の安定化が出来ると

説明を受ける。


ただ、それには小さい頃から

慣れさせる必要が有ると言うので

二匹には

成長する度に色々なサイズの

依り代を作って

その中に入るトレーニングを積ませる。


最初の頃は

苦痛でイヤイヤをする事も

多かったのだが

慣れるにつれその練度は上がって行き

今ではマジックの様に

早変わりが出来るまでになって来た。


問題はその依り代を

どう持ち運びさせるかだったのだが

持ち歩かせる事は出来ないので

その方法も尋ねると

依り代に魔晶石を入れ込む事で

魔晶石に依り代が吸収同化して行き

一体化すると聞いて

何種類かのサイズの依り代を吸収させると

その小さな魔晶石を

魔界樹に嵌め込んで繋げて行き

首輪にして装着させ

それぞれの体に同化させる事にする。


これでいつでも

体の大きさを何段階かに

変える事が出来る様になった。


だが、小さくなっても

こいつ等の力は変わらない。


戦闘力を持った若き魔獣。

オオカミ狩りと戦う事を宿命付けられた

今は亡き番いの忘れ形見なのである。



**********************************************



ジンもアイも

自分がいない時は常に

カンナとアヤメに寄り添っている。


そしてどこに行くにも一緒だった。


外出先で

カンナとアヤメに声を掛けて来る

貴族や狩人も時折居たらしいのだが

その内の何人かは

ある日突然姿を消したと言う話しも

耳にした。

もしかしたら

オオカミの血の匂いでもさせていたのだろうか。


きっとどこかで大きな魔獣と戦って

破れたのであろう・・・多分。


たまにはジンとアイを

森の温泉に連れて行かなくてはならない。

普通の大きさに戻って

息抜きをさせる為に。


依り代に隠れた

見えない傷を治療する事と

血の匂いを洗い流す為に。



**********************************************



そんなカンナとアヤメを

もの凄く羨ましそうに見つめる目が有る事に

自分は気付けずにいた。




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