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神様に殺された!  作者: 猫めっき
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刻印


マーチンの神剣造りが始まった。


シンリュート鉱は

湖で拾い集めたモノを使う事にする。

その方が量も有って

失敗しても困らないし

第一赤龍の鉱石は神が欲しがるくらいだから

何らかの頼み事をするのに

役に立つ筈である。


最優先は遊興の神パリトン注文の剣。


これを最初に終わらせなければならない。

この剣に関しては、

工神リブロが事務局を通してヒントをくれていた。


シンリュート鉱7に対し、銀鱗鉱3を混ぜて

鍛錬する事。

そうすると銀鱗鉱の輝きが

剣の表面に現れると言うのである。


このタイプの剣造りをリブロは嫌っていたらしい。

見た目は美しいが、純粋な鉱の剣に比べると

柔らかくて脆いからである。

リブロは再三

パリトンから頼まれていたらしいのだが

造る気にはなれなかったという。


“シンリュート鉱が勿体無い”


それが理由だったらしい。


“人間が造る程度の剣なら、まあ許してやるか”


今回は

そう言う気持ちも半分は有ったに違いない。

だからかどうかは不明だが

この剣に関しては

出来るだけ質の悪いシンリュート鉱で作れと

リブロから指示されている。

どういう鉱が質が悪いのかも、説明されていた。


質の悪いシンリュート鉱と銀鱗鉱の組み合わせは

眩いばかりの輝きを持つ剣を生み出せるという。

銀鱗鉱の性質を生かせるのが

この組み合わせらしい。

よくは知らんけど。


剣が完成したら

仕上げに魔光石で磨く事も指示されていた。

それで数段美しく仕上がると言う。


パリトン好みに。


“これが出来れば、

パリトンがこっちに依頼に来る事も

もう有るまい”


そんなリブロの本音も見え隠れする。

そう思っているに違いないと

自分は勝手に想像している。


剣が完成し、魔光石で磨きをかけると

聖剣祭りで買った

煌びやかな剣の拵えに合わせて行く。


ピカっとしてキラッとして・・・

あとなんだっけ?

兎も角もそんな剣が出来上がると

王国の神殿の供物台から天界へと献上した。


これはモーリスの受けた依頼なのだ。


そう事務局のララにも伝えてあったから

きっとララからパリトンに届けられるに

違いない筈だ。


パリトンがこっちに怒鳴り込んで来る事無く

無事に受け取れば

それで神剣造りの第一歩が終了となる。

モーリスの苦悩・・・?

いや、ノーラさんの心配の種が

一先ず消滅する筈であった。


天界に送ったと思ったら

すぐに神殿の天上から供物台に

一輪のバラが落ちて来る。

やはり天界の時間感覚は良く判らない。


でもきっと

これが受け取ったと言う合図なのだろう。


“これがパリトンのやり方か。

遊興の神らしい、と言ったところか”


どうやら無事に受け取って貰えたらしい。


そう思って

すぐさま隣で見ていたモーリスに


「お疲れ様、

無事に受け取って貰えたみたいですよ」


そう声を掛ける。

それを聞いてモーリスも一安心した様だった。

自分はすぐさま

モーリス自身のステイタスを受け取ると

見えない所で変更を図る。


もちろんパリトンからの寵愛を御遠慮、である。


そうすると

パリトンの名前が消えて

代わりに別の神の名前が現れた。


庇護神・工神リブロ。


それを見て苦笑すると、少し溜息が出る。


“こっちの方がはるかにマシじゃん”


モーリスは

本来リブロの庇護を受けていたのだった。

それをパリトンが

寵愛を与えて変更し

加護以下の力しかない寵愛で

神剣造りを迷走させていたのである。


もうこれで心配の種は無くなった。


あとはモーリスに

残りの三本の神剣造りに

本腰を入れて貰うだけの筈だったのだが

順調そうに見えて

意外な所に最後の関門、というか

落とし穴が待ち構えていた。



*******************************************



モーリスから

聖剣の写しが打ち上がったと聞いて

早速工房へ向かうと

少し浮かない顔をして出迎えてくれる。


力なく笑うモーリスから


「まあ、見て下さい」


とそう言われ

出来上がった三本の剣を受け取ると

それはまさしく

聖剣祭りで手にした物とそっくりだった。


“やはりモーリスは相当腕がいいらしい”


その内の一本を手に取ると

作業台の端っこに当てて見る。


“切れない。これは正解”


今度は


“切る”


と、自分の意志を込めて見る。

そうすると作業台の角は、ストンと切れた。

これも正解。


自分には、何も間違いは無いように見えた。


「イイ出来じゃないですか。

何も問題が無いように思えるのですが・・・」


「違うんです。まだ足りないんですよ」


そう言ってモーリスは

或る刻印棒を持ち出して来て

自分の目の前で

剣の根元にそれを打ち込もうとした。


カンッ!


工房内に打ち込んだ音が響いたのだが

しかしその刻印(マーク)

剣に打ち込まれる事無く

逆に刻印棒自体が潰れている。


「この有様です。


あの聖剣にはこの部分に

記号みたいな刻印(マーク)

入っているのですが

何度その刻印(マーク)を打ち込もうとしても

削り込もうとしても

入ってはくれないんです。


これが入らないと

完全な完成にはなりません。


だから困ってるんです。

他の装飾は剣に幾らでも入れられるのに

この刻印(マーク)だけがダメなんです」


そう言われても、こっちには返す言葉が無かった。

無くてもいいじゃん、って勝手に思うけど

再現とはそう言う物では無いらしい。


寸分違わぬ物を造り上げる。

それが再現なのである。


そしてモーリスは、それに拘り続けた。


“この人はもしかしたら

本当の神になる人なのかも知れない”


自分はそんな風にも感じている。


さて、

刻印(マーク)が打てない原因が判らない。

硬さの問題では無い。

他の必要な装飾は、全て入れられている。


“これってもしかして、神様案件か?

だから打ち込めないのか?

だったら確かめるしかない”


三本の剣を自分が一旦預かる事にして

帰宅する事にした。


勿論、神々の森の神殿である。


相談する相手は当然

凪様だった。



******************************************



天界から無事に三本の神剣が戻されてくる。


勿論、刻印(マーク)も入れられていた。

刻印の持ち主は工神リブロだったからだ。

人が打ち込む事が出来ないのも当然であった。

それは神しか打ち込めない刻印(マーク)

人間には扱えない記号(シロモノ)だった。


御礼を期待して居る。

酒も多めに足しておくように、と

リブロの念押しが一文に加えられていた。


“これはまあ、仕方が無いか”


そう思って、自分を納得させている。



凪様から刻印(マーク)の意味を聞いて

リブロに頼まなければ

完全な再現は出来ないと知って

自分は頭を抱えてしまった。


リブロと取り引きする為の材料を

持ち合わせていないからだ。


“どうしたもんじゃろのう”


そんな心の声が聞こえたのか

凪様がアドバイスをくれる。


「あやつの所には

それ程のシンリュート鉱は

残っていない筈だ。


だったらそれを取引材料にする手は有る。


今回は物量で交渉しても良いのではないか。

湖から出来るだけ集めて来て

それを交渉材料にすれば何とかなるじゃろう」


そう聞いて

すぐさま自分は湖へと転移する。


ここには様々なシンリュート鉱が

湖底のあちこちに散らばっていた。

ゲロも〇ンチも

神龍はここでは湖の中で済ませているからだ。


そんな風に考えると

湖の水を酒に使うのも躊躇(ためら)われるのだが

飲むのは神だ。


自分では無い。


神が美味しいと言うのなら

それで何の問題も無いんじゃね。


そう思い込む事にして

見つかった鉱を手あたり次第

収納に放り込む事にする。


先日来た時は

神剣制作に必要な量が有れば良いと思って

適当なのを見繕って収納に入れて

持って帰っていたのだが

今回は違う。


工神リブロに

刻印を打ち込んで貰わなければならない。

だから交渉材料に足るだけの分量が

必要なのだ。


“仕分けは神殿ですればイイ。

そこは凪様にお願いしよう”


今回はとにかく物量で勝負である。

湖の岸から数百メートルまでの水を

魔法で押しのけて

目に付いたシンリュート鉱は

大小を問わず

とにかく収納へと放り込んで行った。


一仕事終えて神殿に戻ると

凪様にお願いして

すぐさま手に入れた鉱を見て貰う。


全ての鉱を神殿の中に広げて見るのだが

それでもそれ程大量では無いと感じるのは

この鉱自体が神龍の排泄物だからだ。


大きい物は殆ど無かった。


出来るのは神龍の体内だ。

排泄出来る大きさにしかならないのだろう。


しかし小さくても

シンリュート鉱は別物であると感じさせる。

鉱自体が煌めいていて、とにかく美しかった。


「これだけ拾い集めたのか。大したものだ」


そう言いながら

凪様は選別を始めてくれる。


最初に仕分けたのは

他の鉱と比べると

二回りほど小さなシンリュート鉱で

それは大事そうに別の場所へと置く。


そして次は

見覚えの有るシンリュート鉱。

他に比べて一回り程小さな

赤龍のシンリュート鉱と思われるものを

全て拾い上げると

それも一纏めにした。


残ったシンリュート鉱を指し示して


「残りが普通のシンリュート鉱じゃ。

良し悪しは有るがこれだけあれば

今回だけで無く、今後の交渉にも充分じゃろうて。


今回渡すのは、二割程度にしておきなさい。

リブロの奴もそれだけ有れば

文句は言わんじゃろう。


神とて欲は有る。

欲しい物は幾らでも欲しがる。


だから多過ぎてはいけない。

少な過ぎてもダメだ。

程々の分量がまあ二割位じゃろう。


そう心得ておきなさい」


凪様が少しだけ悪い顔をしている。

流石は古神と言ったところか。


「だから最初に渡すのは一割程度にして

刻印を貰えたら後でもう一割を渡せばよい。


それで文句は出ないじゃろう。

赤龍のシンリュート鉱も

何個か混ぜておきなさい。


最初に赤龍のを渡したのだから

あやつもそれが入っていないと

物足りないと感じるかも知れない。


欲深いからのう、神は」


そう言われても仕方が無い事だった。

こっちは最初から赤龍の住処しか

思い付かなかったし

出来るだけ神様とは関わらないようにと

考えているからだ。


そしてそれは間違ってはいない筈だ。


今回のオネガイも

最初で最後のつもりでと考えている。

出来ることなら神様の力は借りたくないし

使いたくもない。


そんな事を知ってか知らずか

凪様は言葉を続けた。


「こっちの小さいのは

大切に取って置くように。

色んな意味で使える(いし)じゃからのう」


それは凪様が最初に取り分けた

二回り程小さなシンリュート鉱だった。



******************************************



聖剣祭りから帰って来てひと月余り。


マーチンは完成した三本の神剣を手に

王国の神殿へと向かうと

人目をはばかる様に神官長に面会を申し込み

無事に約束のものを奉納した。


ちゃんと代金も支払って貰って。


岩に突き立てる役は

引き抜いた責任者として

自分が仰せつかっている。

少なくともその方が

抜けないレベルにまで刺せるだろうと

神殿には思われているらしい。


まあ、正しい判断かな。


そこは神の力を使って突き立てても

多分どこからも文句は出ない筈だ。

神が突き刺していた訳だし。

その方がきっと抜けなく出来るし。


今回は今までよりも

少しだけ深く刺し込もうと思っている。


人目に付かないように

こっそりと転移ゲートを使って

誰にも判らないように行って

実行するつもりだ。


神殿にも神官にも内緒で。


刺しに行ったら

誰にも会わなかったから

勝手に刺して帰って来ましたって言えば

多分済む話しに違いない。


かくして神剣問題は

一応の終結を見たのだった。



*********************************************



ホンモノの神剣を

王国が保管するか神殿が保管するかで

未だに揉めている事を

自分は知る由も無かった。





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