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神様に殺された!  作者: 猫めっき
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密やかな恩恵


「これが神剣か。

まさか生きている間に、両の手にする事が出来ようとは」


そう言ったのは、国王だった。

それを聞いて、神官長も満面の笑みを浮かべている。


実は、神官長からの連絡を受けていた国王は

聖剣祭りに身分を隠してこっそりと

自ら出向いていたのだった。


「それにしても、まさか現実になるとは

思わなかったぞ」


「我々にもまさかの出来事でした。

流石に伝道師殿が抜けなかったのを

目の当たりにした時は

少々がっかりしたものですが・・・。

まさかあれが演技だったとは驚かされました」


その言葉に国王も頷く。


神像事件の一件以降

王国と神殿とは密に連絡を取り合うように

なっていた。


それというのも、神々の伝道師が現れた事によって

神殿も王国も

諸々の状況が好転するようになった為である。


国内外から人々が神殿を目指し

それによって生まれる交易と外貨の獲得。

新しい経済効果が生み出され始めていた。


神殿や神官には

“落とし子”の可能性について

国王は一切口にしてはいない。


神々の伝道師、という地位で理解していれば

充分だとも思っていたし

実際神殿もそれで完全に納得している。

王国が伝道師を支持しているのだ。

その支持が有る限り、

伝道師は王国より特別の保障を授けられていると

神殿は考えているに違いなかった。


これは神殿にとっても

多大なメリットが有ると考えている筈だし

実際多くの人々が

神の降臨によって神殿を訪れているのだから

それを疑う余地も無かった。


そこに王国と神殿との協力関係が

生まれたのである。


神殿は“神々の伝道師”として。

王国は“落とし子”として。


見方は違えど求める先は同じであった。


神殿に富を。

王国に富を。


神殿から

伝道師が神剣造りを手伝っているとの

連絡を受けると

国王はすぐさま全ての便宜を図る様にと

神殿に伝えた。


神殿側も勿論その心算であった。


神剣の製作。


それはつまり神具の誕生を意味していた。

それを伝道師が手伝っているのである。


“神具を生み出す者が誕生する”


それは王国にとっても神殿にとっても

吉兆以外の何ものでも無い。


国王は後日神殿で

失敗作の山積みされた試作品の数々を見

神官長からは

伝道師が持ち帰った剣の中には

既に近いであろう何本かが有ったと聞くと

もう期待しか無かったのだが

聖剣祭りの話しを聞くと

自分も祭りに赴く事をすぐに決心するほど

前のめりになって行った。


実際聖剣祭り自体は

年に一度の行事だったし

自身も若い頃に一度だけ参加した事が有るので

目新しさは無かったのだが

もしかしたら制作者と“落とし子”も

引き抜きに参加するかも知れないと

聞かされた時は

少しだけ期待もしていた。


“落とし子なら、抜けるかもしれない”と


しかし最後の参加者だった“落とし子”もまた

抜けずに

しかも観衆の笑いモノになっているのを

目の当たりにし

本当にこの者は“落とし子”なのかと

疑いの目を持つ自分にも気付いていた。


それがまさか“落とし子”による

深慮遠謀だと気付かされた時は

驚かされたものだが。


“落とし子とはそこまで考える者なのか”と


“神剣を抜いたのに、抜けないフリをするとは

何という人物なのだ”と


神剣を抜いたという事実を目の当たりにして

神官長も神官長代理も

今後の対応について協議する為に

一旦引き下がって来たのは

賢明な判断だったと国王は考えていたし

実際協議をする事で

神剣を今後どの様に扱っていくのかまで

打合せ出来たのは、何よりだと考えている。


神剣を三本造らせる。


これを提案し確約させる事が出来たからだ。

一本では物足りないし

五本造らせるには名目が立たない。


抜かれた神剣は宝物とし

新規の一本を岩に突き刺し

抜かれたり盗まれた時の為の予備を一本

そしてその予備をもう一本と踏めば

三本の名目が立つという結論が

協議の結果出たのである。


しかしこれはあくまでも名目に過ぎない。


実際は

ホンモノの神剣は宝物庫に。

一本は岩に突き立てる。

一本は神殿が新たな神具として所持。

残りの一本は王国が権威の象徴として所持。


こういう目論見だったし

実際刀鍛冶も“落とし子”も

神官長の申し出を受けてくれた。


ここに神殿と王国には

ささやかな恩恵が生まれたのであった。


刀鍛冶と“落とし子”が

神殿から去って行くのを見届けると

改めて国王は神剣を両手に持つ。


そして突き刺さっていた岩を見て

何を思ったか

もう一度突き刺して見たくなった。


その欲求のままに

その岩に神剣を突き刺して見ると

見事にすっぽりと納まる。


“やはり、間違いの無い

ここに刺さっていた剣だ”


そう納得したら

突然


「国王!!! 


何をなさっているのですか。

抜けなくなったらどうするんですか」


そう神官長が叫ぶ。


その大声に我にかえると

慌ててその剣を抜こうとするのだが

抜けない。

どんなに頑張っても抜けない。


抜けないのだ。


自分にはどうする事も出来ないでいた。

あたふたと周りを見回すと


「神官長、何とかならぬか。


誰でもよい、師団長を呼び戻せ。

マークもいたであろう。

抜ける者を急いで連れて来るのだ」


そう厳命した。

結局、数時間の後に

師団長の手によって

神剣は無事に

もう一度引き抜く事が出来たのだが

国王が抜けなかったのは

単に異物がクサビの様になって

抜けるのを邪魔していたに過ぎなかった。



*******************************************



そんなドタバタ劇があった後

暗部からの報告受けて

国王は更にショックを受ける事になる。


“落とし子”と刀鍛冶が

神剣を使って

岩の端を切り落としたというのだ。


自分達の密談の最中の出来事である。


その状況報告を受け

実際にその岩の断面と

削ぎ落された石片を確認して見ると

まるで鏡の様な切り口で

神剣の力をまざまざと見せつけられる。


しかし国王がいくら試しても

神剣で岩を切る事は出来なかった。

神剣はどうやら

認めた者にしかその力を発揮しない

そういう剣らしかった。




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