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神様に殺された!  作者: 猫めっき
6/82

神々の森


次の実りの時期までの酒は

どうやら出来上がって

一段落。


酒造所は

一部の管理スケルトンをのこして

静かな日々を送っている。


それと共に

事務局員はさっと姿を消す。

次の奉納と、仕込みが始まるまで

一切関わる必要は無いからだ。


契約によって

この場所での生活の基盤は

最低限保証されていた。


無理も無い。

こちらに死なれては

元も子もないからだ。


優先すべきは酒造りで有る。


食料に関しては

供物の下げ渡しが

定期的に届くように成っている。


衣類も一通り

準備して貰ってある。


住まいも魔法で

ここに来た時に指導して貰って

それなりに形に成っている。


異世界収納と移動ゲートの使い方も

一番最初に教わった。


魔法の使い方も

材料さえあれば

イメージの具現化で

形に出来る事も判った。

大切なのはイメージだ。

それが出来なければ、魔法は役に立たない。


大まかなこの国のあらましを聞いて

その上で

この神々の森に付いては

使い方を間違えない様に

念押しされている。


この森はこの世界の人達にとっては

宝の山らしい。


だから過去に何度も

冒険者や、時に軍隊すらも

足を踏み入れようとしたらしいが

ことごとく魔獣によって

神域に入る事すら

阻まれている。


ましてや今回は

神殿が造られたのだ。


この森の警備は

特に神域へは

誰も足を踏み入れない様に

厳重に事務局によって防御が施されている。


神域は

ここを休憩場所として使っている

神獣と普通の動物達との

最も安全な

安らぎの場所として

確立されていた。


神域の外側は

魔獣域となっている。


神域は有る意味

安全な地域で

それ故にそこを住まいとしたい

動物たちも多い。


そんな動物たちを狙う魔獣が

ぐるりと

神域を囲って生活している。

神々の森は

絶妙な均衡の要塞を作っていた。


自分には

神域も魔獣域も関係無い。

襲われる事も無い。

神々の寵愛は

それ程までの力を持っている。


この森全てが

自分にとっての

恵みの場所と成っている。


時に跳ねっかえりの魔獣が

ちょっかいを掛けて来る事も

有るのだが

その時は軽く平手で

払い退けてみて

打ちどころの悪いのがいたら

収納に突っ込んでいる。


多分換金できると思うから。


もし換金できなければ

他の使い道を

考えればいい。



****************************



魔法で森の上空に飛び上がると

全体を見渡せる高さまで上がり

街に繋がりそうな

道の起点をチェックしては

その場所に降り立ち

移動ゲートの拠点にして行く。


それが一段落すると

森の中の

気になる場所へと向かって見る。


最初に気になったのは

神獣たちが集まっている

小さな湖の畔。


他に大きな湖も有るのだが

何故かその小さな湖に

神獣たちが

集まっていた。


何が有るんだろうと

その事が気になって仕方が無い。

早速畔に降りて見ると

その理由が判明する。


そこだけ水が湧いているのだ。


どうやら神獣は

その水を好むらしい。

多くの神獣が

水を飲んでいるのを見て

その水にオーラを感じている

自分に気付く。


水が湧いている所が

ぼんやりと湯気の様に

光が浮かんでいるのが見えた。


この感覚には覚えが有る。


神々の寵愛を受けた後

神酒に同じ様なオーラが

有るのが判るようになった。


同じ光景が

この湧き水にも見えている。


もしかしたらと思い

水をすくって飲むと

神酒と同じ感覚を覚えた。


この水は

もしかしたらそうなのかも知れない。

でも何故

その事を神は知らないのだろう?


一つの仮説が浮かぶ。


ここに神が来たことが無いのだ。

ましてや

ここの水を飲もうとも思わない。

だから

神獣たちがこの水を好む事も

知らない。


この水が神にとっては

この上もなく美味い水で有る事を。


この水は間違い無く使える。

大量に保管出来る術を

見付けなければならない。


頭の中で

考えを巡らせながら

手は地上に落ちている

神獣の落とし物を

拾い集めていた。


鱗や羽根。羽毛や吐しゃ物

果ては〇ンチまで

何でも収納に突っ込んで行く。


3メートルは有りそうな

何かの尾羽は

それだけでお宝に思えた。


孔雀の羽根に

近い感じがする。

美しいだけで、特に意味は無いのだが。

神獣の羽根というだけで

お宝の予感がした。


この場所にはいろんな色の石が

たくさん散乱している。

しかもこの場所にだけ。

もしかしたらこの石も

神獣の物かも知れない。


色をそろえて

大小含め何個かずつ拾い集めて

それも収納に入れて置いた。


神獣たちは

その間もゆっくりとしたモノである。

目が合っても、特にこちらに関心も示さない。

自然体だ。

この場所は

それ程までに憩いの場所に違いなかった。


目ぼしい物を

一通り拾い集めると

迷惑にならない様に

その場所をそっと離れる。


もう一つ気になった場所が有って

そこは山のふもと。

湯気が沸き上がっているのが

遠くからでも見えた。


温泉に違いない。

そう思って近づいてみると

間違い無く温泉が有る、が

そこには獣たちが集まっている。


んっ?

神獣もいれば魔獣もいる。

大小の動物たちもいる。

その光景は、カオスに近い。

一緒に居て、何の問題も起こっていないのだ。

非戦闘地域か?


近付いてみて、その理由が分かった。

ここは治癒回復の湯に違いない。


皆怪我をしているのか

温泉に浸かって

どうやらそれを癒しているらしい。

それには神獣も魔獣も普通の動物も

関係が無かった。

だから諍いが全く無い。


おそらく暗黙の了解が有るのであろう。

どこかでそんな話を聞いた事が有る。

怪我の前では

獣たちは平等で有る、と。

中には、ただ御湯に浸かりたいだけの

動物たちもいるのだが。


ならばと

ちょっと失敬して

温泉の湯をポーションにいれて

幾つか瓶詰めにした。

これも

何かの役に立つかも知れない。


それにしても

この場所だけは

みんな御行儀がいい。


先に入った者勝ち。

どの動物たちも

きちんと順番待ちをしている。


しかしその湯の大きさに対して

明らかに場違いな大きさの

神獣や魔獣が居る。

でもそいつらも

順番待ちをしているのを

見ると

何となく可愛らしく見えるから不思議だ。


絶対こいつ等、デカ過ぎて

全身は浸かれないんじゃないのか?

それでも順番待ちしているのである。


正直自分は動物に弱い。

その目を見ると

どうしても肩入れしたくなる。

どうしてやろうかな、と

おもむろに収納から

大き目のバケツを出した。


順番待ちのでかいヤツに声を掛ける。

絶対に全身が湯に浸からない奴らだ。


「そこに並んで、傷口を見せろ」


言ってる事を、判ったかどうかは知らないが

順番待ちの先頭の魔獣が

バケツに湯を張っているのを見て

気が付いたらしく

自分に傷口を向けた。


そこへ湯をかけてやる。

面白いように、傷口が塞がって行く。

魔獣は気になる所を

次々に向けるようになった。

大体塞がったのを見て


「終わり、次」


そう声をかけると

最初の魔獣は物足りなさそうな表情を見せるが

こっちは金を貰ってやっている三助では無い。

言うなればボランティアだ。

一匹に関わり続ける気は毛頭無い。


「お前は終り、次だ」


名残惜しそうな顔をするが

かまってはいられない。

次に待っている、神獣に湯を準備する。

前を見習ったのか

次の神獣は傷口を見せて来る。


そうやって湯を掛けてやると

大型の神獣や魔獣、果ては大型の動物まで

列を作るようになった。


何匹に湯をかけただろうか。

結構時間が掛かったが

この温泉はその内改造してやれば

もう少し使い易く成るかもしれない。


そう考えて、その場を後にした。



****************************



温泉から見える場所に

洞穴があった。


上空からは見えなかった場所だ。


早速足を運んでみる。

中には色とりどりの鉱石が見えた。


サンプルに小さい物を

袋に詰めて行く。

これは判る人に見せなければ

自分では判断出来ない。

出来るだけ早く識者に

見せてみなければ。


そんな識者、この世界にいるのか?


そんな疑問を持ちつつ

奥を見ると

赤々と広がる炎が見える。

この先は

どうやら炎が広がっているらしい。


今はここで足を止めておこう。

ここの探検は、次回に持ち越しで有る。

今はとにかく売れそうな物を

見付けなくてはならない。


洞穴を出ると

今度はもう一度上空に上って

薬草の有りそうな場所を

探してみる。


大抵高価な薬草ほど

断崖絶壁に有るって言うのが

御約束なんだろうけどなあ。


それらしき山肌を見つけると

それらしき草花を発見。


岩肌に生えている草花を

幾つか採取すると

一先ず今回の採取作戦は

終りとすることにした。



****************************



神殿裏の自宅に戻ると

自宅の周りに

紫色の草花が成長している。


こんなのが生えているとは

気付かなかった。


その紫色が

どうにも気になって仕方が無い。

雑草だろうけど

きれいだからまあ良いかな。

そう思って

幾つか採取して

それも収納に納めた。


この雑草の採取が

今後の人生の転機となった事を

後々知る事に成る。


この草が生えてきた理由も

後日判明するのだが

この出来事は自分にとって

この先を運命付ける慶事であるとは

知る由も無かった。






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