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神様に殺された!  作者: 猫めっき
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湖底の誘惑


二柱のミカドサマの寵愛を受けてから

神々の森で目にする風景には

変化が出ていた。


湖畔で“シンケの鳥”の卵を集め

装飾に使えそうな美しい物を見つけ出しては

採取し

湖底の輝石を集めようとして

湖面を見た瞬間である。


湖の中心部に、輝きを見つけてしまった。


“何か有る”


それは今まで全く気付かなかった

輝きだった。

普通なら、お宝かもと思ったに違いなかったが

ここは神々の森である。


普通にここに有るもの全てがお宝だ。


“もの凄いお宝かも”


でもこの輝きは

湖の深部から届いている。


“むしろ、逆にヤバい物かも知れない”


そんなフラグも立った気が

何処かに有るのだが

好奇心の方が勝ってしまっている。

もう既にその場所に

泳いで行く方法を考え始めたのだが


“あっ”


と、一つのアイデアが生まれる。


“映画十戒方式”


映画十戒では

モーゼが海を割り

道を作って民を救ったシーンがある。

だったら湖を割り、あの場所に歩いて行く事も

可能なんじゃないの。


自分はそれだけの魔力持ちである。

出来ない筈は無かった。


チャールトン・ヘストンのモーゼの様に

右手に杖は無かったが

両手を大きく横に開いて道をイメージする。


そうするとあっけなく湖が割れ

光り輝く方へと道が出来上がって行く。


足元には数々の輝石が転がっているのが見える。


“あっ、最初からこうすれば良かった。

これなら濡れずに石を簡単に集められたのに”


そんな事を思いながらも

自分は水の両壁を見つめながら

どんどんと輝きのある方へと歩みを進めた。



************************************



光り輝いているのは

魔晶石の様な透明な大きな輝石なのだが

それとは少し違っている。

的のカタチの中心に黄金色の晶石。

その周りには六色の色付き晶石が

六個配置されている。


環状列晶石だった!


簡単に言えば、ストーンヘンジの輝石版と

言ったところだろうか。


“それにしても、金色の晶石は初めてだ”


その輝きに魅了され

中心に有るその石を手に取ろうとする。


指先が触れた瞬間

神々の力が一気に流入して行った。

エネルギーの流出を止めようと思っても、

自力では歯止めが利かない。


“マズい、神の力を吸われてる”


しかし、自分にそれを止める術は無かった。


まるで感電したかの様に、自分の体が動いてくれない。

石から手を離す事も出来ないでいた。


“マズったか? ヤバイ石だったのかも・・・”


そう思いながらも

どんどんと自分の体を媒介にして

自分と繋がっている神々のエネルギーは

その石へと吸い込まれて行く。



暫くしてその流入が止まった時

急に頭の中で声が響く。


『誰だ、私を起こしたのは。

せっかく無限の闇に落ちていたと言うのに・・・』


そして

その声が聞こえたのもつかの間


『人の子か? まさか人の子とは・・・』


そう聞こえた後、

その声の主は絶句した様だった。



***************************************



「あのう・・・」


そう自分が頭の中に問いかけようとすると


『何も言わんでイイ。あらましは判った』


そう声が聞こえる。


“判ったって何なんだ”


その疑問に答える様に


『お前が手を触れたのはワシの墓石だ。


ワシを含め、七神の墓石がここに在る。

この石は魂晶石(こんしょうせき)と言っての、

神が死んだ時に出来る、魂の石なのじゃよ。


この墓を作ったのは(あま)の帝。

ワシの孫だ。


(てん)は言い付けを守って、

ワシら七神の墓を

この湖の奥底に作ってくれたのじゃろう。


真面目な奴だからの。


普通ならこの墓は誰にも見つけられる筈の無い

結界の張ってあった筈のシロモノなのだが・・・

しかしお主の状況は一体何なのだ。

簡単にその結界を見破るとは。


神々も、こんな状況に人を追い込むとは・・・

一体何をしておるのだ』


その一言に苦笑すると


「成り行きですよ。自分が望んだ訳では無い」


そう頭の中の声に応えると

その声の主は少し呆れたように


「そなたと神との繋がりが、尋常では無いからの。


それだけの神々のエネルギーを

そなたは扱えると言う事だ。

しかし死んだワシを目覚めさすとは

少々困った事をしてくれたもんじゃのう。


何時になったらもう一度無限の闇に戻れるのか。

見当も付かんわい」


そしてその声の主は、また絶句した。



***************************************



湖底の真ん中で

自分の頭の中と立ち話をしていても

魔力の無駄遣いなので

自分は湖岸へと引き換えし

湖の割れを戻すと

そのまま神殿へと向かう。


神殿に戻ると

やがて頭の中の声の主が姿を現した。


どうやら神殿の中だと

その姿を見えるようにする事が

出来るらしい。

おそらくここが神域だからだろう。


姿を見せたその老神と思しき方は


「少しお主にも働いて貰わねばなるまい」


そう切り出す。


老神の見た目はと言うと

流石に威厳のある出で立ちで

少しだけ思案すると

矢継ぎ早に指示して来る。


そこは他の神々と変わらない。

とにかく身勝手だ。


その神の依り代の製作から始まって

七つの晶石の回収。

墓石の六柱の蘇生。

その六柱の依り代の製作。

神殿の改築と七神の住居の作成。

それぞれの神の従者作成。

等々。


簡単に言えば

生き返ったのだから

その生き返らせた責任を果たして

自分達が安心して暮らせるように

一先ずちゃんとしろよって事らしかった。


墓石の回収は簡単なのだが

問題は蘇生である。


このジイさん神様一柱でも

大量の神々の力を使っている。


バレない筈は無いのだが

一柱だけならシラを切り通す事も

出来ない訳では無い。

しかし、残りの六柱全てとなると話は別だ。


その事を相談すると


「お主は最後に目覚めさせる切っ掛けさえ

作ればよい。

そこまではワシが何とかする」


そうその老神は言い切った。


回収した全ての魂晶石を祭壇に置き

そのまま放置するようにと指示される。


どうやら祭壇を使って

少しずつ神の力を流入させる心算らしい。


エネルギーが魂晶石にあらかた溜まったら

その時に自分が目覚めさせれば

大して神の力を使う必要も無いという。


流石は老神である。

裏技を幾つも持っている様だった。


依り代は重量の問題も有って

石では無く木を材料にして

形のイメージを固着させる事にする。

その樹にも指定が有った。

魔界樹を御所望だ。

その樹の有る場所も説明を受ける。

なんでもこの木は

もの凄く使い勝手がいいらしい。


覚えておけって、そう言われた。


造形のイメージは

幾らでもこっちの頭の中に見せられるから

老神にとってはその程度の事は

簡単な事だと思ったのかも知れない。


魂晶石にエネルギーが充満したと言われて

それらしき目覚めの儀式を適当に行うと

やがて六柱の神が姿を現した。


神殿のなかでは存在は見せられても

ホログラムみたいなもので

実態が無いせいか

幽霊の様に過ごすしか出来ないという。


依り代制作はその為だったのかと

改めて実感する。

魂晶石自体は、

依り代の中心部に入れ込む事になった。


そうすれば実体として安定するはずだと

老神は説明して来る。


何だかんだ言いながらも

森の中の神殿は

七柱の神の住まいへと変貌して行った。



***************************************



自分が最初に起こしてしまったのは

“凪の帝”と言うらしい。


残り六柱の神も含めて

七賢神と現役の頃は呼ばれていたという。


『これでも結構偉かったんじゃぞ』


そう言っているのだが

こっちとしては

面倒な事この上なかった。


その七賢神は

祭壇を使って自分達の私物を

神殿に取り寄せると

自分達の使い勝手の良い様に

神殿をどんどんと改変して行く。


一番驚いたのは図書室を造った事で

あっという間に完成させたのには

少々びっくりしたのだが

一段落すると

何もする事が無いらしく

どうやら神々共通の悩みに直面したようだ。


娯楽が欲しい、と。


仕方が無いので

チェスや将棋、トランプと言った

当たり障りの無い娯楽(ゲーム)を提供すると

七柱もいるので

それなりに楽しんでいる様子。


トーナメントや総当たり戦を

勝手に組み始めている。


まあ自分達で娯楽を組み上げてくれれば

それに越した事は無かった。


従者も造ってある訳だし

料理担当の傀儡もこさえて有る。

魔晶石を組み込んだ、人間仕様の傀儡だ。

本体は御指名の有った魔界樹。

ホントにこれは使い易い木だと

自分でも感じている。

食材も裏技で供物台に呼び出しているので

それも不自由は無いと見える。


こっちとしては

自分の仕事に支障さえ出なければ

良いわけで

皆さんに関しては自由に動いてもらい

こっちに問題さえ振ってくれなければ

差し障りは無いので

今後は自由にしてもらう心算だったし

それは向こうにも、伝わっていた。


神々の森での七賢神の

奇妙な神殿生活はこうして始まった。




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