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神様に殺された!  作者: 猫めっき
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森に住まうもの達


神々の森は、

おそらく神によって造られた森である事が

森の鼓動で伝わって来る。


人は多分この森には入れないだろう。


この森は神によって造られ

神によって守られているのである。


だから

たといどこの国の軍隊が入ろうとも

それらは退けられるように

造られている筈だ。


神獣や魔獣や獣たちが

外からこの森を目指すのも

無理からぬ事で有った。


一番の害獣である人間が

決して立ち入れない場所。


純粋な生態系でのみ成り立っている森。


意外なのは魔物や魔獣までもが

この森を住処としている点である。


そして面白い事に

森の何か所かは

そいつ等の闘技場にも成っているらしい。


その戦いには

神獣たちも参加しているらしいのだが

それなりのルールが有るのか

争いごとは見かけた事が無かった。

どうやら普段は

訓練する場所にもなっていて

戦いの場として使うのは

むしろ極稀な様に見受けられる。


少なくとも自分がそう言った

戦いの場面に

遭遇する事は一切無かった。


魔物や魔獣達には

それぞれに森の中にテリトリーが有る様で

そこには

その群れの主が必ずいるのだが

そいつ等は森の外でも

戦っている様で

その体には無数の傷を負っているのが

常だった。


そういう主に出会う度に

決まって自分がする事と言えば

最低限の傷の修復である。


こいつらの傷は、負ったままの状態で

自分達で傷を癒す事は難しく

それで温泉に向かうのだが

それでも治せない傷を持っているのが

常だった。


枝が刺さっているのは

まだ良い方で

人間と戦った時の

矢や槍や剣の一部が刺さったままのケースが

結構有って

その異物をこいつらは

取り除く事が出来ずにいるのである。


その傷口は

遺物が入ったままの状態で

塞がってしまう事が殆どだ。


この異物は死ぬまで獣たちを苦しめる。

決して癒える事の無い異物なのである。


人間でありながら

この森の住人として

神獣や魔獣に

異端視される事の無い状態になっている

自分は

地上に降りて長達(おさたち)に近付いたとしても

敵意を向けられる事は全く無い。


こちらからも敵意を向ける事も無いので

直接触ったとしても

そいつらは気にもせず

身動ぎ一つしないでいる。


或る意味堂々としたものである。

それがこの森の魔物・魔獣の長達(おさたち)なのだ。


自分に出来る事は

そう多くは無いのだが

異物の除去だけはしてやる事に決めていた。


温泉に行くと

そいつ等の手下らしき獣に

必ず引っ張られるのである。


悲しい目つきで。


最初はそれが何なのか

判らずにいたのだが

それが長達(おさたち)の負った傷を

何とかして欲しいのだと

気付けたのは

テリトリーに降りた時

そいつらが近寄って来て

長の元へと引っ張って行かれたから。


“この傷を治せと言うのか”


どうやらそういう意思表示らしい。


勿論自分は医者では無いし

出来る事など無いのだが

思い付く事と言えば

異物の除去。


それ位しかない。


既に固まっている傷口は

異物を抱え込んでいるので

掴んで引っ張っても

全く動く気配すら無い。


勿論力尽くで引き抜いたりして

取り除く事は可能なのだが

それではもう一度傷口を広げたり

痛みを再び与える事にもなる。


最小限の傷で納める方法を考えた結果

魔力を使えば何とかなる事に気付いた。


傷口から魔力を流して

その異物の形状を変え

するりと引き抜いて行くのである。


特にこの方法は、金属に対して有効だった。


鉤状の先端をストレートに

形状変更をすれば

容易に引き出す事が可能な事に

気付く。


人間との戦いをしてきた獣にとっては

この方法は非常に有効だった。


引き抜いた後の傷口に温泉水をぶっ掛けると

それでその部分は大抵は癒えて行く。


年老いた長達(おさたち)にとっては

その行為は安らぎをもたらした様だった。


そしてそれは

時に長達が

最後の戦いを求める切っ掛けにも

なったのは

自分としても予想外の出来事なのである。



*********************************************



巨大なイノシシ型の魔獣の老長が

闘技場に現れた事を知ったのは

自分が空を飛んで

神々の森を散策している最中だった。


テリトリーの決まった場所で

いつもじっとしていた長である。


闘技場の真ん中に

その魔獣はじっとしてしゃがみ込んでいる。


“何をしているんだろう”


そう思って降りて見ると

自分を見てその魔獣は

すっくと立ちあがると

ギラリと自分を睨んで

すぐに戦闘態勢に入った。


そいつ等の仲間は

自分達の周りをぐるりと囲んで来る。


まるでその行為を見守るかのように。


魔獣は突然巨大な炎を身に纏わせると

その炎を徐々に光へと変えて行った。


老獣とは思えぬ程の

闘気を放つと

何となく言わんとしている事が

その目つきで伝わって来る。


戦いたいのである。


“それが望みなのか”


それは長年自分が体感して来た

戦う者の最後の願望で有る事に

気付くのに

それ程の時間は掛からなかった。


戦って死んで行く。


苦悩の傷が解消した今

老いた肉体よりも

戦いたいという願望が勝っている事は

痛いほど良く判っている心算だ。


そいつの前に立つと

右掌をまっすぐ前に差し出し

一直線に構えると

左手を手刀にし腰に据える。


魔獣は少し笑ったように見えた。


そして目にも止まらぬ速さで

間合いを詰めて来ると

頭を下げ額を付き出し

自分を突き刺しに掛かる。


そいつの額には

光の炎が角と化していた。

その角で自分を突き刺そうとした瞬間


その角を除ける事も無く

右掌で真面(まとも)に受けると

そのまま上方に受け流し

体が浮いた所に手刀を突き刺す。


瞬きすら追い付かない

一瞬の出来事である。

手刀は確実に心臓をえぐった。


そいつは仰向けに倒れると

光と化した炎の角は

魔獣を包み込んで炎に戻って行く。

そしてそのまま魔獣を燃やし始めた。


敗れたのが判っていても

その表情は、とても穏やかに見える。

むしろ嬉しそうに近い。

最後まで戦ったという満足が有ったに

違いなかった。


そしてその魔獣を見つめる仲間も

その炎を見つめながら

名残惜しそうにする事も無く

新たな長を決める戦いへと移って行く。


“まあ、そうなるのか”


この森の摂理の一つに

自分が関わるとは思っても見なかったのだが

しかし戦う獣にとっては

この最後の姿が本望のように

感じているのは

自分が生きて来た世界に近いからと

感じずにはいられないでいた。


本当はもうこんな事に手を貸すのは

イヤなのだけど

自分もこの森の住人なのだ。


それが役目ならば

それはそれで仕方の無い事だと

納得もしている。


この一件は

この森に住まう獣達にとって

自分と言う人間の存在を

改めて示した瞬間だった。


自分がこの森を統べる者だ、と

言う事を。




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