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神様に殺された!  作者: 猫めっき
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シュリを見守る三人とオーナーと


オーナーから

初めてシュリちゃんの為に

新規で喫茶室を開店すると

聞かされた時には

カンナとアヤメはビックリするとともに

またか、という思いに駆られていた。


“オーナーは何を仕出かすんだろう?”


三人はこの店をそのまま使って

午後の御茶会に使うものと

考えていた。


でもオーナーの考えは

違っていた様だ。

この店のオープンの時と

同じ展開になっている。


突然この店の裏にある土地建物を

買いたいと言い出して来る。


何でも侯爵家の邸宅らしいのだが

随分と前から空き家になっているらしい。


アヤメが不動産屋に

交渉に出向く事になった。

出向いた先は

この店を買った時の不動産屋である。


不動産屋の御主人に相談すると

確かに土地は売り出されているし

それ程高くも無いのだが

取り引きには条件が有るという。


侯爵家の邸宅というのが

ハードルになっているらしい。


侯爵家の持ち物の場合

その最終的な売り買いの許認可は

王国に有った。


国に害をなす可能性の有る者には

売らない決まりが有るのと

ある程度の身分と資産が無かった場合は

やはり許可されないという。


申請者は

カンナとアヤメで有り

自分達が所有者になる為に

審査を通る事は難しいだろうと

不動産屋は言い切る。


お金を出すのは

自分達では無いけれど

聞かされた条件を考えると

きっと買う事は無理に違いないと

念を押されてもいたし

オーナーにもそう伝えていた。


結果は・・・!



二日後の

不動産屋が申請書を王国に提出した

翌日には

不動産屋が慌てて走って来る始末。


王国から即決で

購入の許可が下りたというのである。

不動産屋が飛んで来たのは

この機会を逃したくないと思ったからだ。


許可が下りて売り買いが成立さえ

してしまえば

手数料は手に入るし

後々どんな問題が起こったとしても

許可が覆される事は無い。

手数料の返還は

免除されるという法律が

有る為である。


不動産屋がとにかく急かしてくる。

カンナがオーナーに伝えると

オーナーもすぐに購入の為の現金を

準備してくれた。


商談成立の時間は

僅か二日で有った。



************************************



それ以降の事は

カンナもアヤメもノーラも

何も知らない。

全てオーナーが

自分で仕切っていた。


シュリちゃんにも

何も言わないように釘を刺されている。


どうやら

サプライズとして

開店準備をしているようだ。

まあ自分達としては

普段の仕事に支障を来さないので

何も問題も無いのだが・・・。


ノーラさんだけは

他人事のように楽しんでいた。



***************************************



御菓子工房で

シュリちゃんは毎日の様に

新しい御菓子作りに邁進していた。


疲れている筈なのだけど

それでも夜の準備には

きちんと参加していて

自分の仕事をこなしている。


何かたくましく成った様にも

思えた。



***************************************



オーナーから

20コインで特別御茶会を始めると

聞かされたシュリちゃんは

ビックリしてオロオロしている。


“うんうん、そんな感じだよね。


自分達もそうだったから

良く判るよ”



***************************************



シュリちゃんの新しい御菓子が完成した。


それを祝っての

御茶会がオーナーを含めた

五人で開かれた。


チョコレートという

シュリちゃんの作った御菓子は

信じられない位美味だった。


言葉では言えない位に

魅惑的な味。


“全部自分の物にしたい”


皆がそう思っている表情だ。

チョコレートに伸ばす手が、止まらない。


加えて初めての新しい御茶は

とても不思議な味がしていたけど

砂糖を入れると

とても美味しかった。


でも、20コインなの?

お客様、来るの?


もの凄く不安になる。



***************************************



新しい店舗の改装が

終ったらしい。


皆で散歩という名目で

新しい店の中を確認する事になる。


侯爵家邸宅をそのまま改装し

喫茶室にしたらしい。

内装はほぼそのままだという。


自分が御姫様に成った様な

気分になる。


“ここがシュリちゃんのお店なんだ”


少し羨ましくなるのだが

所有者は私達二人になっている。


何だか複雑な気分だ。



***************************************



プレオープンが始まった。


一番最初のお客が私達三人。

シュリちゃんは、喫茶室の店主。

オーナーは裏方らしい。


シュリちゃんは

そう緊張する事無く

お茶とお菓子の準備をして

私達に出してくれるのだが

どうやら手順を間違えたみたいだ。


オーナーに

音楽の紹介が先だと

注意されていた。


喫茶室は

もともと音楽も聴ける大広間だったらしい。

その場所を

喫茶室に改造し

お店としてオープンさせたと

言う事だった。


売りは音楽。


それを聞いて少し驚いた。

音楽を聞かせる喫茶室らしいのだが

どこにも楽師が居ない。


カーテンを閉め

少し室内の明るさが落とされると

多分音楽家が立つであろうという場所に

上から眩い光が

下に投げかけられる。


スポットライトと言うそうだ。


そして音楽の音色が

室内全体に響き渡った。


楽師はいない。

それでも聞こえて来る音楽。


その光の中に

いない筈の楽師が見える気がした。


見えない楽師。

不思議な空間である。


一曲が終わると

自分達は拍手をしていた。

見えていない楽師に向かって。


そこにオーナーが戻って来る。


「オーナー、楽師さんはどこにいるんですか?」


そうノーラさんが質問する。

オーナーは笑いながら


「楽師なんていませんよ。


魔石を使って、音を出しているんです。

れっきとした魔法なんですよ」


それを聞いた私達三人は、目を丸くする。

シュリちゃんまでびっくりしていた。


どうやらシュリちゃんも

聞かされていなかったらしい。


「これがこの喫茶室の売りなんです。


見えない楽師の演奏。

でもこれが高名な演奏家だったとしたら

どう思いますか?


今の演奏はシリーベルなんですよ。

本人のホンモノの演奏です」


「シリーベルなんですか?

本当に本当ですか」


何故かシュリちゃんが喰い付いて来た。

シュリちゃんは、その楽師を知っているらしい。

自分達はピンと来ていないし

ノーラさんも

イマイチ良く判っていないみたい。


「ではお茶の準備をして下さい」


そう言われて

あわててシュリちゃんが

準備をした御茶を出してくれる。


お茶と共に

それぞれに菓子が配られると

菓子皿にチョコレートが三つ添えられていた。


リーフ型、フラワー型、ブーケ型と

形状も色合いも異なっている。


シュリちゃんが新しい味を

二つ開発したらしい。


リーフはこの間の味で

フラワーは、バラの香り

ブーケはベリーと

シュリちゃんの拘りが詰っていた。



その日以降

自分達三人は

日常の営業へと戻って行く。


シュリちゃんだけは

ずっと喫茶室の準備の為に

働きっぱなしらしいのだが

プレオープンを

それなりに楽しんでいる様だ。



***************************************



20コインの特別な一週間が

始まった途端

シュリちゃんに疲れが出たらしく

毎日表情が曇っている。


初日は特にてんてこ舞いだった。

長い行列が出来ていたらしい。

オーナーが慌てて戻って来て

整理券を作るという。


私達三人も、手伝わされる。

おかげでお店の開店時間は少しだけ遅れた。


日々シュリちゃんの表情が

暗くなって行った。

余程大変なのかと思って

手伝おうかと言うのだが

シュリちゃんは大丈夫と言って

必死の形相で

毎日午後には裏の喫茶室へと向かう。


大丈夫なのだろうか。

少し心配になる。



20コインの一週間が

遂に終った。

途端にシュリちゃんは

夕方にはテーブルに突っ伏して

眠っている。


どうやら今日は

シュリちゃんは使い物にならないらしく

オーナーに諭されて

自宅へと帰って行った。


お疲れ様、シュリちゃん。




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