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神様に殺された!  作者: 猫めっき
47/82

伝説の一週間


喫茶室の開店の準備の為に

深夜に立て看板を

邸宅の入り口に立てて置いた。


この立て看板が

伝説の始まりだった。



本日より一週間


午後の特別御茶会

(音楽と御菓子付き)


大コイン御一人様 20枚


先着20名様限定


レイモンド喫茶室



書いたのはこれだけである。


最初は喫茶室シュリとでも

しようと思ったのだが

この邸宅の元の所有者に

敬意を払う事にした。


シュリの衣装も

接客で恥を掻かないようにと

どんな貴族相手でも

対応出来る様に

それなりの物を誂えた。


でもまあこれは

念の為である。

そこまでの客は、期待してはいなかった。


シリーベル卿は

何人かの知り合いに声を掛けておくと

言ってくれた。


新しい音楽の楽しむカタチだと

教えてやれば

それだけで興味を持つ筈だと

明言してくれた。


モーガン卿は薬の研究で忙しくて

来れないと言うので

代わりに店のスタッフが

プレオープンに来ていたのだが

宣伝の協力を申し出てくれた。


それだけでも有り難かった。


自分が積極的に宣伝しなかったのは

単純に方法が

判らなかったからである。


自分は王侯貴族と

一切関わりが無い。

神殿との繋がりが少しある程度で

しかし

神殿には宣伝をお願い出来ないし

お願いするのも筋違いである。


飲み屋の店の客層は

王侯貴族とは縁遠い。

市場の御夫人達も、同様だった。


結果が立て看板だった。


大通りに面しているので

目にする人はいるだろうが

どこまで気に留めてくれるか

そこは

全く予想が出来なかった。


最悪0人の日が続くかもしれないが

それはそれで

仕方の無い事だと思っていた。


しかしその予想に反して・・・



***************************************



邸宅の前には

朝から行列が出来ている。


多分立て看板を見たからだと

思うのだが

並んでいる人達はみな

立派な紳士ばかりだった。


しかも綺麗に整然と並んでいる。


時折り交代をしているのは

きっと誰かの代理なのだろうと思う。


シリーベルさんかモーガン卿のスタッフが

声を掛けてくれたに違いなかった。


これで一安心と

自分は昼まで一休みする事にした。



***************************************



シュリが準備が出来たというので

手順通り開店するように

指示を出すと

自分は裏に回って

きちんと音楽が再生出来るのか

確かめる為に

スタンバイし

シュリの表情をうかがう。


シュリは終始緊張した面持ちで

少し顔が強張っていた。


一通りの挨拶が終わると

シュリはカーテンを閉めると

スポットライトの灯りが

演者の居ない舞台を照らしている。


その光に呼応するように

音楽がスピーカーから

流れ始めた。


会場からどよめきが起こるが

それは直ぐに納まって

会場には音楽だけが響く。


ここから先は

音楽が終わるまで

何もする事が無いので

自分は演者用の控室で一休み。


無事に音楽が終わりさえすれば

後はシュリに丸投げする手筈だったのだが

どうもシュリの表情が硬い。


いつものシュリと

明らかに違っているので

何か仕出かすのではないかと

終了まで居る事とし

立て看板を一旦仕舞おうかと

扉を開けようとして驚いた。


もう既に

明日の行列が出来ているのである。

どうやら今日入れなかった人が

そのまま横滑りで

行列を作っていたらしかった。


“この人達は、明日の昼まで並ぶつもりなのか?

いや、この数はそれでは終わらない気もするし・・・。


もしこの人達が、王侯貴族の関係者だとしたら

並ばせる事自体が、不敬罪ではないのか”


そう思った途端

色んなシチュエーションが

頭の中を過ぎって行く。


慌てて裏の店に引き返すと


「みんな、ちょっと手伝って欲しいんだけど」


そう言って

三人に仕事の手を止めて貰って

協力を仰いだ。


「これから整理券を120枚作ります。

大急ぎで作りますので宜しくお願いします」


その言葉に


「整理券って何ですか?」



カンナが聞き返すので


「明日からの喫茶室のお客様の

受付チケットです。


もう既に明日以降のお客様が

並んでいらっしゃいますので

大急ぎで作ってお渡ししなければ

王国に不敬罪で目を付けられるかもしれません」


そう言うと

三人がびっくりした表情になる。


慌てて紙とペンを準備すると

紙を切って120枚きっちりと揃え

一枚一枚手書きで

曜日と番号を書き

最後にレイモンド喫茶室と書くと

一枚一枚に

順番に割り印を押して行く。


整理券は

この割り印が重要で

偽造防止の役割が持たせてある。


曜日と順番とが一致する割り印は

一つしかな無い様に設定出来るので

だからこそ割り印は

場所と向きと位置を変えて

天地左右に

色んな所に

色んなバリエーションで

丁寧に押して行く。


終ったのは

ちょうど御茶会が終了した頃だった。



***************************************



シュリを一人にさせてしまったので

一抹の不安を抱えながら

喫茶室に入ると

シュリが一人一つ限定の

チョコレートのセットの販売を

終了している頃だった。


戻って来た自分を見て

少し安心したのか

泣きそうな顔をしているが

まだ仕事は終わった訳では無い。


シュリにはもう一仕事が

残っていた。


新たに並んでいる人達に

明日来れるのかどうかを聞きながら

整理券を順番に渡して行く仕事だ。


御一人様一枚限り。


渡したらその人には

必ずお帰り頂くようにと言明する。


手順は簡単。


先ず並んでいる人の人数を確認して

その枚数だけ整理券を持つ。


それから前から順に

その曜日に来れるかどうか聞いてから

整理券を渡す。

渡された人には、必ずお帰り頂く。


その曜日に来れないと言われたら

その人にも一応お帰り頂く。


これだと整理券は判り易く配布出来るし

足りない事も起こらない筈だ。


整理券が無くなったらそれで終了である。

余ったら次に回せば良いのだ。


その説明を聞いて

シュリは扉の前に立つ明日からの客に

向かって行った。



***************************************



結局整理券は

並んだ人全ての手元に渡った。


残った枚数は18枚。

最終日の分だけである。


「シュリちゃん、初日はどうでした?」


そうアヤメに声を掛けられると

シュリは放心したかのように


「もう、ヘトヘトです」


そう答えて来る。

もう既にやつれた様に見えた。


「色々聞かれたんじゃない?

全ての質問に答えられたの?」


そう言うと


「それは大丈夫でした。


壁の羽根は、騙し絵だと説明しましたし

音楽はシリーベルとの協力によって完成した

魔石による音楽演奏ですと言ったら

ビックリしていましたが納得して貰えましたし

チョコレートの製法は、自分だけの

オリジナルで秘密だと言ったら

それも納得して貰えたようです。


まあ聞かれる内容はその程度でしたが」


そう言いながらも

シュリは少しうとうとし始める。


かなり疲れていたらしい。

その日はそのまま帰らせる事にした。



***************************************



深夜に



午後の特別御茶会

(音楽と御菓子付き)


大コイン御一人様 20枚


残りは最終日の18名様先着順で終了


レイモンド喫茶室



そう書いて

立て看板を出したのだが

出した瞬間に

その立て看板を見て

人が並び始めている。


しかしそれに自分は対応しなかった。


暗くて何も出来ないし

自分も眠いのである。



***************************************



翌朝シュリが店に入ると

すぐに喫茶室へと向かわせる。


最後の整理券を配らせる為だ。

自分も

新しい立て看板を持って向かった。


シュリが整理券を配り終えて

表に人がいないのを確認すると

すぐさま立て看板を入れ替える。



午後の特別御茶会

(音楽と御菓子付き)は

定員に達しましたので

受付を終了致しました。


レイモンド喫茶室



二日目の昼ともなると

昨日の様な行列はもう無いので

シュリも自分も

安心していたのだが

午後になって続々と馬車が到着すると

紳士淑女が降りて来る。


その度に

シュリの表情が硬くなって行くのは

自分には不思議で仕方が無かった。


“もう慣れても良い筈なのに”


そんな風にも思ってしまう。


割り印の確認方法も

シュリにはきちんと教えて有ったので

混乱は一切無い。


まあ

整理券を持って並んでいるのは

多分執事なんだろうけど。


後でシュリに話しを聞いたら

並んでいた執事は

主人と一緒に大広間に入って来て

必ず脇に控えているらしい。


それが仕事なのだという。

流石は貴族社会である。

自分には判らないことだらけだ。


まあ、これからの自分の仕事は

演奏の音出しが

ちゃんと出来るかどうかだけの

心配だけである。


あとはシュリに

臨機応変に対応して貰うだけだと

そう思っていた。



***************************************



今日が最終日。


相変わらず客は

馬車でやってくる人達ばかりである。


どういう客層かは

シュリしか知らないし

まあ終日満員だったので

大成功と言えるだろう。


その分シュリは

げっそりと痩せて行ったのだが

それは接客の気苦労だったのかも

知れない。


きっとお菓子が売れて

美味しいって言って貰えて

満足していると思っている。


最初は大コイン20枚って

高いのかなって思ったのだが

2日で一週間の席が埋まったので

そうでも無かったのかも知れない。


でもまあ

今後は大コイン10枚で

週5日、1日20人限定の

通常営業になるので

そう行列になる事も無いだろうと

高をくくっていた。


普段は音楽を流すのも

数曲だけだし

スポットライトの様な

演出もしない。


お菓子もシュリの考案した

一般的な御菓子で

砂糖はたっぷりと使っているが

お茶はハーブティーである。


チョコレートは出さない事にしている。



***************************************



特別な御茶会が終わって

1週間ほど休みを取ると

喫茶室は通常営業を始める。


しかし

読みは大きく違っていた。


行列が延々と続いたのである。

それからは整理券を

とにかく作り続けたのだが

行列は途切れる事が無かった。


結局喫茶室は

再会一週間で、再度休業させる事となる。


理由は簡単。

シュリがパンクしてしまったのだ。


その後喫茶室は

シュリの気の向いた時だけ

オープンさせる事にする。

喫茶室はシュリのおもちゃ箱だから

飽きない程度でやらせるしか無かった。


それでやっと

来客数が落ち着いて行き

シュリにも笑顔が戻って来た。





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