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神様に殺された!  作者: 猫めっき
46/82

旧レイモンド侯爵家別邸


この場所を買えたのは

幸運以外の何物でもなかった。


旧レイモンド侯爵別邸。

場所は今のお店の裏である。

かなり広い庭を持つ、

緑溢れた主無き城の雰囲気を持つ洋館。


先々代レイモンド侯爵が亡くなってから

誰も住んでいないとの事だ。


空き家になってから

何十年にもなるという。


売りに出されて随分経つというのだが

買い手はいたものの

取引成立には至らなかったという。

金額が高い訳では無い。

場所としては

むしろ安い金額で有る。


馬車も走る表通りに面した

この地域では

一等地にも等しかった。


ではなぜ売れなかったかというと

侯爵家の所有地だったからである。

私邸だが

買い手は国の審査を受けなければならない。

その審査に通らなければ

たといどんなに金持ちであっても

購入する事は出来ない決まりが有る。


持ち主を国が選別する。

それが

所有者の侯爵に対する

王国の敬意の表れだからだ。


侯爵家の品位の為にも

おかしなことに使われたくないのである。


最初自分は

今の店舗を改装して

喫茶室を作ろうと考えた。

魔改造である。


アイデアも色々とあった。

でもここに一つの問題が発生する。


今の店は庶民の為の物である。

安い酒と安い料理。

誰もが気さくに入れるお店。


一方で

シュリが開く喫茶室は

王侯貴族に来て貰えるだけの

美観と品格が必要になって来る。


ここに相反する部分があった。


貴族は基本的に庶民の店には

入らない。

庶民もまた貴族を敬遠するので

貴族のいる店には入りたがらない。


もし魔改造で

今の店を貴族の入れる店に

造り変えたら

庶民には居心地の悪い店になってしまう。


二階部分を

それ用の店舗に改造する事も考えたのだが

今の立地条件だと

貴族が二階までゆったりと歩いて行けるだけの

スロープが作れないし、階段も無理だ。


猥雑な一階店舗を隠す方法も無い。


結局王侯貴族にも来てもらうには

それなりの外観と広さが必要だと

気が付いた。


そこで注目したのが

今の店舗の裏にある

広い邸宅だった。


店舗の裏と言ってはいるが

本当はその邸宅が表通りに有り

この店がその裏に有るという方が正しい。


元来がこの場所は

大通りの裏側の

日の当たらない場所なのだから。

こっちが日陰の身なのである。


ダメモトで

カンナとアヤメに不動産屋との交渉を

依頼して

王国への申請書を作らせた。


申請者は今回も

カンナとアヤメである。

二人を社長として申し込ませる。


不動産屋から帰って来た二人は

店主の説明によると

条件に合わないので多分即却下でしょう、と

笑って言われたらしいが

その二日後には不動産屋がすっ飛んで来て

許可が下りたって言う。


不動産屋が急いで来たのには

理由が有って

この許可が本当は間違いであっても

許可が下りている内に

取り引きを済ませてしまえばこっちのもの。


後で許可は間違いでしたって事になっても

取り引きが終わっていたなら

土地取引は有効なのだそうだ。


不動産屋がすっ飛んで来たのも

頷ける話しである。

成立させれば、確実に手数料が手に入る。


その報告を受けて

必要なお金を

王立保管庫から降ろしてくると

カンナとアヤメに持たせて

即金で取り引きを完了させる。


その時点で

この邸宅はカンナとアヤメの所有となった。


取り敢えず

最初の一歩は踏み出せた。


あとは経営と

シュリの頑張りに掛っている。

喫茶室がもし上手く行かなかったら

その時は

カンナとアヤメの店別館として

新たな利用方法を考えれば良いだけの話し。


そんな風にも考えていた。


店舗とこの邸宅は

通りを使えばかなりの回り道で

遠いのだけど

そこは裏が接しているわけだから

すぐに二つを繋ぐ通路を完成させる。


シュリにはこの時はまだ

新店舗の事は

一切教えてはいなかった。



*******************************************



先々代レイモンド侯爵と言うのは

芸術に精通していたらしいのだが

建物自体はそれなりの品格が有った。

しかし邸宅内に美術品は

殆ど残されていなかった。


居抜きで購入しているので

ここに有るもの全て

自由に使う事が出来るのだが

それ程家具は

残されてはいなかった。


晩年は夫妻二人暮らしで

二人が亡くなった時に

近親者によって

多くの美術品は全て持ち出されたという。


現侯爵家居城に

移されたのであろう。


だから邸宅内は

閑散としていたのだが

それ程の痛みが無いのは

この邸宅を建てた時の

お金の掛け方が別格だったのだろうと

思っている。


間違い無くお金を掛けて造られているのが

壁紙一つを見ても感じられた。


大広間には楽師のスペースが

造られて居り

音楽サロンの要素も

持ち合わせていた。

それを見た瞬間に

ここが喫茶室に最もふさわしいと

確信する。


“ここが喫茶室だな。

これなら20人は楽に収容出来る”


控室も造られている事から

本当に音楽にも造詣の深い

御夫妻だったのが感じられた。


ステージ部分を魔改造して

音楽を響かせるスピーカーを

設置して・・・。


そんな考えを巡らしていると

この大広間の創りが

すこし歪な事に気付く。


床を見ると

擦れた跡や傷が幾つも残されている。

傷跡を辿ると

大広間の壁で止まっていた。


隠し部屋が有るな。

壁が仕切りになっているのか?


そう思って調べて行くと

壁の一部に取っ掛かりが有るのが

見つかる。


そこを開いた時・・・



***************************************



魔改造は、それ程の手間は掛からなかった。


元は侯爵家の邸宅である。

大広間を使って

そこにふさわしいテーブルと椅子を

購入して設置し

楽師のステージに音響の細工を施し

魔光石を壁灯として

柔らかい光を演出する。


カーテンを開ければ

この大広間は北側に造られているので

柔らかい光が入って来るのだが

それはその日のお天気次第である。


魔光石は必須だった。

だったら、どうせならと

かなりの数を準備する。


問題は装飾品だ。


壁がガランとしていて

少し寂しい。

本来なら絵画が飾られていた場所なのだが

これから絵画を集めて飾っても

見合う絵画を集めるのに

どれだけの時間を要するのか

予想出来ないし、

金額も張るに違いない。


かといって何も無いと寂しいし

それこそ王侯貴族が来たくなるような

装飾品で無いと意味が無い。


それなりの大きさも必要で・・・

そんな事を考えていたら

“あっ”

とアイデアが浮かぶ。


“デカくて綺麗な物、持ってた!”


そう思って

自分の収納を呼び出し

中からそれを幾つも引っ張り出して見る。

森の湖の畔で見つけた巨大なもの。


鳥の羽根だ。


収納に幾つも拾い集めては

放り込んでいたのだが

売りに行く事をすっかり忘れていた

シロモノである。


これなら誰も見た事が無いだろう。


そう思って、

絵画が飾られていたであろう場所に見合う

美しい羽根を選んでは、

決して壁から剝がされないように

壁そのものと一体化するように

魔法で全て圧着(パウチ)する。


厨房は

今の店舗と同じ様に魔改造し

誰が手伝ってもすぐに使えるように

準備した。


少なくともお茶の準備は

ここでしなくてはならないし

場合によっては御菓子工房も

ここに造る事になるかも知れないが

そこは臨機応変に対応する事にする。


一日20人限定で有る。


シュリ一人で出来る範囲は限られていた。



***************************************



カンナとアヤメ、ノーラさんには

喫茶室の完成を知らせてあったが

どうせならシュリと一緒に見て

驚きたいというので

シュリにはその事はサプライズにして

裏にみんなで散歩に行こうと誘う。


邸宅に着いて裏口から入ると

そのままシュリだけを大広間に向かわせる。


シュリは一人おっかなびっくりだ。


他の三人には

厨房を確認して貰うと

暫く間を置いてから大広間に向かった。


シュリに

ここが喫茶室で

一週間後に開店すると知らせると

突然すぎたのか

何故かボー然としていた。



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