表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様に殺された!  作者: 猫めっき
42/82

オカカの実


遂に見つけた。


そう思った時

少しだけ安堵の気持ちに満たされた。


神酒は有る。

貧乏豆も見つけた。


でも何かが足りないと

ずっとその不安に苛まれていたのだが

これを市場で見つけた時

これだって確信が持てた。

 

それにしても

ふざけた名前である。


その名を聞いた時は

てっきり魚関係か何かの

フリカケみたいな感じのを

思い浮かべたのだが

実物を市場の親爺さんに見せられた時

小躍りしたい気分になった。

 


*****************************************



(そら)の帝の寵愛を受けてからというもの

市場の食材の良し悪しから

神々の嗜好品に至るまで

瞬時に判るようになったのは

嬉しい誤算だった。


その点では

(そら)の帝に感謝せねばなるまい。


そんな事を考えながら

いつもの様に

目新しい食材が無いか

市場をきょろきょろしながら歩いていると

乾物屋の親爺さんが声を掛けて来る。


「兄ちゃん、珍しいモノが入って来たけど

買わないか?」


珍しいものと聞いては、放ってはおけない。


「それ何っ?」


自分が喰い付いたとみて

店の親爺さんの目が光った様に見えた。

獲物を見つけた時の目で有る。

すぐさま


「オカカの実って言うんだけど、見て見るかい?」


そう言うと、すぐに店の裏手に走る。


“オカカの実って何だ。聞いた事無いぞ”


そう思って、少し待っていると

大きな袋を持って戻って来るなり

すぐさま袋の中を開けて見せる。


中にはいびつな豆が入っていた。


「炒ってから、中の実を食べるんだ。

変わった味がする特別な豆なんだ」


そう説明する店の奥で

奥さんが苦笑いして

手を横に振っていた。


どうやら厄介物の商品らしい。

纏めて買った商品の中にでも、

入っていたのだろう。

手を横に振っているって事は

奥さんからの騙されるなっていう

合図だった。


この店からは

随分と食材を調達している。

そこへ変なモノを売りつけて

買って貰えなくなったら

逆に損をすると心配しての

手の横振りだった。


気のいい奥さんである。


すぐさまその仕草に

判ったと目配せをする。


親爺さんは続けて


「炒って中を取り出したのも

有るんだが

それは手間が掛かっている分

少し高いんだが、どうかなあ。

それも一緒に買って行かないか?」


そう言って来る親爺さんに向かって

少し考えた振りをしながら

その豆を手に取って見る。


その手が少し震えたのが

親爺さんにはバレただろうか。


実は親爺さんが

奥からその袋を持って来た時点で

その袋自体が

淡く金色に輝いているのが見えていた。


供物だ。間違い無い。

それも上質の。


そして袋を開けて見た時

その豆はまさに黄金の輝きを

放っていた。

それは自分には眩く見える程だった。


オカカの実。


ふざけたネーミングだ。

作ったヤツは、判ってて

このネーミングにしたに違いない。


見た瞬間

自分が一番望んでいた

食材だと確信する。


カカオ豆だ。

もとい、カカオ豆のような豆だ。


カカオを逆読みすればオカカ。


カカオ豆では無いが

それに近いから

引っ繰り返したネーミングなのだろうと

そんな風に思える。


作ったヤツは

間違いなく自分と同族だろう。

ネーミングがそれを物語っている。


「炒ったやつも有るの?」


親爺さんは買って貰えると確信した様だ。

奥から今度は小さい袋を持って来る。

その袋の中を見ると


“ニブだ!”


そう心の中で呟く。

一粒摘まんで、口の中に放り込む。


苦みが口の中を走る。

もう間違いは無い。


“質も悪くない”


どうやら作った人は、一歩手前までの仕事を

きちんと承知している様だった。


欲しい。


当然全部貰う気満々なのだが

ここは少し思案のしどころである。


この実は、全て自分の物にしなければ

成らない。

当然誰にも買わせる気は無かった。


だから今後も独占する手段を

講じておかなくてはならない。


「で、幾らなの?」


そう聞いた時

親爺さんの頭の中は

目まぐるしく回転したに違いない。


自分の買い方を、親爺さんは知っている。

良いと思ったら、全部を纏めて買ってくれるが

少しでも気に入らないと

ここでは買わずに

別の店で同じ物を大量買いをする話しも

見聞きしていた。


高すぎてはならない。

でも儲けたい下心も顔を覗かせてくる。


「こんなもんでどうかなぁ?」


親爺さんが切り出した額は

自分にとってはそう高い金額でも

無かったのだが

奥さんが後ろで大きく首を

横に振っている。


けっこう吹っ掛けて来た様だ。


少し思案する仕草をした後

大声で


「炒ったのも含めて全部買うから

奥さん値引きをお願いします」


そう奥さんに大声を掛けた。

それを聞いて、親爺さんが少しだけ青ざめる。


「それと、

もっと質の良い豆を持って来てくれれば

それはもう少し高値でも買うと

持って来た人に伝えておいて下さい。


お願いしますね」


そう奥さんに大声を掛ける。


「あいよっ」


奥さんの元気な声が、奥から響いて来た。

親爺さんが少し渋い顔になって・・・


「で、どうするね。今全部持って行くのかい?」


その声が、どこかしら少しだけ沈んで聞こえる。


「勿論!」


一度掴んだ手は

決して離してはならない。

この世界の常識である。

後回しは愚の骨頂だ。


「持てるだけ持って帰ります。

全部持って行けそうですか?」


「兄ちゃんだったら、大丈夫だと思うよ。

で、追加で手に入ったら、どうすればイイ?」


「すぐに店に持って来て下さい。


その都度買い取りますので。

入荷した分は、全部買いますから。


その代わり、

キチンと商品のチェックをお願いします。

質の悪い豆は買わないで下さい」


そう言ったのだが

本心は違っていた。


多少質が悪くても、それでも全部欲しいと思っていた。

でもそれでは、足元を見られてしまう。

質の悪い豆でも

買ってくれる仕入れ人だと。


それでは困るのだ。


豆ごとに金額が違うと示しておけば

多分質の悪いのも、別にして持って来るだろう。

一括で仕入れている筈だから

もしかしたらそれはオマケとして

纏めて売りつけて来るかも知れない。

その分質の良い方を、少し高目にして来る筈だ。


まあ、それでイイ。


その内生産者も探し出して

きちんと相談しようと思っている。


生産者との直接取引は

自分の信条として、しない事にしていた。


もし直接取引がバレたら

市場で総スカンを食うかもしれない。

それは市場のルールを無視した行動で

認められない行動だし

この国の秩序を乱す事にもなる。


一切仕入れでは波風を立てないと

決めていたのだが

今回だけは別だ。

最悪生産者との直接取引も、

オカカの実だけは

自分は視野に入れている。


でもそれは最悪の場合である。


自分はこの世界のルールを

変える気は無い。

だからきちんと条件を付けた。

良い物は高く買い、質が悪ければ買わない。


オカカの実を欲しがる人間は

そうはいないと思うのだけど

今後どうなるか判らないし

それは世の通例。


だからと言って

この豆は全部高く買ってくれると

思われては

今後に支障が出る。


これは商売なのだと

相手方にも、

きちんと認識して貰わなければ

ならない。


だから敢えての、条件付けなのだ。


渡された大袋二つと小袋三つは

ギリギリで持てる重さに

周りでは見えたようだが

魔法を使える自分にとっては

そう難儀な重さでもなかった。


でも周囲の目が有るので

物陰に入った時

すぐさま収納に投げ込む。



さあ、これから買い物である。


取り敢えず必要な道具を

準備しなければならない。


作るのはチョコレート。

職人は、スケルトンである。

彼らに頑張って貰おう。

これは神々の嗜好品なのだから。


先ずは神の為のチョコレートを

量産しよう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ