表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様に殺された!  作者: 猫めっき
36/82

ミカドサマ襲来


市場から戻って

準備中の店に入ると


「オーナー、お客さんですか?」


そうカンナから声を掛けられた。


後ろを見ると

一人の老人が立っている。

見知らぬ老人だった。


「さっさと中に入らんか」


ドンと、その老人に

杖で背中を押された。


店に入ると

その老人も続いて入って来ては

とっとと勝手に席について

手招きをする。


「酒を頼む。あっちのを」


天を指さす。

その仕草でピンと来た。

そういう事か。


その傍若無人ぶりが

納得出来た。

神様だから、この程度は普通の事か?


店のみんなには

二人きりにして欲しいと伝えて

杯を準備して貰う。


互いに杯が並べられると

差し向かいになった所で

収納から神酒と

神様用に作っておいた

おつまみを取り出し

テーブルに置いた。


杯に神酒を注いで

その老神に差し出すと

その老神は杯と共に

神酒の瓶とつまみを

自分に引き寄せ

先ずつまみを口の中に放り込む。


どこまでも我がままで身勝手な

爺さんである。


酒を飲みながら

老神が話し始めた。


「今回の天界戦争の件では、

世話になったのう。


出来るだけ穏便に事を済ませたかったのだが

どうやらどこからか横槍が入ったらしい。

事が早まった。

わしの読みが甘かったようじゃ。


まあ、

お前さんには関係の無い話しじゃが・・・」


そう言いながらも

美味しそうに酒を飲んで

つまみの貧乏豆を

口にほうり込んでいた。


「この豆も美味いのう。どうやって手に入れた?」


「市場ですよ」


「こんな物が有るのか。おまえさん、見えるのか。

それを見つけたお前さんもお前さんだが

事務局長も、それなりに人を見る目は有る・・・」


「有る方にアドバイスを頂きましたので。

見つけ出しました」


その一言に、じろりとこちらを見つめると

納得した様に


「天の事か。

あやつも世話になったみたいだな。

少しここにも痕跡が残って居る。

モカも来たのかな?

ミカドサマと呼ばれておっただろう」


少し驚いて


「御存じの方ですか?」


そう訊ねた。


「弟だからのう」


ニヤッと、こちらに笑顔を見せる。


弟? あの神様の兄って事か。

全然似てねー!


「先ず、預かっている物を受け取ろう。

そうしなければ、お前さんも困るだろう。


収納を出して見せなさい」


そう言われて

自分の収納を再び呼び出した。

でも自分で呼び出す場合、広げる口の大きさには

限界が有る。


老神はそこに顔を突っ込むと

感心した様に


「よくもまあ、無理して突っ込んだものよ。

大変だったろう。これを入れるのは・・・」


そう言いながら

収納の中で腕を大きく振ると

やがてバスケットボールほどの

小さな丸い物を取り出した。


黒いその丸い物体は

ぎょっとするほどおぞましく

とてつもない質量を感じさせる。


「これが一つの天界じゃ。

こう見ると、綺麗な物じゃろう。そうは思わんか?」


そう言って、自分の収納に投げ入れる。


「これで一段落、と」


そういうと

また自分で独酌を始める。

しかし、瓶は既に空になっていた。


「酒が足らんぞ。さっさと出せ」


どこまでも傍若無人である。

収納から、もう一本取り出し差し出すと

それをさっと取り上げては

勝手にまた

自分で注ぎ始めた。


用が終わったのなら

とっとと帰って欲しいのだが

帰る様子は、全く見受けられない。


つつましやかな弟とは、正反対の性格の様だ。


おつまみが無くなると

テーブルを指でトントンと鳴らし

追加も催促して来る始末。


本当にあの神様の兄なのかぁ?

そんな風に思っていると

その表情に気が付いたのか

その老神は急に真顔になって


「ここからが本題だ。


そなたは今からワシの庇護下に入る。

良いな」


その一言に面食らった。

予想外の一言だったからだ。


「庇護下ですか? どうして・・・?」


怪訝そうな自分に向かって

とつとつと語り始める。


「良くも悪くも、お前さんは悪目立ち過ぎた。

それが理由じゃ」


その言葉に不思議そうな顔をすると


「悪目立ち過ぎたって、どういう事ですか?」


自分には全くその自覚が無い。

何がどうなって、目立ったと言うのだ。


「今回の天界戦争の件だ。


お前さんは二つの天界の仲裁をし

一つの天界を、

その収納に入れる事に成功した。


その意味が分かるか?」


「いえ、全く分かりません」


自分には全くピンと来なかった。


「全ての天界が、お前さんに注目し

警戒もして居る。

それだけの力を持っている人間だと

認識されておるんじゃ。


お前さんの力は、天界評議会メンバーにも匹敵する。


何でそんな事になったのか

不思議だったのじゃが

お前さんに会ってその理由が分かった」


「何ですか?」


こちらの顔を見据えながら


「天じゃよ。


お前さんに寵愛を与えて居るじゃろう。

それが原因じゃ。


天も無茶な事をした物じゃ」


寵愛を授かった? 庇護じゃ無かったのか?

それが原因?


「ここの天界の全ての神々の寵愛を、

お前さんは受けている。


でもそれだけでは、一つの天界を丸ごと

収納に納める力は無い。


だが、お前さんには出来た。

その理由が、天の寵愛じゃ。


それが加わった事が、この結果を生み出した。


それは決して悪い事では無いが

お前さんの今後の人生には

負の財産と成ってしまっておる。


もう人としての普通の生き方は

出来ないものと覚悟してくれ」


その一言に


「それはどういう事ですか?

自分は人としての

普通の生き方がしたいのに」


老神は、首を横に振ると


「神々がそれを許さないで有ろう。


他の天界からも、

そなたに助けを求める神が

出て来るかも知れん。


天界協議会は名前ばかりで

すぐに決断をせん。

だらだらと議論ばかりを繰り返して居る。


だがそなたは違う。


それだけの力を持つ者と

思われてしまっておる。


それが現実じゃ」


「冗談じゃ無い。そんな事望んでないですよ」


「恨むなら、力を与えた天を恨め。


天が寵愛を与えさえしなければ

普通の生き方が出来たやも知れん。


しかしきっと

そうはならなかったであろう。

お前さんは、典型的な巻き込まれ型の星を

生まれ持っているようじゃからの」


その老神の口から

『ほっほっほっ』という

そんな笑い声が聞こえた気がした。


“巻き込まれ型の星?

そうなのか?”


「天界協議会が有るのは聞いて居るかの?


そこの動きはとにかく鈍いのが

現実じゃ。

その上に立つ評議員も機能して居らん。


相談者の中には

遅すぎるが故に別の手段を求める神も

出て来るじゃろう。


そんな時、思い浮かぶのがお前さんじゃ。

相談に来る神は、必ず現れる。


だからわしの庇護下に入れる事にした。

しかし、庇護では

おそらく足らぬで有ろう。


額を出しなさい」


その言葉に躊躇すると

怒った様に


「さっさと額を出さんか」


結局、いやそうな顔をしながらも

額を差し出すと

指で額をなぞる。


ミカドサマの時と同じだ。


「これでお前さんは、

評議会の神々と同等以上の力を持つ事になった。


その力を、どう使おうと構わん。

自由に使ってよいが

神のルールは犯してはならない。


人の世界で神の力を使うのは構わないが

そなたは人だ。

人前で神の力を使えば使う程

人として生きる事が難しくなると

そう覚えておきなさい。


それと・・・」


酒を杯に注ぎながら


「事務局長には、無理を言わぬ様

釘を刺して置いた。


今後は対等に話せるようにしてある。

何しろワシの庇護下に入れると

公言しておいたからのう」


この老人から聞いた、

初めての吉報である。


少し嬉しそうな顔をすると

それに気付いたのか


「酒造りは認めておいたぞ」


そう言って、釘も差して来た。

やはり酒は、造り続けなければいけないらしい。


「もう一つ、裏技を教えておこう。

今お前さんにはワシと天と

この天界の全ての神々の寵愛を受けて居る。


ワシと天の寵愛が有れば、

その他の神の寵愛なぞ、取るに足らん力だ。

無くても良い。


もし面倒な気に入らない神がいれば

その神の寵愛を外す事が出来る。


寵愛御遠慮、というのが出来る力を得たと

覚えておきなさい。


今のお前さんには、

それだけの力が有ると言う事を

忘れぬように。


言いたい事は以上だ。

何か聞きたい事は有るか?」


どうやらかなりメンドクサイ事に

巻き込まれているらしい。


「で、結局どうしろと・・・」


「お前さんの判断で、好きにして構わぬよ。

神から相談を受けるもよし、見放すもよし。


そなたの生き方に

干渉する事は無いが・・・


巻き込まれ型の星が何というか・・・」


そう言いながら、笑っている。

どうやらそのイヤな星は

未来永劫自分に関わって来るらしい。

神が言うのだから

間違ってはいないのだろう。


成る様に成るって事か。

一番気になっている事を

訊ねる事にした。


「弟さんの事を教えて頂けますか?」


これが一番気になる事で有った。

自分の心の師である。


その問いに

少し寂しそうな表情を見せると


「あやつは真面目過ぎたのだ。


だから自分の命を削り

他の神々の為に奔走した。


もう少し遊びが有れば

長生きもできたのだが・・・


(あやつ)が下野したのは

自分の最後が近い事を悟り

後継者を地上に求めたからだ。


あるいはお前さんを

後継者として考えたのかも知れんが

お前さんの器は、

どうやら大き過ぎたらしい。


神の後継者を求めているのに

人として生きたいと言う

覚悟を持った人間は

後継者には不向きじゃからのう。


今でもどこぞで

後継者を探しておるのじゃろう。


そなたは後継者としては不向きじゃが

その力量はそれ以上だと思ったから

寵愛を授けたのだと思う。


最悪でも、力の継承者は

一人見つけたという所か」


「まだお元気なのですか?」


「それは判らん。

しかし生きてはおる」


「だったらよかったです」


「そなたは天と回廊で繋がって居るのじゃから

あやつが逝く時は、判る筈じゃ」


そう言いながら

その顔はどこか寂し気である。


「さて、行くかのう」


そう言った途端

その姿は消え去っていた。


どこまでも自分勝手で

傍若無人な爺さんだった。


まだまだ長生きするだろう。

そう思えていた。



************************************************



メインステータスには

新たな神の名前が

天の帝の隣に

刻まれていた。

その名は


(そら)の帝


現存する最高神の一人で有った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ