表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様に殺された!  作者: 猫めっき
35/82

大団円


神々の宴会が始まった。


事務局は大忙しである。

1600柱もの神々が

一堂に会しての宴会は、そうそう有る物では無い。


宴会となれば

戦争に参加したとか

参加しなかったとかは

一切関係無い。


だから

戦いに参加しなかった文系の神々も

参加して来る。


二つの天界の神々が

全て参加する宴会など

初めての事だった。


宴席の中央には

自軍の大将“ゼビア”と敵将が

仲良く並んでいる。


これも初めての光景である。


天界戦争を戦った両軍が

仲介者によって

手打ちをする事例など

過去に一度も無かった事だ。


それ故に

今回の天界戦争は

他の天界にも驚きを持って

伝えられているのである。



宴席には、勿論神酒が並んでいる。

どれ程の神酒が必要なのか

事務局は頭を悩ませた。


一年分の神酒が

もしかしたらこの宴会で

全て消費されるかも知れない。


でも、手打ちの宴会である。

負け戦の可能性の高い

天界戦争だった。


その手打ちの席の酒を

惜しむ事は出来なかった。

事務局長は英断した。

惜しまず出す様に、と。



*****************************************



「この酒は旨いな。

こんな酒は初めてだぞ」


ゼビアの隣に座っている

神酒で赤ら顔になった敵将が

ゼビアに訊ねた。


「そうで有ろう。

我が天界にしかない美味い酒だ。

存分に飲んでくれ。

酒はまだまだ有るぞ」


その一言に、敵将も嬉しそうである。

杯に手酌で酒を注ぎながら


「それにしても、あの者は一体何なのだ。

何故あんな広大な収納を持っている?」


少し酩酊した調子で、言葉を続けた。


「あの者は、何処の何という神だ?

この席に居らんのか?」


しこたま酔っぱらったゼビアが

笑いながら答えた。


「あの者はな・・・、人間なのだ」


その一言に、敵将は仰天した様で


「人間? あの者は人間なのか?


人間が何であんな力を持っている。

可笑しいであろう? 人間ごときが!」


その問いに笑いながら


「それには深い訳が有ってのう。

話せば長いのだが・・・」


ゼビアは酔っぱらった勢いで

敵将に事の始まりから話し始めた。


「わしの英断によって、

全ての神々からの寵愛を

与える事になったのだ!


どうだ、凄いだろう、ワシ!」


その一言を聞いて、敵将は呆れ顔だ。

全ての神々の寵愛を

一人の人間に与えるなど、前代未聞。

有り得ない事だ。


人間は欲深い。

力を得たら、その力を使いたがるのも

また人間なのだ。


そしてそれは、神々の常識でも有った。


「あやつは人なのであろう! 

そんな力を与えて、大丈夫なのか?」


「普通なら、ダメだろうな。

でもあやつは違うらしい。


人として生きたいとぬかしおった。

変な人間(やつ)なのよ」



「ふうん、そんな事が有ったのか?」


ゼビアの隣から

そんな相槌が聞こえて来る。


ふっと、その席に座っている者を見た

ゼビアの体が

一瞬で硬直する。


敵将も、その声の主を見た瞬間

硬直して立ち上がった。

慌ててゼビアも立ち上がる。


そこには

元々座っていた上位神を

押しのけて

神酒で勝手に独酌する

一人の老神が座っていた。


「ミカドサマ!」


その老神は、

飄々として独酌を続ける。


「まあ、座りなさい。

もう少し詳しく

そのあたりの話を教えてくれるか?」


二将は緊張しながらも

座り直すと

ゼビアは改めて、全ての事の成り行きを

もう一度最初から話し始めた。



****************************************



皆からミカドサマと呼ばれた老神は

独酌を続けながら

緊張するゼビアから

事の顛末を残さず聞くと

少し思案顔になる。


そして二将に語り始めた。


「今回の一件は、わしにも責任が有る。


おぬしの所の天界の縮小には

まだ時間の猶予が有ると思ったのじゃが

どうやら早まった様じゃのう。


むしろ、どこぞの誰かに早められたのかも知れん」


そう言って

少し思案顔になると


「今回の後始末は、ワシが担おう。


人に任せておくべき事案では無い。

まあ、上手く戦争を収めてくれた事だし

その礼もせねばならんからのう。


さて、何から手を付けるか・・・?」


独酌を続け、一つをカラにすると

気を利かせたゼビアが差し出した酒を

受け取り


「事務局長をここへ」


そうゼビアに伝えた。


「しかるべく」


ゼビアが答えると

すぐに責任者を走らせる。


慌てて事務局長が飛んで来た。

ミカドサマの前で

緊張の面持ちは隠せない。


それ程に高位の神なのである。


ミカドサマがポツポツと

語り掛ける。


「事務局長。お前さん、随分勝手な事を

しているようだが、判っておるのか?」


事務局長に、冷や汗が流れた。


「何の事でしょう?」


事務局長は、けげんな顔をして見せた。

事務局長は

ミカドサマが、ゼビアから

事の顛末を全て聞いている事を

知ってはいない。

だから、状況が見えないでいた。


「この酒の作り手の話しじゃよ。

それにしても、上手い酒じゃのう!」


「お褒め頂いて恐縮です。

まだまだ御用意出来ますが・・・」


その返答に老神は苦笑いしながら


「で、お前さんはその人間を

どうするつもりだったのだ?」


そう言われ、じろりとにらまれた瞬間

事務局長の背筋に、冷たい物が流れた。

知っているのか?

だとしたら

ミカドサマには嘘は通じない。


「お前さんが人の生死に干渉してどうする?

神でも簡単には許されない行為だと

分かった上での事なのかな?」


その一言に緊張しながら


「決してそうゆう訳では・・・

あれは事故ですし・・・」


「簡単に事故と片付けられる話なのかな?」


その一言に

事務局長は更に緊張する。

内心、どこまで知っているのだろうと

ひやひやだ。


その表情の変化を見て

ミカドサマは言葉を重ねた。


「その者には、ワシが会って来よう。


此度の事の

後始末をせねばなるまいからな。

その上で・・・


今回の一件で、その者には

二つの天界が

恩を受けたカタチになって居る。


それがどういう事か、言わんでも分かるな?

事務局長」


「承知して居ります」


「どういう礼を考えて居る?

まさか何もせぬ訳には行くまい」


「そ、それは・・・」


その表情には

何も考えていなかった事が

透けて見えた。


もう一度じろりと

事務局長を睨むと


「その者の後見人に、ワシも加わる事とする。

そういう礼の仕方も、一つ有っても良かろう。


お前達も、それなりの礼は考えときなさい。


それと今後その者には

無茶な要求はせぬように。

人の人生に踏み込むではない。


良いな、事務局長」


そう言って、ニコリと笑って見せた。


「承知しました」


再び事務局長の背筋に

冷たい物が流れた。


「まあ、酒造りの依頼ぐらいは大目に見てやろう。

わしも飲みたいからな。


ただし対価はちゃんと払えよ」


そう言って笑いながら

老神は、再び新たな酒を手にすると

独酌を続けた。


「それにしても、美味い酒じゃのう」


その目は、笑っているようにも

怒っているようにも見えた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ