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神様に殺された!  作者: 猫めっき
30/82

アヤメとカンナ


「ねえ、起きてる?」


カンナが声を掛けた。


「起きてる! 助かったみたいだね」


「そうみたい・・・」


さっきまでの苦しみが

ウソみたいに引いている。


丸薬を飲まされた直後から

徐々に熱が引いて行くのが判った。



****************************************



アヤメとカンナは幼馴染みだ。


同じ村に、同じ時期に生まれ

まるで双子の様に育った。


そしてほぼ同時期に

レンド病を発病し

今を迎えている。


村はとても貧しくて

その貧しさの理由を語り始めたら

キリが無いのだが

それでも不幸では無かった。


貧しいが故に

村人達は周りに優しく

助け合って生きて来た。


二人がレンド病を発症する度に

周りは助けてくれたし

家族もその病気に付いて

不平を溢した事も無い。


ただ二人はその事に

負い目を感じている。

病気持ちで有るが故に

人並みには働けない事を。

足を引っ張ってばかりいる事を。


レンド病を発病すると

20歳まで生きられないと

言われていて

二人はもうすぐその年齢を

迎えようとしていた。


前回の発作の時

かなりの重体にまで行ったのだが

何とか持ちこたえた。


でも二人は

次の発作では

おそらく助からないだろうと

そんな風に感じていた。


だったら

この村の為に

何かしたい。

助けて貰ったお礼がしたい。


それが生贄だった。


村人に生贄になると

言い出したのは

実は二人だったのである。


二人のそれぞれの母親は

泣きながら止めたのだが

二人は押し切った。


この村の言い伝えでは

生贄を差し出した年は

必ず豊作になると

聞かされてきたからだ。


助けてくれた村の人に

恩返しがしたい。


それが

カンナとアヤメの決断だった。


檻を作ってくれた村人は

気が変わった時の為にと

頑丈には作らなかった。


二人の母親も

名残惜しそうに帰って行った。


神々の森の入り口で

その青年に声を掛けられた時

二人は遂にその時が来た、と思ったのだが

どうも話を聞くと違うらしい。


神様の生贄とは

ならないようだ。

魔獣に食われるという。


確かに、その気配を感じている。


結局檻を壊してもらい

生贄になる事は諦めて

でも村に帰るのも

豊作の期待を壊してしまうので

その事は忍びなかった。


結局、王都へ向かう事にする。


しかし

王都へ向かったものの

そこも貧しい事が判ると

絶望感に襲われる。


もちろん、お金なんて無い。

仕事も無い。

寝る所も無い。

それでも何日も

仕事を探し続けた。


へとへとになって

途方に暮れていた時

神々の森の入り口で

助けてくれたその青年を

見かけてしまい

思わず走り寄って行く。


でも、少しばかり話をしていると

その青年は

突然紳士に話し掛けられ

急にその人と

どっかへ行ってしまった。


あっという間に

居なくなってしまった。

一縷の望み・・・が潰えた。


いっその事、あの時

まだ魔獣に食べられた方が

楽だったかも知れない。


でもこの数日で

さらに痩せてしまったから

きっと魔獣にも

見向きもされないのかなぁって

そんな事まで

二人で話し込んでしまう。



****************************************



「あの時はホントにどうしようって

思ってたよね?」


その言葉にカンナも


「街に来た時? 確かにそうだった」


感慨深そうである。


「でも、神様っているんだね」


「最後に少し幸せをくれたって思ってた」



あの青年が馬車で戻って来てくれたのである。

でも二人は疲れすぎていて

気が付かなかった。


「飯でも食いに行くか?」


その一言が、神様の声に聞こえる。


「お金無いですから」


そう答えると


「そんなの判ってる。奢るから」


そこからは、もう夢心地だった。


これ以上食べられない、

という所まで

お腹一杯にしたら

その青年は

急に自分の仕事を手伝えと言い出し

物件を探し回ると

不動産屋まで行き、それを買っている。


名義は私達だ。

その店で寝泊まりする事も決まった。


次の日からは

接客の練習と料理の練習と。

それぞれが

自分の仕事を覚える。


一週間後にオープンと言われた時は

さすがにそれは無理だろうって

思っていても

一週間後には

本当にオープンしている。


二人っきりで

店を切り盛りするのは大変だったが

それでも楽しかった。


こんな時間が永遠に続いてくれたら

どんなに良いだろうって思ってた。


「買い物、楽しかったね」


「初めてだったよね。あんな買い物?」


買い物とは、休日に二人で出掛けた日の事だ。

初めて給料を貰って

街にお出かけする。


この街に来た時とは

風景が違って見えた。


洋服を見て、アクセサリーを見て

御茶をする。

村に居る時は考えられなかった、

夢の様な時間。

それが二人で出来ていた。


旅の行商人が村に来た時

魔石のアクセサリーの話しをしてくれた。

それ以来、

魔石のアクセサリーを持つ事は

二人の夢でもあった。


お揃いのアクセサリーで、お出かけする。


魔石屋で、それを見つけた時

迷わず購入する。

二人でお揃いのを。ペアで。


長年の夢が叶ったと思った。

こんな幸せな事は

もう二度と訪れないに違いない。


二人に残された時間は短い。

こんなにも幸せで良いのだろうかと

そんな風にも感じていた。


病床に倒れた時

二人は既に覚悟していた。

そしてお気に入りの

魔石のネックレスを首に掛けると

静かにその時が来るのを待つ・・・筈だった。


「もう無いよね、感じてる?」


「もう無いね。信じられないけど」


レンド病を発症すると

その病を持っている実感が

常に有った。

胸の中心の奥に、しこり感が出るので有る。


それがレンド病のキャリアの証し。

二人に共通の感覚。


それが今は全く感じない。


「まさか一晩で無くなるなんて!」


「ホント、まさかだよネ。

あんなに苦しんでたのに」


少し笑いがこみ上げて来る。


「これからどうする?」


その一言に、しばらく沈黙した後で


「する事は一つでしょ!」


「そうだね、働こう!」


「そう! あした早いよ。もう寝よう」


二人はもう一度、眠りに就いた。

その眠りは

かつて二人が感じた事の無い

平穏で、安らかな眠りで有った。





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