カデナ王国の憂鬱
カデナ王国は、弱小国家だった。
にもかかわらず、
前の王家は
国民に重税を課した。
その事を発端に
国内の全領主が団結して、
その王家を追放。
新たなカデナ王国が誕生する。
現在の王、リチャードは二代目だが
前王のリチャードの父は
自分から望んで
王に成った訳では無い。
この国の王は
全ての領主による合議で
決められている。
前の王もまた
一人の領主に過ぎなかった。
何故、国王に選ばれたかと言えば
領主の誰もがみな
王には成りたくなかったのである。
調整役は難しい。
この国のかじ取りは、特に難しい。
前王は
その点が秀でていた。
人望も有った。
その国王が退位を申し出た時
全ての領主が、引継ぎと称して
息子のリチャードを王として
推薦した。
結果として
リチャードは国王に成るしか無かった。
いわゆる貧乏くじを
引かされたので有る。
お飾りはお飾りだが
別に居心地が悪い訳では無い。
それ程に、この王国の団結力は高い。
外敵にはいち早く対処し
王国の防衛に当たる。
といっても
この国の魅力は乏しく
そうそう攻め込む国など
無かったのだが。
この国の産物は、石だ。
魔石の産出量は
他のどの国と比べても多い。
それでも攻め込まれぬ理由は
その魔石の使い方を理解出来た者が
国内外を含め
乏しかったためだ。
もう一つ諸外国が注目するのが
神々の森である。
これは他の何を置いても
魅力的に映る。
だが、冒険者が何度も挑んでは
魔獣域を突破すら出来ないでいた。
諸外国も、その事はよく知っていた。
神域の事は、噂でしか無い。
誰も見た者はいなかった。
カデナ王国とは、
そんな森に隣接する
小国なのだ。
そこに
“落とし子”の出現である。
神々に与えられた希望。
望んでも手に入らぬ未来が
そこには有った。
“落とし子”がもたらすであろう、恩恵。
しかしそこには
もう一つの噂が付き纏う。
曰く“落とし子”は短命であると。
だからこそ守らなければ成らないのだ。
長生きして貰わねば困る。
“落とし子”の恩恵は
それはそれは絶大で
他の何を犠牲にしてでも
手に入れたい慶事である。
実際恩恵は
既に与えられている。
神殿内の正確な配置は
どの文献を探しても
確証の得られない事だった。
神像問題も
そこに端を発している。
これで神々の恩恵は
受けやすくなるだろう。
女神モカの出現は
その事を如実に物語っている。
各国から芸術家が訪れ
その神殿は
既に新たな名所として
認知されていた。
そこに持って来ての
魔石の使い方である。
魔力を貯め、使える手段。
これは
カデナ王国が
他国に対して優位性を持てる
手段に成り得る。
おそらくこれからも
魔石に関して
多大な発見と恩恵が有るに違いない。
リチャードにとっては
王としての役割を果たす
絶好の機会でも有ったのだ。
これからどう
“落とし子”と接し
どう距離を保っていくのか。
国王としての手腕の見せ所である。
合わせて
各領主にもその恩恵を
どう与えて行くのか
考えなくてはならない。
不満を持たれない様に
それでいて
平等に事を進めなければならない。
これら全ては
暗部からもたらされる情報によってのみ
構築されなくてはならない。
神経を擦り減らす出来事だが
国王は
嬉々としてそれを受け入れている。
国を発展させる手段を
得た事は
それ程までに大きい出来事だった。




