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神様に殺された!  作者: 猫めっき
19/82

シンケの鳥


今日は朝からルンルン気分で有る。

市場に貧乏豆が見つかったからだ。


普通貧乏豆は他の豆に混ぜられ

売られる事が多い。


それを自分は

買って帰って来ては

地味に自室で、一人で仕分けをする。

二人には仕事が有る。

自分でしなければならなかった。


実際、貧乏豆を取り除いた豆料理は

人気が有るらしい。

こっちはこっちで

貧乏豆だけが必要だから

有る意味一石二鳥なのだが

本来は

貧乏豆だけが欲しいのである。

仕分けは実に面倒で、

時間の掛かる仕事なのだ。


それがたまたま市場の店先に

袋で並んでいた。


全て買うと言うと

逆に店主がびっくりしている。

そんな客は

絶対にいないと思っていたからだ。


農家に頼まれて

渋々置く事を承知した

貧乏豆だったのである。


店主に産地を聞くと

簡単に教えてくれた。

こんな豆の買い付けに行く変人は

いないと思ったのだろう。


ここに一人いるんだけどね。


もしまた纏まって

手に入る事が有ったら

この店に持って来てくれれば

買い取ってくれますよ、と伝え

店を後にする。


貧乏豆。

本当の名前は、鈴生り豆。

田畑の畦道に、よく出来る豆らしい。


んっ?

これって、田舎の彼岸花や百合に似ていないか?

田畑の脇道に生えるって。


何か神サマ系の匂いを感じる。

その内産地に、買い付けに行こう。

その方が向こうも喜ぶに違いない。


また一つ、新しい目標が出来た。


嬉々として市場を回っていると

じっとこちらを見つめる

視線を感じる。


気になって

そっちを振り向いても

特に人の気配がしない。


勘違いかなって思って

前に進もうとすると

やはり視線を感じる。


もう一度振り返るのだが

やはり人の気配は感じない。


その辺りを見回すと

目が合った。


鳥だ。

売り物である。


近付いてその鳥を見つめると

鳥の方も

こっちを見て視線を外さない。


じっと見詰めるだけだ。

互いに、見詰め合ってしまう。

その様子を見ていた店主が

声を掛ける。


「お客さん、お目が高いね。

シンケの鳥だよ。

買って行かないかい?」


「シンケの鳥?」


「貴重な鳥さ。めったにお目に掛かれないよ。

べらぼうに高価な鳥だから」


その言葉、売りつけたい典型的なパターン。

少し乗って見ようかな。


「そんな鳥がどうして?」


「持ち主が手放したいって、持って来たのさ」


その鳥は

じっとこちらを見つめたままである。


「美味しいの?」


「とんでもない。食べちゃダメだよ。

この鳥は卵を産ませる為の鳥だから」


その言葉、何となくウソっぽい。

カマを掛けて見る。


「卵、産まないんじゃないの?

産むんだったら、売らないでしょ」


その言葉に、店主は苦笑いしながら


「産む産まないは、鳥の勝手だからね。

それは判らないね?」


「産まないから、手放そうとしてるなら

高くは無いよね」


少し唸って見せると

店主は脈有りとみたのか


「買ってってよ。安くするから」


「安くするって言われてもねえ」


その鳥は番いで三組。

計6羽である。


「持って帰るのも、メンドくさそうだし。

どうしようかなぁ」


たぶんこの鳥は

卵をもう産まないだろう。

結構御高齢の感じだし

覇気も感じない。


でも

見つめられると弱い。

じっと見詰められてしまったから

尚更だ。


店主の方を見ると

奥さんがしきりに目配せしている。

何とか売たいのが明らかだ。


「お客さん、これでどう?」


その金額は

思った以上に安かったので


「いいよ、買おう!」


そう返事をすると

大喜びで

すぐに鳥の足をグルグル巻きにし

6羽両手で持てるように

結わえた。


シンケの鳥。


見た目は大きな鶏である。

その名前が気になった。


神鶏(しんけい)ではないのか?


だとしたら

元気が無いのも頷ける所が有る。


人の世は活き難いのだ。

だとしたら、ここに居るべき鳥では無い。

他に居るべき場所が有る。


もし運良く卵を産んで育てて

それが(メス)なら

そいつらは卵を産んでくれる。


金の卵なんて

そんな欲は持っていないが

もしかしたら、と

思わずにはいられない。


神々の好物になのかも知れない。

その一つの可能性が在る。


これは店へ持って帰る訳には行かない。

人目に付かない場所へ行くと

ゲートを開いた。



転位先は神々の湖である。

そこは相変わらず

神獣たちがくつろいでいた。


結び目を解いてやると

シンケの鳥は

勢いよく湖にむかい

ひたすらその水を飲む。


そうすると

みるみる元気になって行く。

やっぱり神鶏だったんだ。


鳥のエサは

もっていないよなあ、と

収納を見ると

貧乏豆が有った。

さっき手に入れた貴重品である。


これなら食べるのかなあって

少し与えて見ると

我先にと向かって来る。


よほどお腹が空いていると見えるが

収納にまで、首を突っ込もうとする。

全てを与える訳には行かない。


この豆は神々のおつまみにする

予定なのだから。

まあその内に

種を蒔いて

この辺りにでも貧乏豆を

育ててやろうかな。


そう言っている間にも

シンケの鳥は

餌を探してあちこち歩き回っていた。


その様子に一安心して

ゲートでまた

市場へと向かった。





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