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神様に殺された!  作者: 猫めっき
17/82

神殿での後始末


「そんな事が有ったのか」


前王は俄かには信じられないといった様子で

うな垂れた。


「事実です。私がこの目で見ていました」


言葉を切ると


「神殿改革をせねば成りません。

今のままでは、神々から見放されてしまいます」


その言葉に前王は


「判った。わしの不明であった。許せ」


「父上のせいでは有りません。

あの者が、一枚上手だったのです。

責めを負わせなければなりませんが

表立っては出来ません」


「それは何故だ?」


「父上もその責を問われる事になります。

そこは避けねばなりません」


「それはそうだが、しかし・・・」


前王は苦悩の表情を見せる。


「手立ては有ります。

でもその前に、大賢者の処断を致しましょう」



************************************



国王と前国王の面前に引き出された

大賢者は

手鎖に繋がれていた。


二人を前に

堂々と言ってのける。


「どうして私がこのような目に

合わなければならないのですか?」


「神殿での一件を、どう申し開きするのか?」


そう問い質す国王には向き合わず

前王に向かって


「あれは仕組まれたのです。

神官長の罠です。神殿の罠です。

それしか考えられません」


「天から女神が降りて来たと言うではないか」


それを鼻で笑うかのように


「あんなのはまやかしです。

誰かの魔法に違い有りません。

絶対にそうです。王様」


大賢者にとっては、今でも前王が

国王なのである。

その返答に、現王が反応する。


「こやつのボードを引き出せ」


国王が側近の魔法師に命令すると

大賢者の顔色が変わった。

激しく抵抗するが、手鎖の状態である。


大賢者のステイタスボードを

取り上げさせると

王国魔法師の三人に確認させる。


そのボードは

頑丈に隠蔽されてはいたが

あっけなく突破すると

大賢者の文字が消え

その下に

“道化師”が現れた。


そのボードを

現王と前王に差し出す。

それを見た二人は絶句する。


「まさか道化師(ピエロ)とは・・・」


大賢者は、まだ何か言いたそうだったが

その言葉を制して


「私もその場に居ったのだ。

それすらも気付かなかったのか?

目の前に現れた神の姿を

目の当たりにして

そなたは何も感じなかったのか?


それでもまだ

自分は潔白だと言い続けられるのか?」


現王もその場にいたという

その言葉に

大賢者と称した道化師がうな垂れる。


「もうよい、連れ出せ」


その日を最後に

その姿を見る事は二度と無かった。



************************************



国王に呼び出された神官長代理は

神像比べの一件だと

すぐに理解した。


同時に

どこまで話していいものかと

考えてしまう。


出来るだけ言葉を選んで

あの若者の事は

隠さなければならない。


それがあの青年からの、依頼の一つでもあった。

他人には知られたく無いのだと言う。


国王が口を開く。


「先日の神像比べの詳細が聞きたい?」


その問いに、慎重に言葉を選びながら


「どの様な事をお聞きになりたいのでしょうか?」


そう返答する。

神像は前国王の案件でも有るからだ。

国王は笑顔を見せながら


「そう案ぜずともよい。心配はいらぬ。

事の切っ掛けを知りたいのだ?」


なおも不安そうな神官長代理に対して

国王は切り札を出す。


「“シンイチ”が持ち込んだ話しであろう!」


勿論ブラフであるが

それが真実だろうと

国王は考えていた。


切り札とは、実名を出す事だ。

そしてそれは、見事に神官長代理に刺さる。


「国王も御存じの方でしたか」


「ああ、そうだ。存じて居る」


国王の偉い所は、自信満々にブラフを張れる。

それが身に付いているのである。

そして、余計な事は

一切しゃべらない。

そうすれば、ボロが出ない事を

知っていた。


「最初から聞かせてくれぬか?

あやつはどう話してきたのだ」


神官長代理は

すっかり安心して

事の始まりから話し始めた。

曰く、この神殿そのものが

無くなってしまいますから、から。


「そこで質問だが

どうして“シンイチ”を信用したのだ?

どう説得された?」


その質問に


「彼はステイタスボードを

見せてくれましたから」


その言葉に国王は驚く。

ステイタスボードを持っている。

“神の落とし子”が、である。

国王は身を乗り出すと


「何と書かれていた?」


国王が身を乗り出すのを見て

少し引き気味に


「神々の伝道師と書かれていました」


「神々か。間違い無いか?

神の名では無く、神でも無く、神々と」


「その通りです。ですから信用致しました。

もちろん、あの神像建立以降

神々の恩恵が失せている事は

感じていましたので」


そう言って、神官長代理はしまったと思った。

前王の案件である。

明かな失言なのだが


「そうであったか」


国王はその事を気にも留めなかった。

その時の国王の頭の中では、

神々という言葉の重さが

圧し掛かっていたからだ。


その後の神官長代理の話しは

概ね暗部の報告の通りであったが

有力な情報を得る。


神殿の形態の事だ。


彼が言うには

神殿には決まった配置が有るとの事。


そして

現在の神殿は

彼が指示した通りに

配置されているとの事だ。


国王は

その配置の細かい注意点を

神官長代理に説明させると

それを配下の者に写させ

全神殿に配るよう、指示を出した。


もちろん、神像の破壊撤去は

最初の仕事にしてある。


最後に神官長代理に問う。


「しかし、まさか女神モカが降臨するとは

思わなかったぞ」


「それは勿論です。

最初に祈った時は、光しか差しませんでしたから。

私も驚きました」


神官長代理のその一言は

実に真実だった。



国王への説明が終わって

退出する神官長代理に

“シンイチ”への報告無用と

念押しした事も、言うまでも無い。


神官長代理も、当然同意した。

この件は伝えないでおこうと。



************************************



「そう怒るなモーガン。

仕方が無かったのだ!」


国王の弁明に

モーガン卿は御立腹である。

神像コンペの事を

一切知らされてはいなかったからだ。


「私が切っ掛けだぞ。

知る権利ぐらいあるだろう。

どうして知らせなかった?」


「知らせない方が良いと判断したからだ」


「何故だ、何故そうなる」


「この事を知ったら、お前は絶対に

見に行ったに違いない。違うか?」


「当然だろう。

そんな面白い見物(みもの)を、見ずにいられるか」


「それがマズいのだ。

お前は“落とし子”に顔バレしている」


モーガン卿は、あっと思った。

確かに顔を知られている。

その事で、変に勘繰られるかも知れない。

その可能性は低いにしても

ゼロでは無いのだ。


「私も身分を隠して入った。

こちらは何となく“落とし子”を

確認したが、向こうはこちらを知るまい。

出来るだけ接触は避けようと思う」


「それは何故だ」


「神官長にも、自分の事は隠しておいて欲しいと

言っていたらしい。

知られたくないのであろう」


そこで咳ばらいを一つすると

国王は自慢げに


「彼のステイタスが判ったぞ」


その言葉に、モーガン卿も身を乗り出す。


「ステイタスが有ったのか?

何だったんだ?」


国王は勿体ぶりながら

モーガンを見つめて


「何だったと思う?

“神々の伝道師”だそうだ」


「神々、か?」


「そうだ、その意味は判るよな?」


この世界に、神々の表記のステイタスを

持つ者はいない。

複数の神からその意を委ねられた者は、一切いなかった。


今いるたった一人を除いて・・・。


「“落とし子”とみて間違い無いな!」


「私もそう思う」


二人の意見は、完全に一致した。

そしてここから

王国の“シンイチ”への

身辺警護と情報収集が更に強化された。






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