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神様に殺された!  作者: 猫めっき
16/82

国王神殿へ行く


この日の事を

国王リチャードは生涯忘れる事は

無いだろう。


その神像比べは

一目見るなり

誰の目にもどちらが本物なのかは

判り切った事と

思ったに違いない。


戦の女神・モカ。


片方は

3メートルを超す神像で

右手に槍を持ち

甲冑を着た堂々の姿である。


それに対してもう一方は

高さ1メートル60センチも無さそうな

小さな神像で

右手に花を持つ

フリフリの衣装姿。


会場の観衆からは

その像に笑いすら起こっている。


戦いの女神が

花を持った愛らしい小柄な女神。

どう考えたって

それは無いだろうと。


大賢者も、既に勝ち誇った表情だ。


それにしても

この大賢者は、いけ好かない男だと

国王は思っていた。


何か胡散臭い。

自分を大きく見せようとしている。

そんな風に感じていたからだ。


大賢者は

中央に進み出ると

周りの観衆に向かって

大声で語り掛ける。


「集まった皆さんに問いたい。

どちらが戦の女神か、一目瞭然だろう。

そうは思わないか?」


その声に観衆は

大歓声で答える。


もう既に、大賢者の勝ちで

決まったかに思えたが

どこからか声が掛かった。


「でもそれって可笑しくないか?」


「これはどちらの神像が

ホンモノの神様かって事だろう。

それは我々には判る筈ないでは無いか?」


「神様に決めて貰わなければ

決着は付かないだろう? 違うか?」


誰かが声を上げる。

神様に決めて貰うだと・・・?


その一言で

その意図が国王には判った。


報告では

神官長代理が祈りを捧げた時

天から光が降り注いだと

報告が有った。


神様に決めて貰う、とは

そういう事に違いない。

これは見物だと、そう感じざるを得ない。


国王は成り行きを見守る。


「大賢者なら、神様も呼べるんじゃないのか?

呼んで証明してくれよ。

大賢者なんんだから」


どこからか

また声が掛かった。

明らかに振りだ。

神官長側の人間だろうか。

大賢者にプレッシャーを掛けている。

これも目論見の内なのだろう。


周りの観客も

その言葉に賛同し始めた。


その時の大賢者は

困り切った表情で

少し思案している様にも見える。

さて、どう出る。


大賢者は両手で観衆を抑えると


「私は神に仕える者では無い。

だからそれは出来ぬ」


成程、見事な切り返し。

流石は大賢者である。

伊達に修羅場は潜っていない様だ。


「それは可笑しいだろう。

だったらどうしてこの神像が本物だと言えるんだ」


「大賢者だったら、ホンモノだと証明しろ!」


すかさず観衆から声が飛ぶ。

これも計画の内か?


観衆から、証明コールが巻き起こる。

大賢者が追い詰められて行く姿が

国王には面白くて仕方が無い。

気付くと一緒に証明コールを送っている。


その声を両手で押さえると


「私は賢者だ。残念ながらその力は無い。

しかし、ここの神官にもその力は無いはずだ!」


その一言を待っていたかのように

神官長代理が前に進む。


「では、私が祈って見ましょう」


国王は、ついにその時が来たと思った。

暗部から報告の有った

天から光が降りて来る時が・・・


その筈なのだが・・・?

なかなか降りて来ない。


期待しているのだが

光は・・・? 

どうした・・・?


そう思った瞬間

眩いばかりの光が

何も無い筈の天井から差し込んでくる。


その光は、小さな女神像へと

降り注いだ。


暗部から聞いていた通りの現象、なのだが

それは言葉には成らないぐらいに

神々しい。


周りの観衆も

固唾を飲んでその光が降り注ぐのを見ていると


「いや違う。そんな事は有り得ん。

何かの陰謀だ。策略だ。

私を陥れる為の罠に違いない」


大賢者が大声で、弁明を始める。

その言葉の何もかもが空しく聞こえる。


全てが決した。

そう思った時


・・・・・・?


天から女神がゆっくりと降りて来る。



その姿は、戦の女神・モカ。

神像と瓜二つである。


国王は我が目を疑った。

それは周りの観衆も同じだろう。

神の降臨。

それを今、目の当たりにしているのだ。


その姿は神像の中へと消えて行き

そして

神像が動き始めた。



************************************



その先の出来事は

今でも夢の中だと思う。


神像を依り代とし

神が降臨したのだ。


女神モカは

少しスカートを気にしながら

ふわふわと歩いている。

手に持つ花を下に置くと

隣の巨大な神像を見上げ


「ナニコレ、似てなーい!

こんなの誰が作ったのかなぁ

そこの貴方なの?」


大賢者を睨みつける。


「私を見た事有るの?

こんなの作って。私が喜ぶとでも思った?

他のみんなも

カンカンに怒ってるよ。

どこの神像も、全然似て無いし。

そんな事も判らないのかなぁ?」


女神モカは、ふわりと飛び上がると

その像を足蹴にした。


見事に砕け散る。

粉砕である。


女神、それも戦の。

尋常では無い神の力。

国王は理解した。

シンイチは間違い無く

“落とし子”だと。


「こんな事、もうやめてね。

カミサマのオ・ネ・ガ・イ。

でないと他のみんなも怒っちゃうぞ」


女神モカは

置いていた花を手に取ると

元居た場所に立ち

そのまま神像からゆっくりと

離脱して行く。


神殿の中を一回り飛んで

一人の青年の方へと向かい

肩に手を置いてから

そのまま天に消えて行った。


はっと我に返る。

あの青年が

きっとシンイチに違いない。

顔は覚えた。


問題はこれからだ。


観衆は

しばらく騒めいていたが

神像に祈りを捧げては

女神の事を口にしながら

神殿を出て行く。


誰の目にも答えは明らかだった。


国王は

今日はお忍びである。


側近の者に

大賢者を連行せよと

命令すると

人目に付かぬ様

自らも神像に祈りを捧げた後

神殿を後にした。





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