第 八 回
三、四日後、手紙屋の色のイメージが浮かんだのだった。
店主がよく着ている服を触ると、濃いしっかりとした黄色になっていた。
これで私が思ったのは、分かりやすさがある色ってことだ。黄色は信号機などで注意を表す色だ。赤信号になるまではいってなかったが、よく着ている服に妖力点がはまる程、思いっきり嘘をつきそうで…。ということは、やはり危険なレベル、寸前だったのだ。
取りあえず、また地獄のせいで微妙な体質の変化で、マジどうしようって、プチ・パニックであったが、冷静に考え直した。
妖力点の影も武器に出来るかもしれない。私は前向きに思った。
ただ、倒すだけじゃなくて、この武器を使えるのであったら、妖魔化した人間の心をいやすことが可能。私は店で上手く振る舞えず鬱になっていた人を発見出来たことを思い出した。仕事のかいが増える。ただ、失敗をしてしまうと、鬼襞さんがいるから大丈夫だけど、妖魔化の人間の怒りに火を付けて罪悪感が増してしまうだろう。私の精神的ダメージが酷くなって、上がるだろう。
地獄の仕事、三、四年ぐらいは次の就職なんかも考えて続けたいからな。まてよ、地獄の仕事やってたら幾ら人間世界支部でも再就職は…。並行すれば、いっか。
蝶をなるべく安全に追いかけて二キロ。五百メートルで帰りたくなったが諦めず頑張った。蝶は今、店の前のプランターの花へと、止まっている。二キロも移動をするなんて、なんてガッツのある蝶だ。地獄と関わりがあるのだろうか?
〈大福ショップ〉へ、着いた。
フルーツ色々。生クリーム、カスタード、練乳入り。
店主の発言。「粒餡はギャンブルだと思っている」
なぜかと言うなら餡こ、粒の大きさにも、こだわった。人気のある商品、世代別で造っている。
六十代以上・大粒と練り餡を2:1で混ぜる。五十代・とても小粒。四十代・小粒。三十代・中粒。二十代・大粒。十代・大粒ととても小粒を3:2で混ぜる。さらに小さい子供向け・(中粒と大粒の量の具合は店主の気持ち)と練り餡を3:1。
まあ、人気はあった。常人じゃこのこだわりは分からないだろう。実際にもしレシピ通りで美味しくなければ私は実力を疑っただろう。
確かに二十代の私は二十代の分を食べたくなった。
ってか、そんなことより妖力点を早く捜さないと。大福が美味しいんだからスムーズに終わるのであれば気分いい。いつであろうと丁寧に仕事は行っていくけど、なんとかさっさと終わってくれればいい。
作業台、流し、床、鏡、便所、お客様用のイス、換気扇、エアコン、大福。
普段通り、簡単には見つかったりはしない。
作業場の掛け時計は…ブワッ。
「アッ、身体の色が、急に変化だ」
アナログな腕時計のヒモがないデザインっぽい掛け時計。私が、触ると薄く赤みのある茶色に触れた辺りが変化したのであった。
「時計か…」
私は何げなく聞いてみた。
「一番、手間のかかる作業ってなんでしょうか?」
「そりゃあ、小豆の粒餡を細かく管理…」
そう考えると、この色はなんとなく餡この色に近く見えてきた。
「粒餡の一粒、一粒の具合が、気になりまくっていた。けれどもう、こだわっていてはイケナイのか!?」店主が動揺して、言う。
「いや、そんな…」
「私のメンタルはもうメチャクチャだ」
見ると、従業員の人たちは顔に汗をかいている。「私は間違ったら机をひっくり返したい気分にずっとなっていたんだ」
私は、調理する場でそういうことをしていれば転んで大ケガをする人もでてくるかもしれないって、思った。
どうも、殺伐としてきた。そりゃ、生活かかってんだろうけど。まあ、落ち着いて。
十七、八人が妖魔化した。(店主を除いて)二十三、四人いるみたいだから、ここだって冷静な人は、五人ぐらいは存在するのだ。
妖力点がなければ、普通に話し合って終わった確率の方がきっと多いだろう。ちょっとピリッとはなったとは、思うけど。
トンボの妖魔だ。二足歩行、細めの手足が模様のように描かれているピッタリとした服を着て、靴も履いている。
空を飛んだときの動きが、きめ細かい。パンチをしてこようとしてくる。スピードをつけて、パンチされれば一発K.Oの不安も出てきた。
気絶したら、死ぬかも。目も大きくて、逃げるのは、結構難しい気が。ピンチですごくヤバいが、今日は幸い新しい力の披露が行える状態だ。(地獄のトレーニングセンターで練習してきた)
「妖力点の影っ」
私は妖力点の影を纏って、半身半獣のような姿へ変化をした。大型犬に近い下半身だろうか。尻尾もはえた感じになっている。後ろの防御を、やってくれそうだ。黒い、犬。
木刀には今回やって来た大福ショップの妖力点の影を薄く、纏っている。(身体の方も部分的に少し、影のオーラを纏っている)
ただ正直、木刀が武器で四本足では動きやすさではベストではない感じも、する。
「皆さん、安心して欲しい。この木刀に影を連れて来れるというのは、解決策がある。…勝負だ」
人間状態なら、言葉だけですぐ、終わるんだろうけど今は妖魔だ。簡単では無い。ピクッと反応しただけだ。
攻撃だ。「粒餡、一筋、はじけ武士の一発打撃」影が粒餡のように攻撃をプチプチッとして、それをテンション高めにする。
「ムギギッムギ」
しかし、トンボに真剣白刃取りを、されてしまった。けど、影も付いているんだから、攻撃のダメージは少なくても受けているはず…。
わっ、結構トンボなのに力が強い。…ヤバッ。
でも、鬼襞さんが跳び膝蹴りをしてくれた。妖魔が一体、壁までぶっ飛んでいってK.Oだ。
助かった、本当にヤバかったからな。
「粒だけじゃ無い、コシ餡やカスタード…」影で広がりを得ている、ネットが開いていくような攻撃。二、三体動けなくなった。
時間が経って…。
「別のやり方で餡こを、極めるべきでしたね」
「ありがとう、そう言ってくれて」店主は反省をした顔で言った。
「粒餡が好きなのも本当なんだ。フルーツの種類を増やしてみるよ」
続く
まだ、やらないの。