第 十一 回
少し落ち着いてから店主に、事情を聞く。
「こだわっているので、値段を下げたくないって思ってしまって」
「それで上の鍵盤じゃなくて、下のペダルを踏むときに思いが出てしまったんですね」
奥の方に絵らしき物がたくさんあるような感じで見えたので指摘してみたのだ。
「ますます意地になって絶対値下げしないぞって。このままだと切れてしまっていたかもしれませんでした」
こんな絵のある場所で危なく切れてしまえば、絵が破損して台なしになってしまう。高い物だと数十万、一番だと二、三百万円だ。色んな人に金銭的、被害が出てしまっただろう。
ピアノのペダルは予備見さんが『異界・解除フラッシュ』をする前に「妖力点・アップ」とパチッと目をつぶってまた、開くと、ピアノが現れてきた。これも幻の存在であるらしい。
ペダルを鬼襞さんがいつものように殴り、壊したが現実に戻ってみると妖力点も得たのに壊れていなかった。
予備見さん、凄いなって私は率直に感じていた。
三、四日後、色について、気が付いた。
黒かと思いそうになったけど濃いグレイという感じの色。
どういう感覚で、あったか。
絵の具で白を塗っていると、他の色に当たってしまい、色が白から他の色に変化して、気付くとグレイとかになっていたりする。
濃いグレイだから、ある程度ぐらいは葛藤をした感じが見受けられる。だから、商売関係かなって思いついたのだ。
〈丼ショー〉
様々な調理をした丼と食器の丼鉢の販売を楽しげな飾り付けで行っている店。妹がイラストレーターなので安値で飾り付けを作って貰えるのだそうだ。家族にも恵まれた運もあるんだなと私は感じた。幻・世界でこういう幸せそうな店に、被害もあんまり出さずに済むし。妖魔が全く出なければ一番、最高なのに。予備見さんが新たな戦力で助かっている、とはいえ。
他にも、好きな丼を選んで食べられる。月に二度程は丼の料理教室も行われている。サービスも、充実だ。ちなみに、サラダ丼が女性の間で人気。いかに、ドレッシングで、下のご飯まで食べられるのかを挑戦しているそうだ。
妖力点はすぐに、見つかった。主にお一人様用の十二人迄使える学食とかホテルの食事場のような大きさの長机の上に手を置く。しっかりとした、オレンジ色になった。けど、まだ色の変わりが半端だと体感で感じた私は机の裏に、手を触れる。黄色っぽいオレンジの色に手が変化した。アレッ、今までに色が薄くなった方が反応が強いってなかったな。少し、珍しいパターンか。
大人数の長机は二つあった。で、これはキッチンに近い方か。一か八か聞いてみようかな。「丼のメニュー多いですよね、九十五種類ですか?」
「すみません…ゥウゥ」店主が言う。妖魔化しそう。
「冬美さん、幻・世界に行きましょう!」
「…アッ、はいう――ん」
「予備見・異界・フラッシュ」
また幻・世界へ訪れてしまっているな。
妖魔は魚人間だ。横のひれは膨らみがあり、先には鱗の人間っぽい手になっている。足の部分は鶏の足のように二足に分かれていて長靴みたいな物を履いている。
ドライヤーみたいなバランスである。
つまり、お腹の辺りから足がはえていた。顔の後ろの方は尾びれまではえていた。
さて、いつも通り私への攻撃が多いのかと思いきや他の十六、七の妖魔は店主に攻撃をしようとしている。店主は大人しめの妖魔になっていた。
取り敢えず守らないと。予備見さんが、肉体強化で「安定回転キック」
ツルンッ。アッ、ぬめりけで攻撃があまり効かないタイプか。しかも、魚人間は口から水鉄砲玉・砲撃のようなものを出している。
予備見さん、サッとよける。当たった地面は何センチか剃りとられている。「結構、危ね――っ」私はたまらず言う。
続く
すぐにもう一話書かないと、この後どうなっちゃうのか…。果たして?




