ミッションだ、スネーク
信念を貫き通す親愛なる友人に捧げる
「問題が発生した。」
そう言ったのはうちのトップ二人の片割れ、グンシンさんだった。
「みんな、以前から特定の時刻になると街に不審者が出てくることは知っているな?」
会議に参加している一同は肯いたり、難しい顔をして黙っている。僕を含めてその不審者を相手に何度も捕縛、撃退任務が下されているため、当然皆知っていた。が、
(んん、なんで今更会議で言っているんだろう?)
そう、何故かこの街では、1230、1930頃の1日2回、まるで痴女のような格好をした女性が暴れ回っていることは、誰もが知っていることであり…攻撃を繰り返すと霞のように消えていくため正体は以前謎ではあるのだが…魔王軍も治安維持の一環として速やかに対処している。対処法は確立されており、最近では出現と同時に即消えていくため、巷の住民には見ることが出来たらラッキーぐらいの扱いである。実際見た目はそれなりの美女の艶姿と言えなくもないので、気持ちはわからなくもない。僕にはわからないけど。
色々考えていたら、他の人もやはり疑問だったのだろう。少し、ざわめき出す。
「今回、コードネーム【姫】の拠点、と言うのもおかしいが、発生原因となる場所を突き止めた。速やかに排除したいと考えているが、「待て」」
遮ったのはチャンプだった。普段あんまり喋らないからちょっと珍しい気がする。
「長い。結論、処すか」
「いや、処さない。いや、おい、待て。まだ会議は終わってないぞ」
「…」
いや、全然いつものチャンプだった。あぁ、グンシンさん頭痛そう…
「あー…話を続ける。そこには我々転移者ではないが、特異な力を持った人間の私有地で、また、特殊な訓練を行う施設となっていることが判明している。現地民風にざっくり言うと仙人と仙界だそうだ。」
なんだかとんでもワードが飛び込んできた。まぁパワーワードと言えば魔王軍とどっこいどっこいだけど。
「現段階での脅威は未知数ではあるが、現在街で起きている現象が、意図的に起こされたものであるならば、我々に対し敵意を保持している可能性は十分にあり得る状況だ。」
「そのため、一定以上の戦闘能力を保有しかつ、隠密行動がとれる者が潜入を行い、必成目標として、情報収集を、望成目標として、交渉または殺害等による無力化を実施してもらう。」
任務はもっととんでもだった…え、ナニコレ、いや、死ぬでしょ。仙人だよ?謎パワーとかでやられちゃうんでしょ?知ってる知ってる…死んでも僕たち復活するけど。死ぬ前提の任務ってブラック過ぎやしないかなぁ。やる人可哀相に…あっ…
「なお、人選については既にこちらで選定済みだ。ロリロ、君に行ってもらうから」
(しまったー!変なこと考えなければ良かった、アレ絶対フラグだったよ、なにやっちゃってんの僕!?)
僕は知っている。こういう時のグンシンさんは絶対に意見を変えない。決定事項だ。だけど僕も死にたくない。限界まで足掻いてみせる。
「せ、潜入なんてできま「この地区の幼年学校、各公共施設、これは入浴施設を含むが、13歳以下の女子児童に対する犯罪は0件だそうだな、あぁ、未遂は相当数上がっているらしいが。何かこの件について知らないか?ん?」」
ば、バレてる。これ絶対バレてて、こういうときのために泳がされてたやつじゃん!いいじゃないか!僕はただ眺めてただけ。勿論見つかって不快感を与えるようなヘマはしない。それどころか手を出そうとした紳士のなり損ないを、尽く片付けてきたんだからむしろ表彰されてもいいんじゃないか!?(錯乱)
「な、なんのはなしですか(震え声)」
「ほぅ?…」
ヤバい。怒ってる。怒ってるよーやめてー近付かないでー
ほぼ密着状態まで近付いたグンシンさんは僕の首を抱えこみ、小さな声でこう告げる。
「…仙人は、修行を開始してからしばらくすると老化が止まるらしい。つまり、若い頃から修行してきた仙人の姿は…」
…!?
「更に言うとだ、見た目は色々アウトでも実年齢は問題ない。つまり…タッチも許される」
「あ、僕行きます!任せてー!!」
見るのが好きではあるけど、許されたならやらないのは逆にスゴイ失礼なのでタッチせざるを得ない。いやー、ツラいなー、本当はそんなでもないんだけどなー。
僕はその後ダッシュで出発した。
「会議終わってねーぞ」
グンシンさんは頭が痛そうだった。
次回、さらば師匠、シリアスさん暁に死す。
シリアス「最初から息してねーよ」