罪
リスカ表現あります。
読んで戴けたら倖せです。
「母親と言っても二十代後半の女盛り、そんな女性が、父の様な貞淑と献身しか妻に求めない様な男に満足できる訳が無いんだよ
彼女は教養の高い、優しい女性だったから、聖詞は直ぐに夢中になった
彼女が好きな音楽を愛し、彼女が好きな小説を愛し、やがて彼女自身を愛する様になった
そして、仕事ばかりを優先する父に不満を抱えていた彼女は、いつしか聖詞の想いを受け入れてしまったんだ」
隆一朗は、いつか瑞基を待たせた喫茶店で真聖と向かい合って座っていた。
真聖は六年も離れていた息子が、立派な大人になった姿に見入っていた。
「随分、身長が伸びたな」
隆一朗は目を伏せ、タバコに火を点けた。
「ええ、二十二歳になりましたから」
「何か不自由は無いのか? 」
「特別、不自由は在りません」
「今更なんだと思うかも知れないが、情けない話だがお前を許すのに今まで掛かってしまった」
「許す必要は在りません
許されたくもない」
真聖の表情が少し険しくなった。
「だが、お前はわたしの息子である事に変わりは無い」
隆一朗はタバコを揉み消し、立ち上がった。
「もう、お話する事も無いでしょう?
友人を待たせているので」
「聖詞」
真聖は隆一朗の手を掴んだ。
「ボクはあなたの妻を寝取った男です」
隆一朗の手を掴んでいた力が緩み、ほどけた。
「そして…………………」
隆一朗は眉をひそめて言った。
「死に至らしめた男です」
隆一朗は、呆然と立ち尽くす真聖を置いて店を出た。
「聖詞との関係が親父にバレて、彼女はあっさり風呂場で手首を切って死んだ
残された聖詞の衝撃は想像を絶した
何度も手首を切って、彼女の跡を追おうとして死にかけた
それでも聖詞は死のうとするのを止めなかった
罪の意識に耐えられなかったんだ
自分さえ愛さなければ、彼女は死ぬ事は無かったのだと、自分を責めていた
だから、俺は聖詞を殴りつけ、罪の意識があるなら生きて苦しめと言うしかなかった
そんな残酷な言葉でしか聖詞を繋ぎ留める事ができなかったんだ」
瑞基は隆一朗の身に起きた悲劇に、胸が潰れそうだった。
それでも、隆一朗の苦しみを知りたくて、俯いたまま聖流の話に聞き耳を立てた。
「聖詞の苦悩はそれだけでは済まなかった
彼女は聖詞の子供を身籠っていたんだ
多感な思春期の聖詞にとって、男としての機能を封印するには余りある衝撃だった
聖詞は総てを失った
普通の高校生活、普通の将来、帰る家、男としての機能、生きる気力………………
何もかもだ」
瑞基の目から涙が溢れた。
『隆一朗はただ、一人の女性を純粋に愛してただけなのに…………』
聖流はハンドルを叩いて俯いたまま、ぎりぎりと拳を握り締めていた。
読んで戴き有り難うございます。
m(_ _)m
私がいつもお世話になっている水渕成分先生の新作が今、午後9時に連載されています。
タイトルは「感情を失くした少年戦士が笑顔を取り戻すまでのお話」。
タイトル間違って無いといいのですが。焦
頭悪過ぎて憶えられないんです。(TT)
今回はハイファンタジーです。
私も、更新されるのが楽しみで読まさせて戴いてます。
私の作品はすさんでいるので(笑)、ほっこりしたい方は水渕成分先生の作品で心温めて戴けると、精神のバランスがとれて良いのではないでしょうか。




