表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/74

バックステージで

 読んで戴けましたら倖せでございます。

 瑞基はフロアからステージの隆一朗に釘付けになっていた。


 その日の隆一朗は無造作に銀髪を垂らし、タートルネックのノースリーブと細身の皮パンツの黒一色に身を包み、腰に赤と黒の絡み合う柄のスカーフを三角に折って巻き付けていた。


 その日、二百人入るハコはほぼ満員で、バートリーはとりを務めた。


 バートリーのステージはこれでもかと言うほどオーディエンス熱狂させ、隆一朗は銀髪を振り乱し、汗を輝かせて狭いステージ上で白いストラトキャスターを狂った様に掻き鳴らしていた。


 瑞基の目は、もう隆一朗以外の何ものをも映さず、隆一朗の掻き鳴らす、うねるギターの音に抱かれ、興奮で身体がある事さえ忘れてしまっていた。




 ライヴが終わりバックステージへ行くと隆一朗は廊下の壁に(もた)れ、座り込んでいた。


「隆一朗! 」


 瑞基の声に反応した隆一朗は、ぼんやりと視点が定まらない様だ。


 傍に居た聖流が隆一朗の頭にタオルを降らせた。


 瑞基の後ろから聖流を呼ぶ声がした。


 瑞基が反射的に振り返ると、例の美少年、央が立っていた。


 央は真っ直ぐ聖流の傍まで行くと、聖流の首に腕を巻き付け耳打ちした。


「今夜、初めて逢った公園で待ってるから、必ず来て」


 そう言うと去って行った。


 来客は、それだけでは済まなかった。


 瑞基が隆一朗の傍へ駆け寄ると、今度は「聖詞」と呼ぶ声がした。


 隆一朗が声の方へ視線をやると、隆一朗の表情はみるみる蒼冷めて行った。


 聖流が思わず「親父」と言った声に瑞基も反応した。


 そこには白髪交じりの、初老のサラリーマン風の男が立っていた。


 藤岡真聖、隆一朗と聖流の父親である。


 一瞬、時が止まった。


 隆一朗は壁を擦るように立ち上がった。


 瑞基は、顔を見て隆一朗が酷く動揺しているのが解った。


「聖流、瑞基を頼むよ

 またお酒でも飲まされたら大変だから」


 隆一朗は藤岡真聖から目を離さずに言った。


「瑞基くん、行こう」


 聖流は、呆然と突っ立っている瑞基の肩に手を添えて促した。


 瑞基は隆一朗を視界が許す限り目で追った。


 そして、すれ違いざまに真聖を一瞥して、その場から離れた。


 駐車場への道すがら聖流が訊いた。


「聖詞が心配かい? 」


「隆一朗、真っ青だったから……………

 あの人、隆一朗のお父さんなのに、なんであんな顔………………」


「君は聖詞から、どの程度聞いてるの? 」


「何をですか? 」


「悪夢に出て来る女が誰なのかとか………………」


「それは聞いてます、隆一朗の恋人だって」


 駐車場に着くと車に乗り込んだが、聖流はエンジンを掛けることを躊躇していた。


 聖流は迷っていたが、やがて静かに話し始めた。


「聖詞の恋人と言うのは藤岡真聖の三人目の妻、俺達には義理の母親になる人なんだよ」


 瑞基は目を大きく見開き、聖流の顔を見詰めた。


 心臓の鼓動が速度を速めた。






 読んで戴き有り難うございます。

 いよいよ、隆一朗の過去が瑞基に明らかになります。

 隆一朗って、つくづく薄倖の美青年なんですよね。

 そんな隆一朗を私は愛して止まない訳なんですが。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ~~~(◎_◎;) 感動のコンサートの後に、悪玉登場かと思いきや、お父様。 しかもメロドラマのような驚愕の事実‼ なんかドロドロの展開になりそうですよね。 しかし三人目の妻って、どれ…
[一言] はあ。これは驚きの展開です。 伏線をこう生かすんですね。 お見事です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ