40.真夜中の決戦・中編
時間は戻り、午後11時・街中
スタッフの運転する車にメイディア、ミュアを乗せて街中を回っていた。散らばった人たちの安全を確保することも重要であり、今の時間なら戦闘を避けれるからである。他のメンバーは作戦に向けて待機中である。夜10時から始めたのだが黒点の一つは素早くなかなか追いつかない。他の二つはずっと半透明のままである。地図はメイディアが持っており、もう一度確認する。
「えーっと、黒点一つに追いつきました。・・・やっぱり残り二つは半透明になってよく分かりません。」
ミュアも一緒になって見る。赤い点二つと黒い点一つが近くにある。よく見るとこの点は路地裏にあることが分かる。
「ここの路地、・・・私だけで行ってくる。地図借りるね。」
ミュアは二人を車に残して路地裏へと入っていった。
路地裏はとても暗かったため、持ってきたライトを付ける。周りを見ても人がいる気配は全くしない。
数分捜す。地図ではここにいる点があるのに、やはり誰もいなかった。
「・・・・・・仕方ないか。」
諦めて路地裏を出ようとしたところだった。
ミ、ミャー
「・・・ん?」
何か鳴き声が聞こえた気がしたミュアは近づいてみる。
そこには、ゴミバケツの後ろには一匹の猫がいた。首輪がつけられており飼い猫であることが分かる。
ミャー
また一鳴きしてミュアの方を見ている。少し警戒しているようだ。
ミュアはニコッと笑い緊張を解いてしゃがむ。
「・・・大丈夫、こっちにおいで。」
手招きをする。猫は少しミュアを見ていたが、危害を加えないと分かったのか近づいてくる。
ミュアは猫を撫でてあげる。猫は気持ちよさそうにしている。どうやら人懐っこいようだ。
ミュアは地図を見てみる。さっきの黒い点は赤くなっており保護したと分かる。
「・・・猫なんだ。」
どうやらこちら側に来ているのは人だけではないらしい。
ミュアは猫を抱え上げる。猫は全く暴れようとせずじっとしている。
「・・・まずは屋敷へ。」
ミュアは猫を抱えたまま車へと戻っていった。
時間と場所は戻り、午前0時35分・船内
「えーっと、この子の記憶だと・・・・・・まずはここかしら。」
ミカゼ・・・いや、フィルディアが辿り着いた部屋は普通の客室のように見える。しかし、中は違うようだ。
「ここに泰人さん達の装備品があるみたいね。入りましょうか。」
フィルディアは部屋の中に入る。見るとやはり普通の客室みたいだが机の上に物が入った袋が置いてあった。中を見てみると、ラルゴや白い石、ドライバーセットといった物が入っておりすぐに泰人達の荷物であると分かった。
「では、早速持って行きましょうか。」
フィルディアが袋を手に取ろうとした所だった。
ガチャッ
「え?」
突然ドアが開く。そして入ってきたのは
「あら~、ミカゼちゃんどうかしたの?」
フロンだった。すぐにティルスが目に入る。
「ティルスくんを捕まえたのね。それで彼の装備品をここに置きに来たのかしら。」
その一言は驚いて頭が回らないフィルディアにとってはこれ以上ないチャンスだった。
「そ、そうなの。今から檻に連れて行こうと思って。」
「そうなのね。なら私が見張りを代わるわ~。それじゃあ宜しくね。」
フロンは完全に信じていた。そう言ってゆっくりとした足取りで部屋を出て行った。
「危なかったです。」
何とか乗り切り一息つく。だが新たな問題が出た。フロンが入り口へ向かっていった、ということは・・・
「合流させるのは危険ですね。ひとまずヴィントルさんに連絡をとりましょう。」
フィルディアはティルスのポケットから通信機を取り出す。ティルスの持ち物は指輪以外とられていない、というよりもサロンがミカゼにその辺りは任せたからだ。まぁ、今ミカゼはフィルディアなのだが。
フィルディアは通信機でヴィントルに連絡をとる。
「そちらに長女が行きました。次女を合流前に倒してください。」
「言われるまでもない。」
そう一言返事がきて通信が切れる。
「では行きましょうか。」
フィルディアは袋を持って泰人達が捕まっているであろう場所へ向かっていった。
船入口
「ふむ、では早速行くか。」
ヴィントルは急降下していきなりサロンの目の前に現れる。
「え?」
身構えていたとはいえ一瞬で現れたヴィントルに動揺するも、冷静に距離をとる。
「き、来たわね。さぁ、出てきなさい。私の僕達!!」
そう一言言うと船の上に配置されていた小屋らしきものから次々に狼が出てくる。
彼女はオスならば動物も自由に誘惑できるようだ。全部で8匹ほどいる。
「ふむ、なかなかおもしれえじゃねえか。」
「余裕ね。それがいつまでもつかしら?」
サロンは狼たちに指示を出すと一斉に攻撃の体制に入る。
それを見てヴィントルはニヤリと笑う。そして走り出す。
「やりなさい!」
サロンの言葉で攻撃しようとした狼たちだったがヴィントル行動により動けなかった。
そう、彼はそのままの勢いでサロンに抱きついた。
「・・・ちょっと!?」
サロンは動揺した。ヴィントル・・・いや、莉麻に抱きつかれたのだ。
自分よりも体型が小さいわけだがいきなりのことで動揺し、それが狼たちにも伝わったのか狼たちも慌てふためいている。
「あらゆる状況にも対応せねば真の戦士とは言えねえよ。さて・・・。」
「・・・し、しまった!」
しかしもう遅かった。ヴィントルはすでにサロンの頭に手を置き呪文を唱えていた。
そして唱え終わる。
「・・・ぐぐぐ。」
サロンは必死に耐えていた。ミカゼはすぐに寝てしまったが彼女は耐えている。
一応一般人よりも精神力は高いようだ。だがヴィントルの力のほうが上回っていて気を抜くと意識を失いそうだった。
ヴィントルは彼女が耐えることまでは読んでいた。そう、彼女に意識を保つことに集中させることが目的だったのだ。
アオーン
狼たちはコントロールを失って小屋に戻っていく。
どうやら魅惑が切れると元の場所に戻るようになっていたようだ。
そして、狼たちの効果が切れたということは・・・
「あらあら~、ごめんなさいね。遅くなったわ。」
それから少し経ってフロンがようやく到着する。
そして、彼女が見たのは
ドサッ
自分の妹が倒れるところだった。
「サロン!?」
咄嗟に駆けつける。先ほどと違い俊敏だった。本来彼女はそこまで遅いわけではないのかもしれない。
「フ、フロン・・・。」
今にも気を失いそうだった。だが彼女は最後の力を振り絞って何かを伝えたそうだった。
「サロン・・・。」
「ごめん、私はもう駄目みたい。だから約束して欲しいの。」
そしてサロンの目から涙が流れる。
「後はお願い、お姉ちゃん。」
そう言ってその身体は光となって・・・消えた。
「ふむ、こんなものか。」
ヴィントルが一息つこうとする。
フロンは彼の方を見る。いつもの穏やかな表情ではなくとても悲しみに満ちていた。
すると船の中から誰かが出てくる。それはミカゼと・・・
「な・・・なんで!?」
泰人、スィング、ティルス、武者蜥蜴隊のリーダーだった。
全員術が解けピンピンしていた。リーダーは無表情だったが。
「おう、ヴィントルと莉麻か。助けに来てくれてありがとよ。」
泰人達は再開の言葉を交わしていたが、フロンはもう何も考えられなかった。
するとミカゼが彼女の目の前に立つ。そして
「・・・ごめんなさい。」
そう言うと、力が抜ける。慌ててフロンが支える。そしてすぐに何かがミカゼから抜けると目を開ける。
「ミカゼ、大丈夫?今すぐ・・・」
「ううん、操られた私が悪かったの。それより約束して欲しいことがあるの。」
聞きたくなかった。ミカゼの最後の言葉なんて。だけど、彼女は聞くしかなかった。
「後はお願いね、お姉ちゃん。」
そう言ってサロン同様光となって消えた。
「では僕はこれで。今回の礼は必ず返すから。」
そう言ってリーダーはその場を去った。
ティルスはサロンが消えた場所を調べる。すると返信の指輪が落ちていたことに気づき拾った。
泰人はヴィントルと莉麻、ティルスと融合の腕輪にいるフィルディアにお礼を言うとフロンを見る。
「・・・・・・・・・・。」
フロンは立ち尽くしていた。目の前で妹達二人がやられてしまい傷心状態だった。
「・・・あの」
泰人が話しかけようとすると
「・・・そうですね。いつまでも悲しんでいても始まりません。」
そう呟くと両手で杖を持ち、それを前に出す。
「・・・おい、あれはやばいぞ!!!」
ヴィントルが気づくも既に遅かった。
フロンの目の前に門が出現しそれが徐々に開いていく。
「すみません、妹達のためにも本気で勝たせてもらいます。覚悟してください!!」
そこから出てきたのは・・・巨大な海蛇だった。
続く
どうでしたか?
また次も見ていただければとても嬉しいです。