37.攫われた泰人
実験台になっているのはまだ小さな男の子、女の子でした。
私達は見ていられずに止めに入りました。結果は目に見えていますけどね。
私達は捕まり城の牢屋に入れられました。救いだったのは妹達と一緒だったことですね。
そしてそこで衝撃の事実を知ることになったのです。そう、クリスタ王国の裏側を・・・
ティルスが光ったことに対してサロンは不審に思う。彼女の力では光は発生しないからだ。魅惑の力が作用するのは肉体と精神である。精神力が高ければ抵抗はできるが肉体にも魅惑が掛かっている為動けなくなるのだ。
そして光が止むとそこに立っていたのは・・・
「・・・またこの格好になるんですか。」
女の子ティルスが立っていた。
数秒前
ティルス達が部屋で休んでいるといきなり見ている景色がビーチへと変わった。
ティルス達がパニックになったがミュアは落ち着いていた。敵対組織の仕業と分かったからだ。
「ティルス!こっちを見なさい。」
「はい?」
ついティルスはサロンの方を向いてしまった。
「馬鹿野郎!!そっちをみるんじゃねええええええええええええええ」
ヴィントルは叫ぶ。だが時すでに遅く彼女を視界に入れてしまった。
「これで終わりね。」
サロンの目が妖しく光る。ティルスは何か嫌な予感がしたが目を逸らすことができなかった。
それに対しミュアは瞬時に周りを見て泰人、スィングが動けずヴィントルが動ける今の状況を理解した。
すぐにティルスにテレパシーを送る。
「(・・・・・変身の指輪で女の子になって。)」
「え?」
ティルスは意味を理解していなかったがミュアが何か考えていることは分かった。
何よりこのままでは何か大変の事が起こりそうな予感がしていたのだ。ならばミュアに従うしかない。
瞬時に指輪を身につけると彼は光に包まれた。
そして今に至る。
「あらあら?」
「ちょ、ちょっと!そんなのありなの?」
「え?」
サロン達が明らかに動揺している。それだけこの作戦には自信があったようだ。
ティルスはもじもじしている。
「・・・とりあえず最悪の事態は免れたみたいですがこれ恥ずかしいです。」
変身の指輪では服装は変わらないため男の時のままである。
「・・・・・・加勢する。」
今がチャンスだと思ったミュアはヴィントルに近寄り肩に手をおく。
「・・・私の力使って。」
「よし、あれやるか。」
悪魔の一撃でまな板は粉々になってしまったがそれがヴィントルには都合が良かった。
右腕で高速に空中に闇の術式を描き、完成する。
悪魔は一撃を放った後なので体勢が崩れている。
「いくぞ、闇印・ダークスピア!」
術式から黒い槍が飛び出す。前と違い1本だけだが大きい。
それは悪魔の左腕を貫く。
「ぐぎゃああああああああああああああああ!!!」
悪魔は絶叫し消えた。どうやら命の危険になると送り返せるらしい。
「!?」
フロンは驚く。さっきよりも更に驚いている。
ヴィントルの攻撃にではない。傷ついた悪魔のことだった。
常にニコニコしていたフロンから一瞬笑みが消える。
両手で杖を持ち、それを前に出し・・・・・
「駄目!!」
ミカゼが止める。どうやら何をしようとしているか分かったらしい。
「あれだけは駄目だよ。ここはじっと耐えないと。・・・あの子達の為にも。」
「・・・そうね、ごめんなさい。」
フロンは両手を下げる。どうやら思いとどまったらしい。
「・・・・・退き時かな。」
サロンがフロンに目配せをする。
フロンは頷くと自分たちの足元に陣を出現させる。どうやら一度退くようだ。
ヴィントルが見ると泰人、スィング、男が捕まっているステージの檻にも同様の陣が展開されていた。
「まずいな。」
ヴィントルが動こうとしたがもう遅かった。陣はすでに機能を始めていた。
「今日は一度退かせてもらうわ。次会う時にはあんたたちも倒してやるんだから。」
「泰人さん達は預かっていきますね。ではでは~。」
再び笑みが戻ったフロンによって移動が開始された。
「だ、駄目ええええええええええええええええ!!」
「お、おい!」
ヴィントルと無理やり分離した莉麻は泰人の手を掴もうと手を伸ばす。
「・・・頼んだぜ。」
「え?」
莉麻にはそう聞こえた気がした。
そして莉麻の手は空を切った。
続く
どうでしたか?
また次回も見て頂けたら嬉しいです。