35.恐怖のステージ
あたしたちは3人いつも一緒だった。
両親もいなくて貧しかったけど、町中で3人歌ったり踊ったりして過ごす毎日があたしは好きだった。
でもそんなあたしたちの運命を変える出来事がある日起こってしまった。
そう、あの場所・・・クリスタ王国で。
ヴィントル達はあの後車に乗り込み町外れを目指した。
移動中、雪美は泰人にあらかじめ渡しておいた通信機で連絡をとり廃屋で合流するようにと約束をした。
町外れの廃屋は誰も人がおらずここ最近使っていた形跡もなかったため利用させてもらうことにした。
そして少し経って泰人達がやってきた。メイディアはお初だったので軽く自己紹介をし、今までの経緯を説明した。
「・・・なるほどな。まぁ、気が向いたらその迷い込んだ奴を助けてやらんこともない。」
ヴィントルはそう言ったが残りのメンバーはそれが照れ隠しであると瞬時に分かったが言うことはなかった。
そしてこれからの作戦を立てることにした。
午後12時40分・廃屋内
「はい、それでいきましょう。」
作戦はこうだった。
ビーチで行われるライブ、これによってどのようなことが起こるのかの確認に泰人、ヴィントル、スィングが向かい残りはここで待機。ミュアとティルスはは何かあった時のための見張り。
このように決まった。
「何があるか分からないから車は使わない方がいいな。移動は徒歩にしようか。」
「分かった。」
泰人とスィングも移動方法を決めて出発しようとした。
「あ、あの!」
「ん?」
メイディアに話しかけられて振り向く泰人とスィング。
彼女は何か言いたそうにしていたが首を横に振り言うのをやめたようだ。
「頑張ってください。」
その言葉を受け3人は廃屋を出た。
「さて、俺様は先に行くぞ。お前たちも早く来い。」
ヴィントルは何かを呟くと背中から黒い翼が生えて飛んで行ってしまった。
泰人達はボーっと見ていた・・・
「って、俺達場所知らないんだよ。待ちやがれ!」
が我に返るとヴィントルを追っていった。
午後13時・ビーチ
会場には30人の参加者である男たちが今か今かと待っていた。一般人はどうやらこのイベントには来ていないようだ・・・というより門前払いらしい。
見た所女性の姿はない。どうやらこのゲーム自体の参加者は男性がほとんどのようで女性はこのイベントには興味を持たなかったようだ。
「実は俺、ビギンクガールズって知らないんだよね。新しいアイドルグループなのか?」
「何でもこの大会のために他国で有名な3姉妹の踊り子を主催者がスカウトしてきたんだってさ。」
「マジかよ、じゃあ期待できるな。・・・・・お、始まるみたいだぜ。」
ステージに3人の女の子たちが上がってきた。そう、ビギンクガールズだった。
「やっほー、みんな集まってくれてありがとう!」
「ま、どうせ能力アップの為だけに来た人がほとんどなんでしょ。」
「まぁまぁ、それよりも今日は楽しんでくださいねー♪」
3人別々のあいさつをしてライブは始まった。
同時刻・町外れ
「おい、貴様ら。やる気がないなら先に行くぞ。全く体力のない奴らだ。」
ヴィントルは空を飛びながら呟く。
泰人とスィングは走ってなんとかヴィントルに追いついていたが流石に疲れてきたのかペースが落ちてきた。
「いや、無理だって。・・・はぁはぁ、ずっと全力とか無理あるっての。」
ヴィントルの飛ぶ速度は泰人達が全力で走ってようやく追いつくくらいだった。
どうやら加減はしているようだがやはり無理があるようだ。
「・・・仕方ない、地図を落としていくからそれを見て来い。早く来いよ!!」
そう言ってポケットから地図を取り出し地面に話すと同時にスピードを上げて見えなくなってしまった。
「持ってるならもっと早く渡しやがれええええええええええ!!!!」
泰人の叫び声が辺りに響いた。
そんな泰人達を更に上空で見ていた二人の翼を生やした子供がいた。
男の子と女の子、双子のようだ。
「今のが茅野泰人、スィング、茅野莉麻・・・じゃなくてヴィントル。今いないのはティルス、ミュア、雪美様、一般人2名といったところかな。見た所かなり強そうなメンバーだけど、僕たちの敵じゃないね。」
「だね。私の見た所、海の隊を倒せる確率は6割かな。私たちを倒せる確率は1割・・・っと。私たち、空の隊の敵じゃないけどあの姉妹には辛うじて勝てるかも。・・・ステルスして見てみようよ。」
「分かった。彼らの力を間近で見たいのは僕もだから。さぁ、行ってみようか。」
そう言って二人は姿を消した。
場所はビーチに戻る。
あれからライブは順調に進み、1曲目、2曲目と終わっていく。
ステージは盛り上がり参加者達も能力アップのことなんて忘れて楽しんでいた。
そんな中武者蜥蜴隊のリーダーは裏方の仕事をしていた。
「・・・あれ、こんなはずじゃなかったんだが。」
何も起こらないステージを見て拍子抜けしていた。彼はステージ開始と共に何か起こると考えていたためここまで順調に進むと逆に不安になったのだ。
「彼女たちがこのまま何もアクションを起こさないでライブを終わらせるなんてありえない。・・・何かあるはずなんだ。」
ついついステージに集中してしまう。
それを三女は見逃さなかった。彼女はすぐに次女に合図を送る。
次女はそれに頷き前に出る。
「さぁ、次はあたしのソロでいくよ!みんなちゃんと見なさいよね。」
すると彼女の衣装が一瞬で変化する。一気に露出度が上がり際どい衣装になり、それに男たちは釘づけになった。
「じゃあ始めるわよ!」
こうして・・・禁断のステージが始まった。
「さて着いた・・・・・・!?」
それから少し経ってヴィントルが到着する。
そして彼は見たのだ。男たちが三人の少女に跪いている光景を。
「さてさて、皆さん。この手配書に載っている人達を倒しちゃってください。お願いしますね。」
そう言って長女が一枚の紙を取り出す。それは泰人達が載っている手配書だった。
スィングも追加されている新バージョンのようだ。因みにスィングを倒したものには様々な宝石を与えると書いてある。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
男たちは雄叫びを上げる。どうやら普通じゃないようで狂っていた。
ふと見るとステージには檻があり一人の男が捕まっている。
どうやら武者蜥蜴隊のリーダーのようだ。
「さて、あんたもまんまとかかってくれたわね。精神力が強いみたいだから身体の自由が利かないくらいで済んだみたいだけどね。」
「・・・・・・。」
男は喋らない。どうやら口を利く力も残っていないようだった。
ヴィントルは瞬時に理解した。このステージはやはり罠で参加者を手駒にするつもりだったのだと。
流石に分が悪いと判断しその場から離れようとするが
「・・・!姉さん達、そこに誰かいるよ。」
三女が気付く。同時に残りの二人も見る。遠くの物陰から見ていたのだが気付かれてしまった。
逃げるのは無理だと判断したのかヴィントルは素直に出てくる。
「よく気づいたな。結構やるじゃねえか。」
「あ、ありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げる三女。何敵にお礼言ってるのよと次女に叩かれていた。
「貴女は茅野莉麻さん・・・ではなくヴィントルさんですね。うふふ、早速この人達と戦ってくれませんか。」
長女がそう言うと男たちは一斉にヴィントルに襲い掛かる。
「・・・上等だ。こんな奴ら蹴散らしてやるぜ。」
そしてヴィントルも戦闘態勢に入った。
そんな中泰人達はまだ走っていた。
「いやいや、俺っちそろそろ限界だな。」
「・・・もういいよ。後少しで着くから歩いていこうか。」
といって歩き始めた。
彼らが着くまでもう少しかかりそうだった。
続く
どうでしたか?
次も見てもらえたら嬉しくて感動です。