ティライズ
ロンロンの弟子です。今回はついに料理教室の話です。少し話も動きます。それではどうぞ!
泰人達が元の世界に帰ってすぐのこと。ディオールのとある街道を歩く変な人の姿があった。
彼の名はシュパルツ。泰人にやられたが、すぐに意識を取り戻しテミールから結構離れた街道を移動している。どこかに向かっているようだ。
「とりあえず、あいつの所に行きましょうか。」
そう呟くと、しばらく道なりに歩く。
10分くらい歩くと、町が見えた。町の名はゴルデールといい、お金持ちが暮らす街だ。シュパルツはその中でも最も大きいお屋敷に入った。そこのメイドたちに連れられ、大きな客室に通される。そこには一人の少年がいた。
彼の名はティライズ。王子である。今は用事がありこの町にいる。
「久しぶりですね。元気そうでなによりです。」
嫌な笑みを浮かべながら話すシュパルツ。
「・・・何しに来た。要件を言え!」
ティライズは不機嫌そうに話す。
「まぁ、落ち着いて。ついにティルスを見つけましたよ。」
「何?」
ティライズは驚いた。行方不明だったもう一人の王候補が見つかったのだ。無理もない。
「彼には何もしていないだろうな?」
その言葉にシュパルツは笑みを浮かべ
「今のところは何もしていませんよ。ただし、面倒なやつが護衛をしていましてね。早めに消します、あなた様のために。」
「ふざけるな!私は彼こそ王にふさわしいと思っている。人や精霊に好かれ、時空転移も使える彼こそ適任だ。貴様らのふざけた情報操作のせいで彼と敵対してしまった。消えるのは貴様らだ!」
ティライズは興奮して話す。貴様らと言っているところを見て、シュパルツには仲間がいるのだろう。
「そうはいきませんよ。我らはあなたになっていただかなくては困るのですから。それではこの辺で。」
そう言うと姿を消すシュパルツ。
「・・・こうなれば早くティルスに会わなくては。」
考え込むティライズだった。
場所と時間は変わり、茅野家
土曜日だというのにいつも通りに起きる茅野一家。・・・莉麻を除いて。
母は食事の支度をし、父は出勤の準備をしている。どうやら休日も仕事があるようだ。泰人は、休みの日は30分くらい家の周りを散歩している。今回はティルスも一緒だ。
8時になり父も出勤し朝ごはんを食べ終える。9時になりようやく起きる莉麻。母曰く、休みの日くらいは寝かせたいということらしい。莉麻も遅めの朝食をとり、料理教室に向けての準備を始める。
「お兄ちゃん、1時に文化センターだからね。私はケーキ作るから!」
「分かった、分かった。」
莉麻と母は出発し、家には泰人とティルスだけとなった。
「時間まで余裕あるし、ラルゴのメンテナンスでもするか。でもラルゴの後ろのネジ1本取れてんだよな。どんなネジも合わないし・・・・・。」
ぶつぶつ言いながらメンテナンスを始める泰人。後ろでティルスも見ていたが、表情は変わらない。
その後、適当に朝食を済ませて文化センターに向かった。ティルスは留守番だ。家から文化センターまで、自転車で5分ほどの近さなので時間はかからない。
ちょうど1時に着いた泰人。料理教室内では幼稚園児から老人まで、たくさんの人たちがいる。みんな講師の先生に教えてもらい頑張って作っている。その中でも一際目立っているのが母と莉麻だ。どうやらチョコレートケーキを作っているみたいで、とても手際がいいので皆の手本になっている。泰人は外の待合室から見ていて、それに気づいた莉麻が手を振ったので振り返す。
3時間ほど経ち、ようやくみんなの料理が完成した。試食の時間で泰人は母と莉麻のケーキを食べさせてもらった。元々甘いものが好きだった泰人だが、このケーキはいつも以上に美味しく感じられたみたいだ。
「うん、美味いよ。」
「莉麻が頑張ってたから、お母さんの出番が無かったよ。」
「えへへ、お兄ちゃん、いつでも作ってあげるよ。」
莉麻はとても嬉しそうだった。その後の片付けは泰人も手伝い早く終わった。友達と話している莉麻を見て、早めに帰ることにした泰人。
「母さん、俺帰るから莉麻宜しく!」
「はーい。」
文化センターを出て、いつもの道を走る泰人。しかし公園の前を通り過ぎたとき
「そこの少年。ちょっと止まってくれんか?」
見知らぬおじいさんに話しかけられた。公園の中のベンチに腰かけると、おじいさんが話しかけてきた。
「君が玄武の孫か。」
玄武というのは泰人の祖父の昔のあだ名である。
「・・・そうです。祖父の知り合いですか?」
「うむ、ということは君が泰人君か。実はな、君に話があるのだ。」
「話・・・ですか?」
泰人は聞いてみた。
「実は、玄武に君を任されてな。困ったことがあれば頼ってくれ。」
いきなりで泰人は混乱した。
「・・・例えば異世界についてとかな。」
その言葉に驚く泰人。
「ディオールについて何か知っているんですか?」
「まぁな。だが今は教えられん。本当に困った時に来なさい。」
そう言うと家の住所の紙を泰人に渡し、去って行った。泰人はあまり理解していなかったが、紙をポケットに入れると家に帰った。その後、老人のことを気にしつつも泰人は就寝した。
その頃、沙汰の家では
「よし、いい感じだぞ。もう少しだ。」
まだ何かやっていた。