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Mystic world  作者: ロンロンの弟子
悪夢編・予選1日目
68/115

33.武者蜥蜴隊VSスィング・後編

時間は戻り昨晩。

泰人とスィングはヴィントルから力をもらっていた。


「まずはラルゴ使いだな。お前のいつも使っている物、ラルゴ以外で何かあるなら出せ。」


「えーっと、やっぱりこれかな。」


と泰人が力をもらっている間、スィングは考えていた。今のままでは自分はお荷物ではないかと。勿論ここにいるのは場違いであることは分かっていた。だが知ってしまった以上何かしなくてはならない、そう考えていた。泰人達の役に立つことをしたい、サミーを絶対に助けたい、そんな気持ちだった。


「さて、次はお前の番だ。何かあるか?」


「えっ。・・・あぁ、これくらいしかないけどいいっすかね。」


スィングは美弥と呼ばれた少女から貰った白く光る石を取り出す。

それを見たヴィントルは黙った。

そして少し経ってスィングに聞く。


「こいつはどこで手に入れた?」


「えーっと青い森から行ける村にいた少女が洞窟の奥の方で見つけたって聞いたんすけど。」


「・・・・・・こいつは白魔石はくませきといって魔物が宿っている魔石だ。もう取れなくなったと聞いていたがまだ残っていたのか。それにこの輝き・・・上級クラスが宿っているようだな。そいつを俺様の近くに置け。」


スィングは言われた通り白魔石をヴィントルの近くに置いた。

すると白魔石はカタカタカタっと何回か揺れて止まる。


「これでいい。こいつはお前を主人として認めたようだ。上級ランクなのにまだ子供のようだが・・・まぁそれは別にいい。この石を持っていて出来ることは二つ、個人能力の強化と宿っている魔物の召喚だ。能力強化は持っているだけで勝手に強化され、召喚も宿っている魔物の声を聞けば簡単にできる。これがあれば十分戦えるはずだ。」


「そうっすか。ありがとうっす!」


スィングは意志を再び手に取りポケットへとしまった。


「一つ言っておく。強化だけならいいが無闇に召喚するなよ、それは秘密兵器みたいなものだからな。」


スィングは頷いた。






現在に戻る。

メイド少女は驚いていた。

もう諦めていた。だが希望が見えたのだ。

スィングが見せたあの力は彼女を少し元気づけたのだ。

もしこの呪縛から解放されたらちゃんと謝ってお礼を言おう、彼女はそう心に決めた。




「さてと、下っ端は他にはいないようだな。どっちでもいいから相手になるっすよ。」


スィングは辺りを見回して他に誰もいないことを確認する。

武者蜥蜴隊の他のメンバーは泰人に倒されたため、残っているのはリーダーの男と巨漢だけだ。


「兄貴、こいつは俺が倒す。後ろで見ててくれ。」


「うん、いいさ。だが気をつけた方がいい。僕が見るにこいつはまだ何か隠していそうだ。」


リーダーの男はそう言って後ろに下がると同時に巨漢が前に出る。


「お前はなかなかやりそうだから名乗っておく。俺のコードネームはガトルだ。召喚術を得意としている。」


「いやぁ、名乗ってくれるとはビックリだ。俺っちはスィング。漁師見習いで水関係の効果持ちっす。」


互いに挨拶を交わすとガトルは地面に手をつく。すると地中の中から大型の斧が出てくる。

ガトルはそれを手に取ると構えた。


「この辺の地中は武器庫になっている。俺はこれらを自由に使えるんだ。」


そう言ってスィングに向かって大きく踏み出す。

スィングは思ったより相手が早かったのに驚きつつも冷静に相手を見る。

ガトルは斧を思いっきり振り上げて振り下ろす。大型のため少し動作が遅かった為スィングは無理なくかわすことができた。振り下ろされた地面は大きく抉られ一撃でも受けたらただでは済まないことを物語っていた。


「いやぁ、やばいっすね。受けたら気絶じゃ済まないな。」


「回避力はなかなか。だったらこれでどうだ。」


斧を右手で持ち左手を地面につける。

すると目の前の地面から剣を持った鎧が5体ほど出てきた。


「うーん、流石に多人数相手は俺っちには無理かもしれないな。・・・だけど無理でもやらないと駄目っすね。」


スィングが覚悟を決めると鎧が一斉に襲ってきた。

スィングはその辺から石をいくつか拾うとそれを鎧たちに向かって投げつける。

石は鎧に命中しめり込んだ。


「強度は低いようだ。さてと出来るか分からないけど頼むっす。」


ポケットから白魔石を取り出すと思いっきり握る。すると鎧の石がめり込んでいた箇所からぼろぼろと崩れていき砂となって散った。


「いやぁ、この子の力を使って石を相手に当てれば触った時と同じ効果が出るかと思ったらうまくいったっすね。・・・・・・ん?」


急に後ろから何やら嫌な予感がして振り向く。するとガトルそこにはガトルがいて左腕を振り上げて今にも殴りかかろうとしていた。どうやら鎧は囮だったようで本命はこっちのようだった。武器を持っていない所を見ると本当に奇襲狙いらしい。

スィングは鎧に目がいっていてガトルの事を忘れてしまっていた。だがまだ避けられる距離だ。

咄嗟に右に飛び出そうとする・・・が、そこにはメイド少女がいた。


「・・・・・・すみません。」


ドン


思いっきり押し戻された。

ガトルの方を向くがもう間に合いそうもない。何とか両手でガードしようとするが無理だった。


ドスッ


腹に喰らって倒れた。

何とか意識は保ているようだがかなり痛そうだった。


「よくやった。褒めてやる。」


「・・・ありがとう・・・・・・ございます。」


途切れ途切れになりながらも言葉を繋げて頭を下げる。

だが彼女の表情は暗かった。本当は喜んでいないように。


「スィングさん!?」


ティルスが駆け寄ろうとするがスィングは右手で制止するようにサインする。


「・・・来るな。何とかする・・・・・・。」


そう言って立ち上がる・・・が足ががくがくに震えてあまり持ちそうになかった。


「とどめだ。」


ガトルは再び斧地面から取り出してスィングに振り下ろす。

動けないスィングに避ける手はなかった。


「スィングさーーーーーーーん!!」


ティルスが叫ぶ。また一人失ってしまうのか、こんなことならやはり止めておけばよかった。ティルスはそう考えずにはいられなかった。

ここにいる誰もがスィングはもう駄目だと思った。・・・ただ一人を除いて。


「・・・・・・俺っちはここじゃ消えねえ。」


斧の刃を掴む。すると刃は一瞬で錆つきぼろぼろと散っていった。

そしてその掴んだ腕は・・・・・・液状化していた。


「・・・あれは?」


リーダーの男の驚いた。肉体の変化能力は珍しくない。だがスィングは水分調節能力の持ち主だ。リーダーの男もそこはなんとなく分かっていた。だが自らの肉体に変化をつけるのはその能力者の中でも一握りだ。だが彼は知らない。この力は白魔石によるものだと・・・。


「・・・何だこれは!?」


驚いたガトルは後ずさる。だがスィングの液状化した腕は伸び、ガトルに少しずつ近づいていく。

まさに恐怖だった。ガトルはあまりにも驚いたため我を失った。


「や、やめろ・・・・来るなああああああ!!」


右腕を上げる。するとメイド少女が針を持ち自分の首に突き付ける。


「お、俺に手を出してみろ。・・・こいつは自分で命を絶つぞ。」


「・・・・・・・・・・。」


メイドは自分の首に針を突き付けて今にも刺しそうな勢いだった。

流石のスィングもこれには動揺しぴたりと腕の動きを止めてしまった。だがこれでこの男に操られていると確信が持てた。つまりこの男を倒せばいいのである。だが人質がいる以上手が出せない。

ガトルはにやりと笑い再び地面に手を置き武器を取り出そうとする。


「・・・・・・・・・・わ・・・たしは。」


メイドは己自身と戦っていた。もう少しでガトルの呪縛から解放されるのだ。ここで自分が足を引っ張るわけにはいかなかった。彼女は力を振り絞り針を手放した。


「・・・・・・後は頼みます。」


カラン


「・・・馬鹿な!?」


ガトルは驚いた。今までも人をベースにした人形を作ってきたが意思に反したのは初めてだったからだ。

だがそれが隙になってしまった。それを逃さずスィングは液状の腕を伸ばした。


「包め!」


腕が網状に広がりガトルを包むと一気に水分を吸い取っていく。

最初は抵抗していたが徐々に力を失っていき最後には意識を失った。


「やった・・・・・・っす。」


バタッ


スィングも倒れて気を失って倒れてしまった。

慌ててティルスが駆け寄る。気を失ったら退場、その言葉が頭の中に響いていた。


「その彼なら大丈夫だ。自分で寝たりする分には失格にならない。第三者の関与がなければ問題ない。」


そう言ってリーダーの男が出てくる。だが戦う気はないらしい。

ティルスに何かが入った袋を投げて渡す。


「解毒剤だ。それで泰人という男も助かるだろう。その代わりこの場は立ち去らせてもらう。いずれガトルの仇は討たせてもらうよ。では。」


そう言い残してリーダーの男は去っていった。ティルスは急いで袋を開ける。そこには液状の薬が入っていた。それを泰人に飲ませる。

すると落ち着いたようで呼吸も意識も安定する。


「助かったよ。ありがとう。」


「いえ。僕はスィングさんを診てくるので彼女はお願いします。」


そう言ってティルスはスィングの手当てに向かった。


「さてと、君は大丈夫だったかい?」


「・・・はい、大丈夫です。すみません、私のせいで迷惑を。」


「仕方ないよ、君はあのガトルとかいう男に操られていたんだからね。さてどうしようか・・・・・・」


するといきなり彼女の身体が崩れ始めた。元々彼女はガトルに飲まれて再構築された存在、ガトルがやられた今存在が消えようとしていた。


「どうやら私駄目みたいです。こんな私の為に命がけで助けてくれた貴方達には感謝の言葉では足りないくらいです。ありがとうございました!!」


「駄目だ、消えないでくれ・・・。」


泰人は腕を掴もうとする・・・がすり抜ける。

すでにそこには誰もいなかった。


「そ、そんな・・・・・・。」


泰人はがっくりと肩を落とす。目の前で無関係な女の子が消えてしまった所を見たため無理はなかった。


「・・・・・・もうしょうがないわね、特別処置をとります!」


突然ミーアの声が聞こえる。すると泰人の目の前に光の粒子が集まり人の形をとる。

それはさっきのメイド少女だった。


「えーっと私、生きてるの?」


「泰人、よく聞きなさい。武者蜥蜴隊をほぼ壊滅させたから特別に教えてあげる。今この世界で無関係な夢の欠片が5つ混じってしまったわ。しかも参加者としてね。その子はそのうちの一人よ。その人達は別に私には関係ないんだけど特別に助けてあげることにしたわ。まぁ助けるのは貴方達、私は居場所を教えてあげるだけ。手を出しなさい。」


泰人は手を出す。そこに再び粒子が集まり地図ができる。


「それで探すといいわ。一度確保した欠片の人達には手を出さないけど貴方達が助けないと命の保証はないから注意してね。その人達がゲームオーバーしたら人質に加わらずそのまま消えちゃうから。じゃあ頑張ってね。」


ピンポンパンポーン

放送が終わる。


「あいつ、勝手なことばっかり言いやがって。・・・後4人助けるのか。最優先だな。」


「あのいいですか?」


「ああ、そういえば君の名前を聞いていなかったね。なんていうんだい?」


そう言われて彼女は考えた。メイド服という分かりやすい個所はあるがやはり名前は必要だろう。これから泰人達についていくのだから。だが記憶はない。というわけで即興で考えた。


「私の事は・・・メイディアと呼んでください。」


こうしてメイディアが仲間に加わった。








「さて今回で武者蜥蜴隊も1人を残して全滅。後は関係ない所で行われたその他の戦闘を含めて脱落者は15人。残り人数は82人ですので皆さん頑張ってくださいね。以上スピーカーの放送でした。」











続く

どうでしたか?

また次も見てくれたら感激です。

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