28.偽られた歴史3
6年前の夏ごろだったかな。
玄武は死んだ。90年近く生きてたから寿命だと思う。
でもこれが梓由の今後を左右することとなった。
ディオールで生きていればもっと生きることができたけど梓由のためにこっちで生きることを決めた、それは梓由が自分が玄武の寿命を縮めたと思っても仕方なかったのかも。
私も少し悲しかった。いい奴には違いなかったから・・・。
それから梓由は塞ぎ込んでしまった。大事な存在を失った、そうすると人間強いきっかけがないと立ち直れないものよ。
そしてそのまま5年過ぎた所で更に深刻なことが起こったわ。
施設の取り壊し。梓由の居場所がなくなってしまった。
別の場所を紹介されたけど行く気にはなれなかった。そして行く所もない、いまだに記憶の戻らないそんな彼女はとある川の近くで途方に暮れていた。
そんな時ね。貴方、・・・茅野泰人と会ったのは。
・・・そこからは私の記憶からは抜けているわね。どうせもう一人が持っているんでしょうけど。
私の記憶はそこから少し経った後の事、気がつくとあの病院の前にいたわ。
そして私は自由に梓由の身体を動かせるようになっていた・・・けど力は四分の一になっていたわ。
残りの力を持っていたのは未来に飛ばした半分の力をサミーと莉麻が持っていたわ。そして、もう一人の私、本当の宇木風梓由の記憶を持った存在。
でもすぐ見つかったわ。誤算はヴィントルがすでに莉麻とサミーを手にしていたこと。
だから私は宇木風梓由に会って莉麻を手にする話をしたら、時間はかかったけど説得することができたわ。
そして思い出した。願いの跡地のことを。もしかしたら莉麻を生贄にすれば雪美は帰ってくるんじゃないかって。
・・・うふふ、まぁ落ち着きなさい。続きが聞きたいでしょ。
だけど邪魔をされた。ヴィントルにね。
その後は彼に取り込まれてここまで来たの。まさか雪美がいるなんて思わなかったから嬉しかったわ。
やっと、ようやく私は役目を終えることができる。雪美を取り戻して邪魔するヴィントルと泰人、貴方達を倒してね。
ヴィントルと分離した時力のほとんどが戻ったわ。全盛期の黒の魔術師には届かないけど、貴方達よりもかなり上はいってるわね。それで動きやすいようにこの世界を形成している星音を取り込んでこの世界を手にした。後は決着をつけるだけ。
・・・さてこんな感じかしら。
ミーアの話が終わる。
泰人は莉麻の話でかなり怒っていたが落ち着いたようだ。
「・・・なるほどな、大体理解したぜ。だがお前は勘違いしてる。お前に話しかけた声、あれはお前の思っているような優しい奴じゃねえ。お前は奴に利用されているだけなんだよ。」
サミーが話す。今まで話を無関心っぽく聞いていたがちゃんと聞いていたようだ。
「それでもいいわ。どんな手を使ってでも雪美を救う。それだけよ。」
「ここでこの小娘を解放したら大変なことになるって言っても信じねえよな。」
「当然ね。貴方の事は信じないわ、さてそろそろ終わりにしましょうか。」
ミーアはそう言うと右腕を突き出し何かを呟き始める。すると目の前の時空が歪み何かが出てくる。
・・・どうやら金色に輝く鎌のようで、両手で持つ大きいやつだ。
それを構えるミーア。どうやら本気のようだ。
「・・・ちっ。おいお前ら、ここは一旦引くぞ。今の俺様達では勝てねえ。」
「俺も同意見だ。ここは体勢を立て直すべきだと思う。」
サミーと泰人が言うと、莉麻と雪美は渋々頷く。
「あら、逃がすと思う?」
そう言って鎌を振りおろす。
するととんでもない衝撃が泰人達の横を通過し少し飛ばされた。
体勢を立て直して衝撃が起きた方を見ると、地面がぱっかりと開いて数キロ続いていた。
「とりあえず今のは外したけど、今度は外さないわ。雪美、早くこっちに来なさい。」
「・・・駄目、こんなことは駄目だよ。」
しかし、雪美は首を振る。明らかに怖がっている。
「やっぱりヴィントルを倒さないと駄目みたいね。今度こそ覚悟しなさい。」
狙いをサミーに絞る。
サミーは避けようとするが明らかに間に合いそうもない。
仕方なく何かを唱えようとする。
「終わ・・・。」
振り下ろす寸前、目の前に男が現れその腕を抑える。
男は白いマントを被った男だった。
「まぁまぁ、待ってください。ここで彼らを倒すのは得策とは言えませんよ。」
ひょこっと白マントの後ろから変な男が現れた。
その男は道化師のような格好をしている、シュパルツだった。
「・・・これもあの声の導きかしら。貴方達、何しに来たの?邪魔しにきたなら・・・・・・。」
「いいえ、私達は貴方の助けになるように参上したのですよ。」
その言葉に驚くミーア。どうやら彼女は彼らの事を知っているようで敵対していたようだ。
「ほら、ヴィントルを見てください。何か唱えようとしていたでしょう。今は倒すよりも力を封じる方が先ではないですかね。」
「・・・そうね、貴方の言うとおり。じゃあこうするわ!!」
そう言って鎌を投げる。サミーは唱えていた呪文を一度中断し即席の防御術で盾を展開する。
だが、鎌はその盾を破壊するのではなくすり抜けた。
「・・・・・しまっ」
遅かった。その鎌はサミーを・・・通過した。
「・・・え?」
泰人達は茫然としていた。
そのまま鎌はミーアのもとに戻っていく。
すると
「ぐ、ああああああああ。」
急にサミーが苦しみだす。
そしてサミーから水晶が抜け出てくる。
カツーン
水晶が地面に落ちる。
「サミーーーーーーーーーーー!!」
瞬間ラルゴが光る。すると泰人からフィルディアに姿が変わる。
駆け出し落ちていくサミーに手を伸ばす・・・が
スカッ
空を切る。そして前を見るとミーアの隣でサミーを掌に乗せているシュパルツがいた。
「お、おかあさ・・・。」
サミーは何かは話そうとしているが身体に力が入らないのかぐったりとしてしまった。
「さて、今ので少し力を使ってしまったし、今日は明日の説明をして終わりましょうか。・・・ちょうどよくお仲間も到着したようだしね。」
その言葉に莉麻は振り返る。
すると先ほどミーアが鎌を取り出したように時空が歪み、そこから3人の少年少女達が出てくる。
そうティルス達だった。
「・・・えーっと、ここがその世界ですかね?」
そう言って辺りを見回すティルス。すると莉麻が視界に入る。
「あ、莉麻さん!!無事ですか?」
「あ、うん。私は大丈夫。どうやら新しい人達も来たみたいだね・・・ってそれより!!」
そう言ってミーアに向き直す。するとティルス達もその方を見る。
「・・・・・!?」
ミュアがかなり驚いた表情をしていたがミーアは気にせず続ける。
「明日この世界でサバイバルゲームを決行するわ。参加者は総勢100名。そっちは泰人、莉麻とそこの3人の5人。こっちはこの二人。残りは適当に用意するわ。そして残り15人まで争ってもらって、決勝トーナメントをして決着をつけるの。私は決勝トーナメントからってことでね。そして、見事に優勝したらこのサミーちゃんと私が借りてる身体の持ち主をお返しするわ。でも、貴方達全員がゲームオーバーした場合、雪美を私に渡してもらうからね。開始は明日の朝9時に花火を鳴らすからそこでスタート。気絶したら脱落、この世界から消えてもらいます。まぁ、外野は実際にはいない人たちだし問題ないわね。問題は貴方達。貴方達が脱落した場合人質に加わってもらうわ。全滅したら全員消えておしまい。もちろんそこの地面に落ちてる水晶もね。基本なんでもありよ。生き残ればいいわ。以上だけど何か聞きたいことは?」
シュパルツと白マントは頷く。同意したようだ。
そこでティルスが手を挙げる。
「今一理解していないんですけど、サミーと泰人さん達の知り合いが貴方達に捕えられていると。そして断ればおそらく・・・。」
「そうね、もし参加しないで逃げ出したらサミーには消えてもらうことになるわね。」
びくっとフィルディアが震える。どうやら今の言葉は聞こえていたようだが、どうやら話すほどの力が残っていないようだ。
「さて、私を楽しませてね。それじゃ・・・」
「待って!!」
ミュアは声を出して止めようとしたがそれよりも早く止めた者がいた。
雪美だった。
「それって戦争じゃない。・・・嫌だよ、私の為にみんなが争うなんて。だったら私、貴方と一緒に・・・」
「駄目!!」
今度こそミュアが声を出す。彼女は沙汰達と行動している間も基本顔が見えないように過ごしていた。だが、今回は違った。
彼女の素顔が明らかになった。
一緒に風呂に入って一緒に寝ていたティルスさえちゃんと確認できなかった素顔が・・・
「・・・・・貴女を止める。」
彼女を光が包みそれが止むとそこには、知らない女性がいた。
背は少し高めでかなり大人っぽい。白くひらひらした服っぽい何かを着ている。
背中には翼が生えて、頭には天使の輪がついているその姿はまさに、空想上の天使だった。
「あれは、・・・光の精霊ミーア。本で見た姿にそっくりです。」
ティルスが呟く。そう彼女は光の精霊ミーアの姿をしていた。
ミュアはミーアと向き合う。
「うふふ、その姿。久しぶりに見たわ。」
「・・・これ以上好きにさせない。」
ミュアが銀色の鎌を取り出し構える。
「私は貴女、貴女は私。何故か知らないけど姿が入れ替わってしまった。・・・やはり貴女が何かしたのかしらね。どうなの、宇木風梓由?」
「・・・・・・・・・・。」
ミュア、いや梓由は構えたまま表情一つ変えない。
だが
「・・・姉さん?」
「・・・・・・・・・!?」
雪美の声に後ろを振り返ってしまう。
すると急にミーアの気配がなくなる。
慌てて梓由は振り返るがミーアもあの二人も、もう誰もいなかった。
「ではまた明日、決戦の日に会いましょう。」
その言葉がその場に響く中誰も動くことはできなかった。
続く
どうでしたか?
次回も見てもらえたら嬉しいです!