26.夢の世界
長かった
数十年間力が回復するまで
やっとここまで来たんだ
失敗は許されない
私は成功させる
妹を・・・生き返させるために
たとえどんな邪魔が入っても・・・ね
夢の世界
「・・・うふふ。」
泰人達の目の前で宇木風梓由は笑っていた。そう見た目は間違いなく本人だった。
おとなしそうな感じ、まだ幼さが残る顔立ち。まさに本人だったのだ。大人っぽい雪美とは正反対である。
「ねえ・・さん・・・・。」
動揺していたのは泰人だけではなかった。隣にいた雪美も泰人以上に驚いていたのだ。どうやら彼女は梓由の妹らしい。本当かどうかは泰人には分からなかったが。
「いらっしゃい、雪美。私は貴女を迎えに来たの。私と一緒に帰りましょう。」
そう言って手を差し伸べる梓由。雪美はその手を掴もうとふらふらと梓由のもとへと歩き出す。
目の焦点が合っていない。明らかに普通じゃなかった。
と、ここで泰人が冷静になる。梓由の方を見て何かを思い出すようにする。そして思い出す。一年前の出来事を・・・。
「・・・お前は宇木風梓由なのか?」
その言葉に梓由は反応し泰人の方を見る。
「うーん、そうと言えばそうだけど違うと言えば違うのかもね。私は宇木風梓由であって宇木風梓由ではない。妹を、宇木風雪美を助けるために生まれた存在、光の精霊ミーア。それが私よ。」
「ミーアってまさか・・・。」
泰人は驚いた。ミーアは一年ほど前に行方不明になっている。そして宇木風梓由と会ったのも一年前、ということは同一人物の可能性が高い。だが泰人には分かる、あの時会った梓由とは全くの別人であることに。そして門番から聞いた話。・・・今考えてもまとまらないと分かった泰人はとりあえず今すべきことを考える。
それは雪美とミーアを引き離した方がいいかもしれないということ。
今はミーアの思い通りの展開にさせてはいけない、そう考えた泰人は行動に移そうとしたが彼よりももっと早くに動いていた者がいた。
「行っちゃ駄目だよ、お姉ちゃん!!」
莉麻だった。腕を掴み必死に行かせまいとしている。
「私なんとなく分かるの。あの人は危険だよ。お願い、・・・行かないでよ。」
涙目になりながらも止める莉麻。すると雪美の足が止まる。
徐々に目に光が戻っていく。
「あ・・・。」
目に光が灯り正気に戻る。
そして雪美は莉麻の方を見ると、莉麻はまだ必死に腕を掴んでいる。
そんな莉麻の頭を撫でてあげると、向こうも気づく。
「もう大丈夫、安心していいよ。」
「・・・うん。」
雪美は安心した莉麻の表情を見るとミーアの方へ向きなおす。もう大丈夫のようだ。
「姉さん・・・いえ、光の精霊ミーア。私、思い出しました。私がここにいる理由を。・・・私はもうこの世にはいない存在、つまり死んでいるんですよね。」
「・・・!!」
泰人と莉麻はその告白にとても驚く。だが雪美は更に言葉を続ける。
「そして私は長い間夢の世界の守り役として色々な人の夢を守ってきた。悪夢を見ている人がいたら次の日にはいい夢を見られるようにしたり、困っている人たちの相談に乗ってあげたり・・・、ずっとそんな日々を過ごしてきたの。でも心残りだった。置いてきた姉さんのことが気がかりでしょうがなかった。だから忘れるために名字は別のを語って過ごしていたの。でもできなかった。私には姉さんが・・・・・・もしかしてと思っていたけど、貴女がここに来た理由って。」
「そうよ、話してあげる。私がここに来たのは、・・・・・・・・・・貴女を、宇木風雪美を生き返らせるためよ。」
「・・・・・・ふん。」
そして彼女は語り始めた。自らの過去を・・・ヴィントルの災害の全貌を。
続く
どうでしたか?
次回も見てもらえたら幸いです。