24.修行・後編
玄武の修行が始まった。
まずは新技スネイルシューターの習得だが、ただ使うだけならばすぐにでもできる。という訳で覚えたうえで全ての技が使いこなせるように指導するのが目的だ。
「さて、シューターを出してみろ。向こうにある動く的に当てていくだけじゃが、集中力と命中率を上げる大事な特訓じゃな。」
泰人は頷き修行用ラルゴをシューターに変化させる。そして的目掛けて撃ち込むが・・・ピュンと避けられてしまう。どうやら的は意志を持っているようだ。
「おいおい、そんなのありかよ。」
「実戦向けじゃよ。すぐにでも戦えるようにするには多少厳しくてもこれを乗り越えられんことにはな、莉麻達を救うことはできんぞ。」
その通りである。今の泰人は戦闘知識もある程度はあるものの少し強い相手ならばすぐに負けてしまう。泰人自身それには気付いていた。だからここにいるということも。
玄武の言葉に黙って頷き的当てを再開した。
「格闘術を身につけるにはかなりの時間がかかる。お前は打たれ強くはあるが攻めはいまいちじゃからな。武器に頼ってでも勝つしかないんじゃよ。頭の回転の速さと動体視力はかなりいいからそれを生かすしかない。鞭の使い方に慣れていない、となるとウィップのバージョンアップしかない。後はラルゴウォール、別名蝸牛結界の制御、そして今やっているシューターの命中率アップ、これで十分戦えるじゃろうな。・・・真スネイラーの制御まで教えられればいいんじゃが、時間があるかどうか・・・。」
最後の方はボソッと呟くように言ったため聞こえていなかったが重要な所はしっかりと聞こえていたようだ。泰人は集中力を更に上げて的を狙っていった。
その後時間で言うと約2週間ほど経った。
その間に泰人はシューターをかなり自由に撃てるようになった。
そして門番から渡された箱、その中身が覚醒に必要なアイテムであると教えられその使用方法、そして覚醒後のウィップ、ウォールの使い方まで詳しく教えてもらった。
「まぁ、こんなもんかの。さて後はあれじゃな。」
泰人は倒れて寝ていた。タオルがかけられているが床に直接寝ている為寝にくいだろう。だがかなりハードな特訓だったためそんなことも気にしていない。
そして玄武が泰人を起こす。
それに応じて泰人は起きるがまだ疲れが残っているのか眠そうだった。
「・・・睡眠時間4時間の毎日修行って流石に疲れたって。休ませてくれよ。」
「それは何度も聞いた。ここが精神世界であっても休まねば疲れるのは当然じゃな。さて飯はこれじゃよ。」
そう言ってクッキーを一枚渡される。・・・どう見ても普通のクッキーだが、効果としてこれ一枚で一日分のエネルギー補給、満腹感が得られるという優れものである。時間がない人にお勧めで王都の店で売っている。一つ日本円で約2000円である。
「・・・もうこれ嫌なんだけど。」
泰人はしばらくこれしか食べていない。流石に飽きてきていた。
しかしここにはこれしかない。しょうがなく受け取ると口に入れる。
味は豊富で色々ある。一応飽きないようにらしい。今日はチョコ味のようで甘いものが苦手な泰人も普通に食べられる。
「莉麻のお菓子が恋しくなってきた。全部終わったら腹いっぱいになるまで作ってもらうぞおおおおおおおお!!」
テンションがおかしい泰人。しかし玄武はそんなこともお構いなしだ。
「さて今日が最終日じゃ。今日はあれを・・・。」
とそこで後ろから誰か近付いてくるような気配がした。
玄武が振り返るとそこにいたのは・・・
「やぁ、玄武。久しぶりだね!!」
白虎だった。相変わらず元気がいい。その顔を見た玄武は露骨に嫌そうな表情をする。
「いや、別にあんたは呼んどらん。早く逝って本物に会って来い。」
「ちょ。それひどいんじゃない!?」
漫才を繰り広げる二人。泰人はそんな2人をどうでもいいようなものを見る目で見ていた。
「僕が泰人の相手をしようってことさ。戦いに行く前にはちょうどいいだろう。」
「いや、これから最後の特訓をする所じゃからな・・・・・・。」
と玄武が言う前に白虎が泰人に高速で近づく。
泰人はそれにかろうじて反応して防御の体勢をとり、白虎の拳を受け止める。
だが受け止められたが威力までは止められず受け止めた手がジーンと痛む。
「いや、痛い。痛いから。いきなり何すんだよ。」
「当然、最後に手合わせしようと思ってね。せっかくここまで来たんだし。」
突然自分勝手なことを言い始め攻撃してくる白虎。泰人はそれを避けつつ間合いをとる。
「仕方ない脳筋じゃな。泰人、しょうがないからそいつをぶっ飛ばして黙らせてやれ。」
「えー、俺この人とは戦いたくないんだけど。変だし自分勝手だし、なんか頭のネジいくつか飛んでるしおかしいだろどう考えてもさ。」
「さぁ、どうした?反撃してきなよ。」
白い虎の猛攻をギリギリで避けつつ文句を言う泰人。だが白虎はそんな言葉が全く耳に入っていない。
「ああもう!!仕方ないな、やるよ、やればいいんだろう。」
半ばキレ気味で泰人は距離をとるとラルゴを構える。どうやらすでに覚醒状態らしい。
「蝸牛結界、拘束!!」
シーン
特に何も起こった様子はない。白虎は思いっきり笑う。
「いやー、面白い冗談だね。なんも成長してないのかい。」
そう言って歩きだそうと足を動かそうとするが・・・動けない。というよりその場から動けなくなっていた。まるで自分の周りに見えない壁があるようだ。
「・・・成長しているようだ。これはかなり面倒な技だね。解除するには結構時間がかかるからその間に大きな攻撃技の準備でもされちゃたまらないな。仕方ない、本気を出すかな。」
そう言って白虎は懐からイヤリングを取り出して右耳につける。
そして自らの名を呟く。
「・・・ジュライト。」
・・・瞬間パキーンと音がした。どうやら結界が破壊されたようだ。白虎はそのまま泰人に狙いを定める。白虎の周りには白銀の砂が舞っており、髪の毛が逆立っている。
そんな光景を見た後でも泰人は冷静だった。次の手段を用意するためかラルゴを構えて何やら呟いている。
「何をやっているか知らないけど一気に決めるよ。」
そう言って距離を一気に詰める。そして強化した拳で泰人を殴ろうとするが・・・
「・・・蝸牛結界、転移!」
その拳は空を切った。白虎はかなり驚いたようだ。辺りをキョロキョロ見回すが見つからない。
だが急に自分を狙っている視線を上に感じて見上げる。
そこにはスネイルシューターを白虎に向けている泰人の姿があった。どうやら上空に移動したらしい。
白虎は避けようとするがすでに発射した後で間に合わなかった。
「ラルゴシュート!!」
そう言って発射された水の塊は白虎の右耳についているイヤリングを破壊する。すると白虎の周りに舞っている白銀の砂が消える。その反動でよろける白虎、どうやら覚醒状態は肉体にかなりの負荷をかけるようだ。
泰人はそこを見逃さなかった。シューターを瞬時にウィップに切り替える。
「アウト&チェンジ、ラルゴウィップ・タイプS!!」
自由自在に動くウィップが一本の槍のように鋭くなり、そのまま白虎の軸足となっていた右足を貫く。
「・・・ちっ。」
痛そうにしながら軸足を左にする。どうやら右足はかなりの重症のようでかなり血が出ている。立っているのもやっとのようだ。
「勝負あったかの。」
「・・・・・・。」
玄武がそう話す。誰が見ても勝敗は明らかだった。白虎は奥の手を失い機動力を奪われた。もう残っている手段は・・・
「やはり僕は親衛隊最弱だったのかもしれないな。」
ボソッと呟く。泰人はうまく着地し白虎の方を見る。
「玄武にも青龍にも朱雀にも黒の魔術師にも勝てなかった。イヤリングの力を借りなければ覚醒もできない。ヴィントルの災害の時には結局何もできくて、その後はあの悪魔にいいように利用されただけだった。そんな僕の存在価値ってなんなのかな・・。」
「・・・・・・・・・・。」
白虎は今までの不満を全て吐き出した。どうやら過去に何かあったようだ。玄武も何も言えずに黙っている。
「・・・だったら、俺を強くしてくれよ。」
「・・・え?」
「さっき言ってただろ。俺の修行のために来たってさ。あんたの最強の攻撃を俺に見せてくれ。絶対に無駄にはしない。」
真面目にそう言った。
白虎も最初は驚いていたが・・・急に大声で笑い出した。
「ははははははははは、全くお前は変な奴だな。・・・分かった、こいつを受けきれれば合格だ。青龍や悪魔と戦うならこの技を打ち破ってみせろ!!!」
そう言って地面に手をつける。しかしここは床だ。彼の力の源である土はこの下にあるのかも分からない。ここは作られた世界なのだから。だが作られた世界ならば・・・。
「この世界の一部を構築しなおし、大量の土を出現させればいいんだよ。」
すると床に穴が開きそこから土でできた虎が次々に飛び出してくる。
全部出てきたときには10体になっていた。
「・・・あれをやる気か。」
玄武は分かっていた。白虎はの必殺技を。だがあえて口にはしなかった、この戦いが本当の意味で伝承になるならそれを邪魔はできないと。
泰人も構える。どうやらスネイラーを召喚するようだ。
そして・・・
「合体せよ!!」
「現れろ、スネイラー!!」
同時に声が体育館内に響く。
そこには体長10mクラスはある虎と蝸牛が睨みあっていた。
どうやら互いに決め技を使うようだ。
辺りに緊張が走る。
そして同時に指示する。
「いっけー、ラルゴブラスター!!」
「決めろ、超虎口大砲ぉーー!!」
ラルゴの角から巨大な水の塊が、虎からは大きくて太い光線が発射される。
そして互いにぶつかり合う。
ものすごい音を立ててぶつかる二つのエネルギーの塊。威力はほとんど互角のようだ。
「いっけええええええええええええええ。」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお。」
互いに譲らなかった。そして玄武は思った。
これは勝敗は関係ない。もっと他の意味がある。そうさっき思ったような意味が・・・。
そして決着がついた。土でできた虎が徐々に崩れ始め威力が弱まっていった。どうやら水分が土でできた身体を濡らし続けて形が保てなくなってきたようだ。
「またか、この技がまた負けるのか。・・・・・だが今回の負けは悪くないかもな。」
そう呟くと同時に虎は消滅。
残った水の塊は白い虎を飲み込み破裂した。
それからしばらく経った。
白虎は回復していた。そして泰人に何かを手渡した。どうやら虎の形をしたアクセサリーのようだ。
「こいつを君にあげよう。きっと役に立つはずさ。」
「・・・ありがとう。」
泰人が受け取ると白虎の身体が徐々に消えていく。どうやら別れの時が来たようだ。
「・・・君に託す。後は頼むよ。」
そう言って白い虎は消えていった。
「そろそろ時間じゃな。もうこの世界も限界が近い。お別れじゃ。」
「ありがとう、爺ちゃん。・・・凄く大変だったけど何か色々学べた気がするよ。」
作られた世界は不完全だった。役割を終えた今消滅を迎えるのみだ。最後に玄武と泰人が握手を交わす。そして
「最後に言っておく。時間がなかったから出来なかったが、スネイラーは使わない方がいい。お前のためだ。後、・・・ラルゴの声に耳を傾けるといいかもしれんな。」
それがさ最後の言葉だった。それが言い終わると同時に二人はその世界から消えていた。
そして作られた世界は・・・消滅した。
「ワシの孫だ。きっと大丈夫じゃろう。全てを頼むぞ!」
泰人は消えゆく意識の中そんな声を聞いた。
その後泰人が聞いた声は莉麻の声だった。
続く
どうでしたか?
また次も見ていただければ嬉しいです。