23.修行・前編
時間を遡る。
フィルディアが謎の空間を去った直後の話である。
「・・・うーん、ここは一体?」
泰人は目を覚ます。どうやら気絶していたようだ。直前の事を思い出そうとする。
「確か闇の精霊にやられて変な空間に飛ばされたんだっけ。そんで、そこから脱出しようとスネイラーを召喚しようとして誰か来たんだけど・・・・・・。」
だがそれ以上思い出せない。だが顔は見たような気もする。それが誰か知っている人だった気もする位でそこまでだった。
そして一通り思い出した所で辺りを見回してみる。
かなり広い体育館のような所だ。壁は茶色、出入り口など存在しない。2階もないし倉庫みたいなものもない、ただ広いだけの空間だったが、謎の空間のように無限に広がっている訳ではないようだ。
そこで一つの仮説を立てる泰人。ここはさっきの所とは違い作られた場所であると。そして何かしら理由があって自分をこの空間に飛ばしたのだと。
それは何故か。自分を完全に消すためか、自分を助けるためか、もしくは・・・。
「ふむ、大体合っているな。まぁそうでなくては。」
すると目の前に一人の老人が現れる。その姿は・・・
「爺・・・ちゃんか?」
そう。泰人の祖父、玄武だった。
だが玄武はずいぶん前に亡くなっているはず。泰人はいきなり現れた祖父に驚きを隠せなかった。
「生きて・・・いたのか?」
「いんや。」
あっさりと否定する玄武。拍子抜けした泰人はずっこけそうになる。
「ここはワシが生きている時に作った世界じゃよ。いつかお前がディオールに関わった時ここに送るようにヴィントルと彼にお願いしたのだ。」
「えーっと、詳しく教えてくれるか?よく分からないんだけど・・・。」
「全く仕方ないのう。とりあえず必要な所だけ教えとくか、詳しくは後でヴィントルにでも聞くんじゃな。」
と言って一息つく玄武。どうやら話すようだ。
「この空間はお前の魂を修行させる、そしてワシは案内役じゃよ、本物の代わりにお前に修行をつけるためにな。次に黒い水晶に宿っている闇の精霊、ヴィントルじゃが奴は見た感じ悪そうに見えるだけで根はそこまで悪い奴ではないから協力してくれるだろうな。実際奴のおかげでここまで来れたんじゃから。」
それに頷く泰人。確かに闇の精霊に莉麻を奪われたが何か理由があるのだろう、そう思っていた。
こう簡単に信じたのも泰人が祖父が大好きだったこともあるだろう。
いつも面白い話や遊んでくれたり、メジャーをくれたりしていたのでとても仲が良かったというのもある。
「そして今倒すべき相手、そいつを倒せるのはお前しかおらん。その為にもここで修行して力をつけるとそう言う訳じゃ。」
「はい、質問。そういえばヴィントルって確かまだ爺ちゃんが生きているころに災害を起こした奴じゃないの?門番の人が言ってたけど。」
「ふーむ、その話には続きがあるんじゃが・・・門番か、・・・そういえば彼には門番の事詳しく話してなかった。早とちりしたかもしれんな。まあそれはいい。それよりもしっかりと聞きなさい。」
そう言ってまた一息つくと話し始める。
「ヴィントルの災害、表ではそう呼ばれているが実際は違う。本当は他に黒幕がいるんじゃよ。ヴィントルが闇の精霊になった理由は一人の少女を救うためじゃった。・・・そう、光の儀式によって光の精霊ミーアになって暴走してしまった一人の少女のために。だがヴィントルはその事実を隠ぺいするためヴィントルの災害ということにしろと王に頼んだ。とまあこんな感じじゃな。だからお前が聞いた話もほとんど嘘なんじゃよ、真実を知っておるのはワシと青龍、ヴィントル、王位なものじゃな。まぁ、朱雀は薄々分かっていたようじゃがな。」
「ということはそのラスボスを倒せば全てが終わって昔のこともすべて解決、ハッピーエンドって訳か。」
それに頷く玄武。闇の精霊、ヴィントルは悪い奴ではなく他に黒幕がいる。それを倒せばいい。泰人はそう解釈した。彼という言葉も気になったがここでは教えてくれないような気がしたため止めることにした。
「まあそんな感じじゃな。詳しくはヴィントルにでも教えてもらうといい。さて早速始めようとするか。まずはこれを受け取るといい。」
そう言って何か投げてきたものをキャッチする。それはメジャーだった。ラルゴにとても似ていたが。
「修行用ラルゴじゃよ。それを使って技を安定させてもらう。そういえばいくつの技が使えるようになったんじゃ?」
「えーっと、ラルゴウィップ、ラルゴウォール、スネイラーの3つかな。」
「なるほど、そういえばその3つしか教えていなかったか。ということは応用も一からということか。」
その言葉を受けて考える泰人ラルゴウォールの結界バージョンとフィルディアについて話そうと決断する。
「そういえば今は魂?だけなんだっけ。まあそれよりもラルゴウォールの結界みたいなやつができるんだけど、妖精のフィルディアさんの力を借りて。」
「妖精の力か。確かにそれなら力は弱いが結界が使えてもおかしくはないか。それはそれとして早速やるとしようか。教えることは4つ目の技、覚醒状態、ウィップとウォールの応用方法、覚醒スネイラーの制御、実践による特訓とこんな感じかのう。では早速始めようか。」
こうして修行は始まったのだった。果たしてうまくいくのか?
続く
どうでしたか?
次回も見ていただければ嬉しいです。