22.戻ってきた男
こんばんは、ロンロンの弟子です。
さて今日も頑張りましょう!
それではどうぞ!
ここは学園高等部のとある教室。
雪美は授業を受けながら考え事をしていた。
「(莉麻ちゃんのおかげで前向きに考えられるようになりました。姉さんがどんなに変わっていたってちゃんと話せば分かるはず。うん、大丈夫!)」
そんな時だった。
急に嫌な気分がして辺りを見回す。しかし特に変わったことはない。雪美は自分の勘違いだと思い授業に集中しようと黒板を見ると
「・・・・・・・・・・。」
教師にじっと見られている。雪美のことをじっと見つめている。今は現代文の時間で男性教師が教卓に立っている。その教師が雪美のことをずっと見ているのだ。
雪美は授業に集中していないことを気付かれたと思いおもむろに立ち上がる。
「す、すみません。別なことを考えていました。」
と謝罪する。
しかし男性教師は反応しない。それどころか周りの生徒達全員雪美の方を見ている。感情のかけらも感じないまるで人形のような目をしている。
「えーっと、一体何が・・・。」
すると嫌な気分がまた雪美襲う。少しめまいを感じたが事態は進んでいた。
教師、男子生徒、女子生徒例外なく雪美に向かって歩き始めた。
うあーといった言葉にならない声をもらしながら近づいてくる生徒達。明らかに様子がおかしい。
「・・・・・あ。」
雪美はようやく事態を把握した。そして扉の方から教室から出ようとする。
だが時すでに遅し。周りは生徒たちに囲まれている。
雪美はさっきの嫌な感じはこのことだと思うがだからといって事態が変わるわけではない。
「・・・嫌、来ないで!!」
大声で叫ぶが反応しない。
どんどん近付いてくる。
「た、助けて。誰か助けて!!」
恐怖で何も考えられなくなっていた。いや、別のことが脳裏をよぎった。
・・・自分はこのような状況の対処法を知っている。しかし、思い出せない。自分には何か使命があったような気がするのだが、霧がかかったように思い出すことができない。
思い出せたのは、・・・病室での姉の泣き顔。
「・・・・・いで!!」
何か大事なことを言われたような気がする。だがやはり思い出せない。
雪美も記憶が曖昧のようだった。
「・・・莉麻ちゃん。」
自分の事を頼ってくれた妹のような存在。
記憶喪失なのにいつも明るくて兄が大好きな優しい子。
つい言葉に出てしまった。それほどに最近の日々は楽しかったのだろう。
お菓子を作った。
料理も作った。
裁縫もした。
色々な話をした。
それは・・・昔を思い出すほどに。
そして目をつぶる。もう覚悟した。そして神に祈った。自分がこんなことになっているなら莉麻も同様だろう。だから彼女を助けてほしい、そう祈ることしかできなかった。
ガラッ
「お姉ちゃん!!」
「え?」
扉が開いた。
そこにいたのは・・・莉麻だった。
とっさに目を開き扉の方を見る。
そこには息を切らした莉麻がいた。どうやら走ってきたようで額には汗がにじんでいる。
正直嬉しかった。彼女は無事で自分を心配してここまで急いでくれたのだから。
しかし、この状況。雪美は莉麻を逃がそうと叫ぶ。
「駄目、逃げて!」
「・・・大丈夫だよ。今、助けるから!」
その表情はとても優しかった。
いつもの莉麻の笑顔だ。
それはとても信用できる、雪美はそう思った。
「んじゃ、さっさとやるかな。」
「え?」
見知らぬ男が莉麻の横に並びそのまま教室に入ってくる。
背は結構高い。そして見た感じ真面目そうな印象を受ける。
雪美はそう感じていた。
男は腰についていたメジャーを外し構える。
「・・・・・覚醒!!」
男がそう言うとメジャーが白く光る。
その光はとても綺麗で思わず見とれてしまう。
「行きますよ。・・・ラルゴウィップ、タイプS。」
するとそのメジャーの測定部分が伸びる。そして左右に小刻みに動いている。まるで意志を持っているように。そしてウィップが動く。
「・・・薙ぎ払え。」
一瞬だった。
雪美の周りの生徒たちは吹っ飛ばされて壁に激突し気を失う。
男はそれを見て雪美の方に向かって歩く。後ろの莉麻もぴょこぴょこついてくる。
「大丈夫ですか?」
そう言って手を差し出す。
雪美は混乱してその手を見つめていた。
そこに莉麻が割り込む。
「言ったでしょ。お兄ちゃんが助けてくれるって!」
その言葉を受けて思い出す。
そう彼女の言った言葉、兄が必ず助けてくれると。
「・・・うふふ、そうだったね。」
雪美は笑った。
そして、差し出された手を掴みお礼を言う。
「ありがとうございます、茅野泰人さん。」
時間は戻り、中等部教室。
莉麻は授業を受けていたが、変な気分がした為何かあったと分かった。
すると教室内の生徒及び教師が雪美の時と同様おかしくなった。
「み、みんな、大丈夫?」
必死に呼びかけるが反応しない。
それどころか一人の女子学生が莉麻を押し倒した。
「きゃ!!」
ここに来てから一番最初に友達になった子だ。
だが今の彼女は明らかにおかしい。
いや、他の生徒も同様だ。どんどん莉麻に近づいてくる。
「や、やめて。駄目だよこんなこと。」
生徒が莉麻の荷物を確認している。何かを探しているようだ。
その間にも他の生徒は迫ってくるし、女子学生は莉麻の服を脱がし始めた。
莉麻はもう訳が分からずやられていたが
ガラッ
「大丈夫ですか!?」
フィルディアとサミーが入ってくる。
サミーはこの状況を確認すると術式を組み立てる。
「邪魔だ、貴様ら!!」
そして闇の球を放ち次々に生徒を消していく。
そして女子学生一人が残った。
莉麻は助かったと思ったがまだだった。女子学生は突然莉麻の首を絞めた。
「・・・・が、ぐ。」
それほど力は強くないものの痛みは感じる。
そしてサミー達の方を睨みつける。
「・・・人質ってことか。」
どうやらそのようだった。
流石に人質をとられてしまっては手が出せない。
サミーは術式を解いた。
「・・・ど、どうすれば?」
フィルディアは慌てていて正常な判断ができそうもない。
莉麻は思った。
もう駄目なのかと。
兄に会う前に自分は死んでしまうのかと。
「・・・・・会いたいよ、お兄ちゃん。」
最後の力を振り絞ってそう呟いた時だった。
「・・・今行くぜ!」
「え!?」
そう聞こえた気がした。だがそんなことを気にする余裕はなかった。
どんどん気が遠くなっていく。
だが、そんな時急にフィルディアが光出す。
そして光に包まれた。
「やっと来たか、全くタイミングが良すぎだ。馬鹿が。」
サミーがそう言うと光が収まる。するとそこにいたのは
「さて、やるか。」
茅野泰人だった。
「えーっと、一体何が・・・。」
腰につけたメジャー、ラルゴが喋った。どうやらフィルディアのようだが事態を把握していないらしいかった。
「話は後、行きますよ!」
「あ、はい。」
そう言うと泰人はラルゴを構える。
そして唱える。
「我発動す、・・・スネイルシューター!!」
するとラルゴが変形、蝸牛型の銃へと変わる。
そしてすぐに撃つ。
すると小さな水の塊が発射される。
突然現れた泰人に女子学生もすぐに反応できず発射された水の塊を額で受けてしまう。
「ぐ、・・・あ。」
莉麻の首を絞めていた手の力が弱まる。
その隙に莉麻は脱出、泰人の方に向かう。
「ゆっくりお眠り。」
女子学生はそのまま倒れ気絶する。
莉麻は泰人に抱きつく。凄く嬉しそうだ。
「やっと会えたな、莉麻!」
「・・・お、お兄ちゃーーーん!!」
そのまま泣きだした。
泰人は優しくその頭を撫でてあげる。
兄妹の再会だ。
「さて、とりあえず確認をしたい。ラルゴ使い、修行は完了したのか?」
サミーが泰人にそう言うと泰人はサミーの方を向き答える。
「そうだな、終わったよ。後、少しは事情も分かっているつもりだぜ、ヴィントル!」
「・・・ふん、まあいい。とりあえず今の状況を軽く話しておく。」
そう言ってサミーは話し始める。
今の状況、そして何をするべきかを。
その間、泰人は箱を取り出し蓋を開けようとすると簡単に開いた。
そしてその中に入っていたのは・・・
ネジだった。
ドライバーを取り出し、ラルゴを見る。
ネジが一か所はまっていないのを確認できる。
取り出したネジをはめてみるとぴったり合う。
そのままドライバーで締めていく。
ギュッ
きっちりとネジを締める。
ラルゴにはあまり変化はないようだ。
「どうですか、フィルディアさん?」
「はい、何か力が漲るような気がします。このネジのおかげですね。」
とそうこう話しているうちにサミーの話は終わる。
「さて、雪美を助けに行くぞ。場所は分かるか?」
「あ、はい。泰人さん、私のバックから高等部見取り図を出して下さい。」
泰人はバックから紙を取り出して見る。すると教室の一カ所にマークが付けられている。
どうやらそこが雪美の教室のようだ。
「行くぞ!!」
サミーの掛け声と同時に泰人と莉麻も移動を開始した。
そして現在に至る。
泰人達は教室を脱出し学園のグラウンドまで来た。
「さて、ここからだが奴が動き出した以上こちらも動くしかないって訳だが。」
雪美にも一通り説明した。
最初はサミーの事を怖がっていたが、少し良くなったようだ。
「それで、捜しているのは私の事かしら?」
「!?」
一斉に声がした方を向く。
そこにいたのは、星音だったが見た目が変わっていた。
そう、その姿は・・・。
「・・・ねえ・・・・・さん?」
そう。雪美の姉であり
「・・・・・・まさか!?」
泰人の友人でもある
「うふふ、やっと会えたわね。」
宇木風梓由だった。
続く
どうでしたか?
よろしければ次回も見てもらえたら嬉しいです。