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Mystic world  作者: ロンロンの弟子
悪夢編・VS朱雀
56/115

21.最後の試練・後編

さて今回の話ですが、後編1と2を合わせたため長くなっています。区切るところが少し微妙だった気がするので繋げてみました。

それではどうぞ!

一体どうしてこんなことになったのでしょうか。

私はクリスタの王女、ティルアーネ。

今日はお忍びでこの町に来ましたのにティルス様と名乗る少年?と一つになったり変な男性に追われたりと私、何かしてしまったのでしょうか?


・・・そもそも私は本当にここにいるのでしょうか?

ティルアーネという女性は存在している人物なのでしょうか?

よく・・・・・・分からなくなってきました。

そして、この光景も・・・・・・・。










「ぐあ!」


蹴っ飛ばされた沙汰は住宅の壁に激突する。

壁にはひび割れが起きてその衝撃を物語っている。

朱雀はその光景を満足そうに見ている。


「沙汰さん!!」


ティルアーネは駆け寄ろうとするが、沙汰は手でストップをかける。


「・・・お前はそこにいろ。こいつはかっこよく俺が倒してやるからよ。」


そう言って立ち上がる沙汰だが、元々身体を鍛えていないので少しのダメージでもかなり響く。しかも今回はかなりの実力を持つ男の蹴りをまともに受けたのだ。相当効いているのかかなりふらついている。


「蹴り一発でこれとは、面倒ではないですが少し拍子抜けですね。」


「ったく、俺はあいつみたいに打たれ強くないんだよ。・・・やるしかないみたいだな。」


痛みに耐えながらも沙汰は朱雀を見る。隙がありそうでない。どうやら戦って勝つ以外宝石を奪えそうもないようだった。そう判断しミニパソを開き驚異的なスピードで入力していく。

すると目の前に陣が出現、そこからカイチョーが召喚される。

カイチョーは沙汰を背中に乗せると上空へと上昇する。


「なるほど、なかなか賢そうな鳥ですね。それにしても私相手に空中戦とは、面倒ではないことばかりですね。」


朱雀はその赤い翼を広げ飛び立とうとする。


「ちょっと待ってください!!」


ティルアーネは飛び立とうとする朱雀にストップをかける。それに朱雀は素直に従いティルアーネの方を見る。


「どうして貴方がここにいるんですか?今僕は別の試練を受けているはずなんですが。」


そんなティルアーネの問いかけに対して、やれやれと朱雀は答える。


「このほうが面倒じゃないでしょう。それだけですよ。」


そんな一言だった。あまりにも内容がない答えだったためティルアーネも呆気にとられた。

すると朱雀は真面目な表情になる。


「一つ忠告しておきましょう。この空間で発生するダメージはこの空間を出た後にも継続されます。・・・・・・さて、彼は無事に元の世界に帰れますかねぇ。」


ティルアーネは一瞬恐怖する。朱雀から溢れる謎の気配に圧倒されたからだ。一体それがなんなのかは彼女には分からなかったが。


「では、私は行きますよ。せいぜい面倒にならないように祈ってください。」


そう笑って言うと朱雀は上空へと羽ばたいていった。







その光景を見ていた王女のティルアーネは茫然としていた。

いきなり色々なことが起こったのだ、無理もない。


「あのティルス様、少々お聞きしてもいいですか?」


「・・・え?あ、はい。僕の答えられるような範囲でなら。」


心の中でティルスに質問した。内容は沙汰と朱雀、ティルス自身のことだった。

それに対してティルスはこう答えた。


「僕はとある世界の王様候補なんです。沙汰さんは僕を守ってくれる付き人の一人です。そしてその試練としてこの世界に来たんですが、どうやらあの人と戦わなくてはならないようです。あの人は朱雀さんといって僕の世界の昔の王の親衛隊の一人でした。とてもさぼり癖、怠け癖のあるやる気のない人でしたが実力は親衛隊でもトップクラス。しかも本気を出すと町一つが消えるほどらしいです。」


「でも、あの方とてもやる気に満ちていました。貴方の話のような人には見えませんでしたが。」


ティルスは考えた。自分が初めて会った時は確かにやる気がなかった。だが今は違う。

そこで考える。彼が本気を出さなくてはいけない理由。



「真実は闇の中・・・。やはりあの事件が関係あるのかもしれません。」


「・・・え?」


そう呟いた。











カイチョーに乗って沙汰は上空に来た。ティルスや王女を戦いに巻き込みたくなかったからだが、一方で失敗したとも思っていた。

朱雀には羽が生えていて明らかに空を飛ぶ勢いの羽だった。ということは空中戦の方が得意だと考えられる。

しかし今更遅い。沙汰は奥の手をいくつか仕込むためミニパソと向き合う。

そこに朱雀が追い付いてくる。


「見ただけで分かりますよ。貴方のそれは凄いと。全く一般人とは思えないくらいにね。」


そう言いつつ戦闘態勢をとる。沙汰には良く分からないがかなり鍛えられた構えみたいくらいは理解できた。格闘術初心者では全く歯が立たないことも。


「まぁ、俺はあんたと格闘術で勝負したい訳じゃないし。さて、行くぜ。」


沙汰が入力を終えると沙汰の前に無数の小さな陣が出現、そこからミニカイチョーが飛び出し朱雀に向かって行く。見た所数百匹はいるようだ。


「なるほど、これほどの数を召喚するとはなかなかやりますね。」


だが余裕そうに右腕を向ける。すると朱雀は炎の壁のようなものに包まれる。

ミニカイチョーズは急に止まれず次々にその壁に突っ込んでは燃え散ってしまう。


「・・・ちっ、止まれ!」


沙汰がストップをかけるが後1匹しか残っていなかった。

沙汰は距離をとるためか急降下を始める。


「逃がしません。」


壁を消して沙汰を追うように降下する。





「さぁ、追いつきましたよ。」


すぐに追いつかれる。朱雀は火の玉を発射させる。

カイチョーはかわそうとするがギリギリで羽に掠り燃える。


「ギャッ。」


相当熱いのか痛そうな声を上げるカイチョー。

沙汰はしょうがなく家の屋根に跳び下りる。


「よし、戻・・・」


ドスッ


遅かった。すでに目の前に朱雀はいた。沙汰が気付いた時にはすでにカイチョーは一撃を入れられ消滅した。

沙汰は咄嗟に思いっきり後ろに跳ぶ。


「無駄ですよ。」


朱雀は掌を沙汰に向けるとさっきの火の玉の倍の大きさのものが沙汰に向かって行く。


「・・・カイチョーは十分時間を稼いださ。」


瞬間、沙汰の目の前に陣が出現し、ヒポポスが召喚される。それと同時にヒポポスは火の玉目掛けて水を発射、・・・相殺する。


「なるほど、ならばこちらも召喚といきましょうかね、面倒ですが。」


そう言うと朱雀は手を挙げる。すると上空を覆うように巨大な陣が出現する。

どうやら巨大な何かを召喚しようとしているようだが陣が巨大な分、召喚まで少し時間が掛かるようだ。


「何かヤバそうだな、出させてたまるか。」


ヒポポスが水を陣目掛けて発射する。

が、朱雀は火の玉を水目掛けて発射、相殺する。


「まぁ、慌てないでください。面倒な分結構凄いんですよ。」


それから何度か試したが結局陣は消せない。

そうしているうちにも陣はどんどん完成していく。


「・・・・・・仕方ない、こっちも奥の手を召喚するしかないか。」


沙汰はミニパソに何かを入力していく。それは何かいつもと違う感じがするようだ。

しかし、沙汰が完成させる前に巨大陣が完成しそこから何かが出てくる。


ズズズッ


それは巨大な鷹のような鳥だった。だが全身が赤く輝いており何より全長が30m近くあるほどの大きさだった。

そしてその鳥は何か不気味な力を感じる。強大な力のようだ。


「クェーーーーー!!」


雄たけびを上げる。すると町全体が震える。

ビキビキビキという音が聞こえるほどだ。

思わず沙汰は両耳を押さえてしゃがみこむ。

だが、ヒポポスはもろに受けてしまい悲痛な声をあげて消滅してしまった。



「・・・・・・こいつはやべえな。」


流石に沙汰もその力に気付いたようだ。

両足が震え恐怖すら感じる。


「さて、あなたの力を見せなさい。」


朱雀の声に合わせるように巨大な鷹は口から火を噴く。それはとんでもない勢いで広まっていく。


「ちょ、待て。やばいって。」


沙汰は思いっきり助走をとり隣の屋根に跳び移る。

何とか着地に成功、元いた家の方を見ると・・・




何もなかった。



「ふむ、避けましたか。面倒ですが一撃で終わっては何とも呆気ないですからね。」


朱雀は上空で沙汰を見降ろすようにしてそう言った。

状況は誰が見ても一方的だった。




だが沙汰は笑っていた。まだ何かあるように。


「仕方ねぇ、奴を出すか。俺は責任持たないからな。」


そして、沙汰の陣が完成し展開される。

そこから出てきたものは・・・・・・・。






「出てきやがれ、俺の切り札!!」


・・・・・・・・・真っ黒な蜘蛛だった。











「・・・ふっ、何ですかそれは。それで私のスラディスに勝つつもりですか?」


どうやら鳥の名前はスラディスというようだ。

だが沙汰は本気だった。その蜘蛛こそが沙汰の奥の手なのだ。


「当然だ、さて行って来い。ミニカイチョー!」


生き残っていた最後のミニカイチョー。いつの間にか沙汰が回収していたようだ。

勢いよく沙汰の所からミニカイチョーが飛び立つ。


「その程度は焼き払ってあげますよ。」


スラディスは火を吐く。今回はミニカイチョー目掛けて一直線の炎だ。

そして、ミニカイチョーは直撃を受ける。


「全く、学習しませ・・・・・・ん?」


朱雀は見た。炎の中突き進んでいくミニカイチョーを。

さっきまでの炎に弱かった姿はもうない。


「・・・・・・この炎に耐えますか。」


朱雀は少し動揺し、沙汰の方を見る。沙汰は何やら勝ち誇った表情をしている。

どうやらさっき蜘蛛の召喚とは別にミニカイチョーに耐熱能力を与えたようだった。それもかなりの高温でも耐えられるような強力なものだ。


「突っ込めえええええええええええええ!!」


スポッ


そのまま口に吸い込まれるように入って行った。


「な!?」


それには朱雀も驚いた。一体何をするのか見当もつかなかったからだ。

そしてその隙を狙い沙汰はポケットから何かを取り出す。

それは導きのビー玉だった。


「さて、悪いがそいつは攻略させてもらう。頼むぜ、SPD!!」


その蜘蛛の名前はSPD、スパイダーの略称だった。

SPDは糸を一本吐き出す。その糸はピンとまっすぐ伸びてスラディスに向かって行く。

その糸もスラディアスの炎を受け切る。耐熱加工はバッチリだ。


「ふふ、それで貫くつもりでしょうが面倒なことにスラディアスは不死の効果を持っています。ずっと共に生きてきた私の相棒ですからね。それくらい当然・・・」


「だろうな。だと思ってミニカイチョーを先に行かせたんだよ。」


朱雀の話しの途中に割り込む沙汰。導きのビー玉を見る。するとそれにはミニカイチョーの居場所が映っていた。その場所は・・・


「よし、貫け!!」


そこ目掛けて勢いよく糸が伸びていく。

そうそこは・・・・・・


「し、しまった!」


スラディアスの急所だった。そこを糸が貫く!





「グギャアアアアア・・・。」


とんでもない声を上げるスラディアス。そしてそのまま・・・陣の中へと逃げ帰っていった。


「ま、まさかその為に・・・!?」


伸びた糸は急に方向転換をして朱雀に向かって行く。いきなりの事で朱雀も反応が遅れてしまった。


「くっ!」


何とか炎の壁を張るも耐熱効果を持った糸に突破を許す。

その糸は硬化し朱雀目掛けて振り下ろされる。


ズバッ



「クッ・・・。」


寸前でかわすもちゃんとかわしきれず左腕が切り落とされた。











力なく沙汰とは反対の屋根に着地する。その姿はかなり痛々しかった。


「わ、悪いな。俺はこんな所で負けられないし・・・。」


沙汰も悪いと思っているらしく謝る。








だが、朱雀は

「・・・・・・・・・・ふふふふふふふふふふ、あははははははははははははは。」


思いっきり笑っていた。


「な、な!?」


その笑いは恐怖だった。左腕をなくした朱雀は笑っていた。そう凄く楽しそうに。そして


「・・・ディアスト。」


ズンッ


「・・・え?」


沙汰は殴られた。それも思いっきり。そして沙汰の瞳に映ったのは

・・・銀色の炎に包まれた朱雀の姿だった。






朱雀は自分の真の名前を言うことにより覚醒する。

それは白虎、玄武も同様である。青龍の覚醒だけは誰も見たことがないらしいが。


「グハァ、・・・・・・ゲホッ。」


ふっ飛ばされはしなかったがさっきの倍以上の痛みが全身に走る。正直立っていられる痛みでも正気を保てる痛みでもない。それほどきつい。


「私の腕を落とすとは、・・・あの男を思い出しますねぇえ。」


見る者全てが恐怖するほどの笑みを浮かべそう言った。

明らかに先ほどの雰囲気と違った。

さっきよりも力が高まり誰が見ても分かるほどまでになっている。

しかし、沙汰は動けなかった。起きているほどがやっとなのだ。気を抜くと気絶しそうだった。


「さて、そろそろ終わりにしましょうか。」


朱雀は構える。右腕に力を集中しているようだ。


そこにミニカイチョーが突っ込んでくる。

どうやら貫いた隙間から脱出したようだった。

それも彼の後ろへ。朱雀も気づいていないようだ。そして彼に接触したと思った瞬間


シュッ




ミニカイチョーは消えた。


「・・・な!?」


沙汰は驚いた。今回は壁を張っていない。なのになぜミニカイチョーは消えたのか。

そこで気付く。彼が纏っている銀色の炎、あれはさっきみたいな見せかけではなく本当に存在しているのだと。それが耐熱効果で防げないほどの熱さであるのだと。


「さて、この蜘蛛の黒さ。まさかとは思っていましたが今なら納得ですね。全く面倒なことをしてくれました。」


いつのまにかSPDは朱雀に掴まれていた。

ギリギリと力を加えていき


グシャッ


潰れた。







沙汰はこの隙にミニパソを弄っていた。

全身の痛みを抑え何かないかと探していたが






気付くと今弄っていたはずのミニパソがなくなっていた。


「・・・・!?」


沙汰は朱雀の方を見る。朱雀は沙汰のミニパソを持っていた。


「なるほど、確かにあの男の力を感じます。全く面倒なことを。だが、それも終わりですよ!!」




ガシャーーン




ミニパソが叩きつけられ大破した。









「あ、・・・あああああああああああああああああ。」


沙汰は叫んだ。全身の痛みなどもうどうでもよかった。

彼の大事な宝が目の前で破壊されたのだ。もう何も考えられなかった


そしてすぐ目の前に朱雀がきた。すでに力の補給も終わっている。



「・・・・・・逝きなさい。」


バキッ


鈍い音を立てて沙汰は吹っ飛ばされそのまま下へと落ちる。




べチャッ




そのまま動かなくなった。








「・・・・・・・・・・。」


そんな戦いをティアーネは遠くから見ていた。沙汰が距離をとってくれたおかげか彼女には被害はなかった。

傷だらけの沙汰が2階の屋根から落ちていった。それを見てすぐに走り出していた。


「だ、大丈夫なんでしょうか?」


「正直危ないと思います。だからこそ僕が行かなきゃいけない。」


だがドレスは走りにくかった。王女の許可を得て走りやすいように破る。

そして沙汰の所に辿り着く。






「・・・・・・・・・・え。」


ティルアーネは言葉を失った。

拳をもろに受けた腹の辺りから全身へと火傷の跡が見える。それもかなりの重症だ。

勿論骨折もかなりの箇所しているように見える。息はしているが凄く苦しそうだ。

このままほっとくと死んでしまいそうだった。






「とても頑張りましたよ、彼は。」


朱雀が下りてきた。左腕は相変わらずないが銀色の炎を纏っており彼を直視するのも難しかった。


「正直解放しなければ負けていました。あの男の力を借りたとはいえ、この私をここまで追い詰めたのは素晴らしいの一言に尽きます。特にあの蜘蛛は凄い。私にもスラディスにも肉体防御の術式が練りこまれていて並大抵の力では皮膚を割くことはできません。それをいとも簡単に貫く糸を出す蜘蛛ですからね。・・・故に彼をここで消すのはとても残念だ。」


「・・・・・・さ、沙汰さんを、沙汰さんを助けてください!!」


ティルアーネはもう話なんて聞いていなかった。

目に涙を溢れさせて朱雀に向かって叫んでいた。


「僕は彼を失いたくないんです!!」


「・・・なるほど、では教えてあげましょう。私の試練の意味を。」


ティルアーネの叫びに表情一つ変えずに朱雀は言い放った。


「この試練では人を失う痛みを感じてもらうことです。この前の自己犠牲とは違い、王は誰かを犠牲にしてでも生き残らなくてはいけない。その為の試練を私がやっているのです。」


「・・・そ、そんな。」


ティルアーネはまた言葉を失った。

この試練を受けた時から沙汰がいなくなることは決まっていたのか。

では自分が彼を付き人に選んでしまったから彼は消えるのか。

そう自分に問いかけるも答えは出ない。


「誰しも失うのは悲しいもの。しかし、それを乗り越えた者こそ真の王にふさわしいのです。さてそろそろ終わりにしましょうか。」


朱雀は沙汰に手を向ける。沙汰は全く動かない。次に何かダメージを受けたらもう助からないだろう。


「ま、待ってください。何でもします。だから沙汰さんを助けてください。僕の大事な、大事な・・・友達なんです!!」



ピクッ



その時沙汰が少し動いたがそれには誰も気づかなかった。

ティルアーネの言葉に朱雀は少し考えて言う。


「・・・まぁ、そこまで言うなら助けないこともありません。面倒な条件がありますがね。」


「・・・・・・条件?」


ティルアーネは聞き返した。藁にもすがる思いで本当になんでもする気だったのだ。


「今回の試練を不合格にし、王になるのを諦めるのであれば彼を助けてあげましょう。」


それはかなり厳しい条件だった。

今までしてきたことがすべて水の泡になってしまうのだ。

泰人が、莉麻が、ティライズが、その他大勢の協力でここまで来たのにそれを無駄にするということだった。


しかしティルアーネはほとんど考えなかった。

なぜなら沙汰という存在は彼女の中でもとても大事なものだったからだ。

確かに沙汰は少々自分勝手な所もあった。他に手があったかもしれないのに自分を女に変えたり女風呂に入れたりと嫌な目にもあってきた。

だが、病院の時のように本当に困っている時は力を貸してくれる、良い人なのだと彼女は信じていたのだ。

だから失いたくなかった、自分のかけがえのない友人を。


「分かり・・・・・・」


「待て。」





沙汰の声が聞こえた気がした。咄嗟に沙汰の方を見る。だが彼はほとんど動いていない。


「変身の指輪を通じてお前の心に語りかけてるんだ。身体と魂は離れていても一つだからな。」


その口調は沙汰本人のものだった。ティルアーネは安心するが


「よく聞け、正直俺はもう駄目かもしれない。ミニパソを失って・・・どうすればいいのか分からなかった。」


それはいつものような自信に満ちた声ではなく力のない声だった。

ティルアーネは今まで聞いたことのない沙汰の声に戸惑いつつも心を傾ける。


「だが、お前の友達って言葉を聞いてな。俺、友達泰人しかいないしずっとできないと思ってたからな、嬉しかったよ。」


そこまで聞いてティルアーネは思った。彼は何かしようとしている。だが彼自身もう限界なんて超えてもう動くことすらできないはずなのにと。

まさか彼は・・・




「ありがとよ、・・・泰人と莉麻ちゃん達を頼むぜ。」




「沙汰さーーーーーーーん!!」


思わず叫んでしまった。朱雀は驚くがそれよりももっと驚くことが起きる。



「・・・・・・うおおおおおおおおおお!」





沙汰が立ちあがった。右腕にはいつの間にか変身の指輪と融合の腕輪がつけられている。


「・・・・・・まさか、立ち上がりますか。面倒な。」


朱雀は本当に面倒そうな表情をすると手を向け銀色の3mクラスの大きな火の玉を沙汰に向けて放つ。

沙汰は逃げずにその火の玉に融合の腕輪をつけた手を向ける。


「・・・ドレイン。」


そうポツッと言うとその火の玉は音を上げて沙汰の腕輪に吸い込まれて吸収される。

それに驚いた朱雀は何故彼が動けるか考えた。そこで変身の指輪が目に入る。



「・・・なるほど、その指輪で肉体を構築しなおし立てるまでになった。全く面倒なことをしますね。後から苦しみが来るというのに。」


融合の腕輪を使われている為下手に術を使うこともできない。

そう考えた朱雀は構える。右腕に再び力を集中させる。

それを見た沙汰も先ほど吸収した力を右腕に込める。

どうやらお互いに次で決めるようだ。




「さて、今度こそ終わりです!!」


朱雀が一気に距離を詰めて沙汰に向けて拳を振る。

だが沙汰もそれに反応する。力を吸収し指輪も使い反射神経を極限まで上げたからだ。

沙汰もそれに合わせるように拳を放つ。



ガンッ



お互いの拳がぶつかり力勝負になる。

だが明らかに朱雀が押していた。

朱雀はリードを広げるようにどんどん沙汰を押していく。それに合わせて沙汰もズリズリと下がっていく。


「・・・・ぐぐぐぐぐ。」


沙汰はもうすでに限界を超えていた。自分の肉体に限界突破のドーピングまでして、それでも朱雀には届かない。

だが彼は諦めなかった。横を見るとティルアーネはが手を合わせて自分の勝利を祈っている。その思いに絶対に答えなくてはいけなかった。

確かに格闘術の心得なんて全くない。でもそんなのは関係ない。気持ちで沙汰は朱雀に負けなかった。




「負けるかあああああ!!」




すると奇跡が起こった。

ミニパソから黒い光が出てくる。それがふよふよと宙に浮き沙汰の融合の腕輪の中に吸い込まれていった。

そして沙汰は急に力が湧いてきた。

今まで押されていた分朱雀を押し返す。



「・・・バ、バカな。こんなことでこの私が・・・・・・負けるのですか。」



グシャーン


沙汰は思いっきり朱雀を押し返し住宅街へと叩きつけた。

朱雀は家の壁を何枚もつき破りやっと止まった時にはすでに意識はなかった。




「・・・か、勝った。」



ドサッ



気が抜けたのか沙汰はその場に倒れた。その表情はとても清々しい笑顔だった。




「やった?・・・・・・勝ったのですか?」


ティルアーネは茫然としていた。だが朱雀は遠くで気絶している。沙汰が勝ったのだ!


「・・・これは?」


すると沙汰の近くに宝石が落ちていた。それはまさしくレゾナールで間違いなかった。

どうやら朱雀が吹っ飛ばされた時落としたようだった。

ティルアーネはそれを拾い上げる。すると


「試練は合格だ。元の世界に転送を開始する。」


と空から声がした。どうやらこれで試練も終わりのようだ。




「どうやらお別れの時が来ましたね、身体を貸してくれてありがとうございました。」


ティルスは礼を言う。これでお別れかと思うと名残惜しい気がする。


「ティルス様、私は本当に存在する人間なのですか?」


「え?」


ティルアーネは自分の疑問を口にする。この世界は本当に存在するのか、自分は一体何なのかそれをティルスに問う。

するとティルスは優しく答える。


「この世界も貴女もちゃんといる。だって僕が覚えています。誰かが覚えていればそこは存在している、そうでしょう?」


「えっと、あの、はい。」


ティルアーネは照れくさそうに答える。どうやらこう言う言葉はかけられたことはないのかもしれない。


「絶対また来ます。その時は僕の本当の姿で会いに来ます!!」


「・・・はい、私待ってます。その時には私と・・・・・・。」



パッ



ティルアーネは気付くと元いた場所に戻っていた。

いなくなっていた人もいつの間にかいる。


「夢・・・だったのかしら?」


懐からレゾナールを取り出す。

あった。

やっぱり夢なのかと思ったが



「・・・ふふふ、また会えますよね。」



レゾナールには小さくティルスと彫られていた。






「・・・ここは?」


ティルスは目を覚ます。どうやら元の世界に戻ってきたようだ。


「やりました、僕達やりましたよ沙汰さ・・・・・・ん?」



沙汰は倒れていた。近くには壊れたミニパソと融合の腕輪、変身の指輪が落ちていた。

怪我は治っていない。重症のままだ。


「・・・そ、そんな。」



カツーン



ティルスの指から2つの指輪が取れティルスは少年へと戻る。

だが本人は気付いていない。




「なんか光ったみたいっすけど大丈夫っすか?」


スィングとミュアが入ってくる。2人とも少年ティルスを見て驚く。

それで試練に合格したと気づいたのだ。


「やったっす・・・ね?」


スィングも気づいた。沙汰が倒れているのを。一目見ただけで命に危険があるほどだと分かる。



「・・・僕のために沙汰さんが、沙汰さんが!!」


ミュアは沙汰を見てみる。かなりの重症で放っておくと助からない。この世界で一番の病院といえば


「・・・・・・ティルス、・・・王都に転移。」


そう呟く。しかしティルスは首を横に振る。


「僕の力ではそれは・・・」


「諦めんな!!」


そんなティルスの両肩をスィングが掴む。

スィングはいつもの冷静な感じではない。


「君だったら助けられるさ。試練を全部終えたんだ、力も戻っているはず、信じるっすよ。」


最後はいつも通り優しく話す。

ティルスは涙をふく。そして顔を上げる。その表情は成長した少年の顔だった。


「やってみます。・・・・・・転移!!」



シュン



4人は姿を消した。










起きろ

起きろ

鳥頭


「全く面倒ですね。こっちのセリフですよ。」


朱雀は目を覚ます。どうやらメディスクローズの神殿の上空のようだ。

無意識に空を飛んでいたようだ。前には白いマントの男がいた。


「あんなガキに負けるとは。お前も腕が鈍ったか。」


「まぁ、手を抜いたことは認めます。ですが彼はとても強かったですよ。白虎クラスはあるでしょう。」


その言葉に男は頷く。どうやらその点は認めているようだ。


「さて、逝くのか?」


「そうですね、ティルス君も心が強そうで良い王になります。私の出番はここまでですよ。面倒じゃなくていいです。」


そう言って朱雀は翼を広げると・・・身体が少しずつ消えていく。


「君自身はティルス君が王になろうとティライズ君が王になろうと関係ない。あの少年の茶番につきあっただけです。本当は玄武の孫が強くなればそれでいい、そう考えているなら手を引いてもいいんじゃないんですかね。玄武の孫じゃ君には勝てません。」


「俺に勝てないようではあの化け物は倒せない。それにあの方は助けたい。・・・玄武との誓いだ。」


顔は見えないが男は少し悲しそうな顔をしているように思える。


「そうですね。私たちができなかったことを彼ら、泰人君たちならやってくれるそんな気がします。さてじゃあ逝きますね。玄武、白虎と共に祈ってますよ。」


そう言って朱雀は消えた。





「さて、どうしますか?」


瞬間シュパルツが現れる。どうやら野暮だと思い席を外していたようだ。


「ティルスが悪夢に出発するまで休憩だ。基地に戻ってる。」


「では行きましょうか。」


そう言って2人は姿を消した。










ここは謎の空間


「・・・沙汰?」


サラリーマン風の男が気付く。だが箱を見る。すると


バンッ


そこから白虎が出てくる。

白虎は少し疲れているようだが、すぐに話す。


「出来る限りのことはした。彼はもう僕より強いさ。もう行っちゃったよ。」


「分かった、ありがとう。じゃあ静かに眠ってくれ。」


それに頷いた白虎は消える。


「僕らの望んだ世界になるといいなぁ。」


最後にそう呟いた。


「大丈夫、泰人たちならやってくれるさ。」


サラリーマン風の男はそう呟きその空間を後にした。











続く

どうでしたか?

実はこの話は今のところ私の一番のお気に入りだったりします。戦いは書くの上手くはないですが結構好きなので。

さて、次回は明日です。サバイバルゲーム開始前までは投稿する予定です。

それでは皆さん、また次回お会いしましょう!

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