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Mystic world  作者: ロンロンの弟子
悪夢編・準備
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17.因縁の対決・後編

ティライズが生まれる前の話。




「全くしくじったぜ。こんな失敗をするとは。」


城下町の外で一人の男は瀕死の重傷だった。今すぐに死んでもおかしくない、それほど大きな傷を負っていた。


「駄目だよ。いなくならないで、兄さん。」


そんな男を兄と慕っていた少年がいた。その少年は目に溜めた涙を溢れさせて男に呼び掛ける。


「・・・泣くな、マイブラザー。お前はどんな時でもよく寝る健康な男だったな。」


男は最後の力を振り絞り少年に笑いかける。そして


「・・・いいか、これから何が起こるか分からない。お前が俺の仇をとる気でいるなら・・・・・・・・・・・・・。」


そう言い目を閉じた。


「・・・兄さん?ねぇ、目を開けてよ、兄さーーーーーーーん!!」


少年の悲痛な叫びが辺りに響いた。









現在


空にシュパルツがいた。

シュパルツは上空で二人の対決が始まる所を見ていたが


「・・・さてと、報告しに行きましょうか。」


どこかに消えた。






「早く終わらせて寝たいからね、こっちから行かせてもらうよ。」


そう言うと、少年は高速で術式を組み上げていく。そして、完成した陣から巨大な岩が生み出されティライズに向かって発射される。


「私にその程度の術が通じると思っているのか。」


そう言って軽々とその岩を切り裂き、巨大な岩が一瞬でバラバラになる。


「だよね。じゃあこれで終わってくれないか。」


そう言って、再び高速で術式を組み上げていく。そして、展開。そこから炎で創られた蛇が召喚される。火の蛇は、地を這ってティライズに近づいていく。かなりのスピードだ。


「なかなかだな。・・・だが!」


ティライズは手に持った剣を小さくする術を唱え、ナイフサイズにする。そして、一瞬で蛇との距離を詰める。


「!?」


一瞬のことで蛇も驚いたようだ。それをティライズは逃さず蛇を切り裂いた! 少年は、蛇に再生能力をつけたのでそれほど気にしていなかったが、


シュワーーー!


火の蛇は消滅した。


「・・・・・・お前の剣っぽい物、魔術を無効化するタイプだな。とんでもないレアアイテムじゃないか。流石は王族というわけか。」


「そんなことはいい。もう分かっているだろう、貴様じゃ私には勝てん。」


思いっきって言ったように聞こえるが、あながち間違えでもなかった。

相性としてはティライズの方が有利なのは明確だ。


「そんなのやってみなけりゃ・・・・・・・・・!?」


これまた一瞬だった。少年の目の前までティライズが来ていたのだ。

流石の少年も今から術式はつくれない。


「ていや!!」


いつの間にか元のサイズになっていた剣でそのまま少年を右肩から右下に向かいズバッと切り裂いた。


「ぐっ!」


痛みに耐えティライズとの間をとる。どうやら外傷はないようだが凄く痛そうだ。


「私の剣は傷は残らない。だが、かなりの痛みがきているはずだ。」


「ちぃ、・・・これはかなり効いたぜ。」


相当ダメージがあるようだった。傷はないとはいえ切り裂かれた時とほぼ同じ痛みがきている。普通なら立ってはいられないのだが、少年はきつそうにしながらも立っている。


「私の方が強いのは明らかだ。これ以上は止めておいた方がいい、そこで寝ていろ。」


「・・・・・・・・・・。」


その通りだった。今のままでは明らかにティライズの方が上だ。

王族であるからそれほどでもない少年は考えていたようで、色々な意味でダメージは大きい。

もう戦えるほどの力も残って


「・・・駄目だ、王族にだけは負けるわけにはいかないんだ!!」


少年は咆哮した。

そして自分の肉体に術式を描いていく。


「俺の兄さんを殺した王を許すわけにはいかない!!」


術式を描き終えると少年の身体が輝く。

そして徐々に肉体に変化が訪れる。



身体全体が毛深くなり、爪が鋭く、まさに二本足で立つ狼だった。




「なるほど、獣族か。そういえば昔、獣族の少年を連れた男が王の暗殺をしてきて撃退したって話を聞いたな。」


「それは違う!!兄さんは王の秘密を暴こうとして返り討ちにあった。どうして真実はいつも隠蔽されてしまうんだよ。」


そこでティライズは気付いた。沙汰から送られてきたメール、真実は闇のみぞ知る。


「だから俺はお前を王族にするためにある術式を使った。空間移動が使えない者が王になる、それは国の一大事だからな。そしてその隙を狙い王を暗殺する予定だったが、・・・それは俺一人ではできなかった。だがある男が俺と組んでくれてな、ここまで上手くやってこれたんだ。だから・・・・・・、ここで負けるわけにはいかない。」


そして動き出す。ティライズが身構えるより早く狼少年はティライズに間合いを詰めた。


「・・・・・・ぬぅ。」


振りおろされた爪を弾こうと剣を出す。だが


パキーン


剣が折れる。


「・・・し、しまった。」


遅かった。剣で弾ききれず右腕を切り裂かれる。今度は豪快に地が噴き出た。傷口はかなり深い。


「ぐぁぁぁ!!」


あまりの痛みに声が出てしまった。右腕からはぼたぼたと血が流れている。


「さて、今度はこっちが追い詰めたぞ。観念して近くの病院で寝てるんだな。」


「・・・嫌だ、私もここで引くわけにはいかないんだ。」


なんとか立ってみせるが、見るからに右腕が痛そうで動きそうにない。


「だったら、立てないくらいにしてやるよ!」


そう言ってまた間合いを詰められる。剣が折れており対応のしようもない。

ティライズは覚悟を決めた。


「駄目です!!」


突如フィドゥが飛び出しティライズに体当たりする。そして狼少年に背中を向ける。


「何!?」


そのままフィドゥは切り裂かれた。


「おい、大丈夫か!?」


ティライズは痛む右腕を抑えフィドゥに駆け寄る。


「・・・ティライズ・・・様。」


気絶した。初老の男が駆け寄ってきてすぐに応急処置を始める。




「邪魔が入ったな。自己犠牲とは、お前も好かれているな。」


「・・・残念だがもう貴様との戦いを終わりにする。次で決着をつける!」


ティライズは表情を変えた。どうやら本気を出すようだ。左腕で折れた剣を構える。


「そんな剣ではどうしようもないだろう、俺の勝ちだ!!」


また間合いを詰める。そして爪を振りおろす。

ティライズは折れた剣で弾こうと対抗した。


「馬鹿か、それじゃあ意味が・・・」


ガキーン


爪が弾かれる。


「何!!?」


狼少年は驚き剣を見る。すると

・・・剣は確かに折れている。だが、剣から不思議な感じがした。


「・・・魔力補強か。」


そして狼少年は切られた。






狼少年は元の少年に戻った。どうやら気を失うと戻るようだ。


「・・・この男が私を王族にしたのか。それよりも、真実・・・・と・・・は。」


ティライズも倒れてしまった。どうやら限界だったようだ。

そして倒れた3人を初老の男が応急処置を施し、車に乗せて病院へと走らせた。






その様子を上空でシュパルツが見ていた。


「王子が彼を倒すのは予定外でしたね。彼はもう要りません、そろそろ最終段階に入りましょうか。」


そう言って姿を消した。





城で王は玉座に座っていた。


「・・・そろそろ限界なのかもしれないな。」


そう呟いた。











続く

どうでしたか?

また次の話も見てもらえれば嬉しいです!

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