14.偽りの歴史1
場所は変わる。
沙汰達はエルドイからそう言われた。
「闇だと。例の寄生野郎のことか。」
「まぁ、悪く言えばそうだな。だがこうなったのには深い理由がある。」
エルドイは一息つく。沙汰達も黙って話を聞いている。
「奴は元々一人の人間だった。だがある事件によって水晶の中に封印されてしまった。」
「まさか、その事件って・・・。」
ティルスが反応する。どうやら心当たりがあるようだ。
「ふむ、ヴィントルの災害のことだ。」
ティルスは驚く。ヴィントルの災害はこの世界の住民ほとんどが知っているほど有名な事件だ。まさかここでその話が出るとは思わなかったみたいだ。
「ちょっと待って下さい。闇の精霊は光の精霊の中に封印されているはずじゃないんですか。それが何故水晶なんですか。それに・・・、もう何がなんだが・・・。」
ティルスは混乱している。スィングも頭を抱えている。だが沙汰とミュアは普通に聞いている。
「なるほどな、俺は分かったぞ。・・・一部嘘だな、都合のいいような歴史を教えているんだ!!」
「いや、流石に歴史を偽るなんて・・・。」
いきなりの沙汰の発言をティルスが笑って流そうとすると
「・・・やはり只者ではなかったようだな、その通りだ。」
「えええええ!?」
当たった。
「さて、今回はここまでだ。どのように偽っているかはまたの機会にしよう。もう夜も遅い。」
と言いながらもこの場所は洞窟みたいな場所だ。時間感覚はここに住んでいるものしか分からないだろう。
「分かりました。今日はありがとうございました。」
「これに懲りたらもう覗きなんてするんじゃないぞ。」
懲りるわけがない、恐らくまたするだろう。ティルス達がそう思っているとエルドイは振り返る。
「最後に一つ、最後の試練があるパレス、別名メディスクローズの神殿の近くに見える遺跡に行ってみるといい。そこで全てが分かるはずだ。」
「!?」
ミュアがその言葉に反応する。しかしその反応を誰も見ていなかった。
「では失礼する。全く男と会うのはこれっきりにしたいものだ。」
今度こそ立ち去った。最後に変なことを言っていたが気にする必要はない。
「さて、今日はとりあえずこの辺にして後は寝ましょう。」
ティルスがそう言い4人は宿へと戻っていった。
夜中、女子部屋ではティルスがぐっすりと寝ている隣でミュアはまだ寝ていなかった。
「・・・眠れない。」
いや、眠れないようだ。ミュアは窓辺にある椅子へと座る。そしてボーっと外の景色を眺めている。
「・・・・・・また遺跡に行くのね。」
ふとそう呟いた。遺跡、前に莉麻、謎の少女と共に訪れた場所。そこには何もないようで何かがある、そんな雰囲気があったことをミュアは覚えていた。
そして自分の事を考える。ミュアは記憶が曖昧だが何故か泰人の事は覚えている、というより知っている。不思議なものだ。そう思った。
「・・・・・・・。」
これ以上考えても無駄だと思ったミュアはもう寝ることにした。泰人と元気な姿で合うために。そして・・・。
「・・・・・・何がしたいの・・・かな。」
男部屋
「あの爺さんのせいで一時はどうなることかと思ったが、まぁ無事に取り返したしいいとするか。さて、改良改良。」
沙汰はまたパソコンを弄っていた。
「この石一体何なのかな。」
スィングは少女美弥から貰った石を眺めていた。
次の日、沙汰達は宿を出てこの場所を後にした。
そして青い森の中、この森を出ようと歩いていた。
「次の目的地は、プロフェン村です。そこは親衛隊の一人、青龍の故郷でもありメディスクローズの神殿に最も近い場所です。」
「なるほど、んでそこはどこにあるんだ?」
その質問にティルスが顔を暗くする。
「実は・・・。」
と、ティルスが話す前に森を出た。すると目の前には
「・・・え?」
「こういうことです。」
反り立つ壁があった。垂直にそして上まで15mはある。
「ここを登れってことっすか!?」
「登る以外は浮遊の魔法を使うくらいしか・・・。ここはさっきの所と同様来る人を試しているようなんです。」
まさに挑戦者を笑うかのように立っている壁。それを見て沙汰はふと笑う。
「だったら、カイチョーを使うしかないな。これでひとっ飛びだ。」
「でもカイチョーは3人乗りなんじゃ・・・。」
カイチョーは3人乗りです。
「大丈夫、昨日の融合の指輪を使って合体させればいいのさ。」
そう言って指輪を取り出す沙汰は何か自慢げに見える。
「でも誰を何と?」
「ふふふ、考えてあるぜ。」
そう言って沙汰はまた何かを取り出す。どうやら少年の姿をしたぬいぐるみのようだ。昨日泊まった宿の売店で買ったらしい。
「これで水の芸術家と融合させて人形ベースにすれば重さはオッケーだ。今度は失敗しないから大丈夫、安心してくれ。」
「・・・・・・まぁ、仕方ないっすね。」
渋々ながら指輪をつけたスィングは沙汰からぬいぐるみを受け取る。
すると、ピカッと光り人形だけが残った。
「大丈夫か?」
「問題ない。」
という訳でスィングをしまい、沙汰はカイチョーを呼び出す。
「さて、一気に行くぜ!」
そう言って一気に上昇していった。
「ふむ、ここまで来ましたか。私達の故郷に。」
シュパルツが出てくる。その後ろには白マント1も一緒にいる。
「俺は奴らを追うことにする。そろそろ出番だからな。お前は例の戦いを見てくるといい。」
「かしこまりました。」
そう言ってシュパルツはパッと消えた。
「・・・・・・奴らが登るまで待つか。」
白マント1はしばらくその場で待機していた。
続く
どうでしたか?
また次回見てもらえたら嬉しいです!