10.孤独
あたしはいつも一人だった
友達もいない
先生も気にしてくれない
親にも無視される
誰も気にしない
そんな子だった
そんなある日
一人の男子があたしにちょっかいをかけてきた
最初はあんまり気にしていなかったけど
どんどんエスカレートして人数も増えていく
あたしは何もしてないのにと言うと
いるだけで邪魔なんだと返された
友達もいない
先生も気にしない
いじめっ子以外には無視される
親にもそんなこと言えない
言っても意味がない
もう駄目なんだ
何か
誰か
何でもいいから
あたしを助けて
「・・・う、うーん。あれ、あたしどうしたんだろう?」
星音は目を覚ます。どうやら気絶していたようだ。周りを見ても特に変わっていないが、美納下も近くに倒れている所に気付く。
「あの、しっかりしてください!」
「う、うーん・・・・・、ここは?」
声をかけると美納下は起きて周りを見ている。
「えっと、さっきまであたしの話を聞いてくれてましたよね?」
「そうだったかしら?私、温泉のお掃除をしていて・・・・・・。」
不思議そうな表情で首をひねる美納下。どうやら何も覚えていないようだ。
「・・・えっと、この買い物袋を持っていましたよ。」
ベンチに置いてあった、先ほど美納下が持っていた買い物袋を本人に渡す。
「あ、ありがとう。じゃあこれで、またね。」
余り納得していない様子だったが、買い物袋を受け取ると美納下はその場を後にした。
「・・・・・・あたしも帰ろ。」
そう呟いて星音も公園を後にした。
「・・・ただいま。」
星音は家に帰ってくる。しかし家には光は灯ってなく返事もない。
リビングに行き電気をつけるとテーブルの上に手紙が置いてある。
それを見ると母親からで夕飯について書いてある。両親共働きで平日は夜遅くまでいない。それに兄弟もいない。
「今日も・・・・か。」
書いてある通りに準備して、それを食べる毎日。星音はそんな日々が嫌いだった。
「・・・・ごちそうさまでした。」
それを食べ終えて部屋に戻る。
「・・・・・・ふぅ。」
着替える。
宿題をする。
お風呂に入る。
歯磨きをする。
明日の準備をする。
読書する。
寝る。
このようにいつも進めている。
「・・・・おやすみなさい。」
誰に言うまでもなくそう呟いて、星音は床に着いた。
時間は戻り、場所・水本家
二人は戻ってきた。美納下も戻ってきており、掃除をしていた。
その後食事を終え、二人で温泉に入っていた。
「それで、何かあったか聞いてもいいかな?」
「・・・はい、分かりました。」
莉麻は頷き、深いことは話さず、大まかな所のみを話すことにした。
「一つだけ思い出したんです。私にはお兄ちゃんがいて、そのお兄ちゃんを私が傷つけてしまった。そのことから家出してここに辿り着いた時には、何もかも忘れていたんです。」
自分でやったことではないのに、自分でやったことのように語る莉麻。いや、自分の意志ではないにしろ自分の意思で泰人を追い詰めたのだから無理もないだろう。
「・・・・・そっか、大変だったね。」
「雪美さ・・・・・あう。」
莉麻は雪美に抱かれる。大きめな胸に顔をうずめるような体勢になる。
「大丈夫よ。お兄さんはきっと気にしていないわ、ちゃんと謝ればきっと許してくれるわよ。」
「・・・うん。」
そのまま優しく諭される。莉麻はその言葉を受けてつい素に戻ってしまい、身体を雪美に預ける。
「それにすべて思い出すまでここにいていいのよ。私が貴女のお姉さんになってあげるから。」
「・・・うん、ありがとう。お姉ちゃん!」
雪美は莉麻をギュッと抱いた。
その後莉麻はだいぶ落ち着いて、雪美の話を聞いていた。
「私の姉さんも家出しているの。というより、病院に入院している時抜け出してそのまま帰ってきていなくてね。でも今帰ってきても責めないわ。だって大切な姉だもの、貴女のお兄さんもきっと気にしていないわ。」
「そう・・・ですよね、ありがとうございます。だいぶ楽になりました。」
それに雪美は莉麻のおでこをツンとつついて
「もう敬語はいいでしょ、だってもう私たち姉妹じゃない。」
「・・・・・・うん、お姉ちゃん。」
こうして温泉で親睦を深めた二人だった。
場所・学園内マンション
フィルディアとサミーは部屋に戻ってきた。
「よし。」
サミーと黒い水晶は分離する。水晶はテーブルの上に乗る。
「あ、大きいママだ。わーい。」
サミーはフィルディアに突っ込む。
「・・・・・・サミー、良かった無事で!」
そのサミーをふわりと手で受け止める。
「ママ!もう痛くないんだね、良かった♪」
「・・・・・・サミー。」
無邪気にフィルディアを心配するサミーを見て、元に戻ったのだと分かり涙目になるフィルディア。
「大丈夫?まだ痛いの?」
「・・・ううん、これは嬉しい涙よ。」
そう言って優しく抱きしめる。
「さて、感動の再会はそれくらいにしな。聞きたいことがあるなら言える範囲なら教えてやる。」
はぶられた水晶は可哀想、ということで二人に話しかける。
「そうですね、サミー遊んでてね。」
「わーーーーい!!」
喜んで部屋の中を飛び始めた。
「それでは、貴方の目的を教えてください。」
「ふん、それを聞いてどうするつもりだ。お前には止められんぞ。」
少し声色を低くして水晶が話す。
「そうですね。ですが、貴方が本当に何をしているのか知らない限り私は協力できません。」
「・・・・・・別にお前の力を借りるまでもないが・・・まぁいいだろう、教えてやる。耳を貸せ!」
フィルディアは水晶に耳を近づけて、話を聞いた。
星音は夢を見ていた。
目の前には一人の少女がいた。
見たことがない少女
その少女は言う
力が欲しいかと
もういじめられないような
凄い力が欲しいかと
その為には貴女が
私を受け入れる必要があると
星音は答える
それでもいい
なんでもいい
どんなことでもすると
だから
あたしを強くして
続く
どうでしたか?
とりあえず今日はここまでにします。明日は11から22までを投稿予定です。
それではみなさんまた次回お会いしましょう!!