3.目覚めた少女達
場所は別世界に移る。
莉麻と雪美は別館の着衣室まで来た。
「では脱ぎましょうか。」
「はい!」
二人は着ている服をすべて脱ぐ。
「(温泉なんて何十年ぶりだろうか。しかも女性と入浴とはな。)」
うふふふふふふと莉麻は笑っている。
「楽しそうでよかったわ。では入りましょう。」
「はい!」
二人は温泉に入った。
「いいお湯ね。」
「はい~~~!!」
二人は仲良く隣で入っている。勿論タオルで隠していないぞ、うん。
「(・・・そろそろ観察を始めようか。)」
莉麻はそう思い雪美をじっくりと見る。
「(なかなかの美人だな。胸も大きいし、明らかにこの身体よりも発育がいいな。・・・だが、普通の少女に見えるぞ。何か能力があるはずだが・・・。)」
更にしっかり見る。しかし何も発見できなかった。
「どうしましたか?私、何か変ですか?」
どうやら視線に気付いた雪美が反応する。じろじろじろじろ見れば当然気付くだろう。
「え?・・・いや、綺麗だなぁっと思って。」
とりあえず適当に感想を述べてみる。
「そう?なんか恥ずかしいけどありがと。」
上手く誤魔化した。
「じゃあ身体洗いましょうか。」
二人は一度お湯から出て身体を洗いはじめた。
「(うむ、見て分からないなら実際に触ってみるか。)」
そう考えた莉麻はそっと雪美の肌を触ってみた。
すると
「なっ!?」
急に気分が悪くなり・・・・・
ばたんと倒れてしまった。
「・・・え、大丈夫?莉麻ちゃん!!」
悪い夢を見ていた。
いや、これは現実だ。
そして私という存在のせいで
兄は大切なものを失った。
私のせいで。
分かっていた。
自分がいなくなれば
兄は救われると。
でもできなかった。
私は
私は
ずっとお兄ちゃんのそばにいたいから。
「はっ!?」
莉麻が目を覚ました。どうやら気絶していたようだ。
「ここは?」
周りを見る。莉麻が雪美から借りた部屋だ。
「私、どうしてこんな所に?確か家にいたはずなのに・・・。」
どうやら元に戻ったようだ。そしてある事実に気づく。
莉麻の左肩にはサミーがいて気持ちよさそうに眠っている。右手には紫色の水晶が握られている。
「今どういう状況なの?」
するとトントンとドアを叩く音がして
「莉麻ちゃん入るわね。」
雪美が入ってきた。
「大丈夫?いきなり倒れたから心配したのよ。」
「えっと、・・・大丈夫です。」
雪美のことももちろん知らない。とりあえず適当に合わせることにした。
「そう?ならいいけど、ただでさえ記憶が曖昧なのだから無理しないでね。それでは、おやすみなさい。」
「あ、はい。おやすみなさい。」
雪美は挨拶をして部屋を後にした。
「さて、まずは状況確認のためにサミーちゃんを起こそっか。」
とりあえずサミーを起こすことにした。
「サミーちゃん、起きて。」
「うみゅ、朝?」
起きた。そして莉麻の方を向く。
「あ、知らない人間のお姉さんだ。それになんだか分からないけどおもしろーい!!」
部屋の中を意味もなくぐるぐると飛び始めた。
「・・・私の知っているサミーちゃんと違うよ。」
「当たり前だ。あの時は俺がいたからな。」
「え?」
水晶から声がした。驚いたがとりあえずテーブルの上に置く。
「あなたは誰なの?」
「それも含めて今説明する。」
水晶は話し始めた。とりあえず深い所は教えず聞こえがいいように。
「俺はお前とそこの嬢ちゃんから光を取り除いた。その為には一度肉体を借りた。用があって今ここにいる。まぁ、やり方は強引だったかも知れんが反省はしていない。」
何とも無責任な話だ。
「そっか。・・・ありがとう。」
莉麻はお礼を言う。
「意味不明だ。文句の一つでも言うはずだろう。」
「うん、勝手な行動されたのは嫌だけど、命を助けてくれたみたいだからもういいよ。」
莉麻はにっこりと笑う。
「それで、あの女性は誰なの?ここはどこ?」
「分かった。話す。」
ここに来た時の事をすべて話した。
「なるほど。じゃああなたの用事がすむまで記憶喪失のふりをしてここにいればいいのね。確かに事情を話すよりはいいと思うよ。」
「あぁ。それでだがあの雪美とかいう女、あれは正体不明だ。能力者なのは間違いないがそんな雰囲気は一切しなかった。更に俺達を分離させるとはな・・・ん?」
水晶が周りを見渡す。この部屋には莉麻、水晶、のんきに飛んでいるサミーしかいない。それにこの部屋から光の力が感じられない。
「・・・しまった!?」
「ど、どうしたの?」
いきなり大きな声をあげたので莉麻は驚いた。
「もう一人いたんだ、俺が飲み込んだ最も危険な存在が。サミー、合体だ。俺に触れろ。」
「は~い!」
なんともしまらない声をだしてサミーが水晶に触る。
するとサミーが水晶を吸収し、一つになった。
「俺は行く。お前はここでおとなしくしていろ。」
そう言ってサミーは壁をすり抜けて部屋を出ていった。
「色々大変ね。」
他人事ではない。
場所は温泉に移る。
一人の少女が全裸で光っていた。
「ようやく解放されたわ。それに力もほとんど戻った。もう莉麻は用済みね。」
そこに一人のメイドさんがやってきた。どうやら掃除をしに来たようだ。
「誰ですか!?ここは水本家所有の温泉ですよ。」
「・・・メイドさんね。ちょうどいいわ。こういう所にあった恰好の方がいいもの。」
そういうと少女は更に光を増した。
「な、何な・・・・・・。」
言葉の途中でメイドさんは光に包まれた。
「よし着いた。」
サミーは別館に着き早速温泉に入った。
しかしそこには掃除をしている一人のメイドさんしかいなかった。
「あの人からは気配が・・・ないか。逃げられたか。ぐっ。」
そう言ってサミーは温泉を後にした。
「うふふ、どうやら一時的に力を封印して正解みたいね。」
急にメイドさんが話し始める。
「この人はっと・・・美納下園実22歳、彼氏なし。・・・なるほど。」
どうでもいい情報まで読んでいる。
「さて、これから楽しくなるわね。見てなさい。今度はあんたを驚かせてやるわ。うふふふふふふふふ。」
一人温泉でメイドさんの美納下は不気味に笑っていた。
続く
どうでしたか?また次回見ていただけると嬉しいです。