1.偽りの始まり
それでは始めていきます。どうぞ!
ここは謎の空間。泰人は気がつくとここにいた。
「ここは一体どこなんだ?・・・何があったんだっけ?」
周りは何も見えず、何も感じられない。そこにいてそこにいないような感覚に泰人は戸惑っていたが
「・・・どうやらここは闇の空間。私たちはここに閉じ込められてしまったようです。」
泰人の腰につけていたメジャー、ラルゴがそう話す。メジャーには妖精のフィルディアの魂が宿っている。
「そう・・・でしたね。俺は・・・誰も救えなかった。」
泰人はくやしそうにそう呟いた。妹たちを救えなかったのがかなり響いているようだ。
「元気を出して下さい。まだ終わったわけではありませんよ。とにかく出口を探しましょう。」
それを聞き、泰人は正気に戻る。そう、悲しいのは自分だけではない。娘を失ってフィルディアも悲しいのだ。それなのに泰人のことを励まそうとしている。これではいけない。
「そうですね。とにかく前に進みましょう。」
気分を改めて、まだ見えない闇の中を泰人は歩き始めた。
とにかく前に前にひたすら進み続けた。しかしどんなに進んでも、時間がかかっても結局周りは何も変わらない。見渡す限り闇が続くだけだった。
「・・・だったらこれでいく。スネイラー!」
泰人はメジャーを掲げた。するとメジャーが消えて、目の前に巨大な蝸牛が出現した。
「いっけー、ラルゴ・ブラスター!!」
そう叫ぶと、巨大な水の塊が発射された・・・が
「・・・何!?」
それはすぐに消えた。いや、目の前の何者かが消したのだ。そう、前に誰かいる。
「さて、いくか。」
そう声が聞こえたと思うと、周りが急に明るくなる。
・・・その誰かを見た瞬間、
「・・・・・・・ぐっ。」
ばたっと音がして泰人は倒れてしまった。
「・・・え!?」
いきなりの事でフィルディアもつい声をあげた。
誰かが近づいてくる。サラリーマン風の男だ。顔はよく見えない。
「いきなりですみません。こいつは今意識を失っていますが、後に目を覚ますので安心してください。」
男は優しくフィルディア、つまりラルゴに話しかける。
「あなたは一体・・・誰なのですか?」
「それには答えられません。大事な点のみを説明します。」
男は一息つき
「あなたには闇の精霊の手助けをしていただきます。」
そう告げた。
この世は大きく分けて3つで構成される。
裏表のある世界。
それとは別の魔法の世界。
しかし魔法の世界は不安定。
光と闇、真の正義とは何なのか。
裏表の世界は正義は光と決めつける。
魔法世界もそれは同じ。
しかし真実とは常に闇の中。
そう闇の中。
場所は変わり、別世界。
泰人達がいた世界ともディオールとも違う第3の世界。
その世界は泰人達の世界とよく似ているが違う。そう、まるでコインの裏の世界だ。
そんな世界の町中を莉麻・・・いや、闇の精霊は歩いていた。
「ふむ、ここはあの世界とよく似ているな。もう少し散策してみよう。」
莉麻はそう呟き、路地裏の方を中心に歩いていた。すると
「・・・なんか大きな屋敷のようだな。」
その言葉通りの大きなお屋敷の前に着いた。大きな庭や池、綺麗な花も植えてあり、いかにも豪邸のような作りである。
「・・・だが、ここは違うようだ。では次に・・・・・。」
莉麻がその場を立ち去ろうとした時、
「・・・ちょっといいですか?」
屋敷の門の前に一人の女の子が立っていた。背が高く髪が肩くらいまで伸びた大人っぽい少女でどこかの学校の制服を着ている。
(な、何!?俺が気付かなかっただと・・・。)
「急にごめんなさい。でも私の家の前にいるから何かなって思って・・・。」
どうやらこの屋敷に住んでいるようだ。ということはお嬢様だろう。
(うーむ、この娘が何かの能力を持っているのか。まぁそれは置いておくにしろ、これは居場所を作るチャンスだな。)
「・・・実は、私何も覚えていないんです。気が付いたら町中でここまで歩いて来たんです。」
莉麻はこの少女を利用するために芝居をすることにした。
「・・・なるほど、それは大変でしたね。なら私の家にあがってください。力になれると思います。」
その言葉に莉麻は頷き、二人はお屋敷の中に入っていった。
お屋敷の中はとても広かった。2階と屋根裏部屋があり、部屋数が客室だけでも20部屋以上ある。
とりあえずその客室のうち一つを借り、莉麻と少女は話をしていた。
「まずは自己紹介をしますね。私は水本雪美です。お父さんが社長をしてましてその娘です。高校1年生の15歳です。」
かなり丁寧に挨拶をした。
「私は、莉麻。14歳。それ以外は覚えていないです。」
とりあえず必要最低限の事のみ覚えているふりをした。
「そうですか。とりあえず記憶が戻るまではここにいてもいいですよ。父はほとんど帰ってきませんし母とメイドが3人、後姉がいますが今は別の場所で暮らしています。特に問題ないです。」
(つーか、女だらけだな。まぁ、あの場所を探すまでは厄介になるか。)
「何から何までありがとうございます。」
お世話になることにしたらしい。
「それでは夕食もそろそろなので私は一度自室に戻ります。メイドが部屋まで知らせに来ると思うのでそれまでは自由にしていてください。着替えはこれを使ってくださいね。では。」
着替え一式を渡して、雪美は部屋を後にした。
「ふむ、まずは着替えようか。」
着替え始めた。どうやらサイズはピッタリのようだ。
「よくこの体に合うサイズの服があったな。・・・これくらいの豪邸なら当然・・・なのか。」
着替え終わって持ってきた荷物を確認する。
「ていうかカバンの中にエプロンのみか。そういや服や下着は家の中に置いてきたな。・・・やっちまったぜ。」
かわいく言ってみる。・・・興奮してきた。
「・・・まぁ、この屋敷内を調べてみよう。」
気を取り直し、目を閉じて屋敷内の気配を感じ取る。
・・・・・・・・・・。
「どうやら特になんもないようだ。じゃあゆっくりするか。」
とりあえず莉麻はメイドが来るまでゆっくりしていた。
その後夕食を取り、部屋に戻ってきた。
「久しぶりにいい物食ったな。さて少し休んで風呂に行くか。」
トントン
部屋を叩く音がして雪美が入ってきた。
「ねぇ、莉麻ちゃん。良かったら一緒にお風呂入らない?なんだか妹ができたみたいで嬉しくって。」
誘いがきた。
「喜んで。」
早かった。
という訳で二人は別館の温泉に移動した。
続く
どうでしたか?また次回見ていただければ嬉しいです。