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Mystic world  作者: ロンロンの弟子
ディオール編・動き出した闇
33/115

終わりから始まる物語 後編

お待たせしました。最終回です。今回は最終回ということで、かなり長めになっています。それではどうぞ!

そして次の日、まだ日が昇ってほどなくして


「・・・よし、完成したぜ。」


ついに沙汰の発明が完成した。予定よりも早く出来たみたいだ。


「ふむ、ほとんど一人でやったな。手伝うことも余りなかった。」

「いんや。あそこを教えてもらっただけで十分さ。ありがとう!」


沙汰は改めてスェイゼルに礼を言う。


「まぁ、君には色々と教えられたしな。これくらいどうということもない。では、私はこれで失礼するよ。頑張りたまえ。」

「ああ、また会おうな先生!」


スェイゼルはそのまま白虎の家を出ていった。


「あ、おはようございます。今スェイゼルさんが出ていったようですけど、どうですか?」


フィドゥが家の中に入ってきた。あの後フィドゥは、邪魔になるからと一人で近くの旅館に泊まっていたのだ。


「ばっちり完成したぜ。さて、フレムリーに向かおうかな。」


沙汰は家の外に出る。


「あ、待って下さいよ。」


フィドゥも後からついていく。




外はもう明るくなっていたが人がほとんどいない。まぁ、街の外れにあるのもあるが、一番の理由は朝早いからだろう。因みに時間としては朝の4時である。


「さてと、試してみるかな。」


沙汰はミニパソのキーを高速で打つ。相変わらずの早さで何やら印を作っていく。


「それが完成させたプログラムですか?」

「・・・いんや、これは同時に考えておいた新しい式の印さ。」


沙汰はキーを打ちながらもフィドゥと普通に会話をする。そして


「よし、こい!」


その言葉が合図のように一瞬強力な光がミニパソから出る。


「・・・うわぁ。」


フィドゥもいきなりだったので驚いている。そして、光が消え・・・金色の巨大な鳥が姿を現す。


「俺のヒポポスの印を少し弄って作った、聖なる光を持った鳥、カイチョーだ。」


3mはあるだろうカイチョーは、特に興奮せず沙汰をじっと見ている。


「なるほど、これに乗ってフレムリーに行くんですね。」

「まぁ、そうだな。だけど、いきなり出してすぐに乗せてけって言っても難しいからな。式を安定させる意味でもこの空気に慣れさせようと思ってる。だから・・・」


沙汰はカイチョーに向き合う。


「とりあえず5時間くらい自由行動。んで、時間になったらここに戻ってくること。いいな?」


沙汰がそう言うと、カイチョーは


「承知した。では失礼する。」


そう言ってその場から飛び去って行った。


「んじゃ、俺はしばらく寝ることにする。」


そう言って白虎の家に入った。残されたフィドゥは


「・・・話せる式の召喚獣をついでに作るなんて。・・・すごい技術力ですね。」


そう呟いた。






それから数時間後、泰人達は目を覚ました。スィングの家で朝食を頂き、また妖精の村まで来ていた。


「はい、ではいきますよ。・・・まずは私を利き手に持ち、目を閉じて自分の周りに膜を発生させるような感じで、発動!蝸牛結界と唱えてください。あ、ちゃんと目的地を想像するのも忘れないでくださいね。」

「よし、じゃあやりましょうか。」


泰人は腰につけていたラルゴを外し、目を閉じて言われたように想像する。すると、泰人とラルゴ、スィングを包むように薄い膜状のものが出現する。


「・・・っていうか君も一緒に来るの?」


今更気付いた泰人は目を閉じながらスィングに話しかける。


「・・・まぁ、俺っちも少しは手助けになると思うんだ。だから連れてってくれよ。」


決意を込めた感じでスィングが言う。


「分かった。じゃ、いくぞ!・・・発動、蝸牛結界!」


そう言うと、薄い膜が泰人達を包んだまま土の中に溶けていった。






「・・・よし、これくらい寝ときゃ大丈夫だろう。」


泰人達が転移してすぐに沙汰が起きた。


「あ、沙汰さん。カイチョーさんはもう帰ってきてますよ。」


フィドゥは朝食の準備をしていた。


「よし、んじゃあ食ってから行くか。」


そう言ってフィドゥが準備した朝食を食べ、準備を整える。


「んでは、出発するぜい!」

「あ、じゃあ僕も連れてって下さいよ。」


二人で家を出ると


「「・・・・・・・は?」」


思わず変な声ではもってしまった。カイチョーが静かに家の前で待っていたのはいいとして


「おぉ、こいつはでかいな。」

「うん。俺っちもこんな大きい鳥初めて見たよ。」


泰人達がハイテンションでカイチョーを見ていた。どうやら少し前に着いたようだった。


「やぁ、泰人と連れの人。俺が伝説の発明家である谷田沙汰である。・・・とまぁ、冗談は置いといて、元気そうでなによりだぜ。」


沙汰はおかしなテンションだが嬉しそうだ。


「おぉ、沙汰か。お前も元気なようで何より。」


二人は再開を喜んだ。まぁ、1日しか経っていないから懐かしいとかは全くない・・・と思う。泰人は今まであったことをすべて話した。


「なるほど。宜しく、水の芸術家!」

「・・・あぁ、宜しく。」


スィングは呼ばれたことのないあだ名をつけられたので、少し戸惑っているようだ。


「そんで沙汰、莉麻の居場所探そうと思ってるんだけど、どうしよう?」

「・・・そんなこともあろうかと、秘密兵器をいくつか作っておいたのだよ。」


沙汰はポケットから銀色に光るビー玉を取り出す。


「今回作った4つ発明の一つだ。そして、これは昨日手に入れたとあるデータを応用して作ったのさ。このビー玉には持って会いたい人を念じるだけでそれがどこにいるのかバッチリ分かるすぐれもの。いや、こいつは他の2つよりある意味大変だったね。心とか気持ちを動力にするのが難しくてな。ある人に手伝ってもらったんだ。」


沙汰はそのビー玉についてどんどん語る。こうなると沙汰はなかなか止まらない。そして話題は全く官営のない所に・・・。


「今のところ俺の発明は金の三大発明と銀の三大発明があるのだ。金は召喚獣、銀はアイテムと分けている。まぁ、銀の方は時間がなかったからテストをしていない。金の方の二つは前に作ってあったんだ。カバのヒポポスともう一体は・・・・・」

「・・・いや、もう分かったからさ、そのビー玉早く貸してくれ。」


耐えかねた泰人は会話の途中だが沙汰にビー玉を渡すように言う。


「全く、話を最後まで聞きなさい。・・・ほら。」


沙汰はビー玉を泰人に手渡す。


「よし。・・・・・・。」


泰人はビー玉を持って目を閉じ、莉麻の事を考える。すると


「・・・・・・!?」


突然びっくりしたように目を開ける。


「どうした、何が見えたんだ?」

「・・・・・火山がある町が見えた。莉麻はそこにいるようだ。」

「・・・何!?」


その言葉に驚く二人。今向かおうとしていた所と同じだったからだ。


「・・・あのさ、ティルス達がそこにもう行っているんだよ。俺も行こうと思ってカイチョーを召喚したんだ。」


沙汰はカイチョーを見ながら話す。


「後、・・・近くかな?莉麻の近くにサミーもいるようだ。でも、なんかおかしいんだよな。変な気分になるような。」

「・・・・・・そうなるとやっぱり。」


ラルゴの言葉に頷く泰人。


「多分莉麻が攫われたのかもしれないってことですね。分かります。」


あくまで冷静な泰人。昨日あれだけウダウダ言っていたから、少しは落ち着いたのだろう。


「・・・それだけならいいのですが。」


ラルゴは誰にも聞こえないように呟いた。


「よし、話はだいたい理解した。フレムりーにすぐにでも行こう。頼むぜ、カイチョー!!」

「・・・承知した。」


カイチョーの背中に乗る泰人、沙汰、スィング。


「・・・あの、僕はどうすれば。」

「ごめんよ。このカイチョーは3人乗りなんだ。まぁ、また今度乗せてあげるよ。よし、フレムリーまで頼むぜ!」


フィドゥの嘆きを軽くスルーしてカイチョーにお願いする沙汰。


「よし、落ちないように摑まっているように。」


カイチョーはそう言うとその大きな羽で大空に飛び上がった。・・・残されたフィドゥは


「仕方ないですね。次の列車は明日ですし、気長に待ちますか。」


そう言って町に行こうとしたら、目の前に白いマントの男が現れる。雰囲気からしてリーダーのようだ。


「どうやら遅かったようだな。・・・後を追いかけるか。あれを渡さなくてはいかんしな。」


そう呟くと猛スピードで走り去って行った。


「今のは・・・。ふーむ、白虎さんと似たような感じがしましたけど、親衛隊の人ではないようですね。・・・誰なんでしょうか?」


フィドゥはあの男が何者か、かなり絞り込めたようだ。そのまま町へと向かった。






「よし、フレムリーに到着!こうなったからには逆にあの男には会わない方がいいな。うん。」


泰人達が着く前に先に莉麻が到着していた。服装は昨日のと同じく制服だが、多少の違いはあるようだ。


「・・・それにしても、この服生み出すために色々苦労したな。ていうか、俺のメモリーにはこの服装はなかったからな。着てたやつを少し変えただけだが、気にしない。」


前向きである。


「さて、時は満ちたし早速ティルスでも探そうか。」


どうやら目的はティルスのようだ。莉麻は普通に町の中に入った。


「えーっと、この辺かな?」


莉麻はティルスが泊まった宿の前まで来た。


「んじゃ、入るかな。」


莉麻が扉を開けると


ティルス「今日はティライズ君は別の用事で朱雀さんの所に行ってるし、僕は・・・・え!?」


ティルスと鉢合わせした。


「お、いたいた。やっと見つけたよ。」

「えーっと・・・・・・。どういうこと?」


ティルスはいきなりの事でついていけない。


「まぁ説明するのも長くなるし、人気のないとこまで移動しようか。」


莉麻は左手を上に上げ


「・・・転移開始!」


と呟く。


「・・・あのぉ、僕は一体何に・・・。」


・・・ティルスがすべて話しきる前に二人はその場から消えてしまった。






場所は移る。ティライズは一人、朱雀の家を訪ねていた。


「何度もすみません。実はお話したいことがありまして。」

「ふむ、なんとなく予想はつきますね。」


朱雀はお茶を入れてきてそう言う。ティライズは軽くお礼を言い


「多分その通りだと思いますが・・・」

「サミーという妖精のことですか。」


その言葉に頷くティライズ。


「私も白虎から聞きました。どうやらあれは闇の精霊に関係しているようです。」

「・・・・・・。」


ティライズは特に動揺もせず黙って聞いている。


「彼の目的は、ミーアの能力の強奪と・・・・・・。」


一息入れて


「・・・この世界以外の世界への干渉ですね。」

「・・・ということはティルスに近づいたのは・・・」


うむと頷く朱雀。


「おそらく彼の能力も強奪するためでしょう。しかし、そのための力を蓄えるべくその妖精に身を隠していたと考えるのが妥当ですね。」

「・・・それじゃあ、今も・・・。」

「そうですね。どうやら白虎もやられてしまったようですし、一人にしておくのは危険でしょう。」


その言葉に思わず立ちあがるティライズ。その拍子に湯呑のお茶をこぼしてしまう。


「・・・それは、本当ですか?」

「はい。ですが彼は・・・そういえばティルスがいないようですがどうしたのですか?」

「・・・すみません。失礼します。」


そう言ってティライズは足早に朱雀の家を後にする。


「なるほど。面倒なことになりそうですね。」


そう言ってティライズがこぼしたお茶の後片づけを始めた。






「(・・・まずい。無事でいてくれ。)」


そう思いつつティライズは宿に戻る。


「ティルス!!」


ティライズは思いっきり部屋のドアを開けたが、当然誰もいない。


「・・・・・くっ!」


そしてそのまま部屋を出て宿を出ようとした時、受付の人に話しかけられる。


「そういえば、お連れの人が何やら不思議な雰囲気のする少女とどこかに転移して行ったようですね。」

「・・・そ、そうですか。ありがとうございます。」


ティライズはそのまま外に出る。


「・・・不思議な雰囲気か。そういえばティルスから莉麻がこっちに来ているかもって話を聞いたな。・・・いや、でもそんなはずは・・・。」


そこでティライズは思い出す。莉麻が一度サミーと合体したと聞いた時の事を。


「・・・・・・・・・ぐっ。」


ティライズはもう何も考えられずその場に立っていた。






「いやっほーーーーーーー!!」


泰人達はカイチョーに乗って上空を移動していた。


「・・・いやね、俺って高所恐怖症なんだ。」

「・・・奇遇だな。俺っちもだ。海の男は船酔いには強いがな。」


どうやらかなり上空にいるらしく、沙汰以外はダウンしていた。


「ふぉーーーーーう。カイチョー、もう着く?」

「目的地付近に到着。着陸開始!」


カイチョーはそのまま着陸を開始した。






「いやぁ、最高だった!」

「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」


着陸も終えて一行はフレムリーに到着した。そして町の中に入る。


「ほう、温泉の町のようだ。さて、ティルス達を探すか。」


泰人達は町中を探そうとしたが


「・・・いた。」


ふと近くの宿に立っている少年を見るとティライズだった。しかし様子がおかしい。


「おぉ、ティライズ!こっちは泰人と無事に合流出来たぜ。・・・そういや、ティルスは?」

「・・・・・・あ。」


ティルスという言葉に反応する。


「・・・攫われた。」

「「・・・・・・!?」」


いきなりの事で全員が驚愕する。


「話を聞かせてくれ!」

「・・・分かった。」


ティライズは隠していたことから全てを話した。




「・・・というわけだ。」

「・・・なるほど。まぁ、隠していたのは別にいいんだが莉麻の事は・・・。」

「・・・あくまで私の考えにすぎないが間違えはないだろう。」

「・・・・・・そうか。」


泰人は更に暗くなる。それはそうだろう。妹が敵の手におちたのだから。


「こうしてはいられません。早く彼らに追い付きましょう。」

「・・・・・・分かりました。ここで落ち込んでも仕方がないしな。」


再びビー玉を沙汰に借り、泰人はそれを持って目を閉じる。そして、少し経って目を開ける。


「どうやらあっちにいるようだ。」


指す先にはこの町の一番の見どころである火山がある。


「・・・行くか。」


泰人達は火山に向かおうとした。だが、・・・目の前に白いマントを着た男が立ちふさがる。


「・・・・・・。」


そして泰人に青い龍のアクセサリーを渡す。


「・・・えーっと、まず、あなたは誰ですか?後これは一体・・・?」


当然の質問をする。


「・・・俺はすべてを変えるべく動き始めた者。とりあえずそれは持っておけ。これからのお前にとって必要になる。後、・・・すまなかった。」


そう言って男はその場を立ち去った。


「何だったんだ?・・・・・・いや、こんなことをしている時間はない。行こう!」


泰人はすぐに切り替えて、一行は再び火山に向かった。


「やはり俺では間に合わなかった。・・・後はお願いします、師匠。」

男はそう呟いて姿を消した。






場所は変わり火山のふもと。ティルスと莉麻はそこに転移してきた。


「えっと・・・どうしたのですか?いきなりいなくなったりして。」


ティルスはあくまで普通の莉麻だと思っている。


「まぁ、そういう年頃ってことで。」

「・・・そういうもんかな。」


納得はしていなかったが


「・・・・・・・。」


莉麻が急にティルスの右手を掴む。


テ「え!?いや、あの・・・。」


かなり動揺していたようだった。その隙に莉麻が右手で何か術式を描き


「さてと、始めようか。」


そして術式を展開する。


「・・・な!?」


寸前で気付いたティルスは逃げようとするが、莉麻に手を掴まれていて逃げられない。


「いくぞ、奪印・シーフ・ザ・スキル!!」


瞬間、術式から腕のようなものが現れティルスの体を通り抜ける。


「あ、・・・・うわぁっ!!」


ティルスは苦しそうな表情と声を上げる。


そして召喚された腕には七色に光る光の塊が握られている。


「よし、さぁ来い!」


腕は消え、その光は莉麻の体に吸い込まれるように入った。


「・・・・・・これは、一体・・・。」


そう言うとティルスは気を失い、その場に倒れた。






「・・・見つけた、莉麻!!」


そこに泰人達が到着する。


「ほう、やっと到着か。まぁ、ちょうどよかったがな。さてと・・・。」


莉麻は目を閉じ精神を集中する。すると、黒い羽根が背中から生えてきた。そして、空を飛ぶ。


「・・・みんな、ティルスを頼む。俺が一人で行く。」


そう言って行こうとするが


「・・・待ちなよ。・・・まず、ビー玉返してくれ。」

「え?・・・あぁ、うん。」


借りていたビー玉を沙汰に手渡す。その時に


「まぁ、止めはしない。こうなったらやってこい。・・・死ぬんじゃねーぞ。」


と耳元で囁く。


「あぁ、任せとけ。」


そう言って泰人は莉麻のもとへと向かう。


「よし、ティライズはティルスを連れて宿まで戻ってくれ。」

「分かった。」


その言葉に頷き、ティルスを背負って山を下りて行った。沙汰はずっと黙ってるスィングと向き合い


「水の芸術家は俺と一緒に泰人を見守ろう。・・・な。」


そう声をかける。


「・・・あぁ。俺っちもちゃんと見ておかないとな。」


そして二人は泰人を見守ることにした。




「ほう、一人で来るか。てっきり全員で来るかと思ったが。」

「・・・こればっかりは俺の手で決着をつける。・・・ラルゴ!」


腰についているラルゴを手に取る。


「・・・・・(だが、迂闊に攻撃はできない。どうすればいい。)」


そう、このまま攻撃してしまうと莉麻やサミーまで傷つけてしまう。


「・・・・・(いい考えがあります。)」


ラルゴが泰人の心に話しかける。


「・・・・・(ラルゴ・ブラスターに特殊な能力を追加すればいいんです。まず、ラルゴ・ブラスターが身体に与えるダメージを最低ランクにして、残りを分解に使えばいいんです。そうすれば当たったとき、莉麻さんとサミー、あの水晶はすべて別々に分離します。)」

「・・・・・(分かりました。やってみよう。)」


泰人はラルゴを掲げて


「・・・現れよ、スネイラー!」


と叫ぶ。すると、いつものようにラルゴは巨大化してスネイラーに変化する。


「来たか。まずは、この周りに結界でも張るか。」


手早く、泰人と自分を包むように結界を展開する。


「さて、これで心おきなくあれが使えるな。」


莉麻は何やら大きめの術式を展開する。


「・・・・・・・・。」


泰人も精神を集中しラルゴ・ブラスターの能力の変更を行っていく。水ではなく自分自身の力を威力にできるように。


「ではいくぞ。闇大印・ネオダークスピア!」


大きな術式からは巨大な黒い槍が出現する。こないだのよりも力の差は歴然だ。


「・・・・・・いくぞ、ラルゴ・ブラスタぁーーーー!!」


泰人もラルゴ・ブラスターを放つ。今までよりも遥かに強力だ。しかし


「甘いわぁー!!」


巨大な槍の一振りで時空が切れ、裂け目ができる。その裂け目にラルゴ・ブラスターは吸い込まれて、・・・・・・消えてしまった。それほどにも力の差はありすぎた。



「なっ・・・・・!?」



一瞬のことで驚くが、その一瞬で莉麻は次の術式を完成させていた。


「・・・さよなら、お兄ちゃん。黒弾印・ディオスフィア!」


そしてあの闇が出現し



「・・・・・・莉麻ぁ。」

「・・・ごめんなさい、サミー。」



泰人とラルゴは・・・消滅した。






そして結界が消える。


「一体どうなったんだ?」


沙汰とスィングは結界が消えるのを見た。そして出てきたのは・・・黒い羽根の生えた莉麻だった。


「ふむ、やりすぎたな。白虎の時の半分にしたが、それでもこんなにあっけないとは。」


莉麻は何やらぶつぶつ言っている。


「・・・そうか、そう言うことか。あぁ、そうか。そうですか!!」


自棄になってミニパソを取り出す。


「・・・・・・・俺はやっぱり肝心なところで役に立てない、大馬鹿野郎だ。」


そう嘆き、高速でキーを打つ。


「さて、そろそろ旅立つか。」


莉麻は時空転移の術式を組み立て始めたが


「逃がすか!!」


沙汰の方が早く完成する。


「・・・ヒポポス、頼む!」


光の中からヒポポスが出現するが・・・再び光と共に消える。


「・・・・・・何!?」


沙汰は莉麻の方を見る。莉麻は両手で別々の術式を作っていた。一つは時空転移。そしてもう一つは


「召喚の妨害、・・・害印・サモンバックだ。」


どうやらけっこう勉強したようで術式には詳しかったようだ。


「・・・・・・。」


もう何も言えなかった。そして時空転移が完成し


「楽しかったよ、じゃあね、沙汰さん。」


そう言って莉麻は姿を消した。






「ぐっ・・・。」


スィングはかなりきていたが


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


沙汰はもう何も言えなくなっていた。




そしてもう一人、少女ミュアは


「え?・・・泰人が消えた!?」


神殿内で茫然としていた。











元の世界はまだ止まったままだ。 後6日で世界が動き出してしまう。はたしてどうなるのか?

・・・っと、一人のサラリーマン風の男は動いていた。黒いラルゴを持って何やら話をしている。


「そっか、うまくいったか。・・・んで今どこなの?」

「どうやら俺のいた世界とお前のいた世界、それ以外にも世界がある。今はそのうち一つにいるよ。」


どうやら話し相手は莉麻のようだった。


「んじゃ、これで契約は終わりだな。ここからは自由行動をさせてもらおう。」

「勿論だ。今更何ができるかは知らんが、せいぜい足掻くといい。・・・古寺歩、いや元の名前は茅野だったな。機会があったらまた会おう。」


そう言って通話は切れる。




男はふぅっと一息つき、


「ったく、世話の掛かる奴らだ。厄介事に足を突っ込んで、ミイラ取りがミイラになるとはな。」


はんと鼻で笑う。しかし急に真剣な表情になり


「・・・・・・・これじゃあ、何のために家を捨てたか分からねぇじゃねぇか。」


そういう男の目には涙が僅かに見えた。


「・・・おっと、そんなことしてる場合じゃなかったな。まずは泰人からだな。頼むぜ、ラルゴ!」


黒いラルゴから変な音がする。収まったかと思うと、目の前に時空の裂け目が出現する。


「・・・さて、行くか!!」


男はその中に入って行った。




さて、これからどうなるか。それはまだ誰にも分からない。

ただ分かっているのは、・・・結局時間は止まらないということだ。








第一部・完

後書きに続きます。

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