終わりから始まる物語 前編
こんばんは。ついに終章に入りました。前、後編の予定なので次が最後になると思います。
それではどうぞ!
泰人達は家の中に入った。中は特にこれといった家具もなく、ただ広いだけの空間だった。
「では、お名前を教えてくれませんか?」
フィルディアは泰人に向けて話しかける。
「俺は泰人っていいます。」
「分かりました、では改めて。私はサミーの母でフィルディアといいます。宜しくね、泰人さん。」
「こちらこそ!」
軽く挨拶を交わす泰人とフィルディア。
「それでは今から方法をお教えしますので、よく聞いていてください。」
その言葉に頷く二人。
「まずは、あの子の所に行く為に転移の術が必要です。私はその術を知ってはいますし、使い方も覚えています。しかし、私には力がなく使うことができません。」
俯くフィルディア。悲しそうだ。
「それでその方法ですが・・・。泰人さん、貴方の腰につけているものはラルゴですよね?」
フィルディアは泰人の腰につけているメジャーを見て言う。
「・・・は、はい。ラルゴを知っているんですか?」
「もちろんですよ。それを前に使っていた玄武さんのことも知っていますよ。」
「ほ、ホントですか?」
泰人は驚いた。
「私はかなり前からここに住んでいますからね。親衛隊の方々に来ていただいたこともけっこうありますよ。」
「それは知らなかったです。」
当然である。
「そのラルゴの力を使えば転移の術もできるでしょう。しかし、それを教えるには最低でも1ヶ月はかかります。それでは時間が足りません。後は・・・。」
「ちょ、ちょっと待ってください。まさかとは思いますが・・・。」
スィングは何かに気付いたようだ。
「そうです。私とラルゴが融合すればいいということです。」
「え!?・・・いや、それは・・・。」
さすがに泰人もかなり驚いている。
「確かに融合したらもう元には戻れません。でも、私はサミーを・・・娘をどうしても助けたいんです。お願いします、やらせてくれませんか?」
涙目になりながら頼み込むフィルディア。
「・・・でも、やっぱりそれは・・・。」
「・・・やってもらおう、泰人。」
「・・・・・・え!?」
スィングの方を向く泰人。今日で何度目だろう。驚きすぎだが・・・また驚いた。
「・・・俺っちだって本当はそんなことさせたくない。・・・でも、他に方法がない。サミーちゃんが大変なことになっているならば、俺っちも何とかしてあげたい。その後元に戻る方法がなくても新しく作ればいいじゃないか。・・・俺っちはフィルディアさんの意見に賛成だ。」
「・・・スィングさん。ありがとう。」
その言葉にスィングは少し照れている。
「・・・分かりました。でも、どうやって合体するんですか?」
どうやら泰人も納得したようだ。
「えっと、ポケットに入ってる物を出してくれませんか?」
「・・・あ、はい。」
泰人は例の箱を取り出して、フィルディアに渡す。
「・・・さてと。お願いしますね、門番さん。」
箱に向けて話しかけるフィルディア。すると、箱にOKの文字が浮かぶ。
「(なるほど。俺以外の心からの願いのみ叶えるってことか。)」
箱が光る。
「ラルゴを渡してください。」
「分かりました。」
フィルディアにラルゴを手渡す。すると、フィルディアとラルゴを光が包む。
少しして光が止む。そこにはラルゴだけがあった。
「どうやら成功したようですね。」
ラルゴが喋った。
「そうですね。さてと、早速・・・。」
泰人はラルゴを拾う。
「ちょっと待ってください。すぐに行きたいんですけど、なじむまで少し掛かります。明日の朝早くに行くことにしましょう。こんな時だからこそ休息も大事です。」
「そうですね。とりあえず俺っちの家に行きましょう。」
「・・・分かった。」
泰人が頷き、彼らは妖精の村を後にした。
「(みんな、すべて終わらせて元に戻してあげるからね。)」
ラルゴは・・・いや、フィルディアはそう決心した。
夜も更けていく。泰人はスィングの家で部屋を借り、ラルゴと一緒に話をしていた。
「今日は色々あって疲れたでしょう。明日も早いですしゆっくり休んでください。」
「そうですね。でもちょっと質問なんですけど、フィルディアさんとラルゴが融合して何か変わったことってありますか?」
泰人はラルゴに質問する。
「そうですね・・・、元々のラルゴの力に加えて私の能力も使えるようになったというところでしょうか。例えば転移もそうですが・・・・・・まぁ、それはいずれ見せることにしましょう。まずは、シャワーでも浴びてゆっくり休んでください。」
「そうですね。そうさせてもらいます。」
そう言って泰人は部屋を出た。
「・・・さすがにまだ言いにくいですね。」
ラルゴはそう呟いた。その後シャワーを浴び、泰人とスィング、ラルゴは眠りについた。
場所は変わり、王都。王は夜中だというのに玉座に座っていた。
「ふむ。どうやら明日、すべての決着がつきそうだ。」
どうやら眠れないようだ。・・・ガチャっと音がして部屋に誰か入ってくる。
「お久しぶりですね、元気でしたか?」
「・・・眠い。」
それは、シュパルツと白いマントの男だった。どうやらリーダーではないようだ。
「ほう、こんな時間に来客か。何か用かな?」
王は特に動揺することなく平然としている。
「・・・まぁ気付いているだろうと思いますが、奴が本格的に動き始めたようですね。どうするつもりですか?」
シュパルツは眠そうな男の前に出て、王に質問する。
「どうやら白虎がやられたようだからな。彼にお願いしたいんだがいいかな?貴様らの主のはずだろう?」
白虎がやられたことが分かっているのに、王は平然としている。
「・・・ただでやるわけにはいかねぇな。」
今まで黙っていた男が話しだした。
「ほう、だったらどうすればいいのかね?」
「そうだな。・・・とりあえず、自己紹介してやるよ。」
男はマントを脱いだ。そこには・・・一人の少年がいた。
「・・・その姿、どうやらお前があの事件の犯人か。」
「・・・まぁ、そうだな。んじゃ、とりあえず・・・」
少年は腕を高速で動かし陣を描いていく。どうやら攻撃の術のようだ。
「・・・・・・。」
シュパルツは黙って見ている。
「俺はこの時のためにお前らと組んでいたんだ。文句はないな?」
「・・・いいですよ。貴方が受けた苦しみを知っていますからね。」
シュパルツは静かに笑う。
「・・・そうか、あれを起こしたのは奴のためか。」
どうやら王は何かに気付いたようだ。
「・・・あの人は俺の憧れだった。・・・お前だけは絶対に許さない。」
そして術を展開する。強力な炎が生まれ、王に襲いかかる。
「・・・確かにあれは私の失敗だった。・・・しかし。」
王は手に持っている杖を上空に向ける。すると、後ろにあった巨人が動き出す。
「私は奴と約束した。だから死ぬことはできんな。」
巨人の大きな手が王を炎から守る。
「・・・そうか、分かった。仕方ない、あの変態野郎を再び封印するまで手を貸してやる。結果的に俺は変態野郎の手助けをしたようなものだからな。」
「まぁ、確かに彼がティルス君と出会ったのは予定外でしたからね。私にも非があります。闇の精霊を再び封印するまで手を貸してあげますよ。」
どうやら和解したようだ。巨人はまたもとの位置に戻っていく。
「すまないな。全てが終わったら好きにするがいい。」
「・・・じゃあ伝えてやる。邪魔したな。」
そう言うと、少年とシュパルツは姿を消した。
「・・・あの事件は他にも意味があったというのか?」
再び王は考え始めた。
夜も遅くなったが、莉麻はまだ寝ていなかった。
「ふむ、あの妖精よりはいくらかいいか。服も代わりがないな。明日買いに行こうか。」
何やら楽しそうだ。回復もかなり順調のようで、部屋の中を歩き回っていた。
沙汰はまだプログラムをいじっていた。
「・・・うーん、ここがうまくいかないんだよな。」
どうやらうまくいっていないようだ。
「あ、沙汰さん。もう次の日になりましたよ。」
どうやら作業をしているうちに日にちが変わってしまったようだ。
「・・・俺だって意地がある。これを完成させればきっと・・・。」
珍しく本気の沙汰。
「なら、いい人がいますよ。・・・入ってきてください。」
フィドゥが言うと、扉が開けられる。そこにいたのは少し前に会った医者、・・・スェイゼルだった。
「おぉ、久しぶりだな!」
「そうだな。どうやら手こずっているようだな。手伝ってあげよう。」
「ありがたいな、んじゃ早速・・・。」
沙汰はスェイゼルと共に再び作業に取りかかる。
「無理言って来てもらったんですから、絶対完成させてくださいね。」
そう言ってフィドゥはその部屋を後にした。
こうして日が変わる。そしてこの日が運命の日となることはまだ誰も思わなかった。・・・とある変態を除いて。
「・・・俺の家に普通の女物はないなぁ。どうしよう?男物って手もあるな。」
こうして決着の時がせまっていった。
ついにあと少しとなりました。ここまで見ていただいてありがとうございます。最後まで見てくだされば嬉しいです。次は今月中に投稿します。後書きのようなものも同時に投稿したいと思います。
それでは、後編でお会いしましょう。