招待
遅くなりました。実はとある事情でしばらく更新することができなくなると思います。ですが、7月中には次が投稿できるように頑張ります。
それではどうぞ!
それから少し時間が経つ。
泰人はいつものように学校に来て授業を受けていた。
「(なんか授業受けてると日常に帰って来たと実感するな。まだ半分も終わってないけど。)」
授業に集中するふりをしながら、泰人はそんなことを考えていた。
・・・授業が終わって昼休み、泰人はいつも通り沙汰と会話をしていた。
「・・・そんで、ようやくバイクが家に届いたんだよ。実物はやっぱりいいね。」
「お前は一応免許持ってるからな。俺も取りたいものだ。」
そんな感じに昼休みも終わる。
午後の授業はとりあえず真面目なふりをして他のことを考えていた。
「・・・やっぱり俺は何かを忘れている。昨日何か話したような気がするが・・・・・。」
結局思い出せないでいた。
放課後、沙汰がいないので泰人は久しぶりに一人で帰ることにした。
「いつもとは違う道を通ってみるか。」
泰人はいつもの道とは違う川沿いの土手のほうに出る。
「いやぁ、夕焼けが綺麗だな。」
空を見上げてしみじみと呟く泰人。平和な感じがする。
しかし、突然、空が曇り始めた。さっきまでの夕焼けが嘘のように雲に隠れてしまった。
「・・・・・何か嫌な予感がする。」
走る泰人。昔から彼は勘がいいので、こういうのはよく当たる。
「なんだ?分かんないけど、急がなくちゃいけないような気がする。」
それほど時間も経たないうちに、家に着く。
「・・・・ただいま!!」
息を切らせて家に入る。
「・・・・・・なんとなく気付いたみたいね。」
母が真面目な表情で出迎える。
「・・・やっぱりなんかあったみたいだな。」
どうやら泰人の勘は当たったようだった。
「莉麻が、・・・あの子がいなくなったの。」
突然のことで驚く泰人。
「何?いつから?」
「朝から学校に行ってないみたい。心配掛けたくなかったから、泰人には伝えなかったけど。」
明らかに泰人の母は気分が悪そうだった。
「・・・・ちぃ。」
カバンを置き、家を出て行こうとする。
「待ちなさい!どこに行くの?」
呼び止める母。
「あの人と警察には連絡したわ。無理に関わらないで。」
あの人というのは、泰人の父のことだ。
「・・・それでも俺は」
「それに泰人。あなたには先約がいるわ。」
そう言って一枚の手紙を渡される。
「さっき、お父さんのお友達がいらっしゃって泰人君ににこれを渡して欲しいって。」
「じいちゃんの友達って・・・まさか!?」
手紙の中を見る。そこには一言
この手紙を見たら、すぐに異世界の王子と二人でワシの家に来い。
と書いてあった。
「さっき読ませてもらったわ。それで莉麻がいなくなった話をしたら、お父さんのお友達さんもこのことを知ってたみたいだったの。多分莉麻がいなくなったのも、異世界が関係しているんじゃないかしら?」
「・・・可能性は少しあるけど、信じたくはない。」
現実と非現実を同じにしたくないと考えている泰人はそう言った。
「・・・・・この手紙の方を優先しなさい。これは、あなたにしかできないことだから。」
泰人は考える。莉麻の事を優先したいが、すぐにという言葉がどうも気になる。
「・・・分かった。ティルスを連れて行ってくるよ。」
そう言い、一度部屋に行く。
少し時間が経ち、泰人が玄関に来る。ティルスも一緒だ。
「場所は分かる?」
「前に一度会って、住所を教えてもらったからね。」
そう言って前にもらった紙を母に見せる。
「そう。莉麻の事で何かあったらすぐに連絡するわ。・・・行ってらっしゃい。」
「あぁ、手掛かり手に入れて帰ってくるよ。じゃあ、行ってきます。」
「ティルス!」
そう言い、泰人とティルスは家を出て老人の家に向かった。
「・・・・・無事に帰ってきて。あなたまでいなくならないで。」
母は心配しながら泰人達を見送った。
場所は全く分からないが、どこかの建物の中。一人の少女が椅子に座って目を閉じている。
「ようやくあの門番も動いたか。これで、ラルゴも覚醒するといいのだけれど。」
そう呟いた。
「それに莉麻も来てくれたしね。ねぇ、梓由?」
少女の隣には・・・・・莉麻がいた。少女と同じように椅子に座っている。
「・・・・はい、姉さん。」
無表情で答える莉麻。
「うふふ。梓由のおかげでラルゴもようやく半覚醒できそうよ。ありがとうね。」
少女は笑っている。
「ありがとうございます。奴も今は動けないようですし、泰人がラルゴを完全覚醒できれば」
「私たちもようやく元に戻れるってわけね。・・・あの子とも話をしなくっちゃね。」
そう言ってまた目を閉じ、静かになる少女。
「(莉麻がいなくなったことであの男も動いた。後はあなた次第よ、泰人。)」
莉麻はそう考えていた。
その頃、沙汰の家では
「やっぱりこのバイクはかっこいいぜ。ひとっ走りしてこようかな。」
一人蚊帳の外の沙汰が新車に見とれていた。