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Mystic world  作者: ロンロンの弟子
ディオール編・試練開始
17/115

宇木風梓由 中編

こんにちは。何とかできました。今回は前回の続きです。それではどうぞ!

「・・・私は宇木風梓由です。」


俺はびっくりした。凄く珍しい名前だったからな。当然だ!


「それじゃあ、携帯のアドレスを交換しとこうか。」

「・・・あ、はい。」


とりあえず携帯のアドレス交換を終えその場で別れた。見た感じ俺と同じくらいの年齢で、背は150位だと思う。私服っぽかったけど一度家に帰ったのだろう。そう思った。




次の日、俺は学校で沙汰に昨日あったことをすべて話した。すると


「ほほぅ、お前にも春が来たか。・・・今は初夏だけど。」


とりあえず無視する。


「そんで今日もあそこ行くんだけど、あの子友達いないみたいだしお前も一緒に行かない?」


なんかあの子も俺一人じゃ退屈しそうだし沙汰を誘ってみる。


「ん、いいけど。今日もいるとは限らないんじゃ。」

「大丈夫。メルアド交換して今日も会おうって送っといたから。」


そう、昨日帰ってから一通りの情報交換はした。だけど、家の場所はどうしても教えてもらえなかったんだ。


「分かった。放課後に行くか。」


沙汰と話をつけて授業を受けた。




そして放課後、俺たちは昨日の土手下の川岸に行ってみた。


「ここは普段通らないな。駅前の方ばっか行ってるし。」


沙汰と他愛のない話をしながら歩く。そして昨日梓由と会った場所に着く。


「いた!」


見つけた。昨日と同じ、川岸で一人川を眺めている。


「おう!」


俺は土手を下り梓由に話しかける。後ろから沙汰もついてくる。


「あ、泰人さん。こんにちは。」


梓由はこちらを振り向き、にっこりとほほ笑む。


「今日は昨日言ってた俺の友達を紹介するよ。」


沙汰を俺の前に出し話しかけろと合図する。


「え、えっと・・・谷田沙汰だ。宜しく!」


すると梓由は驚く。なぜか彼女は他人に気づかれないという体質らしい。


「・・・貴方も私が見えるのですね。嬉しいです。」


凄く嬉しそうだったからこっちまで嬉しくなった。

俺たちはそのあと俺と沙汰の馬鹿話で彼女を笑わせた。なんか女の子が近くにいるなんて莉麻以外なかったからとても新鮮だった。




それからしばらく話していた。


「ふふふ。・・・では、そろそろ帰りましょうか。」


話に夢中で気付かなかったが、すっかり空も暗くなっていた。


「そうだな。帰るか!じゃあまたな、梓由。」


彼女の笑顔に見送られ俺たちは家に帰った。

それからというもの、俺はほぼ毎日梓由の所に通い続けた。沙汰も時々ついてきてくれて俺たちはどんどん仲良くなっていった。







その日は雨だった。俺は別に雨でもあの子に会いに行って話をしていたが、その日は雨の中だと風邪をひくんではないかと思った。俺はいつもの所に行く。


「あ、泰人!今日も来てくれたね。」


傘を持った梓由がいた。あれからというものかなり仲良くなったので、話し方もフレンドリーになっていた。


「ああ。それで、雨降ってるし今日は俺の家に来ないか?」


気を利かせたつもりだった。別に深い意味があるわけではない。断じてない。


「・・・・・。」


梓由はなぜか顔を赤くして考えていた。なぜなのか、その時は気付いてあげられなかった。


「・・・・・・うん。」


小さく頷いた。そして、俺たちは俺の家に向かった。




「そういや、俺の家来るの初めてだな。」


馬鹿だった。そんときは顔が赤いから風邪っぽいのかと全く見当違いな考えをしていたからだ。


「・・・うん。」


相変わらずテンションが下がっている梓由。他に会話はせず、家に着いた。




「ただいま。友達連れて来たぜ!」


家の中に入ると、母さんが出てくる。


「あら、泰人が女の子連れてくるなんて珍しいわね。ゆっくりしてってね。」


そう言って母さんは台所に戻る。


「じゃあ、俺の部屋に来てよ。」

「・・・うん。」


相変わらず、うんとしか言わない梓由を部屋に連れていく。




部屋に入ると莉麻がいた。このころは悪戯好きのどうしようもない妹だったな。


「あ、お兄ちゃん。今日もしょうがないから来てあげ・・・・・・。」


莉麻は固まっていた。俺の後ろにいる梓由を見たからだ。


「・・・・・ふふ、そういうことなのね。私、部屋に戻るから二人でゆっくりしてってね!」


なにやらニヤニヤ笑いながら莉麻は部屋を出て行った。


「まったく、うるさい妹だ。もっと俺を敬ってほしいよ。」


今では別の形で叶ってしまったが。


「・・・ふふ、楽しそうな妹さんじゃない。」


ようやく梓由が喋った。なんとなく、梓由はこういう家族ってものに憧れているんじゃないかなと思った。


「まぁ、けっこう楽しいな。」

「そうよね。・・・・じゃあ何する?」


とてもわくわくした目で俺を見る。


「よし、俺のとっておきのコレクションを見せてあげるよ。」


そう言って棚に飾ってあるメジャーを指さす。


「俺は、かなりのメジャーマニアでね。色んなところに行っては買ってくるんだ。そのうちこんなになってね。」


部屋の隅にある袋を取り出して、梓由に見せる。


「まぁ、軽く50個はあるかな。」


一つづつ説明していく。梓由が、楽しそうに聞いてくれているのが何よりも嬉しかった。


「あのね、この中で一番大切なメジャーって何?」


そう、俺はその言葉を待っていたのだ。


「とっておきは、こいつさ!」


俺は腰のメジャーを外す。そう、ラルゴだ。


「じいちゃんからもらった俺の宝物さ。ま、じいちゃんはもういないけど。」


・・・ちょっと暗い話になってしまったかなと思った。


「そっか。」


そう言って黙る。なんか俺も話しづらくなってしまったからとりあえず俺も黙っとく。


「・・・・・・・。」

「・・・・・・・。」


こういう空気は嫌いだな。そう思っていたら


「・・・前から泰人に話したかったことがあるの。」


急に真面目になった梓由。


「・・・おぉ、なんだ?」


とりあえず聞き返す。


「・・・泰人は、私のことどう思ってる?」


・・・・・・言われた時はビビった。だが、この時に今までの行動が一つにつながった。


「・・・いい子だと思うよ。明るくってちゃんと俺の話も聞いてくれるしね。」


本音を言った。


「・・・そうじゃないの。・・・私の言いたいのは・・・・・」


この続きにくる言葉は分かっていた。だから待った。


「・・・・泰人は私のこと好きなの?」






「・・・え!?」


分かってはいたけど、いざ言われると答えようがないな。


「私は、家族以外にはだれにも気付いてもらえない、孤独な子だった。さみしさを紛らわせるためにあそこでずっと川を眺めていた。そんなときに泰人が来てくれた。」


俺はとりあえず話に耳を傾ける。


「嬉しかったし、楽しかった。沙汰君もいい人だった。でも何より貴方がいたことが一番うれしかった。だから私は泰人が・・・・・。」

「ちょっと待って!」


これ以上聞いてたらおかしくなりそうだったから止める。


「1日考えさせて。明日あの場所で答えを言う。絶対にいい返事をする。」

「・・・分かった。明日、楽しみにしてるね。」


そう言って梓由は帰って行った。

決まっていた。答えは決まっていたんだ。なのに先送りしてしまった。

実質梓由と会えるのはその日が最後だと知らずに。







泰人の昔話はまだ続きます。多分次で終わると思います。

それでは、また次にお会いしましょう。


2012 0627 会話文修正

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