宇木風梓由 前編
こんにちは。まず初めに前回の補足説明をします。
前回の試練では候補一人、護衛一人しか受けれないことになっているのにサミーが入ってきても銅像は何も言いませんでした。サミーは人ではなく妖精なので、一人とは数えないと私が勝手に思っています。なので、銅像は何も言いませんでした。これについておかしいと思っている方もいると思いますが、そういうことで納得していただきたいと思います。
それで今回の話ですが、極端に短いです。しかし、見ていただければ私としても嬉しいです。
それではどうぞ!
今回も無事に帰って来た泰人達。沙汰は自分の家に帰り、泰人、莉麻、ティルスも家の中に入る。すると、母親が出迎えてくれた。
「おかえり。疲れたでしょ?夕飯出来てるから食べましょう。」
「はーい!」
二人が元気よく答えると母は台所に戻って行った。泰人と莉麻は部屋に荷物を置き夕食の手伝いをすることにした。
夕食中、莉麻はディオールであったことを母に話していた。
「それで、私もう駄目かと思ったら妖精のサミーちゃんが来て、私その子と合体したの!」
「・・・へぇ、凄いわね。」
普通ではありえない話に驚く母だったが、ちゃんと娘の話を聞いている。
「(普通では信じられないようなことでもしっかりと聞いてくれる。それが莉麻さん達のお母さんなのですね。)」
そう思っているティルスだったが
「ティルス!」
としか言えなかった。
夕食後、泰人とティルスは泰人の部屋に戻っていた。莉麻は夕食の片づけを手伝いながらまだ母と話をしている。
「昔からそうだった。何かあると母さんに真っ先に言うんだ。それが母さんにとって嬉しいことなんだよな。」
そう言いベットに横になる泰人。3日ぶりの自分のベットなのになんだかもっと長くいなかったように感じる。
「残る神殿は後三つ。それが終われば普通の生活に戻れるんだな。」
「ティルス!」
そうですねとでも言いたげにティルスが鳴く。
「・・・ちょっと聞いてもらいたい話があるんだがいいか?」
「ティルス!」
いいですよと言ってるように聞こえる。
「・・・・・昔は俺も非現実的なことが大好きで、色々と変なことをしていたんだ。あまりにもよく分からない行動ばっかりするから、そのせいで友達も出来なかったし先生にも嫌われていた。だけど中学二年になって俺が起こした騒動に面白いって言ってくれた奴がいた。それが沙汰だった。」
ティルスには中学というものが分からなかったが真剣に話を聞いている。
「それからあいつと一緒に馬鹿をやってきた。だけど、・・・あの子に会って俺のすべてが変わったんだ。」
泰人は思い出すように語り始める。
一年前の初夏のある日、学校が終わって帰るときにちょっと気分を変えて帰り道を思って土手の辺りを歩いていたんだ。風も気持ちいいし景色も良かったからね。何よりもあの日にあそこを歩けばいつもと変わった日常がある、そんな気がしていたんだ。
土手を半分くらい歩いたところで、川岸で一人川を眺めている少女を見つけた。
俺は、こんなことはよくあることだと思ってその子から目を逸らそうとした。
だけど、ちょうどその子はこっちを振り返った。そして、俺たちは目が合った。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
俺たちは無言のままに見つめあっていた。俺はそんな状況に耐えられず土手を下りてその子に近づいた。
川岸で、更に夕焼けの空の下男女が見つめあう。そんなドラマのような状況だったが、全く知らない女の子とこういうことになるとマジで緊張する。知ってる子でも緊張すると思うけど。
「・・・・・・・ですか?」
ぼそりと少女が呟く。
「・・・何かな?」
緊張してたからそれしか言えなかった。するとその少女は俺の顔に自分の顔を近づけ
「貴方は私のことが見えるのですか?」
そう言った。確かにそう言った。
俺は訳が分からなかった。だっていきなりそう言われたら誰でも驚くだろ?
「・・・うん、まぁ。」
だから俺はそう答えることしかできなかった。
「・・・そうですか、いきなりすみません。」
少女は少し距離をとると
「私と友達になってください。」
と言った。初めてだった。沙汰や家族以外の人とこんなに話すのは。
「・・・いいよ。」
俺は言った。女友達がほしかったのもあるが、その子には少し不思議な感じがすると思ったからだ。
「・・・良かった。」
少女はホッとしたみたいだ。
「まずは自己紹介かな。俺は茅野泰人、君は?」
そうこの時だ。
「えっと、私は・・・・・・・。」
この瞬間に俺のすべては変わったんだ。
「・・・宇木風梓由。」
そう、その少女の名前を聞いた時に。
泰人の昔話は次にも続きます。また文章が短くなるかもしれません。なので早めに投稿できるよう努力します。
それでは、また次回に会いましょう。