最終決戦final.完全決着!すべての思いを込めて撃て!!
おはようございます、ロンロンの弟子です。・・・ついにすべてに決着をつける回が来ました。果たして茅野泰人はこのまま終わってしまうのか、悪夢神を倒すことができるのか、今回で分かります。後、今回は詰め込みすぎたため長いのでご注意ください。
それでは本編へどうぞ!
私がお兄ちゃんを意識し始めたのは希衣成さんが亡くなった後だった。それまでは頭は良いけどちょっとおかしい兄くらいの認識しかなかった。
うちに色々な人が来て色々聞かれた。お兄ちゃんのせいだって喚き散らす人もいたけどそんなことなんかない。でも・・・そんな日々が続いていつもおかしな行動をしていた兄が塞ぎ込んでしまった。
お兄ちゃんはただ私を守ってくれただけだ。でも裏を返せば私がいたからお兄ちゃんは塞ぎ込んでしまった。そう、私がいたせいで・・・・・・
でもそんな時に家に訪れたのが・・・沙汰さんだった。
「お前、なかなかやる奴だったんだな。」
それが最初の一言だった。それから毎日家に来ては色々な話をしてくれた。それはとても楽しかった、友人がいなかった兄には私以上に嬉しかったのかもしれない。
そしていつの間にか立ち直り再び学校に通えるようになった。やっぱり良くない噂が広まっていたみたいで周りからは避けられていたみたいだけど、沙汰さんが一緒だったから大丈夫だったみたい。
・・・・・・ここまでが表の話。この話には実は続きがあった。
「人殺しの妹!」
あーあ、そんな呼ばれ方もあったな。私が通っていた小学校にも噂は広まっていたらしく私のことを知っている人からはそう呼ばれていた。今まで仲が良かった友達も離れていって一人になってしまっていた。
でも、お兄ちゃんは何も悪いことはしていない。何を言われてもそう信じて通い続けていたある日のことだった。
「ちょっと君、どこから来たの?授業中ですよ!」
廊下からそんな声が聞こえた。まだ授業中の時間なのに何かあったのかなと思っていたとき・・・
ガラガラッ
「失礼します!」
私の教室に誰か入ってきた。・・・うん、お兄ちゃんだった。どうやら沙汰さんから私の話を聞いたらしく、平日なのにそのまま小学校に乗り込んできたみたいだった。
お兄ちゃんはみんなの前に立って・・・・・・土下座した。
「頼む、妹を悪く言わないでくれ。そして妹と、・・・莉麻と仲良くしてやってくれ!」
・・・驚いた。お兄ちゃんがおかしいことはよく分かっていたけど、・・・ここまでおかしいなんてね。
私はその場で泣いてしまった。恥ずかしかったのも少しあるが、やっぱり嬉しかった。ここまで私のことを気にしているなんて知らなかったから。お兄ちゃんはそのあと職員室に連れて行かれて説教されたみたい。だけど私のための行動だったからそこまで強く怒られなかったみたい。
そのおかげもあってか私はみんなと仲直りができた。本当にお兄ちゃんのおかげだ。その時から私は・・・お兄ちゃんが好きになっていた。
梓由さんが来たときはあんなこと言ったけど内心は平常じゃなかった。お兄ちゃんが女の子連れてくるなんて・・・というよりも沙汰さん以外の人を連れてきたの初めてだったから。
大好きなお兄ちゃん。ずっと・・・ずーっと一緒にいたい。だからお兄ちゃんが困っていたら今度は私が助けるんだ。そんな誓いのようなものをしていた。そしてその時が・・・訪れたのかもしれない。
夢の柱最上階・荒地
辺り一面先ほどの悪夢原子砲により荒れ果ててしまい、元々川のほとりだったのが分からないほどになっていた。そんな場所の一角で泰人が失格者が発する光によって今にも消えようとしていた。
「・・・これで全てが終わったな。」
泰人が消える中ぽつりと悪夢神が呟く。泰人を失うこと、それはティルス達にとって負けを表しているといってもいいほどだ。
「・・・・・・・!?お兄ちゃん!」
あまりの出来事に一瞬我を忘れていた莉麻が泰人に駆け寄る。しかし、時間は無情にも過ぎる。泰人の全身が光に包まれてしまう。
「・・・い、嫌だよ。消えないでよ、まだお兄ちゃんにはやらなきゃいけないことがあるでしょ?ここでお兄ちゃんがやられちゃったらこの世界だけじゃなくて沙汰さんもスィングさんも・・・本当の意味で祇亜さん、希衣成さんも救えないんだよ?・・・ねぇってば!!」
しかしそんなことお構いなしに包んだ光は消えようとしていた。光が完全に消えてしまえば泰人は退場となり今度こそ戻ってこれない。
「お願いだよ・・・返事して、お兄ちゃああああああああああん!!」
悲痛な叫び。それを聞いていた悪夢神以外のその場にいたものは確かに感じた。痛みを。それを聞いてみんな目をそらしてしまう。
だがそれが何になるだろうか。そう、その叫びも時間の前では無駄なのである。・・・・・・そう、無駄・・・なのだが・・・・・・。
・・・・・・
・・・・・
・・・
「・・・・・・まだ消えないのか?」
少しの時間が経った時、悪夢神の言葉に全員が再び泰人に目を向ける。するとそこには・・・・・・光があった。しかしその光はどこかおかしいと気づくのには時間がかからなかった。
「・・・おいおい、largoがかかってやがるぜ?」
そう、ヴィントルの言う通り泰人を包んでいた光が消えるスピードがとても遅くなったように見えた。それはlargoの能力であることは明らかだった。
「まさか!?」
悪夢神は時計を見る。時間は夜11時54分、正常に機能している。だが隣にある円は違った。
祇亜がいなくなったため一ヶ所が黒く塗りつぶされているのは理解できるのだが、問題はその隣で・・・
チカッチカッ
白黒に点滅している場所があったのだ。そう、この空間が泰人を失格者にするかどうか判断ができていないということ。つまりまだ救いがあるということだった。
それにいち早く気付いたヴィントルはスタッフたちに指示を出す。
「スタッフは泰人を背負って後ろに下がれ。そして莉麻とミーアは泰人に全力で回復魔法をかけろ。まだ間に合うかもしれねぇ!」
「「は、はい!」」
「うん!!」
頷くとスタッフが光りに包まれた泰人に駆け寄り背負う。どうやら問題なく触れるようで背負ったまま後方へと下がる。そしてその横に莉麻とミーアが付き添い泰人に回復魔法をかける。
「・・・させんぞ。奴をここで仕留めないと我の最大の邪魔になりかねん。ここで終わらせてやる!」
そう言って触角をスタッフたちに向けると悪夢砲の発射準備をする。しかし先ほどよりも動きが鈍く見える。どうやら極印の発動により相当力を消耗したみたいだ。今ならばまだ何とかなる、そう考えたヴィントルはティルスを呼び作戦を告げる。
「・・・悪夢神は弱っている。今なら倒すことができるかもしれねぇな。」
「で、でも戦える人がいません。それに僕はもう力が残って・・・」
「いんや、行けるぜ。・・・・・・さて、そろそろ俺様も命を懸ける時がきたようだな!」
「え?まさかヴィントルさん・・・」
ティルスの答えを聞かずにヴィントルはティルスの身に付けている王冠の中へと飛び込んだ。
するとカチッと何かがはまったような音が鳴ると、4つのアクセサリーが輝きを取り戻す。
「(さて、これでティルキングモードが可能だ。一気に決めるぞ!)」
「え?」
急に頭の中に声が響く。どうやらヴィントルは王冠と一体化したようで、ティルスにもどんどん力が流れ込んでくる。これならば十分戦えるだろう。・・・しかし、それほどの力をただで得ることができるとは考えにくい。それにさきほど言っていたヴィントルの命懸けという言葉が引っかかっていたティルスは一つの考えが過ぎる。
「食らうがいい、悪夢砲!」
だが今はそれどころではない。まずは悪夢神を無力化するほうが先である。そう考え直したティルスは全身へ力を込める、とそれに応えるように輝くアクセサリー。ティルスの背中から赤い翼が生えてそれを使い悪夢砲へと突っ込んでいく。
「何!?ま、まさかティルキングモード・・・だと・・・?」
悪夢砲を放つことに集中していた悪夢神はティルキングモード、ティルスがやろうとしていたことに全く目がいっていなかった。やはりそこまで疲労しているのであろう。悪夢砲にも勢いがない。
「・・・僕も驚いています。でも、今は貴方を全力で無力化するほうが先です!」
そう言うと右手を悪夢砲へと向ける。すると、4つの輝きが右腕へと集まって一つの球体が完成する。かなりの輝きで、今までの必殺技クラスの力を持っているのが見るだけでもわかる。
そしてティルスはそれを悪夢砲へ・・・悪夢神へと放つ。
「行きます、・・・四星光導波!」
ティルスの手から放たれた4つの光の集合体、それは悪夢砲と接触するも軽々と退ける。悪夢神自体の疲労もあるが、四星光導波の威力もかなりのものである。悪夢砲を押し返したながら進む四星光導波を見て流石に悪夢神もキツそうな目を向ける。
「・・・極印を使うタイミングを間違ったか。まさか再びティルキングモードが起動したのは予想外だ。」
そう毒づきながらも、今度は少し余裕があるらしく悪夢砲の発射を切り身体を移動させ四星光導波を回避する。後ろでズドオオオンと大きな爆発音を聞きながら嫌な汗を流す。
時計を見ると11時55分、残り時間は後5分である。今の悪夢神ではティルキングモードのティルスには勝てない。確かにあの不完全のティルキングモードは色々制限があるが、後2分くらいは持つと見える。それくらいあれば悪夢神を倒すことは可能である。
「(・・・我の負けなのか?女神に反して、ここまで計画を進めておいて後少しのところで終わるのか!?・・・・・・ありえん。もう後戻りできんのだ!)」
辺りを見回し、逆転の方法を考える悪夢神。目に入るのはティルスの背後で泰人を必死で回復しようとしている莉麻たちである。
「(今は泰人よりもティルスが優先だ。恐らく人質をとっても非情になられた場合は我がやられてしまう。やられた人質は後で復活できるのだからな。ヴィントルがティルスに色々吹き込んでいる可能性が高い今では人質は意味をなさない・・・・・・ん?)」
そこで目に入ったのはサミーだった。女神の力の象徴、シロミャーの欠片を全て宿している今のサミーは力の塊と言ってもおかしくはなかった。
「(先ほど我に捕まっていた奴等では駄目だな。後、力を持っていそうなのは夢の管理人である雪美か。この2人を・・・・・・クックック、いけるぞ!)」
不気味に笑い出した悪夢神にティルスとヴィントルも流石に何か嫌な予感を感じずにはいられなかった。そしてそれは的中することとなる。そう、悪夢神が・・・・・・急降下を始めたのだ。
「着地する気ですか。でも何の為に・・・まさか!?(まずい!奴を止めろ!!)」
しかし気付いた時には遅かった。悪夢神は着地し、地面に腕を2本突き刺した。そう狙いは・・・サポーター達である。
「残念だったな。足手まといをここに連れてきたのが貴様等の最大の失敗なのだよ!」
「お兄ちゃん、元気になって!」
「くっ、流石に死傷の回復は難しいわね。」
莉麻とミーアは必死に泰人に回復魔法をかけるが一向に良くなる兆しが見えない。largoでギリギリ生かされているものの左胸を貫かれているのだ。回復魔法は重傷であればあるほど時間がかかり、死傷となると失敗する可能性がとても高い。だが、彼女達はその僅かな可能性に賭けるしかなかった。
「・・・泰人、目を覚まして。」
梓由が泰人に語りかけるように祈る。それは他のメンバーも同じなのだが、サミーはティルス達の戦いの方を見ていた。やはり子供である彼女はこういう状況でも、興味は動く方へと向いてしまうのだろう。だがそのおかげでこれから起こることに気付くことが出来たのだった。
「ねぇ、お母さん。あの虫さん、地面に自分の手を入れたよ。痛くないのかな?」
「「・・・・・・え!?」」
その言葉に全員の視線が悪夢神に向けられる。そして腕の行方を目で追っていくと・・・間違いなくサミー達にへと向かっていた。ティルスも向かっているのだが間に合いそうもない。
「大変だ!皆、逃げよう。」
そう言ってスタッフは泰人を再び背負おうとしたが・・・既に遅かった。
ズボッ、ズボッ
近くの地面から2本の腕が生えてきて、それぞれ標的を見つけると向かっていく。1本は雪美に、もう1本はサミーへと・・・
「雪美!!」
「サミー!!」
「「・・・え?」」
2人ともまさか自分達が狙いであるとは流石に分からなかったため、その場から動くことが出来なかった。彼女達に向かった腕は先端が大きな口のようなものに形を変えて大きく開いた。そう、まるで彼女達を食べようとしているように。
「「ま、間に合わない!」」
スタッフは泰人を気にしていたため動けず、莉麻とミーアは回復、梓由は付き添いとすぐには助けには入れない状況だった。・・・・・・だが、この状況で動けるのが2人だけいた。
「雪美さん!」
星音と・・・
「サミー!」
フィルディアだった。2人は標的になっていた彼女達を突き飛ばした。
ドンッ
「せ、星音ちゃん?」
「これで・・・少しは皆さんへの罪滅ぼしになれば・・・・・・」
バクンッ
「お・・・かあ・・・さん?」
「サミー、貴女ならきっと泰人さん達を助けられるわ。だから・・・・・・」
バクンッ
そう、最後の言葉を残し、星音とフィルディアは悪夢神に吸収された。
「間に合わなかっ・・・た?(・・・畜生ッ!!!)」
悪夢神の狙いは雪美とサミーだった。そう、極印によって使い果たした力を彼女達を吸収することで取り戻そうとしたのだ。しかし、本来の目的の2人とは違う2人を取り込んでしまった。それは悪夢神の誤算だったのだが・・・
「・・・ふむ、なるほど。フィルディアは上位の妖精だったのか。サミーほどではないがなかなかだな。・・・だがそれと比べものにならないな、こっちは。」
悪夢神は少し念じる。すると、大地から緑色の光が出てきて悪夢神を包む。その光は回復魔法の光とよく似ていた。
「これは予想外だ。星音を取り込んだことにより、完璧にこの世界を制御できるようになるとはな。これで極印もまた何度か使うことが出来そうだ。」
「そ、そんな・・・(・・・・・・。)」
強力な極印をまだ何回か使える。その言葉に全員から希望が消えていくのが分かる。最強の闇の呪文を超えた泰人の新必殺技、ラルゴテンペストでさえ全く歯が立たなかったのだ。それをまだ使えるとなると・・・絶望するしかなかった。
「星音ちゃん・・・ごめんなさい。」
自分を庇った星音に謝る雪美。実際の話、雪美を取り込んだ場合ここまで絶望的な状況にはならなかった。だが本人達にはそこまで理解できるはずもない。
そして雪美よりも・・・サミーの方がひどかった。
「・・・いなくなっちゃった。お母さんが・・・あたちを庇って・・・いなくなっちゃった。お母さんが・・・」
虚ろな目でそんな言葉を繰り返していた。フィルディアはサミーにとって何よりも大切な存在、子供のサミーにも大切な存在がいなくなる痛みは分かる。・・・いや、大人よりも分かりすぎるのかもしれない。
「サミーちゃん!」
サミーがおかしいのに気付いたスタッフがサミーを受け止める。だが、サミーは先ほどの言葉を繰り返すだけで全く反応しない。
「さてと、十分力を補充できた。かかってくるがいい!」
「・・・ふ、ふざけないでください!(おい、落ち着け!)」
悪夢神のあまりにも卑怯な手に流石のティルスも堪忍袋の緒が切れたようだ。冷静さを欠き、怒りにまかせて技を放とうとする・・・が
「(落ち着け馬鹿野郎!!!)」
「・・・ヴィントルさん?」
ヴィントルの一喝によって我に返るティルス。ヴィントルは言葉を続ける。
「(・・・いいか。怒りに身を任せるな、それは諦めていると同じだ。例え絶望的な状況でも手を探せ。全て救う気があるなら絶対に・・・諦めんじゃねぇ!!)」
「・・・・・・そうですね。すみません、これじゃ次期王失格ですね。」
そのやり取りで冷静さを取り戻したティルスは悪夢神を見る。先ほどのラルゴテンペストの傷はほぼ完治してしまっている。さらに極印をまだ使えるとなると手はないように見える。そう、自分には・・・だ。
「だったら僕は信じます。・・・ティライズ君を!(・・・何?)」
ヴィントルはよく分からなかった。ここで何故ティライズが出てくるのかと。だがティルスは自信があるようだった。
「僕がティライズ君に残した手紙、あれを見た彼が何もしないわけがないです。(だが、まだ起きていない可能性がある。泰人が目覚める可能性よりも低いぞ!)」
そんなヴィントルに首を振るティルス。
「大丈夫、もう起きて行動していますよ。それにそろそろ・・・・・・来る頃です。(・・・何?)」
そうティルスが言い切った時だった。スタッフ達の近くの空間がギシギシと音を立てて・・・
パッキーンッ
と割れる音とともにその場所に建造物が出現する。・・・いや、建造物ではない。それは、・・・・・・願いの跡地だった。
「ティルス、待たせたな。信じてくれて嬉しかった。」
「・・・ね、言ったとおりでしょ?(・・・ほう、こいつは面白くなってきやがったぜ。)」
そしてその跡地から出てきた少年、それが・・・ティライズだった。
「ば、馬鹿な。願いの跡地は我の控室に厳重に隠していたはず・・・・・・まさか貴様!?」
「あぁ、残念だったな。私のことを計算に入れていなかったのがお前の失敗だ。」
そう言いつつ悪夢神に先ほど手に入れた金色のネックレスを見せる。そしてここに来た経緯を語る。
「目を覚ました私はお前の部屋に辿り着いてな、そこでこれを拾った。そしてこのネックレスに導かれるがまま願いの跡地に入ったら突然の白い光で視界が奪われと思ったらここに飛ばされていたというわけだ。」
それを聞いた悪夢神は言葉を失う。そしてネックレスを持ってこなかった自らの失敗を反省した。
「(願いの跡地、金色のネックレス、サミー、ミーア・・・揃ってしまったか。我としたことが・・・もっともやってはいけないことをしてしまった!!)」
そう、その4つを揃えることには意味があった。
もともと願いの跡地の力は悪夢神達神の力に通じるものがある。そしてその神の力が満ちている場所に、消える前女神が身に付けていたネックレスと女神の力を宿しているサミーとミーアが揃ったとき、夢の女神は復活するのだ。
ただし、サミーとミーアがそれを望む場合に限る。二人が自覚しなければ復活はないのだ。
「・・・なんか呼ばれているような気がする。」
「ミーア?」
ミーアはいち早くこの感覚に気付き一時回復を中断し、跡地のほうへとふらふら導かれていく。
と、こっちはいいのだが問題はサミーである。
「・・・いなくなっちゃった。お母さんが・・・あたちを庇って・・・いなくなっちゃった。お母さんが・・・」
今もまだ錯乱状態である彼女では自覚できるわけもない。このままでは女神の復活はないのだ。
「・・・ならば復活する前にティルスを倒せばいいだけだ!」
悪夢神はそう言葉にするとティルスのほうへと身体を向ける。そして攻撃態勢を取った。
「・・・ティライズ君。多分サミーが最後のカギになっている。彼女を頼むよ。僕は何とか時間を稼いでみる!」
「分かった。・・・死ぬなよ?」
そう言い残してティライズはサミーのもとへと向かった。その後ろ姿を見送ったティルスも戦闘態勢を取る。
「・・・どうやら僕たちにもまだ勝機があるみたいですね。(うむ、油断するなよ。)」
「ほざけ。貴様を倒せば全て終わりだ!」
二人とも翼を広げて大空へと羽ばたいた。こうして再び空中戦が開始された。
「おい、サミーはどうなっている?」
駆け付けたティライズにスタッフは起こったことをすべて話す。錯乱状態になっているのは自分の目の前で母親を失ったせいであると。
「・・・なるほどな。ならば後は私に任せてお前は莉麻のほうを頼む。一人では辛そうだから励ましてやってほしい。」
「分かったよ。君も無理はしないようにね。」
スタッフはティライズにサミーを渡すと一人回復に専念している莉麻の方へと向かった。
雪美の方には梓由が付き添っているため大丈夫であるのだとティライズは考えていた。それよりも早くサミーを正気に戻さなくてはならない。ティルスが戦っている方を見ると明らかに劣勢であることが見て取れた。ただでさえ無理なティルキングモードの連発で身体的にも限界なティルスに対して完全回復した真悪夢神、どちらが優勢かなど誰が見ても明らかだった。ティライズはこれまでの経過を知らないため劣性であるという事実しか知ることはできなかったが。
「さて、サミーよ。私の声が聞こえるか?」
「・・・いなくなっちゃった。お母さんが・・・あたちを庇って・・・いなくなっちゃった。お母さんが・・・」
まだ錯乱しているようで聞く耳を持たないのが分かる。だが時間がない。一か八かティライズはとある話題を出した。
「お前の母親を助ける手段はあるぞ。」
「・・・・・・・・・・え?」
サミーは顔をあげ虚ろな目でティライズを視界に入れる。それを見てティライズは話を続ける。
「今お前の身体に異変が起きているはずだ。分かるか?」
「・・・・・・あっちに行けって声が聞こえる。」
そう言って願いの跡地の方を指さす。それにティライズは頷く。
「そうだ。あそこに行けば母親を助ける力が手に入るはずだ。それはお前にしかできない。」
「あたちにしか・・・できないこと?」
そう言葉を紡いでいくうちにサミーの目に光が戻っていくのが分かる。もう一息だ。
「それに仲間たちみんなも救える。頼む、仲間を救ってくれ!」
「・・・あたちが・・・・・・みんな助けられる・・・。」
そう呟いていくうちにサミーの身体が妙な光に包まれた。何色とも例えられない不思議な色だった。そして自らの羽で飛び上がった。
「あたちが・・・みんなを助けるの!」
そう力強い言葉を口にしたサミーは願いの跡地の方へと飛んでいった。ティライズはそれを見届けるとふぅと一息ついた後、彼女の後を追った。
「・・・・・・さて、ネックレスを届けなくてはならないな。行くか。」
上空
悪夢神とティルスの対決はティルスの劣勢だった。
悪夢神の繰り出す闇の術と棘の攻撃を避けるのが精いっぱいでなかなか反撃ができないでいた。というよりも攻撃の術を使うほどの体力が残っていないのが現状だ。その証拠にアクセサリーの光が弱弱しくなっていた。
「・・・そろそろきつくなってきましたね。(・・・・・・限界が近づいてきちまったようだ。)」
「なるほど、貴様らも限界というわけか。ならば・・・・・・終わりにしようではないか!!」
彼の背後に複雑怪奇な術式が組まれていた。それはティルスも先ほど見たあの技、極印の術式だった。
「・・・大変です!(・・・だが今の俺様たちじゃあの術式を解除するほどの技は使えないぞ。)」
そうこうしている間にも極印が完成へと近づいていく。絶体絶命・・・という状況の中、その声が聞こえた。
「少年さん、そのままあの虫の人に体当たりしてください。急いで!」
「え?(な、なんだ今の声は?)」
ティルスとヴィントルは確かに声を聞いた。少女の声、・・・どこかで聞いたことがあるような声を。
だが考えている暇はなかった。ティルスは覚悟を決めると残り全ての力を込めて悪夢神へと突っ込んでいった。
「ふはは、血迷ったか。今極印が完成した。貴様の一撃の前に極印を見せてやろう。」
そう言って術式を解き放った・・・その時だった。
「・・・・・・prest!!」
そう、それが聞こえたのは。・・・瞬間、ティルスのスピードが急に上がる。
「極砲印・悪夢原子砲・・・ぐがぁ!?」
そしてそのまま体当たりで突っ込む。あまりの出来事に悪夢神はバランスを崩して上を向いてしまった。そのまま悪夢原子砲を上空へと・・・・・・空撃ちしてしまった。
ズドオオオオオオオオオオオオオン!
大きな音を立てて上空で爆発する。当然被害はなかった。
ティルスは体勢を立て直すと今の技を使った人を探す。祇亜は既に消えてしまっているため、心当たりが一人しかいなかったのだ。
だが、地上を見ると一人の少女がティルス達を見上げていた。そう、その少女とは・・・
「・・・上手くいったね。(あたしが指示したんだから当然でしょ。感謝しなさいよね!)」
先ほどまで猫だったはずの、猫耳を生やした少女・・・白城希衣成、張本人だった。
願いの跡地・内部
「久しぶりに来たわね。・・・といっても1週間も経ってないけど。」
内部はほとんど変わっていなかった。ただ祭壇は光っており今にも何かが起こりそうな雰囲気だった。
そしてそこにサミーとティライズも辿り着く。
「来たよ!何すればいいんだろ?」
「ちょっと待ってくれ。恐らく・・・あそこの祭壇にこのネックレスを置けばいいと思う。」
そう言ってティライズは祭壇に金のネックレスを置く。すると・・・
「「・・・キャッ!」」
光りがサミーとミーアを包み、そのまま祭壇の方へと吸い込まれていった。
そのあとすぐにゴゴゴゴッと祭壇が唸りはじめる。どうやら復活の儀式のようなものをしているらしい。
「さて、私は出るか。成功しているといいが。」
ティライズは跡地から出た。
上空
ティルスは下降して希衣成と合流する。ティルスはまさか祇亜と分離した希衣成がprestを使用できるとは思ってもいなかったのだが、そこを希衣成は話してくれた。
「実はあの後隠れてprestを制御できるように少し特訓していたんです。レストちゃんも手伝ってくれたのですぐに覚えられました。(あたしは教えるのも上手いからね。当然よ!)」
レストとはスイルと同様な存在で、実はあの猫はこのレストだったのだ。希衣成はこの世界でレストと一体化していたらしく、今は彼女の力で希衣成の姿を取っているのだ。猫耳が生えているのはどうしようもないらしい。
そう話していると悪夢神も再び下降して着地してきた。
「・・・まさかprestの力自体が独立しているとは予想外だった。貴重な極印も無駄にしてしまった・・・がまだもう一度使用でき、回復すれば何度でも・・・・・・なっ!?」
「「え?」」
悪夢神が驚いた声を上げた。ティルスと希衣成もその方向に目を向けると・・・・・・願いの跡地から誰か出てくるところだった。ティライズが出た後、・・・一人の女性が姿を現した。
そう、その姿はミーアをさらに大人っぽくしたような風貌で、先ほどの金のネックレスを身に付けており背中には真っ白な翼を生やしていた。
「あらら、ムー君また虫の姿になっちゃってたのね。本当に困った子だわ。」
「・・・サミア。」
悪夢神が女性を見てそう呟く。そうその女性こそ夢の女神、サミアだった。
「あーあ、力失っちゃった。もうその辺の魔法使いとあまり変わらないわね。」
「何か身体が軽いよ。早くお母さん助けて報告しなきゃ!」
サミアの後に続くようにミーアとサミーも出てくる。どうやら女神に力を返したようで二人とも力を失ったものの、どこかすっきりしたように見えた。
そう、これでこの二人は本当の意味で解放されたのだった。
「うんうん、二人とも迷惑かけちゃってごめんね。さーてと、雪美ちゃんちょっといいかな?」
と、なんか神にしてはかなり威厳が感じられないサミアは雪美に話しかける。
「あ、はい。なんでしょうか?」
「貴方の持っている夢の管理人の能力をあちきに返して欲しいのよ。いいかな?」
「・・・・・・えーっと、いいですよ。」
女神とは高貴な存在を想像する人が多いだろう。このサミアも見た目は確かに神々しいのだが・・・中身はおばちゃんっぽかった。まぁ、実際相当な歳であるため仕方ないのかもしれないが。
そんなどうでもいいことは置いておいて、サミアは雪美の手を取るとその手を通って光がサミアへと移った。
「これでよしっと。今までありがとね、大変だったでしょ?」
「あ、いえいえ。お屋敷の人たちが助けてくれましたし、そこまででもありませんでした。」
と世間話を繰り広げている。・・・そんな光景を見ていた悪夢神が我慢できず声をかける。
「サミアよ。再び蘇ったようだがどうするのだ?我と対立するつもりならば容赦はせんぞ。」
「うーん、だって息子の反抗期は親であるあちきが面倒見なきゃいけないからね。でも目覚めたばかりで身体の節々が・・・って嫌だ、何言わせるのよもう!」
「・・・・・・・・・・。」
悪夢神も言葉を失ってしまった。いや、ティルス達も同じことを思っているだろう。・・・やっぱりおばさんくさいなと。
だが気になる単語があった。そう悪夢神は実は神の化身なのだ。そしてこの悪夢神の生みの親がこのサミアなのである。
「あちきが終わらせてもいいけど、・・・・・・あくまでもティルスちゃん達が乗り越えなきゃいけないのよね。だから・・・お手伝いだけにするわ。」
そう言って未だに泰人の回復を続けている莉麻の元へ行き声をかける。
「これだけの死傷なら彼自身を呼び起こす必要があるわ。あちきが手伝ってあげるから彼を呼んできて頂戴。」
「お、おい何をするつもりだ?」
悪夢神の驚いている声に対し満面の笑顔で答えるサミア。そう、彼女がしようとしているのは・・・
「だって貴方を倒せそうなのは泰人ちゃんだけだからね。だから呼び戻すお手伝いよ?」
「なっ・・・!?」
悪夢神はあまりに理不尽なサミアに抗議しようとしたのだが、サミアが手で制する。
「残り時間は後3分。それに貴方まだ極印使えるんでしょ?・・・あちきは見てみたいのよ。この子たちが本当に世界を変えるほどの力を持った子達なのかをね。もしこの子たちが負けた場合は貴方に従って、世界の管理に向かってもいいわ。それでいいかしら?」
「・・・最後までこいつらを信じるか、お前らしい。いいだろう、我が負けるわけないからな。茅野泰人を呼び戻してくるがいい。」
「そうこなくっちゃ♪」
悪夢神の許可ももらい、サミアは莉麻の頭の上にポンと手を乗せる。
「これを使うと貴女は意識を失っちゃって失格になるけどいいかしら?あの時計の横にある白黒に光ってる部分、あのままにしとくとエラー起こして何が起こるかわからないの。だから悪いけど・・・頼めるかな?」
「大丈夫です。絶対にお兄ちゃんを呼び戻してきます!」
「ええ、お願いするわ。」
そして頭に置いた手を放した瞬間・・・
「あっ・・・。」
莉麻は急に襲ってきた眠気に耐えられずに・・・意識を失った。
またか。俺はまたやっちまったのかよ。せっかく祇亜の奴に助けてもらったのに・・・情けない限りだ。
ここは死後の世界か?俺は・・・死んじまったのかよ。周りがよく見えな・・・って何か見えるな。ここで立ち止まっていても仕方ないし行ってみるか。
・・・ん、これは巨大なラルゴか?どうして馬鹿でかいラルゴがこんなところに・・・。しかも変に光ってるな、これってまさか・・・largoか?
「全く君は世話が焼けるね。せっかく僕が一度死んだ君をギリギリで繋ぎ止めているのになんでこんなにゆっくりしているんだい?」
うわぉ、スイルの声が聞こえたわ。そうか、このラルゴはスイルだったのか。・・・って、繋ぎ止めているってどういうことだ?
「言葉の通りさ。君は死んだ・・・いや、仮死状態になっていると言った方がいいかな。それをlargoでギリギリ維持しているんだ。だから君が意識を取り戻せばいいのさ。」
それは悪かった。でも俺には分からないんだ。・・・それに帰ったところで悪夢神の極印に対抗する手段なんか・・・・・・
「ったく、うだうだ悩んでんじゃねぇよ。俺が助けたのが無駄みたいに思えてくるだろ!」
・・・俺の前に突然祇亜が現れた。そういや今の俺は仮死状態、ってことはここは死後の世界にもっとも近い場所ってことか。
すまん、祇亜。俺やられちまっ・・・
「だから、まだ生き返る方法あるんだから諦めんなよ。」
「そうだ。俺っち達を助けてくれるんだろう?」
祇亜の隣にはいつの間にか沙汰とスィングが。・・・それにその後ろには、まさか!?
「この僕に勝ったんだ。悪魔に負けちゃ僕の負け損だよ。」
「キチガイは面倒なので黙ってください。しかし、私を倒した沙汰君の親友ならば信用できますね。」
「おい鳥頭!こいつはワシの孫じゃぞ。負けるわけがなかろう。」
「・・・こんな奴らが俺の同僚とは・・・・・・。」
爺ちゃん含めた親衛隊のメンバーか。赤髪の男は知らないが、この人が恐らく朱雀だろう。まさかこんな所で会うとは思わなかったけどな。・・・青龍が苦労人すぎて少し泣けてくるが、それは一端置いておこう。
まさか、これだけの豪華面子に応援してもらえるとは思わなかったぜ。嬉しい・・・けど、結局帰る方法は分かっていない。どうすれば・・・いいんだ?
「大丈夫。帰る方法ならあるよ。」
・・・え?この声って、まさか?後ろから聞こえた声に振り返った俺の視界に映ったのは、・・・莉麻だった。
「さて、お兄ちゃんに今起こっていることを教えるね。」
莉麻は俺に今の状況を話してくれた。どうやら俺がいなくなった後、ティライズのおかげで夢の女神が復活したらしい。ティライズ、生きていてよかったよ。だが悪夢神は未だに健在、いやフィルディアさん達が取り込まれて更に強化しちまったらしい。・・・くそ!あの時のラルゴテンペストで倒しておけばこんなことには・・・。
サミーは無事で女神は復活、これだけ見ればいいように見えるが結局俺は何も出来なかった。・・・いや、まだだ。悪夢神をぶっ倒せば皆救える。それは俺がやらなきゃいけない、今度こそ奴を倒すんだ!
「分かってんじゃねぇか。あの野郎をぶっ飛ばしてきな!」
分かってるぜ祇亜。奴を倒して、あの事件の謎を調べるのは俺の役目だからな。
「早く終わらせてくれ。ミニパソ直したいんだよ。」
「俺っちは酒盛りしたいっすね。頑張れよ!」
あぁ、・・・ってスィングって酒飲めるのか。年上だったのね。
「大丈夫さ、君ならできる。」
「面倒ですが応援するだけならしてあげます。」
「ワシらが出来なかったこと・・・成し遂げてくれ!」
「あの時にも言ったが、今はお前たちの時代だ。・・・悔いだけは残すなよ!」
爺ちゃん、親衛隊のメンバー・・・ありがとう。貴方達ができなかったこと、俺達の時代で必ず成し遂げて見せます。
・・・お、そういや向こうに武者蜥蜴隊リーダーと俺を助けてくれた子がいるな。どうやら恥ずかしくて声がかけづらいみたいだけど、来てくれただけでも嬉しいよ。ありがとう。
「そうだね。ここにいる皆、お兄ちゃんが勝つって信じているから。・・・さ、私達の未来を守るためにも行ってきて!」
目の前が白くなってきた。次、目を開けたら戦場だということは言われなくても感じていた。莉麻が俺のために命を賭けてまでしてできたこのチャンス、無駄にはしない。
大丈夫だ。今度こそ・・・今度こそ俺は悪夢から皆を覚まさしてみせる!
そう決意して俺は意識を失った。
無の空間
莉麻が泰人を呼びに行っている間、悪夢神はフィールドを作り替えていた。
何もない無の空間、ただ無駄に広がる空間が最後の対決の場だ。王子隊のメンバーも健在であり、ティルスはヴィントルと分離していた。・・・・・・しかし
「・・・どうやら俺様はここまでのようだな。ったく、肉体を失ってもここまで頑張らなきゃいけないとはな。」
黒い水晶には既にひびが入っており、ビキビキと音を立てて今にも砕けそうだった。
「ヴィントルさん、ありがとうございました。貴方がいてくれたから・・・僕らはここまで来れたんです。」
「あぁ、感謝している。」
「はん!ガキが何言ってやがる。俺様が好きにやっただけだから、お礼なんて気持ち悪いだけなんだよ!」
とは言うものの、ティルスとティライズにお礼を言われて満更でもないようだった。そして、ミーアとサミーも寄ってきた。
「・・・ごめんなさい。私、何も知らなくて貴方をこんな姿に。」
「だから気持ち悪いだけだから謝んな!・・・サミー、お前は成長しないでこのままでいるんだぞ!」
「???えーっと、よく分からないけどあたち、お母さん助けるよ!」
サミーはヴィントルの言葉の意味を理解してはいなかったが、サミーの抱負を聞いてヴィントルは少し救われたような気分になった。
ビキビキッ・・・パッキーン!
音を立てて水晶は砕けて欠片が消えていく。
「いいか、俺様がここまでしてやったんだ。ぜってー負けんじゃねぇぞ、・・・泰人!」
それがヴィントルの残した最後の言葉となり、欠片は全て消え去った。
「さて、これで戦えるのが・・・む?」
ヴィントルが消えたことを確認した悪夢神は泰人の方へと視線を向ける。莉麻は意識を失い消えてしまったが、そこには茅野泰人が・・・いなかった。
驚いた悪夢神は辺りを見回す。すると泰人は・・・既に起きており、彼もヴィントルが消えるのを見届けていたのだ。
「・・・ごめん、ヴィントル。後は俺が決めてやるからな!」
「(・・・何が起こっている!?いつの間に奴は目を覚ましたのだ・・・。)」
悪夢神は混乱していたが、泰人は生きていた。光は消え去り傷もある程度回復はしている。しかし、完全ではないためまだ苦しそうではあるが。
時計の方は点滅が消え塗り潰されている。どうやら莉麻のリタイアで点滅状態ではなくなったようだ。そしてそんな泰人にサミアが話しかけた。
「泰人ちゃん、初めましてね。あちきはサミア。・・・帰ってこられたのね。」
「あぁ、俺はもう大丈夫。貴女が信じてくれている俺たちの底力を見せてやりますよ。」
そう返した泰人は再び悪夢神へと向きなおす。彼から感じる力は先ほどとは少し違っていた。・・・そう、まるで祇亜がプレストを使っていた時のようなそんな違和感を悪夢神は感じ取った。
「(・・・なるほど。奴はさっきまで仮死状態だった。それから復活したってことは、largoの力も上がっているということだな。)」
そう、泰人が起きたことを悪夢神が知ることができなかったのは、起きた後すぐに悪夢神にlargoを使っていたからだ。泰人は起きてすぐに反撃されるのを恐れて悪夢神にlargoをかけてギリギリまで復活したことを悟られないようにしたのだ。ヴィントルの最期を看取る、その時まで。
「なかなか洒落たことをしてくれる。・・・だが、いくらlargoの力をもってしても極印の力には敵わない。絶対にな!!」
そう宣言し、悪夢神は飛び上がり極印を展開する。しかも妨害されないように対魔防壁を展開していた。これではlargoは悪夢神に届かない。仮に届いたとしても極印を放たれた跡であり、妨害する時間はもうなかった。
只今の時間は午後11時58分。・・・残り2分、もう残された時間はほとんどなかった。極印に対抗する技がなければ泰人たちはここで終わってしまう。
「(・・・奴のlargo対策は完璧だ。それに極印は俺の最強の技、ラルゴテンペストすら全く歯が立たなかった。それに勝てる技なんて・・・あるのか?)」
泰人は迷っていた。ラルゴテンペストが通じないことは分かっている、だが彼にはそれ以上の技がない。largo対策をされた今、極印に対抗する技がもうなかった。
しかし迷っている時間はない。とにかくスネイラーを召喚しないことには何も始まらなかった。
「・・・現れろ、覚醒スネイラー!!」
その言葉に合わせて出現する覚醒スネイラー。だがその後を考えていなかった。悪夢神はそろそろ極印の準備が終わる、・・・もう仕方なくラルゴテンペストを放とうとしていた泰人を見てサミアがスネイラーへと話しかける。
「・・・ねぇ、スイルちゃん。レストちゃんと貴方の力を合わせれば、あちき達神々の使う極印にも対抗できるはずよね。・・・この状況、それしか手は残されていないわよ。」
「・・・・・・うーん、確かにそうなんだけどレストちゃんが協力してくれるかな?」
「何か手があるのか?」
覚醒スネイラー、スイルが困ったような声を出す。どうやらレストは彼女とそこまでいい関係というわけではないと思っているらしい。だが他に手がないのも事実。スイルは希衣成、レストへと頼み込んだ。
「ねぇ、レストちゃん。聞いてるよね。どうやら君の力が必要な状況みたいだし、お願いできないかな?」
「・・・レストちゃん?(・・・・・・。)」
すると希衣成の片方の目の色が青く変わる。それと同時に彼女の雰囲気が変わっていく。どうやらレストと交代したようだった。レストはキッとスイルの方を睨みつけながら答える。
「ふん、あんたの言うことなんか聞くわけないじゃない。確かに状況は状況だけどあたしはあんたのことなんて・・・」
「頼むよ、何でも言うこと聞いてあげるからさ・・・・・・」
「・・・!!?」
瞬間、レストの目がカッと開き頬が赤く染まっていく。身体をくねくねさせて恥ずかしがりながらスイルに答えていく。
「・・・し、仕方ないわね。そこまで言うなら力を貸してあげないこともないわ。か、勘違いしないでよね。あたしはここで全て終わるのが嫌なだけで、あんたがいうこと聞いてくれるのが目当てなんかじゃないんだから!!」
「うん、分かってる。宜しくお願いするよ。」
「・・・ふん!」
そして会話を終えると希衣成の目の色が元に戻る。この時、希衣成だけではなくここにいる全員が思ったことであろう。レストは・・・・・・ツンデレであると。
「(茅野泰人のラルゴテンペストに向かって祇亜が使っていた技、プレストライクを使いなさい。やり方はあたしの指示に従って!)・・・うん、分かりました。」
レストの言葉に頷いた希衣成は泰人にラルゴテンペストを使うように言う。それを聞いた泰人は悪夢神の方を見る。悪夢神は既に極印を放つ準備が完了していた。・・・決着の時が刻一刻と迫っていることがここにいる全員が理解していた。サミーも珍しく静かになってただただ見ているしかなかった。自分にできることが信じることであると分かっていたのかどうかまでは分からないが。
「さて、ここまで我を追い詰めたことは素直に誉めてやろう。・・・だが、残念だが貴様らはここで終わる。安心しろ、ここで負けても我が再び再生させ我の管理する世界に住まわせてやるのでな。」
「・・・お断りだ。俺たちはお前に負ける気なんてない。絶対に・・・・・・勝つ!!」
全員の覚悟が完了し・・・・・・その時が来た。悪夢神が極印を放つ。
「・・・これで終わりだ。極砲印・悪夢原子砲!!」
グオオオオオオオオオオオオオオオ
さきほど以上の音を立てて放たれる悪夢原子砲。今度は分かりやすいほど太く、見ただけで普通の人なら失神しそうな力を感じられた。
だが逃げるなんて選択肢は・・・ない。泰人も覚醒スネイラーへと指示を出す。
「・・・食らいやがれ、ラルゴテンペスト!!」
放たれるラルゴテンペスト・・・ではあるが、悪夢原子砲に対抗するには全然力が足りないことは誰が見ても明らかだった。だからこその・・・希衣成とレストだ。
「(今よ!)届いて、・・・プレストライク!」
希衣成の両腕から巨大な猫が放たれ、ラルゴテンペストへと向かっていく。
二つの技がぶつかる・・・いや、違う。ラルゴテンペストがプレストライクを受け入れるように纏わる。するとさらに巨大化し、悪夢原子砲に負けないほどの大きさへと変わる。
「「・・・僕たち(あたしたち)はこの時を待っていた。今こそ約束を果たす時!!」」
スイルとレストの声が交差する。それに続けて、泰人と希衣成も改めて・・・・・・技名を叫ぶ。
「「・・・・・・決まっとけ(決まって)、プレストライク・テンペストおおおおおおおおおお!!!!」」
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
雄たけびを上げる嵐を纏った猫、プレストライク・テンペストが極印と・・・・・・ぶつかった!
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイン
耳障りな音が耳に響くが気にしていられなかった。
全員が極印とプレストライク・テンペストのぶつかり合いから目を離せなかった。ラルゴテンペストの時とは違って、消滅はしなかった・・・のだが
グググググッ
「・・・・・畜生ッ、これは・・・やべぇ。」
「これが・・・極印・・・なの!?」
・・・押されていた。あれほど大きな嵐を纏った猫の力をもってしても極印、悪夢原子砲にはやはり届かないのだろう。4人は精いっぱい力を尽くしているものの・・・・・・徐々に押されている。力の差は誰が見ても明らかだった。
「やっぱり力不足か。・・・このままじゃ、負けるわね。」
実はサミアには最初から分かっていた。単純に力では極印に勝てるはずはないと。プレストライク・テンペスト自体相当強力なもので最上位クラスに匹敵するのだが、それでも届かない極印は神のみに使用が許されたいわば反則技といっても過言ではない。
しかしサミアも無策でプレストライク・テンペストを指示したわけではない。そう、彼女は・・・ちゃんとこの先を考えていたのだ。ただ悪夢神を倒すだけではない。彼に人類にはまだまだ可能性があることを理解させて尚且つ勝つ、それがサミアの理想だった。
彼女は王子隊メンバーを改めて見る。全員疲れきっていてもう限界なのだが、それでも泰人たちが勝つように祈っていた。そんな彼らを見て彼女はそのうち一人に何やら不思議な力を感じ取っていた。その人物とは・・・・・・スタッフだった。
スタッフ、未だに彼の正体は謎のままだ。一体彼は何者なのか、それは本人にも分かっていないのだが・・・実はサミアはその正体を知っていた。それだけではなく、彼には隠された能力が眠っていることにも気付いていた。そして確信する。この状況を変えることができるのはスタッフしかいない、と。
「スタッフちゃん・・・ううん、佐早羅ちゃん。あちきの今から言うことをしっかり聞いてほしいの。」
「・・・え。あの、それって僕の名前ですか?貴女は僕のこと・・・・・・」
「知っているわ。だけど今はそれどころじゃないの。・・・分かるよね?」
急に真剣な表情をするサミアに少々驚きながらも頷いて見せるスタッフに、サミアは他のメンバーにも聞こえるように言葉を続ける。
「皆いいかしら?多分わかってると思うけど、このままじゃムー君には勝てないわ。・・・確かにあなたたちの祈りは彼らに届いてる、でもそれだけじゃ足りない。もっと直接的に、さらに効果的なものがないとね。」
そう言ってスタッフに手を出すように指示を出す。彼は半信半疑ながらも言われた通り右手を差し出した。
「さぁ、思いを込めて佐早羅ちゃんの手の上に自分の手を重ねて。その思いが力になって泰人ちゃん達に届くから。」
そう言っている間にも泰人たちは押されてもう後がないところまで追いつめられていた。残り時間を見ると後1分を切っており、彼女たちはサミアの言葉を信じる以外もう手は残されていなかった。・・・そして思い思いに手を重ねていく。
スタッフを最初に、ティルス、ティライズ、梓由、雪美、ミーア、サミア、サミーの順で重なっていく。サミーが最後なのは大きさ故である。そして思いはスタッフへと伝わっていく。
「・・・まだ終われない。僕らには進むべき明日がある。ですよね、泰人さん!」
「まさかお前がここまでやるとは思わなかった。・・・こうなったらとことんやってやれ!」
「私たちの問題に巻き込んでしまってごめんね。でも・・・お願い、未来を照らして!」
「ここまで来れたのも泰人さんたちのおかげ。私は・・・最後まで信じます!」
「迷惑かけたね。そんなわがままな私を変えてくれた王子隊を、貴方を・・・信頼してもいいわよね!」
「ムー君気付いて。まだ・・・こんなにも可能性があることに!」
「・・・お母さんを、みんなを助けて!」
そんな全員の思いがスタッフへと集結する。彼はそんな思いを泰人たちに飛ばすイメージをしながら最後に自分の思いを乗せる。
「君たちのおかげでいい体験ができたよ。後は・・・決めてくれ!」
そしてそれらの思いが一筋の光となり・・・・・・泰人と希衣成へと届いた。
そう、スタッフの力は思いの力を届けること。それは彼の職業柄身に付けた、彼だけの特殊な能力だった。
「・・・これは?」
「みなさんの思いが・・・伝わってきます!」
思いを受けた泰人達。極印はもうすぐそこまで迫っていてプレストライク・テンペストも消えそうなくらい弱っていた。しかし泰人達はみんなの思いを、力を確かに感じていた。更に泰人は力を増すためにプラスドライバーを、極印の力を弱めるためにマイナスドライバーを取出し、両手に持つ。
「泰人君、・・・それ使っててくれたんだね。」
「当然だ。お前からの、大事なプレゼントだからな!」
ダブルドライバーを回すと同時に彼らは湧き上がる力をプレストライク・テンペストへと伝えていく。この悪夢を打ち破るように、自分たちの思いも乗せて。
「「全ての思いを・・・・・・繋いで!」」
「・・・莉麻、沙汰、スィング、虚唱さん、祇亜、そしてここまで俺たちを支えてくれた人たちのためにも・・・負けるわけにはいかないんだよ!!」
「まさか一度生を失った私にもできることがあるなんてとてもうれしいです。だから・・・最初で最後の全力です!」
グオガアアアアアアアアアアアアア
それに応えるように雄たけびを上げた猫は再び力を取り戻し・・・どんどん押し返していく。
「・・・あ、ありえん。何故だ、何故極印が押されている。分からん・・・分からんぞおおおおおおおおおお!!!!」
息を吹き返したプレストライク・テンペストが極印を押し返していく。悪夢神は今起きていることが理解できていないようだが、それでも事実は覆らない。今度は逆に悪夢神が追いつめられていた。
「・・・ふざけるな。ここまでして我が計画を邪魔したいというのか。貴様らごときに・・・・・・邪魔などさせぬわ!!」
そう叫び散らした悪夢神は夢の所有権の力を全開まで上げて、夢の世界に満ちているすべての力を吸収し始めた。その力で悪夢原子砲を・・・さらに強化する。
「女神であろうと関係ない、我が最強の一撃を食らうがいい。・・・・・・進化せよ、究極砲印・真悪夢原粒子砲!!!!」
・・・キィーン
もう音が聞こえてもよく分からない域まで来ていた。だが・・・真悪夢原粒子砲に進化した極印、究極印が再び押し返していくのは誰が見ても分かっていた。
「ふははははは、これで・・・・・・終わりだ!」
悪夢神の笑い声が木霊する。思いを乗せたプレストライク・テンペストが再び・・・消えようとしていた。
「究・・・・・・極印?嘘、そんな技・・・あちき知らないわ!」
女神さえ知らない極印を更に超えた究極印。知らないのも無理もない、悪夢神すら今この場で生み出した技なのだから。今、この夢の世界はディオールをも飲み込んでいる。いわば、ディオールそのものの力を極印に加えたものなのだ。そんな常識はずれを知っているはずもない。それを可能にしたのは・・・悪夢神も自分の計画にすべてを賭けていたからだ。彼の・・・思いの力である。
そして再び追いつめられてしまった泰人達。だが、これ以上の出力を上げることなどできるはずもなかった。
「・・・ここまでしても、駄目なの?」
「マジかよ。ここまでなのか・・・・・・ん?」
まだまだ力を上げていく究極印に泰人達は・・・もう諦める寸前まで追いつめられていた。
・・・それでもまだ、彼女だけは諦めることなんてできないでいた。彼女は、サミーはその思いを・・・叫ぶ。
「嫌だよ。お母さんを・・・・・・ママを助けるんだからあああああああああああああ!!!!」
ぴくっ
そしてプレストライク・テンペストが消滅する一歩手前で悪夢神は勝ちを確信した・・・のだが
「・・・勝った。ついに我の勝利・・・・・・なっ!?」
ピタッ
急に究極印の力の供給が止まる。それだけではない。真悪夢原粒子砲の威力がどんどん下がっていき・・・
・・・ザ、ザーーーーーーーーーーーーーーーッ
何もない無の空間であるにもかかわらず雨が降り始めた。それもごく一部、プレストライク・テンペストの上のみである。プレストライク・テンペストの元はラルゴテンペスト、雨を受けたことにより力を取り戻すことは誰が見ても明らかだった。
あまりにも想定外なことが続き、悪夢神も驚くしかなかった。しかし、彼に聞こえた声ですべてを理解することになる。
「・・・聞こえたわよ、サミー。貴女の声が!」
「私たちも・・・力を貸します!」
そう、フィルディアと星音の声だ。この時、悪夢神は理解してしまった。・・・・・・取り込んだと思っていた彼女達に、逆襲されてしまったのだと。
慌てて彼女たちを抑え込もうとするものの、間に合わない。大雨で再び息を吹き返したプレストライク・テンペストが究極印を打ち破ろうとしていたからだ。もう、悪夢神が勝つことはできなかった。
「・・・・・・・・・まだだ。」
ぽつりと悪夢神が呟くと・・・・・・彼はその場から姿を消した。
ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
大きな音を立てて究極印を打ち破ったものの、悪夢神の姿はない。雨が止み、泰人達が嫌な予感がして後ろを向くとそこに悪夢神がいた。彼の近くに星音とフィルディアが倒れており、吐き出したみたいである。どうやら残った夢の所有権でワープしたらしいがほとんど残っていなかったため少ししか移動できなかったが十分だった。彼が狙っていたのは・・・・・・
10、9、8、7・・・
「・・・しまった!!」
時間切れだったのだ。サミアや他のメンバーもその事実に気付いたが遅かった。今・・・時間が切れる。
「残念だが、ここで終わりだ。・・・我の、勝利だああああああああああああああああ!」
3、2、1・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「・・・・・・え?」
時計の針は午後11時59分59秒を指しており、・・・ここで止まって動かないでいた。
「・・・ま、さか!?」
そう、悪夢神は気付き泰人の方を見る。彼の近くにスネイラーがその場にいるのが確認できる。スネイラーの状態ではlargoを使うことはできない。しかしこの状況は泰人がlargoを使った以外ありえないのだ。そして・・・とある結論に辿り着く。悪夢の棘が彼を貫いた、あの瞬間を。
「(あの時奴は仮死状態になった。・・・仮死、つまり一度死んだ・・・ということか。)」
覚醒スネイラーとlargoは例外もあるが死者のみ操れる。一度死を体験した泰人はスネイラー状態でもlargoを使える、真の所有者となったのだ。完全に悪夢神の読みが外れてしまった。
「だがまだだ。largoもすぐに解ける。この場から逃げれば、ま・・・だ・・・!?」
そう、気付いた。スネイラーが覚醒スネイラーではないことに。わざとスネイラーにしたのか、それとも・・・・・・。もう、分かっていた。
「我の・・・負けなのか・・・・・・。」
上を見上げると黒いスネイラー・・・ブラックスネイラーが既に攻撃の準備を終えていた。そう、覚醒スネイラーでなかったのはこのためだったのだと悪夢神は分かってしまい、消耗した彼では攻撃準備を終えたブラックスネイラーの一撃を避けることができるはずもなく、それは・・・悪夢神の負けを意味していた。
「・・・虚唱さん、ありがとうございます。」
泰人は虚唱にお礼を述べた。彼が諦めかけたあのとき、虚唱の声が聞こえたのだ。そしてこの作戦を指示していた。祇亜達と一緒にいなかったのはこのためだったのかもしれない。
そして・・・・・最後の一撃を指示する。これで、今度こそ、本当に終わりである。
「明日を・・・未来を切り開け!ラルゴ・・・・ブラスタああああああああああああああああ!!!!」
発射された黒い水泡は星音やフィルディアに当たらないように悪夢神へと真っ直ぐ向かって放たれ、彼を・・・・・・貫いた。
「・・・なるほど。サミアよ、お前がこいつらを信じる理由が・・・・・・少しわかった気がするよ。」
そう最後につぶやいた悪夢神は・・・意識を失った。
エピローグへ続く
どうでしたか?ついにラスボスである悪夢神を倒すことができました。
夢の女神サミア、悪夢神の生みの親にあたります。実際的な強さでは本気を出した真の悪夢神にはわずかに劣りますが強いです。本編では戦いませんでしたけどね。
この話は女神と悪夢神の意見の対立から始まりました。色々な意見があるため、たとえお偉い方々でもちゃんとした一番いい判断を下せるとは限りません。そのため意見のぶつかり合いが起きるわけですが、今回のように自分の意見を曲げずに親を消すという行為に及んでしまった彼ですが、最後にはサミアの意見も少し理解したようです。
究極印についての説明をします。極印を更に強化したものになりますが、世界そのものから力を供給し初めて使えるものであり普通は神であろうとも使えません。偶然の産物というわけです。因みに泰人と希衣成の合体技、プレストライク・テンペストは極印以外ならば負けることはまずないとんでもなく強力な技です。今回は相手が悪すぎましたね。まぁ、希衣成が亡くなっているため続編があっても最初で最後の技になりそうですね。
さて、次回はついに最終回になります。中途半端だったスタッフの正体や泰人達が元の世界に戻るまでエピローグとしてまとめたものになります。投稿日はそこまでかかりません。今月中には後書きも含めて投稿したいと思っていますので、見ていただければ光栄です。
それではみなさん元気で、最終話にてお会いしましょう!