ヒポポス 前編
こんばんは、6月初の投稿です。今回も前後編です。それではどうぞ。
泰人達はエンシェルアから城下町までは遠いので、列車を使うことにした。
「ここから近くに城下町行きの列車がある駅があります。行きましょう。」
ティライズに導かれ駅へと着く泰人達。列車に乗り込み、城下町を目指す。城下町につくまでは結構かかるので思い思いくつろいでいた。
場所は移り、城下町の病院ホスペリル。そこでは今日も忙しく看護師たちが働いている。
その中を一人の初老の男が通る。彼こそホスペリルの責任者兼ディオール最高の医者、スェイゼルである。数々の難病を治し、さらには王候補の人間の出産にも手を貸す有名な男である。
スェイゼルは午前の仕事を終え、休憩室にいた。すぐに出られるように格好は整っている。
そこに一人の男が入ってくる。言わずと知れたシュパルツだ。
「お久しぶりです、Dr.スェイゼル。今日は話があります。」
妙に畏まって話すシュパルツ。
「うむ、なんだね?」
「例の奴らがここに向かっています。」
突然顔色が変わるスェイゼル。
「ま、まさか噂の新しいラルゴ使いか?ボルスはどうなった?」
「ラルゴ使いに倒されました。なので、あなたもお気をつけください。」
その言葉に頷くスェイゼル。
「分かった。奴らを捕まえ、お前の頭に引き渡せばいいのだろう?何人だ?」
頷き、5人ですと返すシュパルツ。
「うむ。まぁ、あの時手を貸した時から覚悟は決めてるさ。楽しみにしているのだな。」
そう言って部屋を出るスェイゼル。午後の検診がもうすぐ始まる。
「まぁ、ラルゴ使いだけなら大丈夫でしょう。予定外なことがなければね。」
そういうとシュパルツはその場から消えた。
それから3時間後、泰人達は城下町に到着した。
「まずはいつも通り、宿取るか。」
とりあえず宿の部屋を取り、荷物を下ろす。そして、宿前に集まる。
「んじゃ、病院に行くか。」
「ちょっと待ってください。」
後ろから知らない男に声をかけられる。泰人達は知らないみたいだが
「フィドゥか?久しぶりだな。」
「お久しぶりです。ティライズ様はどうしてこちらに?」
「まぁ、いろいろあってな。みんな、紹介しよう。この町の情報家のフィドゥだ。」
宜しくと言ってお辞儀をするフィドゥ。
「じゃあ今度こそ病院に行こうか。」
「だったら僕も一緒に行きます。いろいろ興味もありますし。」
断る理由も無かったので了解する泰人達。
「だったら、俺はこの街見て回るよ。ここはかなり文化が発達しててミニパソを強化できるかもしれないからな。夜に宿前で会おうぜ。」
「じゃあ私も沙汰に付き添うことにするよ。ティルス様とティライズ様を宜しくね。」
そう言って街の中に消える沙汰とサミー。
「よし、じゃあ行くか。」
今度こそ出発する泰人達だった。
沙汰とサミーは街で一番大きい機械工場に来ていた。
「ここがディオールでもかなり有名な工場だよ」
「おぉ、そうか。なんかすげぇな。」
見たことのないパーツに興味津津の沙汰。そこに従業員が話しかけてくる。
「ん、見学者かい?何を見に来たのかな。」
「実はこのパソコンなんですけど、今以上に強化できないかなと思っているんです。」
そう言ってミニパソを従業員に見せる。
「ほう。これは凄いな。いったいどんな能力があるんだい?」
興味があるようで聞いてくる従業員。
「能力に目覚めてからは、自由にメールを送受信ができるようになりました。後はちょっとした召喚術ですかね。まぁ、すぐに消えるんですけど。」
そう言うと高速でキーを打つ沙汰。すると目の前に召喚印が浮かび、カバの子供が出てくる。ちゃんと動いている。
「これはすごいな。そうだ、もうちょっと奥も見学して行くか?何かアイデアが浮かぶかもしれないし。」
それに嬉しそうに頷く沙汰。
「妖精の君も来ていいよ。」
そう言って奥に行ってしまう従業員。それについて行く沙汰とサミーだった。
場所は変わり病院内。診察が一通り終わったスェイゼルは休憩していた。すると
「先生。先生に会いたいという人たちが来たのですがいかがなさいますか?」
「分かった。今行くから面談室に通しておいてくれ。」
そう言って部屋を出るスェイゼル。
「来たか。まぁ、軽く相手をしてあげよう。」
そう呟くスェイゼルだった。
病院を訪ねた泰人達は面談室に通された。
「こちらでお待ちください。」
そう言って部屋を出る看護婦。
「んで、ここで何が分かるんだ?」
泰人がティライズに聞く。
「私たちはこの病院で生まれたんだ。だからここに何か手掛かりがあると思ってね。」
なるほどと頷く泰人。というよりもいつのまにかう打ち解けている。・・・と、そこにスェイゼルが入ってくる。
「お待たせしました。どのような用件ですか?」
ティライズがしゃべると王子がいるとばれてしまうので代わりに
「実はティライズ王子の出産の話を聞かせてもらいたいと参りました。」
「そうでしたか。では今から書類を持って来るので待っていてください。」
そう言って部屋を出るスェイゼル。それを見送ると
「なんだ、簡単に聞けそうだな。」
「そうみたいだな。」
だが、瞬間部屋に紫色の煙が充満する。
「え?何なの?」
「しまった。煙を吸っては・・・・・・」
遅かった。全員煙を吸って倒れてしまう。そこにスェイゼルが入ってくる。
「こんなものか。では始めるか。」
懐から水晶を取り出し、何やら呪文のようなものを呟く。すると泰人達がその場から消えてしまう。水晶の中には5人の姿が見える。
「さて、明日にはシュパルツ君が来るからこれを渡せば終わりだな。」
そう言うとスェイゼルは面談室を後にする。
果たして泰人達の運命は!




