最終決戦10.嵐の如き一撃!放て、ラルゴテンペスト!!
おはようございます、ロンロンの弟子です。またまた遅くなってしまい申し訳ありません。何とか合間合間に書き続けて完成できました。
さて今回は決着編です。果たして最強の英雄を倒せるのか・・・本編で明らかになりますよ。そして今回は衝撃の最後となります。おたのしみに!
それえはどうぞ!!
ピンポンパンポーン
観客室・ミーア側
カチッと音がした。悪夢神がスピーカーのジャックをしていた機械を止めた音だ。機械をテーブルの上に置いたままクックックッと笑い始める。
「青龍よ。我はとっくの昔に貴様が裏切っていることは知っていたぞ。それでも貴重な戦力だからな。上手く使わせてもらったよ。これで・・・・・・茅野泰人も終わりだな!」
ふははははと笑い声が木霊する観客室。他には誰もいないため誰にも聞かれることはなかった。
俺はどうしたんだろうか・・・・・・そうだ、悪夢神の放送を聞いて油断したせいで・・・やられちまったのか。
フロンの妹たちは救えていなかった、これにはなんとなく違和感を感じていた。ティルスたちの話からすると科学者ってやつはとんでもなく強いらしいからな、救えなくて俺に気を使っているのは何となく予想していた。
俺が驚いたのは・・・あの子たちが悪魔化したということだ。もしこの悪夢神の話が本当だとすると・・・・・・やはり全て俺の責任だ。俺があの時しっかり判断していればこんなことにはならなかった。
やっぱり・・・無理なのか。強くなったといってもこの程度だ、誰かを救うことはできない。今回の旅が無事に終わったとしても例の科学者が事件を起こす可能性が高い。その時俺に・・・何ができるのか、それ以前に祇亜に・・・勝てるのか?
身体中が燃えるように熱い。全身大火傷したんだから無理ないか。それに左肩の激痛がひどい、傷口が開いたかもな。でも痛みを感じているというのなら・・・俺はまだリタイアしていないようだ。だけど、このまま続けても青龍に勝てる可能性は限りなく低い。あの時湿度でラルゴブラスターの威力は上がったがそれでも届かないように見えた。それにこれじゃあ祇亜にも・・・また負けるだろう。
ここまで・・・・・・なのか・・・、修行しても俺にはこれが限界なのかよ!!
「・・・いと・・・さん!」
微かにフィルディアさんの声がする。思えばフィルディアさんはいつも正論だった。俺が・・・ちゃんとフィルディアさんの話を聞いていれば・・・・・・。
後悔してももう遅い。すまん皆、どうやら俺は今度こそここまでのよう・・・・・・
「諦めるの?」
ん?今聞き慣れない声が聞こえたような気が・・・
「諦めるのは困るな。せっかく僕がここまで力を貸してあげたのに。」
声がした方を向くと少年が一人立っていた。・・・えーっと、見覚えがあるような顔だな。誰だっけ・・・・・・
「玄武さんに頼まれたんだ。君には僕と一緒に最後まで戦ってもらわないと困るよ!」
・・・そうだ、俺だ。この少年の姿は小さい頃の俺の姿によく似ていた。そう、爺ちゃんがラルゴのことを教えてくれた時の俺の姿に・・・
「ん?・・・あぁ、僕の姿か。僕の姿は君の本質を映し出す。つまり子供時代の姿ってことは今の君はその程度ってことさ。」
「なるほどな。それよりも君は一体・・・」
「僕かい?僕はね・・・スイル。君の言うラルゴやスネイラーは僕のことだよ。」
そういえば爺ちゃんが言っていたな、ラルゴの声を聞けって。この人のことだったのか・・・。
「たい・・・さん、泰人さん!!」
と俺がスイルと話しているところにフィルディアさんの声が響いた。・・・というかその声はスイルの方から聞こえるような気がするのだが・・・・・・
「そういえばお姉さんの力を今まで借りていたんだっけ?・・・そろそろ頃合だし解放してあげようかな。」
スイルはそう言うと右手を挙げる。するとそこから光の球体がふわふわと出てくると俺の前で止まる。
そして球体は形を少しずつ変えていったと思ったら、妖精時のフィルディアさんの姿となる。
「泰人さ・・・あれ、泰人さんが目の前に・・・・・・!?」
どうやら違和感を感じたらしいフィルディアさんは自分の身体をペタペタと触り始める。羽や着ている服など元の自分のものであると把握するまで少し時間は掛かったものの納得したみたいだな。
「元に戻っています!!もう戻れないと思っていましたのに・・・」
「良かったね、お姉さん♪」
とスイルの方を見たフィルディアさんは俺と交互に見比べて目をぱちくりさせていた。・・・なるほど、これは説明が必要みたいだな。俺はスイルのことをフィルディアさんに説明した。
「なるほど、そうでしたか。わざわざ元に戻していただきありがとうございます!」
「別にいいよ、今まで力を貸してもらってたしそのお礼ってことで。・・・じゃあ本題に入ろうかな。」
どうやら真剣な話をするらしく真面目の表情になるスイル。俺もフィルディアさんもその雰囲気を感じ取り聞く姿勢になる。そしてスイルが語り始めた。
「元々ラルゴと僕は別の存在だったんだ。だけどね、強くなりたいって玄武さんが言うもんだから力を貸すために一つになったんだ。でも彼は僕をちゃんと扱うことができなかった。だからラルゴとブラックラルゴの二つに分けることでパワーは落ちたけど扱えるようにはなったんだ。と言っても力は本来の覚醒ラルゴの比じゃないし、覚醒スネイラーは死者にしか使えない。一応二つのラルゴがあれば覚醒スネイラーを君でも制御できるかもしれないけど、その鍵となるブラックラルゴは行方不明だし、あったとしても今の君じゃ使いこなせないだろうね。」
なかなか手厳しいな。だが力不足なのは自分がよくわかっている。
「・・・・・・ブラックラルゴ・・・か。それがあっても覚醒スネイラーを今の俺では制御できる可能性は低い。じゃあ・・・俺には祇亞を倒すことはできないのか?」
「泰人さん・・・・・・」
フィルディアさんが悲しそうな表情をしている。言いたいことはなんとなく分かっていたが口に出すことはできなかった。
「・・・祇亞君とプレストちゃんのことよりもまず考えることがあるでしょ?」
そうだった、まずは青龍をなんとかしなくては先に進むことすらできない。・・・だからと言って
「・・・・・・無理ですよ、力の差がありすぎます。それに泰人さんはもう戦えるほどの力は残って・・・」
残ってない、そう言いたかったのだろう。だがフィルディアさんは言葉を濁す。俺を傷つけたくなかったのだろうか、真実は分からないが事実だ。俺にはもう・・・
「・・・勝てる可能性、あるよ。」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「「・・・・・・え!?」」
フィルディアさんと言葉が被ってしまった。
泰人は倒れたまま動かなくなり、スネイラーもいつの間にかラルゴに戻ってしまっていた。しかし意識はあるらしく、時折痛々しい呻き声が聞こえる。スィングは状況を理解するまで一秒もかからなかった。すぐに泰人に駆け寄り火傷の後を見て考える。
「(さっきの音から考えると雷による火傷かな。かなりの大火傷だから俺っちの水分調節だけじゃその場しのぎにしかならないか。)」
スィングは泰人の頭に触れ力を使う。何もしないよりはマシだと思ったのだろう。とにかく冷やすことだけを考えた。
「・・・奴め、余計なことをしたな。このままでは泰人が消えるのも時間の問題だな。」
青龍がぽつりと呟くのをスィングは聞き逃さなかった。すぐに青龍を睨みつける。
「・・・まだ何かするつもりっすか。もしそうなら例え元英雄でも容赦しないっすよ?」
それを聞いた青龍は少し考える素振りをして答える。
「・・・そうだな。悪夢神によって強化された男を倒したお前には確かに興味がある。少し試してみるか。」
そう言うと上空の蒼い龍に目をやる。龍は応えるようにウネウネと身体をウネらせる。ターゲットをスィングへと変えたようだ。
「・・・そうっすか、なら仕方ない!」
そう言いつつも内心恐怖で震えているスィング。泰人のスネイラーのようにスィングには召喚できる魔物のような存在はいない。ドラゴン相手に水分調節が効くとも思えない。
「(ファントムハンドは一日一回しか使えない。一応あれは回収したんだけど・・・。)」
ポケットに手を入れてジャラジャラと欠片の確認をするスィング。サンドルスを倒した後、残っていた力と導きのビー玉で欠片を全て回収していたのだ。しかし力を失っているようで何も感じない。
「(・・・泰人を置いたまま逃げられない。ここは・・・・・・)」
「待ってください!」
その時だった。
泰人から光の球体が出てきて姿を変える。そう、フィルディアだ。
「!?」
いきなりのフィルディアの、しかも妖精姿にスィングは唖然とする。しかしフィルディアはそんなことを気にせず続ける。
「泰人さんはまだ戦えます。・・・ですよね?」
「・・・その・・・・・・とおり・・・だ。」
「「え!?」」
傷だらけでボロボロになり、まともに喋ることすらできないにも関わらず立ち上がる泰人。そんな泰人が立ち上がる姿を見てスィングと青龍はついハモってしまった。
「・・・立ち上がったか。さて、俺にどんなのを見せてくれるんだ?」
少し嬉しそうな青龍に対し凄く心配そうなスィング。
立ち上がった泰人が倒れないようにと肩を貸す。
「・・・す、まない。」
「いいさ。だが本当に大丈夫なのか?」
頷く泰人。あまりに真剣な表情だったのかスィングはそれ以上何も聞けなかった。
「本当は私も泰人さんを休ませたいのですが、状況が状況ですしそうも言ってられません。協力してください、スィングさん!」
スィングもフィルディアと同じ気持ちだった。泰人にこれ以上無理をさせることはできない・・・が、この状況を打破する方法を泰人は考えているはず。そう、ここまで無理をするということはそれなりに勝算があるということ、この結論へと至った。
「分かりました。では俺っちはなにをすればいいんすか?」
そして答える泰人だったが、その一言でスィングは決断を迫られることとなる。
「・・・・・・100%だ!」
「スィング君の力で100%のスネイラーにできれば、今の僕でも覚醒スネイラー位の技を放てるよ。それだったら彼の力を上回ることは可能だね。」
・・・なるほどな、確かに可能性はある。フロンが召喚した海蛇との対決で実感したあの能力の底上げは凄まじかった。あれの100%だったら・・・いけるかもしれないな。
「ちょうどスィング君も来ている。それ以外に道はないよ。」
「・・・分かった。本当は一人で倒したかったが仕方ない。力を借りるか。」
「分かりました、頼んでみましょう。」
こうして残った可能性、スィングにより最大まで強化したスネイラーに俺たちは全てを賭けることにしたんだ。
「それとね・・・」
スィングは聞いた。・・・100%、これが青龍を倒せる可能性であると。
確かにスィングの能力で強化はできる。・・・しかし、泰人たちはあのことを知らないのだ。
「・・・すまん、無理だ。」
「・・・・・・な!?」
泰人は言葉を失う。まさか断られるとは思ってもみなかったのだろう。このままでは言葉不足のためこの先の言葉を続けて言う。
「実は・・・、さっきの対決でシロミャーを失ってしまった。俺っちを守って・・・やられちまったよ。」
「・・・・・・・・・・。」
スィングはあったこと全てを語った。だが泰人のこともあるので短めにまとめてはいたが。
「だからあの時のような強化は無理なんだ。・・・ごめん!」
「そ、・・・そんな?」
ガックリと肩を落とすフィルディア。彼女自身ラルゴとしてあの力を実感していたためそれがどれほどのものなのか分かっていたのだろう。それだけに使えないと言うのは・・・きついものがある。
「・・・さて、おしゃべりはそこまでだ。悪いが今の俺は悪夢神側の人間だ。これ以上待つことはさすがにできないな。」
流石の青龍も待つ限界が来たようだ。蒼い龍に指示を出し、攻撃の準備をする。
これ以上は無理だと思ったのかスィングもフィルディアも終わりを覚悟していた・・・のだが、この男は違った。
「・・・・・・いい・・・ぜ、やって・・・・・・・やるさ!」
泰人はなんとか言葉にするとスィングにラルゴを触れさせる。
「え・・・、いやでも・・・。」
「石とか・・・関係ねえよ。・・・・・・強い思いで・・・奴を・・・・・・超えるだけ・・・だ!」
とぎれとぎれだが力強い言葉にスィングは心を打たれた。・・・覚悟を決めてラルゴに今自分ができるありったけの力を込める。
「だったらお前に託す。・・・・・・勝つって信じてるぞ!」
「・・・当然!」
そして泰人は召喚する。・・・今自らのありったけの力を込めて・・・・・・。
「来い、・・・スネイラああああ!」
出現した。
現れたスネイラーはかなりの力を秘めていた・・・が、それでも蒼い龍には届いていないようだ。
「・・・ほう、まだそれだけの力を引き出せるとはな。いいだろう、次で決めてやる!」
その青龍の言葉に応えるように龍は充電を始める。バチバチと物凄い音が空から聞こえ空気もビリビリと振動しているような感覚がする。しかし泰人は怯まず次の指示を出す。
「・・・嵐で・・・・・・決めろ。」
バチバチという音でかき消されるほど小さな呟きだったがスネイラーには聞こえたようでいつものラルゴブラスターの構えを取る・・・が何かが違う。
そう、大きさが明らかにいつもより小さくサッカーボールほどしかない。
「な、なんでこんなに小さいんすか?これじゃああんなすごい雷に太刀打ちできない・・・。」
「・・・・・・いいえ、これが私たちの最後の希望ですよ!」
心配そうにするスィングに対してフィルディアは何かわかっているようだ。だがそれは当たっていた。
大きさは確かにいつものラルゴブラスターのほんの一部ほどしかない・・・のだが、このサッカーボールほどに秘められた力は計り知れなかった。
実際これを見た青龍はかなり驚いていた。
「・・・どうやら何かを掴んだようだな。いいだろう、俺も本気で行こうじゃないか。」
そう言うと目を閉じ何かを呟いた。・・・それは何か人の名前のようだがうまく聞き取れない。
そしてそれを呟いた瞬間、青龍は光となり上空へと向かう。そう、蒼い龍と交じりて一つとなったのだ。
そのせいなのか充電されていた雷の威力は更に上がる。どうやらこれが青龍の本気のようだ。
「受けてみろ、俺の最強の技。・・・蒼雷電滅・双槍剣!」
充電された雷は剣と槍、二つへと姿を変えて泰人へと襲いかかる。今までの技とは桁違いの威力と大きさであることは誰が見てもわかるほどだった。常人ならば立ってられないほどの威圧感を放っている技、スィングとフィルディアも例外ではなく座り込んでしまっている。
だが泰人はもう感覚が鈍って感じていないのか真っ直ぐ槍と剣を見てニヤリと笑う。その笑みは明らかに負けを認めた笑みではなく、勝利を確信している笑みだった。
そして泰人もその技に向かって溜めた力を開放する。
「・・・今度こそ決まっとけ、・・・ラルゴ・・・・・・ブラスタああああああああ!!!!」
ありったけの声で叫ぶと同時に放たれるラルゴブラスター。大きさでは明らかに負けてい・・・たと思っていたのだが
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
轟音を立てながら空気中の水分を吸収して拡大していくのだ。どうやら放ったあとで強化されていく技のようで拡大した姿はいつものラルゴブラスター以上だ!
そしてぶつかる3つの力の塊。とはいったものの実際は2対1なのだがそれでも打ち負けないほどの威力を100%のラルゴブラスターは秘めているようでお互いに一歩も譲らない。
「・・・ぬおおおおおおおおおおお」
「・・・いっけえええええええええ」
力を与えている両者の意思もぶつかり合い譲らない。・・・だがそのようなぶつかり合いならば長く持つはずがない。それに体力的にも実力的にも圧倒的不利な泰人がこんなことを続けていては・・・
ビキビキビキビキッ
身体に限界が来ても無理はなかった。
「がああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」
痛みを感じていないように見えたがそうではないようだ。・・・全身が悲鳴を上げてもう無理だと泰人に告げていた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
となればラルゴブラスターの力も弱まるのは当然であり徐々に双槍剣に押され始める。
「泰人さん!?」
「泰人!?」
フィルディアとスィングは泰人の危険を感じ取ったがあまりの威圧力で立ち上がることすらできず轟音で声も届かない。
そうしている間にも泰人の身体は悲鳴を上げ続けラルゴブラスターはうち負けていく。
そして泰人とスネイラーに当たるスレスレまで追い詰められていた。この状況を見ればもう泰人が勝つと思う人もいないだろう。
「・・・まぁ、ここまでよく頑張ったが・・・・・・終わりだな。」
青龍のつぶやきも当然聞こえない。
そしてもう駄目だと思った・・・・・・ときだった。
シュン
「まだ終わりじゃない!!」
「あたちも何かするの!!」
現れたのはスタッフとサミーだった。しかし現れた場所は泰人の近く、双槍剣の範囲内だ。
「「なっ!!?」」
突如現れた二人に青龍を含め全員驚く。だがスタッフたちはそんなこと気にしないように続ける。
「僕たちだって君たちの仲間だ。たとえ夢の世界でも仲間が苦しんでいるのを黙ってみてはいられないんだよ!」
轟音の中のスタッフの叫びだがギリギリで泰人の耳に入る。
だが双槍剣は直前まで迫っている。このままではスタッフたちも巻き添えを受けて消滅してしまう。
だがスタッフ達は特に考えなくここにきたわけではない。・・・共鳴していたのだ。
「・・・・・・あたちたちが皆を救うの!!」
サミーのそんな言葉・・・それに応えるように
パーーーーーーーーーーッ
「こ、これは!?」
スィングのポケットに入っていた欠片たちが全てサミーのもとへと向かっていく。
そしてサミーの中へと全ての欠片が入る。
「・・・あ、あぅん///」
妙な声を上げるがこれは仕方ないのだ。儀式のようなものだ。だから見逃してくださいお願いします。
とそんなことは置いておいて、欠片と融合したサミーは白く光っていた。そう、白い石と融合したせいなのだろうがそれだけではない。その光はとても温かい光だった。
「お兄ちゃんを助けるよ!」
光りが泰人に触れる・・・その箇所の傷が徐々に回復していく。
もちろんそれだけではない。
ググググググググググググッ
ラルゴブラスターも威力を取り戻し押し返し始めた。
「なん・・・だと・・・!?」
青龍は驚くが威力が戻ったラルゴブラスターは再び互角のところまでもってきた。
「・・・ありがとう、サミー。おかげで助かったぜ。」
「えへへ♪」
大分回復した泰人、お礼を言われてサミーも少し照れているようだ。
「まだ安心できない。勝ったわけじゃないからね。」
とスタッフに言われて再び厳しい表情になり技のぶつかり合いの方を見る泰人。互角には持ってきたものの互いにあと一歩足りていないようだ。
「・・・・・・いんや、俺たちの勝ちだぜ?」
泰人は勝ち誇ったように言うと懐から・・・再びプラスドライバーを取り出し、ラルゴブラスターの方に向けて時計回り方向に捻る。・・・すると
グオオオオオオオオオオオオオオオ
周囲の風を吸収し始める。ラルゴブラスター内部の水は轟々と音を立てて豪雨のようだ。
それに加えて今の風・・・暴風。豪雨と暴風が一つとなるとできるのが・・・・・・そう、嵐だ。
泰人は高らかに叫ぶ。
「進化したラルゴブラスター、その名も・・・・・・ラルゴテンペストだ!!」
ラルゴテンペストは全てを飲み込む。そう・・・いくら双槍剣と言えども例外ではなかった。
またたく間にラルゴテンペストに飲み込まれ、さらに巨大化していく。
「・・・・・・フッ、ここまでできれば上出来だ。これからはお前たちの時代だ!!」
そしてラルゴテンペストは、青龍をも飲み込み・・・・・・消滅した。
「・・・やった、やったっすよおおおおおおおおおおおおおおお!!」
スィングは飛び起きて喜んだ。いつの間にか天気は晴れており陽の光が目にしみる。
フィルディアもすぐにサミーのもとへと向かって抱きしめる。
「全く心配かけさせて。・・・・・・よくやったわね。」
「・・・お母さん♪」
感動の二人の姿を見ながらようやく一息つく泰人。スタッフが声をかける。
「お疲れ様、君は本当によくやったよ!!」
「いやいや、スタッフさん達の力があったからこその勝利ですよ。」
勝利の余韻に浸る5人。スタッフたちには制限時間があるため戻らなくてはならなかった。
「じゃあ、また後でね。」
「お母さんもお兄ちゃんたちも頑張ってね♪」
そう言って二人は観客席へと戻っていった。
「さて、これからどうしようか。」
スィングは改めてそう言った。だがこの時誰もが忘れていたのだ、・・・あの男の存在を!
スタッ
「よぉ、まさか青龍を倒すとかすげえな!」
「「!!?」」
いきなり上から沙汰が降りてきた。そして泰人へと向き合う。
そして一言。
「・・・・・・すまん。」
「え・・・?」
気付いたときには泰人の前には黒い球体が出現していた。そう・・・それは大きさこそ小さいがヴィントルの使った術によく似ていた。
そして・・・泰人は何もできずにその球体に飲まれていった。
「泰人!!」
スィングが手を伸ばすが・・・届かなかった。泰人を飲み込んだあと黒い球体は・・・・・・沙汰のミニパソへと入っていた。
カランカランッ
何か落ちる音がした。それは・・・亀のアクセサリーだった。
「秋の島の対決、青龍選手と泰人選手のリタイアを確認。残ったのは沙汰選手只一人です。」
続く
どうでしたか?青龍は倒しましたが泰人・・・主人公がついにリタイアしました。
さて青龍ですが真の名を言うことで自らの龍と融合しました。英雄でもパワーアップ方法は全員異なり、青龍のこのタイプは使う機会が難しいため人前でほとんど覚醒はしませんでした。誰も見たことがなかったのはそのためです。
ラルゴテンペスト、ラルゴブラスターの進化技です。覚醒スネイラーでない状態の場合、100%に加えてプラスの力でようやく発動できるという厳しい条件ですね。まぁ、現状で・・・というよりこれからもこの技以上の威力の技はほとんど出ませんね。最高出力を誇るのがラルゴテンペストです。ま、主人公の技ですからこれくらいはないとと思いますよ。
さぁ、主人公リタイアで話も終わりに近づいてきましたね。恐らく最終決戦20あたりで終わる予定なのでそれまではお付き合いいただければ光栄です。
さて次回は莉麻とミュア対祇亞とミーアです。この対決で季節の島の対決は終了になります。一応想定外な展開を目指しているので次回もよければ見てください。
次回は未定です。今月中には投稿したいですが無理なら来月です。詳しくは活動報告に書きますね。
それでは皆さん、元気でまた次回お会いしましょう!!




