第5話 このままでいい……のか?
ちょっと短いけれど、書くことが大事!!
ってことで、もう1本書いてしまおうと思うので、明日にでも公開します。
一週間経った。
と言うか、馬の目だとカレンダーが見難い……小さい文字が認識しにくいと言うか。
人間の感覚を持ったまま馬の身体になってしまったようなものだから仕方が無いのだろう。
何度か頭が痛くなったりもしたけれど、ようやく落ち着いてきた気がする。
そして身体を動かすと言うこともストレスなく出来るようになった。
……正直なところ、アイデンティティが揺らいでいる……
馬であるべきなのに、思考が人間なものだから馬になりきれないのだ。
何を言ってるのか解からないかもしれないが、俺も解からない。
そんな一週間で解かった事もある。
当然ながら、自分はかなり期待されている。
そりゃそうだろう。 中央競馬ではそこまで活躍出来なかったとは言え、地方競馬代表としてジャパンカップに出走するほどの牝馬だったアブンダンティア。
そんな牝馬が小さい牧場で繁殖牝馬として入ったのだから、期待するのは当然だ。
父親はブラックビスケッツと言う馬だった。
正直知らない。
う~ん、調べることは出来ないけれど、少なくとも日本で出走経験はないはずだ。
そう言い切れるのは、実は自分が死んだと思われる翌年だったのだ。
時系列で言えばこんな感じだろうか?
アブンダンティアがダイオライト記念を勝った年、そのまま活躍を続けてジャパンカップに出走するも、屈腱炎で引退。 繁殖入り。
翌年の三月のダイオライト記念を観戦しに行って、アブンダンティアロスを痛感する。
そして、死ぬ。
いまも思いだせるトラックの姿……
そんなのはどうでも良くて、死んですぐ転生したのであろう。
競争馬の種付けシーズンは四月から六月くらいの間。
順調であれば四月だろう。
死んで一カ月も経ってない。
いや、一発で種が付いたか分からないし、二発目だったら6月とか?
それでも、三ヶ月も経たずに転生して受胎したと言うことだろう。
そして、死んで一年後の今、競争馬……になれる保証はないけれど、馬としてこの世に再降臨した。
白い空間で美しい女神が「まだ死ぬべきじゃなかった」とか言って、チートありの転生を持ちかけたりしてなければ、剣と魔法の冒険活劇のようなファンタジーな世界でもなく、まさかの現代である。
輪廻転生ってのは言われているし、前世の記憶を持ったまま生まれてくる子供と言うのも眉唾ながらも実在してた。
なので、人間の記憶を持ったまま馬に転生すると言うのは、あるのかもしれない。
サラブレッドの寿命は二五年から三〇年だと言うし、死んでしまったと言う事実を抜きにすれば、順調に行って俺の人生は合算で六〇年弱……やや物足りないけれど、充分なのかもしれない。
いや、合算するってのはどうかと思うけれど。
………………
…………
……
そんなわけで、改めて人生設計を考えよう。
アブンダンティアに輸入馬であろうブラックビスケッツの血を入れたと言う事は、いま日本を席巻してるサンデイサイレントの血が入ってないと言う事だろう。
少なくとも海外のサンデイサイレント産駒だとしたら注目されるから少なくとも俺が知ってるだろうし。
海外でも大きなレースで活躍していれば知る機会もあっただろうから、少なくとも凱旋門賞とかを制してないだろうから、察するに……アメリカなどのダート路線で活躍してたか?
想像でしかないが、ダートで実績を残していてサンデイサイレントの血が入ってなかったアブンダンティアの相手で輸入馬だとしたら先々も視野に入れて意図的にサンデイサイレントの血が入ってない注目輸入種牡馬を選ぶ可能性はある。
その期待に応えることこそが一番ハッピーな生き方になるのではないだろうか?
そこから逆算していくと、種牡馬になるためには実績として大きなレースに勝たなければならない。 それも、中央競馬のレースだ。
個人的にはジャパンカップを制覇して、母であるアブンダンティアの雪辱を果たしたいな。
じゃあ、中央競馬で走るには、中央の馬主に購入して貰う必要がある。
となれば、セールなり紹介なり……走りそうと思わせなきゃいけない。
どうしたら思わせられる……牧場で活発に動いたり、筋肉をつけて体躯を良く見せなければならない。
……つまり、今から競争馬として、意識高い生活をしなくては!
みなぎってきたー!
「マルスー、もうちょっと待ってなー。 そんなちゃかついてると怪我するよ?」
あ、俺を取り上げてくれた厩務員さん♪
……可愛いよな……ボーイッシュで溌剌とした感じ。
この人が生まれ変わってからの初キッスの相手……その時点で人間の時の人生より良いスタートだった気がする♪
競争馬の名前が新たに2頭出てきました。
サンデイサイレント。
言うまでも無く『サンデーサイレンス』です。
いまの日本競走馬界の頭の痛い問題は、一時期のノーザンテーストよりも酷いSSの血の濃さです。
血統が収斂されるのは生物学的に問題があり、馬産地でもSSの血に合わせて傍流の血統をどう活かすか、もしくは輸入してくるかで頑張っていると思います。
……ここ10年以上競馬から離れているので自信が無いのですが……
そんな中でアブンダンティアと交配した馬、ブラックビスケッツ。
モデルの馬としてはマインドユアビスケッツです。
ドバイゴールデンシャヒーンを連覇したアメリカダート短距離の活躍場です。
スピード血統が全盛で短距離レースが多いアメリカですので、おのずとこの馬もスピード血統ではあるのですが、父父父にデプュティミニスターがいるんです。
この馬の産駒にトーヨーシアトルがいるんですよ。
丁度競馬にハマっていた頃、今回の話しで唯一出てきている船橋競馬場に所属していた名馬・アブクマポーロと同時期にダートの長距離で活躍していたのがトーヨーシアトルだったのです。
東京大賞典が2800mの長距離レースだった最後の勝利場がトーヨーシアトル……
実は僕、ステイヤーが好きだったりします(笑)
そんな縁もあり、直近の種牡馬でサンデーサイレンスの入ってない馬を探している時に見つけたマインドユアビスケッツを未来の伏線もあり選んでみました。
血統的には短距離と言われるであろうマルス(幼名)がどう言った活躍を見せるのか……それはまだまだ先の話し(爆)
これから、牧場での生活、オークション、馴致、所属、出走……いやぁ、競馬場までの道のりが長いww